保湿剤 保湿剤の概要

保湿剤

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/23 02:17 UTC 版)

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健康な若者の皮膚では、人体から出る皮脂が一種の保湿剤として機能している。だが、加齢に伴い誰にでも老人性乾皮症は起きるし[2]、秋から冬にかけての乾燥する季節には誰でも(若者であろうが、健康であろうが)乾燥皮膚となる傾向があるので、これらの乾皮症が悪化して皮脂欠乏性湿疹となることのないように、広く保湿剤を用いたケアが行われている[2]

保湿剤は実に多種多様で、解説本ではたいていは数十種類、多いものでは数百種類も挙げられている。古くから身近なものも保湿剤として活用されており、たとえば、植物油が用いられてきた歴史があり、古代エジプトの王妃がごま油を塗ってもらっている場面が描かれた玉座もある(→#歴史)。なお植物油は含有する脂肪酸の種類や量によって副次的な効果が異なる。→#種類・分類で解説。

ヒューメクタントは天然保湿因子 (NMF) を補って保湿作用を持つものであり、たとえば尿素ヘパリン類似物質の含有製品がある[3]エモリエント[4] (emollients、皮膚軟化剤) は、油脂の膜を作ることで水分の蒸発を防ぎまた角質層を軟化させるものであり、たとえばワセリンがある[3]

もとの英語(日本語ではカタカナで表記するもの)が複数あり、そもそもどう呼ぶのが正式なのか、あるいはどれも正しいのか、やや混乱ぎみなので、最初に解説しておくと、モイスチャライザー (moisturizer) の用語の定義に関する、国際的な合意はないが、肌を潤すための販売促進目的で使われてきた。エモリエント (emollients) は、よく同義語とされるが、脂質が構成成分になっており角質間細胞を満たして水分保持を促し、皮膚を滑らかに柔軟にする。ヒューメクタント[4] (humectant) は、吸湿性の物質で角質層に水分を吸収する。オクルーシブ (Occlusive、定訳見つからず、閉塞作用[5])は油が原料で疎水性の膜を形成して水分蒸発を抑える。[6]

保湿の役割

皮脂は、大部分がトリグリセリドワックスエステルスクアレンから構成され、角質層を覆っている[7]。皮脂の分泌の減少は、一般に女性20代後半、男性50代に始まる[8]

角質層では、天然保湿因子であるアミノ酸、ピロリドンカルボン酸、乳酸(また尿素[7])が水分を蓄えており、角質細胞を覆う脂質(角質細胞間脂質)がそれらの流出・蒸発を抑えている[9]。ローションは角質層を通過しにくいが、角質層がない場合クリームよりローションの方が保湿効果がある[3]

つまり皮脂、天然保湿因子、角質細胞間脂質によって皮膚は水分を保持しており、その中で皮脂の役割は小さいという指摘もある[7]

は自然な保湿剤だが、アトピー性皮膚炎では汗のかきすぎも皮膚に良くないことがあり、特に乾燥肌では足湯によって発汗機能を回復し水分を保持できるような保湿剤が良い[10]

種類・分類

分類法はいくつもある。下に示す。

植物油の内の種類、脂肪酸による分類、効果の分類

植物油は、人での研究は豊富ではないが、抗炎症成分が含まれ、水分を保持し閉塞機能があるため、伝統的に使用されてきており、オリーブ油ヒマワリ油グレープシードオイルヤシ油ココナッツ油)、ベニバナ種子油、アルガン油大豆油ピーナッツ油ゴマ油アボカド油、ルリジサ油、ホホバオイル、オートムギ油、ザクロ種子油、アーモンドオイル、ビターアプリコットオイル、ローズヒップオイル、ジャーマン・カモミール、シアバターといったものがある[11]。またパーム油も。

なお植物油の種類によって含有する脂肪酸の割合が異なる。(それによって保湿剤としての機能以外の面、それ以外の広い意味での皮膚バリア機能への効果は、種類により異なり、実際に使用する場合は、単純に保湿機能だけに注目するだけでなく、肌ケア全体を考慮する必要があるので、そうした包括的な視点も含めて解説すると)リノール酸は皮膚バリア機能を形成修復する[6]。一方、オレイン酸皮膚バリア機能を破壊し、連続的に塗ると(つまり使い続けると)炎症を誘発しうる[11]。(オリーブオイルは欧米などで広く保湿剤として用いられているが、使いつづけると)オレイン酸の比率が高いので、皮膚バリア機能 を/は 悪化させる可能性がある[6]
エモリエント / ヒューメクタント / オクルーシブ、と分類する方法


保湿剤の物体的な性質、形状によって分類する方法

上記の成分を配合してつくられた保湿剤は多い[6]。(つまり複数の材料・成分を混ぜてつくられる保湿剤は多い)

薬剤師によると、液状のものでも、ローションタイプと、スプレータイプ(化粧水をスプレーするタイプ、泡状のスプレータイプ)がある、ということである[13]

口腔保湿剤

保湿剤と言うと、一般には、手・腕・足・脚・胴・首・顔などの外皮に塗るものを言うが、特に口腔つまり口の中に用いるものもあり、それは特に「口腔保湿剤」と分類する。

ジェル、リキッド、スプレーの順に維持力があり、粘度はジェルでやや大きい[14]




  1. ^ a b Lexico, moisturizer
  2. ^ a b c d 東北大学大学院皮膚科 菊地克子「 外用剤を知り皮膚外用療法の達人を目指す保湿剤・保護剤」(第117回日本皮膚科学会総会⑬教育講演40-4)
  3. ^ a b c d e 大谷道輝「外用剤の適正使用の問題点 保湿剤を中心として」『日本香粧品学会誌』第38巻第2号、2014年、 96-102頁、 doi:10.11469/koshohin.38.96NAID 130005089547
  4. ^ a b 化粧品用語解説 > 保湿とエモリエント”. 日本化粧品工業連合会. 2018年12月10日閲覧。
  5. ^ 酒井裕二、鈴木将史、小原康弘「高い保水効果と高い閉塞効果を同時に有するエマルションの開発について」『日本化粧品技術者会誌』第40巻第2号、2006年、 95-103頁、 doi:10.5107/sccj.40.95NAID 130004188914
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q Purnamawati S, Indrastuti N, Danarti R, Saefudin T (December 2017). “The Role of Moisturizers in Addressing Various Kinds of Dermatitis: A Review”. Clin Med Res (3-4): 75–87. doi:10.3121/cmr.2017.1363. PMC: 5849435. PMID 29229630. https://doi.org/10.3121/cmr.2017.1363. 
  7. ^ a b c 河野善行「保湿・肌荒れ防止用化粧品の有用性と製品開発」『日本化粧品技術者会誌』第36巻第4号、2002年、 253-261頁、 doi:10.5107/sccj.36.253NAID 130004188849
  8. ^ a b c d e f g 岡野由利「スキンケア化粧品のコンセプトの変化 角層を保湿することの重要性」『日本化粧品技術者会誌』第50巻第2号、2016年、 91-97頁、 doi:10.5107/sccj.50.91NAID 130005464692
  9. ^ a b c 岡本亨「高保湿スキンケア製剤の処方設計の考え方」『日本化粧品技術者会誌』第50巻第3号、2016年、 187-193頁、 doi:10.5107/sccj.50.187NAID 130005464866
  10. ^ Shiohara T, Mizukawa Y, Shimoda-Komatsu Y, Aoyama Y (October 2018). “Sweat is a most efficient natural moisturizer providing protective immunity at points of allergen entry”. Allergol Int (4): 442–447. doi:10.1016/j.alit.2018.07.010. PMID 30181012. https://doi.org/10.1016/j.alit.2018.07.010. 
  11. ^ a b Lin TK, Zhong L, Santiago JL (December 2017). “Anti-Inflammatory and Skin Barrier Repair Effects of Topical Application of Some Plant Oils”. Int J Mol Sci (1). doi:10.3390/ijms19010070. PMC: 5796020. PMID 29280987. http://www.mdpi.com/1422-0067/19/1/70/htm. 
  12. ^ Celleno L (November 2018). “Topical urea in skincare: A review”. Dermatol Ther (6): e12690. doi:10.1111/dth.12690. PMID 30378232. 
  13. ^ JCHO東京高輪病院薬剤師 清水勇樹「保湿剤の種類と使い方について
  14. ^ 山垣和子、北川昇、佐藤裕二、岡根百江、真下純一「口腔保湿剤の物性と義歯の維持力との関係」『老年歯科医学』第26巻第4号、2012年、 402-411頁、 doi:10.11259/jsg.26.402NAID 130004553373
  15. ^ 日本皮膚科学会、日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会「手湿疹診療ガイドライン」『日本皮膚科学会雑誌』第128巻第3号、2018年、 367-386頁、 doi:10.14924/dermatol.128.367NAID 130006516356
  16. ^ 海老原全「皮膚バリア機能からみたアトピー性皮膚炎の治療」『アレルギー』第63巻第6号、2014年、 758-763頁、 doi:10.15036/arerugi.63.758NAID 110009818440
  17. ^ a b Giam YC, Hebert AA, Dizon MV, et al. (April 2016). “A review on the role of moisturizers for atopic dermatitis”. Asia Pac Allergy (2): 120–8. doi:10.5415/apallergy.2016.6.2.120. PMC: 4850335. PMID 27141486. https://doi.org/10.5415/apallergy.2016.6.2.120. 
  18. ^ a b c d e Hon KL, Kung JSC, Ng WGG, Leung TF (2018). “Emollient treatment of atopic dermatitis: latest evidence and clinical considerations”. Drugs Context: 212530. doi:10.7573/dic.212530. PMC: 5908267. PMID 29692852. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/pmid/29692852/. 
  19. ^ 海老島優子、末廣豊、岡藤郁夫ほか「アトピー性皮膚炎に効果的なスキンケアは? 入浴, 体の洗い方、石けんの使用、保湿剤について考える」『日本小児アレルギー学会誌』第30巻第1号、2016年、 75-83頁、 doi:10.3388/jspaci.30.75NAID 130005152170
  20. ^ 大谷道輝、松元美香、野澤茜 ほか「ステロイド軟膏と保湿剤の併用による塗布順序が及ぼす局所および全身性副作用への影響」『日本皮膚科学会雑誌』第123巻第14号、2013年、 3117-3122頁、 doi:10.14924/dermatol.123.3117NAID 130004702056
  21. ^ 公益社団法人日本皮膚科学会、一般社団法人日本アレルギー学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018」『日本皮膚科学会雑誌』第128巻第12号、2018年、 2458頁、 doi:10.14924/dermatol.128.2431NAID 130007520766
  22. ^ Seborrheic Dermatitis: Tips for Managing”. American Academy of Dermatology. 2018年12月10日閲覧。
  23. ^ a b Dawson TL (December 2007). “Malassezia globosa and restricta: breakthrough understanding of the etiology and treatment of dandruff and seborrheic dermatitis through whole-genome analysis”. J. Investig. Dermatol. Symp. Proc. (2): 15–9. doi:10.1038/sj.jidsymp.5650049. PMID 18004291. https://doi.org/10.1038/sj.jidsymp.5650049. 
  24. ^ Moisturizer: Why you may need it if you have acne”. American Academy of Dermatology. 2018年12月20日閲覧。
  25. ^ Chularojanamontri L, Tuchinda P, Kulthanan K, Pongparit K (May 2014). “Moisturizers for Acne: What are their Constituents?”. J Clin Aesthet Dermatol (5): 36–44. PMC: 4025519. PMID 24847408. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4025519/. 


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