労働力調査 特徴

労働力調査

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/03 02:29 UTC 版)

特徴

就業状況や求職活動について、個人を対象にアクチュアル方式 (current activity status) で調査をおこなっている[11](p74)国際労働機関 (ILO) の決議[19] に準拠した方法であり、同様の方法で統計を作成している国と比較可能なデータを提供している。

労働力調査は1947年にさかのぼる古い調査であり、過去からの継続性を重視してきた。基本的な項目については1953年からのデータを接続して代表性のある数値を得ることができる(残念ながら、サンプリング方法のちがいのため、1952年以前のデータはそれ以降と直接接続できない[11](p14))。ただし、長期の時系列データが用意されている指標以外は、1999年以前については電子化されていないことが多く、印刷された報告書あるいは総務省統計図書館所蔵の報告書非掲載表などを利用する必要がある[10]

特に完全失業率(単に「失業率」と呼ばれることが多い)は、本調査が継続的に測定してきた最も注目される指標である。季節調整を行った完全失業率は、毎月の雇用環境の状況を把握する指標として重要視されている。2020 (令和2) 年の労働力調査では、平均の完全失業率は2.8%、完全失業者は191万人と新型コロナウイルス感染症の流行の経済の悪化を受ける形での増加が見られる。

2018年以降は、後述のように、未活用労働力についての諸指標を新設している。2020年(年平均集計)では追加就労希望就業者は228万人、潜在労働力人口は44万人、LU1が3.1%に対しLU2は6.4%、LU4は7.0%となっている。LU4を男女別にみると、男性は5.7%、女性は8.5%となった。LU4の内訳を男女、年齢階級別にみると、男性は65歳以上を除く全ての年齢階級で、失業者の占める割合が高く、女性は25 - 34歳を除く全ての年齢階級で追加就労希望就業者の占める割合が高くなった[20]

労働力調査は労働供給側からの調査であり、個人を対象としておこなわれる。自営業・家族従業者・内職などを対象にふくむほか、企業側では把握していないサービス残業や裁量労働制などの労働時間、個人的な人間関係を利用した求職活動なども把握できる。また、抽出された住戸に居住する世帯員全員のデータがそろうので、世帯単位の分析が可能である。これらの点で、公共職業安定所の業務から得られる求人求職就職等の状況を集計して求人倍率等の指標を発表している職業安定業務統計(厚生労働省[21]、事業所を対象とした標本調査に基づいて常用労働者の給与労働時間の統計を作成している毎月勤労統計(厚生労働省)[22] などとは差別化されている。

さらに、毎月おこなわれる調査であるために、速報性があり、短期間の変化をすぐに追跡することができる。基本集計は毎月(おおむね調査の翌月末)、詳細集計は四半期ごと(2月、5月、8月、11月)に発表される。この点は、5年ごとの周期調査である国勢調査、就業構造基本調査、社会生活基本調査(いずれも総務省統計局)などとの大きなちがいといえる。ただし、地域別の結果は年1度(おおむね2月)、年平均値のみの公表となる。基本集計については年次と年度の平均値、詳細集計については年次の平均値もそれぞれ年に1度作成される。[11](p3)

集計結果はインターネット(政府統計の総合窓口 (e-Stat)) で提供される。また、結果公表の都度、総務省統計局のウェブサイト[23] にも掲載される。前年分の結果と調査・集計方法の解説等を収めた『労働力調査年報』[24] が毎年5月に刊行される。


注釈

  1. ^ 週35時間未満の就業者を対象としている理由は、日本のほとんどの企業でフルタイム勤務の週所定労働時間を35時間以上としているためである。また、国際的にも 35時間を閾値としている国が最も多くなっている。「労働力調査」では、従来から1週間の就業時間が35時間という基準で短時間か否かを判定している。

出典

  1. ^ OECD Economic Surveys: Japan 2019, OECD, (2019), doi:10.1787/fd63f374-en 
  2. ^ 基幹統計一覧”. 統計制度. 総務省. 2024年5月16日閲覧。
  3. ^ 労働力調査 基本集計 全都道府県 結果原表 全国 年次 2019年 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口』(レポート)総務省統計局、2019年1月31日、基本集計 第II-10表https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200531&tstat=000000110001&cycle=7&year=20190&month=0&tclass1=000001040276&tclass2=000001040283&tclass3=000001040284&result_back=1 
  4. ^ 労働力調査の概要用語の解説
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  12. ^ 総務庁統計局『労働力調査年報 平成4年』日本統計協会、1993年6月。ISBN 482231510XNCID BN08441322 
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  14. ^ Statistics Bureau of Japan. “Annual Report on the Labour Force Survey 2022” (英語). 総務省統計局. 2024年5月30日閲覧。
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  20. ^ 総務省統計局 (2021年2月16日). “2020年(令和2年)平均結果の概要 第4 未活用労働” (PDF). pp. 9-11. 2021年3月13日閲覧。労働力調査(詳細集計)平成30年(2018年)平均(速報) (PDF) 総務省統計局
  21. ^ 厚生労働省 職業安定局 雇用政策課調査係. “一般職業紹介状況 (職業安定業務統計)”. 厚生労働省. 厚生労働統計一覧. 2024年5月18日閲覧。
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  27. ^ OECD Labour Force Statistics 2020, OECD, (2020), doi:10.1787/23083387 
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  41. ^ [2]「景気拡大による人手不足、苦境に陥るのはブラック企業 労働者には賃上げの好機」
  42. ^ [3]「2019年に失業率ゼロ!? 果たして「1億総賃上げ時代」は来るのかかつてない人手不足、そのとき企業は」
  43. ^ 野口悠紀雄 (2020年9月13日). “日本の失業率「2.9%のはずはない」という根拠” (日本語). 東洋経済ONLINE: pp. 2-4. https://toyokeizai.net/articles/-/373385?page=2 2021年3月13日閲覧。 
  44. ^ [4]青年雇用率42%...OECD中で韓国「最悪」





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