分類学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/31 03:43 UTC 版)
分類学者の仕事
現実には、ほとんどの分類学者はどれかの分類群を専門とし、そのなかで種の扱いをいじってそのときを過ごす。種の判断がしっかりしていることは分類学の基礎であるから、当然ではある。新しい種の記載には厳格な基準が設けられているが、記載しようとしているものが新しい種であるかどうかの判断は当人に任せられざるを得ない。すでに記載されていたものを記載してしまう場合もあり得るし、その後の進歩によって、細かいことがわかって、すでに記載されている種を細かく分けたり、統合する必要が出る場合もある。そのような作業が分類学者の仕事のかなりの部分を占める。
正しい分類を模索して、分類学者は生物のあらゆる形質を利用する。外形の特徴、内部の構造、様々な器官の構造と機能、それらを検討し、新しい発見があれば、それが分類にどのように使えるかを考える。動物の場合、高次分類では体全体の基本構造(体制)や器官の構造が、種の分類では細部の形質が重要視される。特に、体内受精をするものでは生殖器(特に交接器)の構造が重視されることが多い。同種と思われていたものが行動の観察から別種と判明、その後に形態上の差異がみつかるという経過をたどったもの複数例ある(ホタル類・キムラグモなど)。
植物では維管束などの基本的構造の他、生活環のあり方なども重視される。植物は未だに進化をつづけ、まだ知られていない植物もあるので分類が完成していないといわれている。藻類では、かつては同化色素の種類が重視されたが、現在では鞭毛や葉緑体の構造など微細な構造に重点があるようである。細菌類では物質代謝能力で分類を行う場合が多い。近年では、DNA-DNA分子交雑法、16S rRNA系統解析などでの分類に比重が移ってきている。
形態的特徴に注目した記載が主であったが、分子生物学の発展以降、DNAの塩基配列を比較することによる分類も行われている(分子系統学)。その結果が古典的な分類体系とは相容れない場合も多くあり、現在は流動的な状態にある。また、そのような発展のなかから、原生生物における系統が次第に明らかになり、それが真核生物の中での系統関係に対するこれまでの見方を完全に変えた面がある。
分類学者のあり方
分類学的研究はもちろんそれ自体が関心の対象であり得るが、手段、ないしは途中経過として考える場合もあり得る。たとえば、生態学的研究の場合、その地域の生物相がある程度以上判明していないとまったく手のつけようがない。したがって、まずは生物相の解明、つまり、分類学から始めなければならない。日本の動物生態学の初期の重鎮であった宮地伝三郎は淡水の生態学に関心があったが、そのために、まずその弟子に日本の主要な淡水動物の分類群を割り振って分類学の研究を進めさせた。
もっとも、手段ないし途中経過がいつの間にか目的になってしまう例もなくはない。トビムシの研究家である吉井良三は生態学的研究を目指し、そのために、まず分類に手をつけ、結局これが一生の仕事になった旨を述べている。ササラダニの研究家である青木淳一もやや似たことを述べた。
なお、生物学者がどれかの分類群の専門家であることは、かつては当然のことであった。
分類学者の型
分類学者はその型として大きく2つにわかれるといわれる。分類群をできるだけ細かく分ける型と、できるだけ大きくまとめる型である。前者を細分主義者(スプリッター)、後者を一括主義者(ランパー)と呼ぶ。
分類学と同じ種類の言葉
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