冪乗 性質

冪乗

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/23 07:50 UTC 版)

性質

  • 冪演算は可換でない(たとえば 23 = 8 , 32 = 9 , 8≠9.)。また結合的でない(たとえば (23)2 = 64 , 512 = 2(32) , 64≠512.)。
  • 括弧を用いずに abc と書いたときには、これはふつう a(bc) を意味する。すなわち冪演算は右結合的である(これは優先順位(precedence, 演算子の優先順位)ではなく、演算子の結合性(associativity, en:Operator associativity)のことである)。

指数法則

以下の一覧表において多重定義の虞を除くため、底は非零実数であるような冪のみを考える。ただし、正の冪のみを考えるならば、底が 0 でも各法則は成り立つ。また以下の一覧において、有理数について分母が奇数あるいは偶数であるというときは、常にその有理数の既約分数表示における分母のことを言っているものとする。

指数法則
規則 条件
a ≠ 0 は任意
  • a > 0 ならば r は任意の実数
  • a < 0 ならば r は分母が奇数の任意の有理数
  • a > 0 ならば n は任意の自然数で m は任意の整数
  • a < 0 ならば n は任意の奇数で m は任意の整数
  • a > 0 ならば r, s は任意の実数
  • a < 0 ならば r, s は分母が奇数の任意の有理数
  • a > 0 ならば r, s は任意の実数
  • a < 0 ならば r, s は分母が奇数の任意の有理数
  • a  • b ≠ 0 ならば r は任意の自然数、あるいは任意の整数
  • a > 0, b > 0 ならば r は任意の実数
  • a, b の少なくとも一方が負ならば r は分母が奇数の任意の有理数
  • 整数 r に対して、[r ≥ 0 かつ b ≠ 0] または [r ≤ 0 かつ a ≠ 0] のとき
  • a > 0, b > 0 ならば r は任意の実数
  • a, b の少なくとも一方が負ならば r は分母が奇数の任意の有理数
  • a ≠ 0 ならば r, s は任意の整数
  • a > 0 ならば r, s は任意の実数
  • a < 0 ならば r, s は分母が奇数の任意の有理数
a < 0 かつ有理数 r, s に対して、r および r  • s は分母が奇数、かつ r  • s の分子が奇数のとき
(ar)s = ±ar • s に関して
  • 冪指数 r, s の少なくとも一方が無理数であるとき、あるいはこれらの双方が有理数だが r または r  • s の少なくとも一方の分母が偶数となるときには、a < 0 に対する (ar)s または ar • s は定義されない。それ以外のとき、この両者は定義されて符号の違いを除いて一致する。特に両者は a > 0 ならば任意の実数 r, s に対して一致し、また a ≠ 0 ならば任意の整数 r, s に対して一致する。
  • a < 0 かつ r, s が整数でない有理数であるときには可能性は二通り考えられ、どちらになるかは r の分子と s の分母の素因数分解が関係する。式 (ar)s = ±ar • s の右辺の符号は何れが正しいのかを知るには a = −1 のときを見れば十分である(与えられた r, s に対して a = −1 のとき正しくなる方の符号をとれば、任意の a < 0 についても成り立つ)。
  • a < 0 に対して (ar)s = −ar • s が適用されるならば、a ≠ 0 に対して (ar)s = |a|r • s が成り立つ(冪指数が正ならば a = 0 のときも成り立つ)。

例えば、((−1)2)12 = 1 および (−1)2 • 12 = −1 であるから、a < 0 に対して a2 = (a2)12 = −a2 • 12 = −a, したがって任意の実数 a に対して a2 = |a| が成り立つ。

指数・対数法則の不成立

正の実数に対する冪および対数に関する等式のいくつかは、複素数冪や複素対数がどのように一価函数として定義されようとも、複素数に対しては成り立たないことが起こる。

  1. 等式 log(bx) = x⋅log(b)b が正の実数で x が実数のときにはいつでも成り立つ。しかし、複素対数の主枝英語版に対して

    は反例になる。複素対数のどの枝を用いたかに関わらず、この等式には同様の反例が存在する。(この結果のみを使うものとすれば)

    であるとまでしか言えない。

    この等式は log を多価函数と考えるときでさえ成り立たない。log(wz) の取り得る値は z⋅log(w) の取り得る値を部分集合として含む。log(w) の主値を Log(w) とし、m, n を任意の整数とすると、両辺の取り得る値は

    である。
  2. 等式 (bc)x = bx⋅cx および (b/c)x = bx/cxx が実数でさらに bc が正の実数ならば成り立つ。しかし主枝を用いた計算で
    および
    が反例として示される。 他方、x が整数のときには任意の非零複素数に対して成り立つ。 複素数冪を多価函数として考えれば、((−1)(−1))1/2 の取り得る値は {1, −1} で、等式は成り立つが {1} = {((−1)(−1))1/2} と言うことは間違っている。
  3. 等式 (ex)y = exyxy が実数であるときには成り立つが、任意の複素数に対して正しいと仮定すると、Clausen et al. (1827)[15]の発見した
    任意の整数 n に対して、
    を得るが、これは n0 でないとき誤りである。

    という不合理が生じる。この推論にはいくつも問題がある:

    • 主な誤りは、二行目から三行目に行くときに冪の順番を変えることで選ばれる主値が変わることである。
    • 多価函数の視点から見ると、最初の誤りは更に早く起きている。一行目で暗に e は実数としているにも拘らず、e1+2πin の結果は複素数であり、e + 0i と書いたほうがよい。二行目を実数ではなくこの複素数で置き換えることで、そこでの冪が取れる値を複数持つようになる。二行目から三行目で指数の順番を変えたことも、取りうる値の数に影響を及ぼす。(ez)wezw だが、整数 n にわたって多価な意味で (ez)w = e(z+2πin)w としたほうがよい。

  1. ^ 単に「指数」と呼ぶ場合、"exponent" に限らず、(数学に限っても)種々の index を意味する場合も多く、文脈に注意を要する(たとえば部分群の指数)。また、(必ずしも冪指数のことでない)"exponent" の訳として冪数が用いられることもある(たとえば群の冪数)。
  2. ^ このような実函数の複素解析的延長は一意に定まる。
  3. ^ 乗算回数は、 を計算するのに 5 回、 に 3 回の、合計 8 回かかる。
  4. ^ この場合の乗算回数も、下位桁から計算するのと同じく合計 8 回かかる。





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