労働安全衛生法による健康診断 その他の健康診断等

労働安全衛生法による健康診断

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/26 02:16 UTC 版)

その他の健康診断等

一般健康診断、特殊健康診断のいずれにも属さないもの、及び医師による指導を取り上げる。

臨時健康診断

都道府県労働局長は、労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、労働衛生指導医の意見に基づき、事業者に対し、臨時の健康診断の実施その他必要な事項を指示することができる(第66条4項)。この指示は、実施すべき健康診断の項目、健康診断を受けるべき労働者の範囲その他必要な事項を記載した文書により行なうものとする(規則第49条)。

  • 「その他必要な事項」には、健康診断の検査法、健康診断を実施した場合の結果の報告に関すること、労働者の健康保持の観点からみて必要な作業環境条件の測定および改善、作業方法、救護体制等の検討に関することが含まれること。この指示を発する場合としては、次のごとき場合が考えられるものであること(昭和47年9月18日基発601号の1)。
    • 特別の健康診断の結果または作業中の労働者の訴え等からみて、特に注目すべき疾病がみられた場合
    • 有害物の大量漏えいがあり健康診断を要すると認められる場合
    • その他原因不明の健康障害、特異な疾病等が発生した場合
    • 作業環境または作業条件の改善を必要と認める場合(作業環境測定により第3管理区分と評価された場合等)

深夜業従事者の自発的健康診断

深夜業に従事する労働者であって、常時使用され、自ら受けた健康診断を受けた日前6か月を平均して1か月当たり4回以上深夜業に従事した者は、自ら受けた健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出することができる(第66条の2、規則第50条の2)。2000年(平成12年)4月の改正法施行により新たに導入された。自己の健康に不安を有する深夜業従事者であって事業者の実施する次回の特定業務従事者の健康診断の実施を待てない者が自らの判断で受診した健康診断の結果を事業者に提出した場合に、事業者が、特定業務健診の場合と同様の事後措置等を講ずることを義務付けるものである(平成12年3月24日基発第162号)。この書面の提出は、当該健康診断を受けた日から3か月以内にしなければならない(規則第50条の3)。

  • 自発的健康診断を受診してから提出するまでの期間については、自発的健康診断の結果への対応は、特に迅速に行う必要性があるものと考えられるため、その根拠となる自発的健康診断結果の提出についても、できるだけ早期に受診者から事業者に提出がなされるべきものであることにかんがみ、3月以内とすることとしたものであること(平成12年3月24日基発第162号)。
  • 深夜業については人間の有する一日単位のリズムに反して働くというその特性から健康への影響を及ぼす可能性が指摘されていることから、医師による問診に当たっては、特に自他覚症状について注意深く行うことが望ましいこと。自発的健康診断については、深夜業従事者の労働負荷や深夜就労という特殊性に加え、労働者の不安を払拭するために労働者の自主的判断によって受診できるものであることを踏まえ、できる限り健康診断項目を省略しないよう、関係者に対し指導すること(平成12年3月24日基発第162号)。

二次健康診断及び特定保健指導

労働安全衛生法の規定による一般健康診断等のうち直近のもの(一次健康診断)において、血圧検査、血液検査その他業務上の事由による脳血管疾患及び心臓疾患の発生にかかわる身体の状態に関する検査であって、厚生労働省令で定めるもの(血圧測定、血中脂質検査、血糖検査、肥満度(腹囲の検査又はBMIの測定)の4項目)が行われた場合において、当該検査を受けた労働者がそのいずれの項目にも異常の所見があると診断されたときに、当該労働者(当該一次健康診断の結果その他の事情により既に脳血管疾患又は心臓疾患の症状を有すると認められるものを除く)に対し、その請求に基づいて二次健康診断及び特定保健指導を行う(労働者災害補償保険法第26条)。労災保険法における保険給付として行われる。

事業者は二次健康診断の対象となる労働者を把握し、当該労働者に対して二次健康診断の受診を勧奨するとともに、診断区分に関する医師の判定を受けた当該二次健康診断の結果を事業者に提出するよう働きかけることが適当であるとされる[4]


注釈

  1. ^ 健康診断項目の省略については、年齢等により機械的に決定するのではなく、個々の労働者について、医師が健康診断時点の健康状態、日常生活状況、作業態様、過去の健康診断の結果、労働者本人の希望等を十分考慮して総合的に判断すべきものであること(平成10年6月24日基発396号)。

出典

  1. ^ 東京海上火災保険・海上ビル診療所事件
  2. ^ 「採用時の健康診断について」平成5年5月10日付労働省事務連絡
  3. ^ 平成22年1月25日厚労告25号
  4. ^ a b c d 「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」
  5. ^ a b c d e f g h 平成27年5月1日基発0501第3号
  6. ^ 労働安全衛生規則の一部を改正する省令案概要厚生労働省
  7. ^ 「労働安全衛生法のはなし」p.305
  8. ^ 愛知県教委事件、最判平成13.4.26等
  9. ^ a b c 昭和47年9月18日、旧労働省労働基準局長名通達602号
  10. ^ 「労働安全衛生法のはなし」p.275〜278





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