伊勢物語とは?

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伊勢物語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/15 02:30 UTC 版)

伊勢物語』(いせ ものがたり)とは、平安時代に成立した日本歌物語[2][3][4][5][6][7][8]。全1巻。平安時代初期に実在した貴族である在原業平を思わせる男を主人公とした和歌にまつわる短編歌物語集[6]で、主人公の恋愛を中心とする一代記的物語[3][5]でもある。主人公の名は明記されず、多くが「むかし、男(ありけり)」の冒頭句を持つ[2]ことでも知られる。作者不詳。平安時代のうちの具体的な成立年代も不詳で、初期、西暦900年前後[8]、前期[4][7][8]、(現在のような形になったのが)中期[3][5][6]などの説がある。名称については後述する。


注釈

  1. ^ 東下りの途上にある男(※主人公)の一行は武蔵国下総国の間を流れる隅田川を船で渡る。果てしなく遠くまで来たものだと皆が心細さを感じつつ都を恋しく思っていると、鴨(かもほどの大きさの鳥が水面を気ままに泳ぎながら魚を獲っているのが見えた。都では見ない鳥なので船頭にその名を訊いてみると、「都鳥(みやこどり」だという。そこで男は次のように詠んだ。
     原 文 》 名にしおはは いさこととはむ みやことり わかおもふ人は ありやなしやと
    書き下し文》 名にし負はば いざこと問はむ 都鳥みやこどり 我が思ふ人は 有りや無しやと
    口語解釈例》 その名を持つからには[さぞや都の事情に詳しいのだろうから、]さあ尋ねよう、都鳥よ。[やむなく都に残してきた]私が恋い慕う人は無事でいるのかいないのかと。
    それを聴いて船に乗っている人は一人残らず泣いてしまった。
  2. ^ ただしの『井筒』では、この段の主人公は業平と同一視される。
  3. ^ この点が、同じく歌物語に属すとされながら、実在人物へのゴシップ的興味を前面に押し出している『大和物語』との顕著な相違点である。
  4. ^ 伊勢物語の重要な材料の一つに業平の歌集があったことは想定される。しかし明らかに『古今和歌集』との関係が強い章段も見られ、業平歌集と『伊勢物語』とは、一応別物であって単に筆を加えた物ではなく小説として書かれているのであり、古来根強く云われた業平の作という説は、近年[いつ?]は通用していない。[13]
  5. ^ 在原業平一門、源融を中心とする歌人仲間、伊勢、紀貫之等が擬せられている[14]折口信夫(歌人・釈迢空)等は貫之作者説をとっていた。
  6. ^ ただし、北村季吟は『枕草子春曙抄』で、これを『伊勢物語』第84段の「しはすばかりにとみのこととて御ふみあり」に関連付けて解釈し、「急用」の意であるとしている[16]
  7. ^ 根源本奥書に「…後人以狩使事、書此物語之端。其本、殊狼藉左道物也。更不可用之」(九州大学所蔵伝為家筆本)とあり、また根源本によっては「伊行所為也」ともある。「伊行」とは藤原伊行のことで、この藤原伊行が「狩使本」の流布に関わっているという主張であるが、その真偽については定かではない。
  8. ^ ただし現在、東京国立博物館には『伊勢物語絵巻』三巻(摸本)が所蔵されているが、本来20段ほどのその章段の順序は125段本とは大きく相違し、冒頭には狩の使の段(69段)を置くことから、現存しない「狩使本」をもとにしているのではないかといわれている[20][21][22]。この絵巻は江戸時代の狩野派の絵師、狩野養信らによる摸本であるが、その原本は鎌倉時代に遡るものとされる[23][24][25]

出典

  1. ^ 山下-春章, 07 と[09] MFA ※良質画像もあり.
  2. ^ a b c d e 小学館『デジタル大辞泉』. “伊勢物語”. コトバンク. 2020年5月26日閲覧。
  3. ^ a b c d e f 三省堂大辞林』第3版. “伊勢物語”. コトバンク. 2020年5月26日閲覧。
  4. ^ a b c d e f 平凡社百科事典マイペディア』. “伊勢物語”. コトバンク. 2020年5月26日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g 旺文社『旺文社日本史事典』. “伊勢物語”. コトバンク. 2020年5月26日閲覧。
  6. ^ a b c ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』. “伊勢物語”. コトバンク. 2020年5月26日閲覧。
  7. ^ a b c d 鈴木日出男、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “伊勢物語”. コトバンク. 2020年5月26日閲覧。
  8. ^ a b c d 日立デジタル平凡社世界大百科事典』第2版. “伊勢物語”. コトバンク. 2020年5月26日閲覧。
  9. ^ a b c d e f 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “在五物語”. コトバンク. 2020年5月26日閲覧。
  10. ^ 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “伊勢物語”. コトバンク. 2020年5月26日閲覧。
  11. ^ 勢語”. コトバンク. 2020年5月26日閲覧。
  12. ^ 河地修 (2010年8月24日). “第12回『伊勢物語』作品論のために(一)- 伊勢物語論のための草稿的ノート”. 個人(研究者)ウェブサイト. 2020年5月27日閲覧。
  13. ^ 大津 1982 [要ページ番号]
  14. ^ 参考:雨海 1987 [要ページ番号]
  15. ^ 山下-春章, 30 ま[82] LACMA ※良質画像もあり.
  16. ^ a b c d 小学館『精選版 [本国語大辞典』. “僻の物語”. コトバンク. 2020年5月27日閲覧。
  17. ^ 三省堂『大辞林』第3版. “井筒業平河内通”. コトバンク. 2020年5月27日閲覧。
  18. ^ 日立デジタル平凡社『世界大百科事典』第2版、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “競伊勢物語”. コトバンク. 2020年5月27日閲覧。
  19. ^ 高樹のぶ子さん×林望さん 伊勢物語と源氏物語の魅力 小説「業平」刊行 いま古典を読む意義語り合う日本経済新聞』電子版(2020年6月12日)2020年8月6日閲覧
  20. ^ 山田 1966 [要ページ番号]
  21. ^ 伊藤 1984 [要ページ番号]
  22. ^ 田口 2003 [要ページ番号]
  23. ^ 山田 1966 [要ページ番号]
  24. ^ 伊藤 1984 [要ページ番号]
  25. ^ 田口 2003 [要ページ番号]
  26. ^ 勢語臆断”. コトバンク. 2020年5月27日閲覧。






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