僧 四分律

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/07/12 16:15 UTC 版)

四分律

中国日本台湾朝鮮等の仏教において、歴史的に広く用いられてきたである。比丘は二百五十戒を遵守する。現状において、日本では完全に僧伽が消滅しているため、律宗などで仏教上の必要から、実質的に受戒する場合、既に中国大陸では僧侶はいるが文化大革命によって正しい戒脈が途絶えてしまったため、『護戒牒』に見られるように戒脈の残る台湾等から戒師を招来する必要がある。

戒律の条項は以下の通りである。[16]

  • 波羅夷法[四ヶ条] (これを犯した場合、全ての資格と財産を剥奪された上、僧伽とあらゆる仏教教団から追放され、2年間一切の宗教活動を禁止された上、二度と僧侶となることは出来ないもの;「波羅夷罪」ともいう)
    1. 婬戒 : いかなる性行為も行なってはならない。
    2. 盗戒 : 盗心をもって与えられていないものを取ってはならない。
    3. 殺人戒 : 殺人を犯してはならない。
    4. 大妄語戒 : 未だその境地を得ていないのに悟りを得たなどと嘘をついてはならない。ただし自信過剰による思い上がりの場合は除く。また、仏教教団としての僧伽の調和を著しく乱すようなことや、そのあり方を変えてはならない。
  • 僧残法 [十三ヶ条]
  • 不定法 [二ヶ条]
  • 尼薩耆波逸提法 [三十ヶ条]
  • 波逸提法 [九十ヶ条]
  • 波羅提提舎尼法 [四ヶ条]
  • 衆学法 [百ヶ条]
  • 滅諍法 [七ヶ条]

剃髪

僧侶の規律として剃髪がある。また、剃髪した僧侶が、還俗して髪を伸ばすことは蓄髪(ちくはつ)という[注 8]。近年、浄土真宗をはじめとして、お寺以外に仕事を持っているなどで蓄髪の僧侶も見受けられるが、現代日本の伝統教団には一部を除き、平安時代以降は、教義上、具足戒を受ける習慣がなく、彼らは厳密には僧侶(比丘)ではないので問題はないとも言える。

ちなみに、『小事犍度』には、螺髻梵志(バラモン教の僧侶)は頭髪を伸ばして、それを頭の上で輪にして留めていた。しかし仏教では「僧は長髪を持すべからず。二カ月もしくは二指間は許す」と伝え、『四分律』では、「応に鬚髪を剃るべし。極長は長さ両指、もしくは二カ月に一剃する。これは極長なり」と記し、『十誦律』は、「六群比丘が髪を留めて捲かしめ、留めて長くしていた時に、髪を留めて長からしめるべからず」と説いた。ただし、人気のない静かな場所で独住して修行する林住比丘[注 9]の場合、長さ二寸(約6cm)までは無罪であるとする。[17]

そして時に諸比丘編髪螺髻に仮作して、「仏所に来指して白して言く。此は是れ頭陀端厳法なり。願わくば仏よ聴せ。仏言く、爾るべからず。此れは是れ外道の法なり。若し是の如く作せば法の如く治せ」と『四分律』は説き、螺髻は外道(バラモン教)の髪型であるので、釈尊は僧に対して禁止されたと伝えている。[18]

それと、大衆部の律には、釈尊は「四カ月に一度、剃髪をされた」[19]と伝承されている。




注釈

  1. ^ 本来は鑑真和上の戒や、その後の中国伝来の戒に繋がる真言宗真言律宗、南都六宗の律宗法相宗などは本来、具足戒を保持すべきであるが、現在はそうではない。
  2. ^ 天台宗およびそこから派生した諸宗は基本的に具足戒を伝授されない。
  3. ^ 比叡山の結界内、または特定の寺院内に篭って、そこから外に出ることを禁止し、学問と修行の完成に尽力した。
  4. ^ 浄土真宗には、開祖の親鸞が還俗したのを先例として、正式な僧はいない。現在、便宜上は僧侶と呼ばれる人々はいるが、浄土真宗では受戒はまったく行わず、形式上も、実質的にも僧ではない。
  5. ^ 特に男色の弊害を示す好例として、自らの男性遍歴を告白する文書を残した東大寺の僧侶・宗性をあげることができる
  6. ^ 「日本佛光山」の各寺院や、「東京佛光山寺」における専門学校など多数が存在する。
  7. ^ ただし、このことは僧伽(サンガ)のあり方を根底から変えることになるため、波羅夷罪に抵触する。また、伝統的な仏教において説かれる無間地獄に落ちるとされる五逆罪を犯すことにもなる。
  8. ^ 「蓄髪」は単に「髪を伸ばすこと」また「その髪型」「髪を伸ばした人」という意味もあるが、現代ではあまり使われない表現。
  9. ^ : āraññika-bhikkhu, 阿練児比丘

出典

  1. ^ a b c 平川彰「僧」 - 日本大百科全書(ニッポニカ)、小学館。
  2. ^ a b 「僧」 - 百科事典マイペディア、平凡社
  3. ^ 「サンガとは、中国語で「衆」という意味である。「戒律を守る出家者(比丘)が一処に和合すること、これをサンガというのである。」原文:「僧伽、秦に衆という。多くの比丘、一処に和合する。これを僧伽となずく」(『大智度論 』)
  4. ^ 『仏教かく始まりき』 宮元啓一 春秋社 p87
  5. ^ a b 僧伽(修行者たちの集まり=僧)の本質 - ニンマ派高僧トゥルシック・リンポチェによる「37の菩薩の実践」
  6. ^ 『円頓戒概説』(浄土宗宗務庁)、「円頓戒の道徳思想」pp.40-44、「円頓戒の授戒について」pp.59-68。
  7. ^ この時、嵯峨天皇が授けた授戒の証明書である『光定戒牒』(国宝:弘仁14年4月14日付)が比叡山に残されている。
  8. ^ 『梵網菩薩戒経』(四季社)、pp.21-23。『梵網経』(大蔵出版)、pp.75-76。
  9. ^ 『梵網菩薩戒経』(四季社)、pp.25-27。『梵網経』(大蔵出版)、pp.88-89。
  10. ^ 『梵網菩薩戒経』(四季社)、pp.30-31。『梵網戒』(大蔵出版)、pp.99-100。
  11. ^ これらの戒を破れば大乗戒の「波羅夷罪」となる。『円頓戒概説』(浄土宗宗務庁)、「円頓戒の道徳思想」p46。
  12. ^ 『末法燈明記』(安居事務所)、[引用]p9、[末法燈明記原文]pp.176-205。
  13. ^ インド仏教にはない、「終末思想」に基づく中国仏教独自の末法観を背景とした日本の緯書。最澄の死後の400年後に世に出て、出典の経名に誤りが多く誤字や脱字も見られるので、最澄に仮託されるも文献学的には「偽書」とされる。緯書としての性格から鎌倉仏教に与えた影響は大きく、法然(1133-1212)の『逆修説法』等をはじめとして、日蓮の『四信五品鈔』、親鸞(1173-1263)の『教行信証』、栄西(1141-1215)の『興禅護国論』に依用するところから、各宗派の宗学においては神聖視され、最澄の著作として疑うことを許さない。いわゆる緯書は時代の変わり目に出現し、中国では革命思想を生む切っ掛けともなったが、この書は本来の目的を離れて、日本仏教における戒律否定の大きな原因となった。
  14. ^ 『叡尊教団における戒律復興運動』、p21-41。
  15. ^ この版は明代の『大蔵経』に基づくもので、別名を『鉄眼版大蔵経』とも呼ばれる。
  16. ^ 戒律の条項については、真言宗泉涌寺派大本山 法楽寺HP [1]を参照した。
  17. ^ 「仏在王舎城。(…)爾時六群比丘。留髪令長。仏言。不応留髪令長。若留者突吉羅。若阿練児比丘長至二寸無罪。」(『十誦律』巻第三十七)
  18. ^ 「時諸比丘。仮作編髪螺髻。来指仏所白言。此是頭陀端厳法。願仏聴。仏言不応爾。此是外道法。若作如是如法治。(『四分律』巻第四十)」
  19. ^ 「復次仏住舎衛城。広説如上。爾時世尊四月一剃髪。世人聞仏剃髪故。送種種供養」(『摩訶僧祇律』十八)






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