光子 光子の概要

光子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/17 06:44 UTC 版)

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光子
レーザーからのコヒーレントビームで放出される光子
組成 素粒子
グループ ゲージ粒子
相互作用 電磁力
理論化 アルベルト・アインシュタイン
記号 γ, hνまたは?ω
質量 0
<1×10−18 [[eV/c2]][1]
平均寿命 Stable[1]
電荷 0
<1×10−35 e[1]
スピン 1
パリティ ?1[1]
Cパリティ ?1[1]
凝縮対称性 I(JPC)=0,1(1??)[1]
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概要

古代から、光の本性については「光の波動説」と「光の粒子説」の2つが存在し、長い間にわたって対立していた。19世紀末ごろに電磁場に対するマックスウェルの理論ヘルツによって検証され、光の波動説は確立された。しかし、光の波動性は黒体放射のエネルギー分布を説明することができなかった。そのため、プランクは物質のエネルギー吸収・放出の性質としてエネルギー量子の概念を発表した。

ドイツの物理学者のアルベルト・アインシュタインは、光の波動説を支持しつつ、新しい光の粒子説(光量子仮説)を主張した[4]

アメリカの物理化学者ギルバート・ニュートン・ルイスは古典的な光の粒子説を採用した上で、アインシュタインと同種の領域で内容的に異なる具体的な研究成果を上記研究に1年遅れて発表した。

それぞれ微妙に異なる光の本性に関する研究が平行していたが、第一次世界大戦を経た1920年代に入ると、アーサー・コンプトンによるコンプトン効果の研究に端を発して、1926年から1927年頃にかけて、それら二つの系統は光子(photon)という名称で一応の統一がなされた[5][6]

量子論では光子は「ボース粒子」と呼ばれる分類の量子である。

物理的性質

マイケルソン・モーリーの実験によれば、真空中の光速は c である。電磁波の放射圧は、単位時間単位面積当たりの光子の運動量の転移に由来する[7]

光線中の振動数 ν の光子に対して、以下のようにエネルギー ε と運動量 p を定義することができる。これは、外部光電効果コンプトン効果の実験結果により確認されている。

1805年に行われたトーマス・ヤングの二重スリット実験は、光は波として振る舞うことを示し、初期の光の粒子説を打破した。

古代・中世を通して光は哲学者や自然を研究する学者にとって関心の的であった光の本性についての研究は、大きく「光の波動説」と「光の粒子説」の二つが存在しておりそれぞれ歴史的に対立をしていた。

ニュートン力学を完成させたアイザック・ニュートンなどは粒子説に基づくモデルを提案していたことから、18世紀までは光の粒子説が優勢に立っていた。ところが、19世紀初頭、トーマス・ヤングオーギュスタン・ジャン・フレネルが光の干渉と回折を明確に示したことから、19世紀中頃には光の波動説が優勢に立つこととなった[23]。さらに、1865年には、ジェームズ・クラーク・マクスウェルは光は電磁波の一種であると予測し、それを1888年にハインリヒ・ヘルツが実験的に確かめたことから、光の本性としての光の波動説は確定されたかのようにみなされた。

1900年、光を電磁波の振動と考えるマクスウェルの光のモデルの理論は完成したように見えた。しかし、波のモデルでは説明できないいくつかの現象が観測され、光エネルギーを量子化することによる説明に繋がった。レーザー実験は、これらの光量子が運動量も運び、粒子としても考えられることを示した。これにより「光子」という概念が生まれ、電磁場自体の理解に繋がった。

ところが、19世紀末ごろになると、黒体輻射のエネルギー分布式を理論的に求めるにあたって、光の波動説を代表するマックスウェル方程式などでは説明しきれないことが問題となり始めた。

1900年、マックス・プランクは黒体輻射のエネルギー分布式の問題点[24]を解決するにあたって、物質が放出または吸収するエネルギーは連続量とするのではなく振動数 ν に比例した有限の大きさ E =hν をもつ塊と考えるとうまく実験結果と合うと発表し[25][26]、この最小エネルギー単位をエネルギー要素(energy element)と呼んだ[25]。これはあくまで光の波動説に立ったもので、あくまで物質的な制約だと考えられた。

1905年、アルベルト・アインシュタインは、電磁波が広がる際のエネルギー配分は空間的に連続的に行われないと主張し[27]、そのエネルギー量子の大きさはその振動数に比例すると仮定すると[28]、(外部)光電効果[29]などをうまく説明することができることを示した[30][31]。アインシュタインはこれを光量子(light quantum)と呼び[32]、さらにプランクが導入した仮説を光量子仮説と名付けた[33]

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    1. ^ a b c d e f Amsler, C. et al. (Particle Data Group) (2008 +2009 partial update). “Review of Particle Physics: Gauge and Higgs bosons”. Physics Letters B 667: 1. Bibcode2008PhLB..667....1P. doi:10.1016/j.physletb.2008.07.018. http://pdg.lbl.gov/2009/tables/rpp2009-sum-gauge-higgs-bosons.pdf. 
    2. ^ この記号はおそらくガンマ線に由来する。なお、化学や光工学では、光子は通常の記号で光子のエネルギーとして表される。ここで、hプランク定数νは周波数である。また稀に周波数をfとしてhfで表されることもある。
    3. ^ ただし、波動の側面を強調する場合、現代でも光量子の用語を使うことがある。水島(1994) pp.32-33
    4. ^ C・ロヴェッリ『すごい物理学講義』河出文庫、2019年、P.148。
    5. ^ 2人の研究成果は互いに補うものようなものであり、光の本性の研究に対する貢献の大きさとしてはどちらに帰属するかどうかは確定が難しいものである。
    6. ^ なお、アインシュタインの残りの人生の大半を占めた統一場理論の探求の目的は、如何にしてマクスウェルの波の理論と実験で観測される粒子としての性質を統合するかであったと言われる。Pais, A. (1982). Subtle is the Lord: The Science and the Life of Albert Einstein. Oxford University Press. ISBN 0-19-853907-X. http://www.questia.com/PM.qst?a=o&d=74596612 
    7. ^ E.g., Appendix XXXII in Born, M. (1962). Atomic Physics. Blackie & Son. ISBN 0-486-65984-4 
    8. ^ Kobychev, V.V.; Popov, S.B. (2005). “Constraints on the photon charge from observations of extragalactic sources”. Astronomy Letters 31 (3): 147-151. arXiv:hep-ph/0411398. Bibcode2005AstL...31..147K. doi:10.1134/1.1883345. 
    9. ^ Role as gauge boson and polarization section 5.1 inAitchison, I.J.R.; Hey, A.J.G. (1993). Gauge Theories in Particle Physics. IOP Publishing. ISBN 0-85274-328-9 
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    11. ^ This property was experimentally verified by Raman and Bhagavantam in 1931: Raman, C.V.; Bhagavantam, S. (1931). “Experimental proof of the spin of the photon” (PDF). Indian Journal of Physics 6: 353. http://dspace.rri.res.in/bitstream/2289/2123/1/1931%20IJP%20V6%20p353.pdf. [リンク切れ]
    12. ^ E.g., section 1.3.3.2 in Burgess, C.; Moore, G. (2007). The Standard Model. A Primer. Cambridge University Press. ISBN 0-521-86036-9. http://books.google.com/books?id=PLYECqs2geEC&pg=PA27 
    13. ^ なぜならば、基準系重心では、衝突した反粒子は正味の運動量を持たないのに対して単一の光子は(周波数や波長がゼロにはならないため)常に運動量を持つ。そのため、運動量保存則を満たすために、正味の運動量がゼロとなる少なくとも二つの光子が生成される必要がある(ただし、陽電子が原子核中の陽子と対消滅する場合等、系が別の粒子や場と相互作用している場合は、クーロン力が並進対称性を破るため、一つの光子が生成することが可能である)。二つの光子のエネルギー(周波数)は、運動量保存則で決定される。
    14. ^ E.g., section 9.3 in Alonso, M.; Finn, E.J. (1968). Fundamental University Physics Volume III: Quantum and Statistical Physics. Addison-Wesley 
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    19. ^ Lakes, Roderic (1998). “Experimental Limits on the Photon Mass and Cosmic Magnetic Vector Potential”. Physical Review Letters 80 (9): 1826. Bibcode1998PhRvL..80.1826L. doi:10.1103/PhysRevLett.80.1826. 
    20. ^ Amsler, C; Doser, M; Antonelli, M; Asner, D; Babu, K; Baer, H; Band, H; Barnett, R et al. (2008). “Review of Particle Physics?”. Physics Letters B 667: 1. Bibcode2008PhLB..667....1P. doi:10.1016/j.physletb.2008.07.018.  Summary Table
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    23. ^ Buchwald, J.Z. (1989). The Rise of the Wave Theory of Light: Optical Theory and Experiment in the Early Nineteenth Century. University of Chicago Press. ISBN 0-226-07886-8. OCLC 18069573 
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    26. ^ a b Planck, M. (1920年). “Max Planck's Nobel Lecture”. 2012年12月8日閲覧。
    27. ^ マクスウェル方程式は電磁波の可能なすべてのエネルギーを対象とするものであったので、ほとんどの物理学者は当初、プランクのエネルギーの量子化は、放射を吸収、放出する物質の未知の制約に由来すると考えていた。しかし、アインシュタインはこのとき初めて、エネルギーの量子化は電磁放射自体の性質として提案した。
    28. ^ 特に光子モデルでは光のエネルギー周波数に依存するとし、物質と放射としての振舞いを熱平衡で説明する。また、マックス・プランクが半古典モデルで説明しようとした黒体放射の性質も説明できる。半古典モデルは量子力学の発展に貢献した。Kimble, H.J.; Dagenais, M.; Mandel, L. (1977). “Photon Anti-bunching in Resonance Fluorescence”. Physical Review Letters 39 (11): 691-695. Bibcode1977PhRvL..39..691K. doi:10.1103/PhysRevLett.39.691. 
    29. ^ 光電効果は、1887年にヘルツ及び翌1888年にドイツの物理学者ヴィルヘルム・ハルヴァックス(Wilhelm Hallwachs)によって発見された 。
    30. ^ Einstein, A. (1905). “Uber einen die Erzeugung und Verwandlung des Lichtes betreffenden heuristischen Gesichtspunkt”. Annalen der Physik 17 (6): 132-148. Bibcode1905AnP...322..132E. doi:10.1002/andp.19053220607. http://www.physik.uni-augsburg.de/annalen/history/einstein-papers/1905_17_132-148.pdf. (光の発生と変脱とに関するひとつの発見的方法について) 光量子論(1969)収録
    31. ^ Grangier, P.; Roger, G.; Aspect, A. (1986). “Experimental Evidence for a Photon Anticorrelation Effect on a Beam Splitter: A New Light on Single-Photon Interferences”. Europhysics Letters 1 (4): 173-179. Bibcode1986EL......1..173G. doi:10.1209/0295-5075/1/4/004. 
    32. ^ quanta(量子)という用語は1900年以前から、電気を含む離散量を表す用語として使われていたことから、これは次第にエネルギー量子(energy quantum)と呼ばれるようになっていた。
    33. ^ A.Einstein (1906), Zur Theorie der Lichterzeugung und Lichtabsorption, 20, pp. 199-206 (光の発生と光の吸収の理論について)光量子論(1969)収録
    34. ^ Gilbert N. Lewis (1908), “A Revision of the Fundamental Laws of Matter and Energy”, Philosophical Magazine, 6th series: 510-523 (物質とエネルギーに関する基本法則の一修正) 相対論(1969) 収録
    35. ^ 他にもアインシュタインが近似式としてしか得ていなかった公式 E=mc2 を精確な結果として導出することができた。
    36. ^ a b Einstein, A. (1909). “Uber die Entwicklung unserer Anschauungen uber das Wesen und die Konstitution der Strahlung”. Physikalische Zeitschrift 10: 817-825. http://www.ekkehard-friebe.de/EINSTEIN-1909-P.pdf. 光量子論(1969)収録
    37. ^ Einstein, A. (1916). “Zur Quantentheorie der Strahlung”. Mitteilungen der Physikalischen Gesellschaft zu Zurich 16: 47.  Also Physikalische Zeitschrift, 18, 121-128 (1917). (輻射の量子論) 光量子論(1969)収録
    38. ^ なお、"輻射の量子がエネルギーとともに方向をもった運動量を運ぶことをきわめて説得的に示す"というコンプトンの結論に対して、当初は強い反対があったが、1924年には完全に受け入れられるようになったということである。
      物理学史II(1968) pp.183-184
    39. ^ a b Compton, A. (1923). “A Quantum Theory of the Scattering of X-rays by Light Elements”. Physical Review 21 (5): 483-502. Bibcode1923PhRv...21..483C. doi:10.1103/PhysRev.21.483. http://www.aip.org/history/gap/Compton/01_Compton.html. 
    40. ^ アイザック・アシモフは、アーサー・コンプトンが1923年に光子としてのエネルギーの量子化を定義したと記している。Asimov, I. (1966). The Neutrino, Ghost Particle of the Atom. Garden City (NY): Doubleday. ISBN 0-380-00483-6. LCCN 66-3 Asimov, I. (1966). The Universe From Flat Earth To Quasar. New York (NY): Walker. ISBN 0-8027-0316-X. LCCN 66-5 
    41. ^ C・ゼーリッヒ『アインシュタインの生涯』広重 徹(訳)、1974年。 p.152 の訳注
      なお、アインシュタインはこの決定を、たまたま旅行中の船の上で聞いたと言われる。
    42. ^ Presentation speech by Svante Arrhenius for the 1921 Nobel Prize in Physics, December 10, 1922. Online text from [nobelprize.org], The Nobel Foundation 2008. Access date 2008-12-05.
    43. ^ Lewis, G.N. (1926). “The conservation of photons”. Nature 118 (2981): 874-875. Bibcode1926Natur.118..874L. doi:10.1038/118874a0. , The origin of the word "photon"
    44. ^ ただし、ルイスの光の粒子の概念は生成も破壊もされない光の原子に相当するもので、アインシュタインの光量子概念とは異なっていた。
    45. ^ :"At Compton's suggestion, the Fifth Solvey Conference on Physics in 1927 adopted Lewis's term "photon" for the particle that carried radiation, but as used it did not signify Lewis's atom of radiation but rather Einstein's quantum."
      Coffey(2008) pp.182-183から引用。なおコンプトン兄弟(アーサー・コンプトンカール・コンプトン)の内どちらの提案であるかは記載がない。
    46. ^ この定式化されたばかりの量子力学が議論されたこの第5回はソルベー会議全体の中でももっとも有名な会議である。しかしながら、主題にあげられた光子(photon)の命名を前年に行ったばかりのルイス自身は会議に招待されなかった。代わりにルイス=ラングミュアの原理で知られるアメリカの物理化学者のアーヴィング・ラングミュアが、主題の量子力学への貢献は何もないのになぜか招待された。
      Coffey(2008) p.188
    47. ^ 中村誠太郎『湯川秀樹と朝永振一郎』読売新聞社、1992年。 p.28、 田中正『湯川秀樹とアインシュタイン』岩波書店、2008年。 p.103
    48. ^ 現代物理学において、原子に対してどのような操作を加えても変化せず安定的である根拠は、この湯川の中間子論に求められる。
    49. ^ この直接的証拠とされる写真とその考え方については、有馬(1994) p.2,4 参照。
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    53. ^ Pais, A. (1982). Subtle is the Lord: The Science and the Life of Albert Einstein. Oxford University Press. ISBN 0-19-853907-X. http://www.questia.com/PM.qst?a=o&d=74596612 
    54. ^ Heisenberg, W. (1933年). “Heisenberg Nobel lecture”. 2012年12月8日閲覧。
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