共依存 リスクファクター

共依存

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/23 13:26 UTC 版)

リスクファクター

共依存になる環境はアルコール依存症のある家族の中のみならず、精神障害、知的発達障害、薬物依存症、機能不全家族、ネグレクトや虐待のある家庭で育った子供にも共依存の概念を親や周囲の環境の人間関係から受け継がれ生涯に渡り持ちやすく、環境要因から与えられたが生きにくさとして親や周囲の人物と同じ人生を生きやすく、二次障害を持つことがある。

看護職・介護職における共依存

共依存傾向を持つ者は対人援助職に就くことが多い。看護・介護の現場においては、世話をされる者(患者)との関係で、強者(ケア提供者)・弱者(患者)の関係が発生する。その職務の遂行において、患者に対する共依存的行動が発揮されてしまうことがある。これは、ケア提供者の自己評価の低さを補うため、他者への世話をやくことで他者からの評価を求め、ケアが必要な人や被介護者に対して、無意識に献身的に世話を焼き、満足感を得ようとする、といったことに繋がってしまい、患者に害を与えかねない[13]。また、「してやった」という思念を持っている医療者、看護職、介護職にも持ち合わせやすい。この場合は、自身の発言に自信や勇気などが欠如している場合でも一人称では話せないこともある。

パターンと人物像

ドン・キホーテのふたり

共依存は、家族、職場、友人など様々な関係において確認され、ロマンチック、対等、コミュニティ関係などで見られる[14]。彼らは、責任という鏡に映った自分を愛する者(ナルシシズム)である。

ロマンチック蟻地獄の関係

この関係における共依存者の目的は、パートナーの欲求を実現させるために極端な自己犠牲を行うことである。共依存関係は不健康な関係であり、本人だけでは自律性や自給自足を獲得することができず、自分の充足を果たすことを最愛のパートナーに依存している[15]。無意識に自分よりも他人の人生を優先しているのは、多くの場合では自分の価値を他人に依存しているのであり、それは誤った考えである。

特に問題となるペアには、以下が挙げられる。

パーソナリティ障害者-共依存者のペア
  • 境界性パーソナリティ障害。BPD患者の恋は自分の世話をしてくれる人への寄生である傾向があり、共依存者は自分の問題よりもBPD患者の問題解決が生活の中心となってしまう。この関係は非常に多く見られ、共依存者は「自分は正常である」「自分が責任を持つ」ことに価値を見出してしまう[16]
  • 自己愛性パーソナリティ障害ナルシシストへの共依存者は、コ・ナルシシスト(co-narcissists)と呼ばれることもある[17]。ナルシシストは、己の理想を受け入れ、理想の実現を支援する能力があり、さらに自己よりも他者の要求を優先するパートナーを求め、そして自分へ引きつけようとする[18]。ナルシシストにとって共依存者は、自分に熱い視線を送り舞台を称賛する、理想的な観客・サポーターである[19]。二者は互いに引きつけ合うため、この関係から、ナルシシストは自分が重要で特別な存在であるというパワーを得ることができ、共依存者は他者を援助したいという欲求を満たすことができる。
共依存かつ(もしくは)不規則衝動的な個人-共依存者のペア[20]

機能不全家庭

機能不全家庭で育った子供は、両親の欲求・感情を汲み取ることを学ぶために、親子関係の役割が通常とは逆転してしまう[21]

育児において養育者は、ある種の自己犠牲奉仕が必要であり、子どもの欲求に答える必要があるのだが、しかし養育者の自己奉仕精神が不健全・破壊的なレベルに達していると、その親子の関係は共依存関係となってしまう[14]。一般的に、子どもの(感情的・身体的な)欲求をくみ取って世話する親はよい養育者とされるが、共依存の親が行う世話は、効果性に乏しかったり有害であったりする[14]。子どものニーズをくみ取ることは必要であるのだが、それは子どもの成長において一定期間のみであり、共依存の親はそれを継続してしまう。

その一方で、自己中心的な共依存の親も多くおり、それらは子どもの感情やニーズを無視し、虐待し、辱め、共依存に至らしめる。

管理

共依存関係が治療されないと、さらなる深刻な問題を招き、それにはアルコール依存症薬物依存症摂食障害性依存症、心身問題、自己破壊行動、自己敗北性パーソナリティ障害などが挙げられる[22]

共依存者は、アグレッシブな人々や、さらにストレスフルな仕事・関係に引きつけられる傾向があり、将来さらなる問題を起こすことが多く、医療が必要であっても自ら受診することは少なく、キャンペーンを行っても反応せず、また非共依存よりも所得が低い傾向がある[22]

社会が安全でないという共依存者の認識は、社交不安障害などに発展することがあり、たとえば社会恐怖回避性パーソナリティ障害、苦痛的な人見知りが挙げられる[22]。ほかストレス関連する障害もあり、たとえばパニック障害大うつ病心的外傷後ストレス障害が挙げられる[22]

共依存関係は、機能不全家族などで育った人々が陥りやすく、また医療者と患者といった関係においても出現する[12][5]。また自分自身は健全であると思っていても、他者を操作する被共依存者との共依存関係を改善させるのは容易ではない。よって専門家のアドバイスを受けるのが望ましい。

援助の方針

全ての専門家が同意する標準的な治療手法はない[23]。共依存からの回復のための手法には様々なものがある。認知行動的な心理療法が選ばれることもあれば、抑うつ症状に対して薬物療法が選ばれることもある。

共依存関係に陥っている場合、当事者は共依存関係について自ら判断するのではなく、第三者である専門家を交えて共依存について対処が望まれる[5]

対策は、アルコール依存症アダルトチルドレン、それにパーソナリティ障害などの対策と重なるところがある[10]。正確には共依存への対策は存在せず、それから派生する精神病理への対策が行われる。ただし、その依存性の問題を正面から取り組む場合には、個別のいくつかの対策がカウンセリングなどを通して行われる場合がある。

集団精神療法自助グループなども活用できる[5]共依存アノニマス英語版(CoDA)、アラノン(アラティーン)、ナラノン英語版アダルトチルドレン・アルコホーリクス英語版などの自助グループは、アルコホーリクス・アノニマスが開発した12ステップのプログラムをベースとしている[24]。また共依存を対象とした多くのセルフヘルプ書籍がある。

共依存者については、何が最善の結果なのか、自らが本来の援助の目的と異なった依存関係を必要としていないか、依存関係が自らの生きる目的となっていないかを再確認する必要がある[10]イネーブラーの立場から降り、パートナーに暴力を振るわれたら家を出る、警察に通報するといった態度も必要である[10]

共依存の原因となるパートナー(被共依存者)への対応としては、一定の距離を置きながら援助される[5]。被共依存者は、援助が少ないことに見捨てられた気持ちを抱く可能性もあるが、「自分の人生は自分で切り開いていくしかない」と気づかせることが、結果として被共依存者の回復につながる(底付き直面化[10][5]。被共依存者は支援を受けることに感謝し、関係者を操作することなく、自分自身の置かれている境遇を受け入れることが、回復の第一歩である[5]


  1. ^ a b c B.J.Kaplan; V.A.Sadock『カプラン臨床精神医学テキスト DSM-5診断基準の臨床への展開』(3版)メディカルサイエンスインターナショナル、2016年5月31日、Chapt.20.1。ISBN 978-4895928526 
  2. ^ a b c 信田さよ子 1999, pp. 171–173.
  3. ^ a b c d e 春日武彦 2011, pp. 35–39.
  4. ^ 信田さよ子 1999, pp. 40–44, 173–175.
  5. ^ a b c d e f g h i j 信田さよ子 1999, pp. 175–180.
  6. ^ a b 信田さよ子 1999, pp. 168–171.
  7. ^ a b c d e f g 信田さよ子 1999, pp. 40–44.
  8. ^ a b メロディ・ビーティ 1999, pp. 68–71.
  9. ^ a b 信田さよ子 1999, pp. 40–44, 171–173.
  10. ^ a b c d e f 春日武彦 2011, pp. 126–131.
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m メロディ・ビーティ 1999, Chapt.4.
  12. ^ a b 春日武彦 2011, pp. 173–178.
  13. ^ 看護師および介護士における共依存傾向の特徴と精神的健康との関連 森秀美 桜美林大学大学院 国際学研究科 老年学専攻 2018年7月8日閲覧
  14. ^ a b c Codependents Anonymous: Patterns and Characteristics Archived 2013年8月24日, at the Wayback Machine.
  15. ^ Psychology division chief at Albert Einstein College of Medicine”. WebMD. 2014年12月5日閲覧。
  16. ^ Codependency and Borderline Personality Disorder: How to Spot It”. Clearview Women’s Center. 2014年12月5日閲覧。
  17. ^ Rappoport, Alan, PhD. Co-Narcissism: How We Adapt to Narcissistic Parents. The Therapist, 2005.
  18. ^ Simon Crompton, All About Me: Loving a Narcissist (London 2007) p. 157 and p. 235
  19. ^ Crompton, p. 31
  20. ^ Cermak, Timmen L. (1986). “Diagnostic Criteria for Codependency”. Journal of Psychoactive Drugs 18 (1): 15-20. doi:10.1080/02791072.1986.10524475. ISSN 0279-1072. PMID 3701499. 
  21. ^ Lancer, Darlene (2014), Conquering Shame and Codependency: 8 Steps to Freeing the True You, Minnesota: Hazelden, pp. 63-65, ISBN 978-1-61649-533-6 
  22. ^ a b c d Benjamin J. Sadock & Virginia A. Sadock (2000), Kaplan & Sadock's Comprehensive Textbook of Psychiatry on CD (7 ed.), Lippincott Williams & Wilkins, Codependence, ISBN 0-7817-2141-5 
  23. ^ Gomberg, Edith S Lisansky (1989). Gomberg, Edith S. ed. “On Terms Used and Abused: The Concept of 'Codependency'”. Drugs & Society 3 (3-4): 113-32. doi:10.1300/J023v03n03_05. ISBN 978-0-86656-965-1. https://books.google.co.jp/books?id=fjyJ3QWJgPQC&pg=PA113&redir_esc=y&hl=ja. 
  24. ^ Collet, L (1990). “After the anger, what then? ACOA: Self-help or self-pity?”. Family Therapy Networker 14 (1): 22-31. 


「共依存」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「共依存」の関連用語

共依存のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



共依存のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの共依存 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS