健康 健康権

健康

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/20 23:15 UTC 版)

健康権

世界保健機関は1948年の憲章にて、「達成可能な最上級の健康水準を楽しむことは、人種、信条、政治理念、経済的社会的状況に関わらず、全人類の基本的権利の1つである」と宣言している[17]。1966年の国連総会で採択された経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)では、健康権(Right to health)は「達成できる最高水準の身体的精神的健康」であると説明されており、政府の義務は、健康の前提条件の整備と医療の提供の両方からなると理解される[18]

以下は、A規約で健康権を説明するとされる第12条である。

第12条

  1. この規約の締約国は、すべての者が到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利を有することを認める。
  2. この規約の締約国が1の権利の完全な実現を達成するためにとる措置には、次のことに必要な措置を含む。
    1. 死産率及び幼児の死亡率を低下させるための並びに児童の健全な発育のための対策
    2. 環境衛生及び産業衛生のあらゆる状態の改善
    3. 伝染病風土病職業病その他の疾病の予防、治療及び抑圧
    4. 病気の場合にすべての者に医療及び看護を確保するような条件の創出
—  経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約

1980年に日弁連は、健康権について「憲法の基本的人権に由来し、すべての国民に等しく全面的に保障され、なにびともこれを侵害することができないものであり、本来、国・地方公共団体、さらには医師・医療機関等に対し積極的にその保障を主張することのできる権利である」としている[19]

1980年代から、国際連合などいくつかの団体は、健康と人権との関係から、その国際的責任は、別々ではなく、1つのものであると認識するようになってきている[20]。1994年の国際人口開発会議 (ICPD) と世界女性会議 (WCW) の協議文書は、国際合意文書上で健康と人権の具体的なつながりを認め、また健康と人権について政府は二重の責任を負うということを示した[21]。1990年代後半以降、健康権の法的内容・構造や国家の義務が検討され、2000年代に入ってからはその保障に向けた国際的メカニズムも徐々に構築されている[22][23]

国際連合人権理事会は、到達可能な最高水準の身体的及び精神的健康を享受する権利に関する国連特別報告者を任命し、2002年から2008年8月までポール・ハントが務めた[24]


  1. ^ OECD 2013, Chapt.1.9.
  2. ^ 広辞苑 第五版
  3. ^ ブリタニカ国際大百科事典、世界大百科事典、日本大百科全書(ニッポニカ)、世界大百科事典 コトバンク. 2020年10月13日閲覧。
  4. ^ 世界保健機関憲章(世界保健機関)
  5. ^ Health Hum Rights. 1994 Fall;1(1):24-56. The right to health in international human rights law.
  6. ^ Health Hum Rights. 1999;4(1):6-25. The right to health fifty years on: still skeptical?
  7. ^ Toebes B. The Right to Health as a Human Right in International Law (1999) Antwerpen
  8. ^ WHO憲章における「健康」の定義の改正案について(厚生労働省報道発表資料)
  9. ^ WHO憲章における「健康」の定義の改正案のその後について (第52回WHO総会の結果)(厚生労働省報道発表資料)
  10. ^ 「健康」の再定義(世界保健機関)
  11. ^ なにが健康を決定しているのか? Archived 2005年9月8日, at the Wayback Machine.(カナダ公衆衛生機関)[リンク切れ]
  12. ^ a b 健康の社会的決定要因: ソリッドファクツ(世界保健機関)
  13. ^ 健康づくりのためのオタワ憲章PDF形式 Archived 2009年7月27日, at the Wayback Machine.(世界保健機関)
  14. ^ 杉田秀二郎 (1994). “個人の健康観と生き方の類型との関連”. 健康心理学研究 (日本健康心理学会) 7 (1): 35-46. doi:10.11560/jahp.7.1_35. 
  15. ^ a b 池田理知子・五十嵐紀子(編)『よくわかるヘルスコミュニケーション』 ミネルヴァ書房 <やわらかアカデミズム<わかる>シリーズ> 2016年、ISBN 978-4-623-07786-1 pp.128-129.
  16. ^ 「21世紀における国民健康づくり運動」におけるヘルスプロモーション(財団法人健康・体力づくり事業財団)
  17. ^ 世界保健機関憲章(世界保健機関)
  18. ^ 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)外務省
  19. ^ 人権擁護大会宣言・決議集 Subject:1980-11-08「健康権」の確立に関する宣言 Archived 2010年2月28日, at the Wayback Machine.(日本弁護士連合会)
  20. ^ Health and human rights. Health Hum Rights. 1994 Fall;1(1):6-23. PMID 10395709
  21. ^ 国際人口開発会議報告書の第IV章から第VII章、第4回世界女性会議の第IV(C)章の‘Women and health’と第IV(I)章‘Human rights of women’
  22. ^ ポール・ハント「到達可能な最高水準の健康に対する権利——その機会と課題」松田 亮三・棟居 徳子 編『健康権の再検討──近年の国際的議論から日本の課題を探る』”. www.ritsumei-arsvi.org. 立命館大学生存学研究センター. 2018年10月28日閲覧。
  23. ^ 棟居徳子「日本における健康権保障の状況 〜健康権の指針を参考に〜 」”. www.hurights.or.jp. ヒューライツ大阪(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター). 2018年10月28日閲覧。
  24. ^ ポール・ハント(Paul Hunt)氏のご紹介 – 立命館大学生存学研究センター”. www.ritsumei-arsvi.org. 2018年10月28日閲覧。
  25. ^ a b c d e Harvard Health” (英語). www.health.harvard.edu. 2021年11月16日閲覧。
  26. ^ MPH, Monique Tello, MD (2019年6月12日). “Brain health rests on heart health: Guidelines for lifestyle changes” (英語). Harvard Health. 2021年11月16日閲覧。
  27. ^ Boston, 677 Huntington Avenue (2012年3月1日). “Eating white rice regularly may raise type 2 diabetes risk” (英語). News. 2021年11月16日閲覧。
  28. ^ Staff, Harvard Health Publishing (2011年9月14日). “Harvard to USDA: Check out the Healthy Eating Plate” (英語). Harvard Health. 2021年11月16日閲覧。
  29. ^ MPH, Monique Tello, MD (2018年6月29日). “Intermittent fasting: Surprising update” (英語). Harvard Health. 2021年11月16日閲覧。
  30. ^ a b MD, Wynne Armand (2021年8月13日). “Air pollution: How to reduce harm to your health” (英語). Harvard Health. 2021年11月16日閲覧。






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