仙台臨海鉄道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/29 09:35 UTC 版)
歴史
仙台市の臨海部に貨物鉄道を敷設する構想は1962年(昭和37年)に始まる。この年に宮城県が策定した「新産業都市仙台湾臨海地域開発計画」の中で、開発予定地である沿岸部と内陸部を結ぶ鉄道路線の建設が盛り込まれ、宮城県と国鉄が協議を始めた[5]。
この構想段階においては、臨海鉄道と国鉄線との接続について二つの案が検討された。一つは東北本線貨物支線の宮城野駅から分岐する形で新線を建設するもので、もう一つは東北本線の陸前山王駅から分岐する形で線路を敷設するものだった。太平洋戦争中に多賀城には海軍工廠[6]があり、陸前山王駅からここへ向けて軍用線が引き込まれていた。臨海鉄道の陸前山王駅分岐案はこの軍用線跡地を活用するものであり、検討された結果この陸前山王駅分岐案が採用されることになった[5]。
1970年(昭和45年)に宮城県や国鉄、建設中である仙台港に進出を予定している各企業の出資により仙台臨海鉄道株式会社が発足し、この年のうちに鉄道の建設工事が始まった。仙台港については1967年(昭和42年)から建設工事が行われており、1971年(昭和46年)の7月に開港を迎えた。仙台臨海鉄道はまず東北石油仙台製油所に対応するために、この年の10月から臨海本線を開業して営業を始めた。次いで、仙台港の公共埠頭整備に合わせて1975年(昭和50年)9月に仙台埠頭線が開業し、また、キリンビール仙台工場の仙台港への移転に伴って1983年(昭和58年)4月に仙台西港線が営業を開始した[5]。
仙台臨海鉄道は貨物専業の鉄道事業者であるが、何度か期間限定で旅客営業を行った。1987年(昭和62年)に仙台西港駅付近で開催された「'87未来の東北博覧会」では、仙台駅と仙台臨海鉄道に臨時に設置された東北博覧会前駅との間を旅客列車が往復した[5]。このうち一部の列車は西日本旅客鉄道(JR西日本)から借用した蒸気機関車(C56 160号機)を使って運行された。また1997年(平成9年)に仙台西港駅付近で開催された「国際ゆめ交流博覧会」でも同様に、仙台駅と臨時に設置されたゆめ交流博前駅との間を旅客列車が往復した。なお、2018年(平成30年)9月に仙台埠頭駅 - 松島駅間で運行された、仙台港に寄港するクルーズ船客を運ぶ臨時のアクセス列車は、東日本旅客鉄道(JR東日本)が第二種鉄道事業者の許可を受けて事業主体となった[7]。
年表
- 1970年(昭和45年)11月7日 - 会社設立(資本金3億5000万円)[1]。
- 1971年(昭和46年)
- 1975年(昭和50年)9月1日 - 仙台埠頭線が開業[8]。
- 1983年(昭和58年)4月1日 - 仙台西港線が開業。
- 1988年(昭和63年)3月13日 - コンテナ輸送開始。
- 1998年(平成10年)4月1日 - 海上コンテナ輸送開始。
- 2011年(平成23年)
- 2012年(平成24年)
- 2018年(平成30年)
- 5月7日 - 吹田貨物ターミナル駅 - 郡山貨物ターミナル駅 - 仙台港駅間で西濃運輸専用貨物列車「カンガルーライナーSS60」の運転を開始[12][13]。
- ^ a b 会社総鑑 未上場会社版 1997年版 下巻, 日本経済新聞社, (1997-05-20)
- ^ a b c d e f g “第49期決算公告”. 仙台臨海鉄道株式会社. 2019年7月25日閲覧。
- ^ 鉄道統計年報平成29年度版 - 国土交通省
- ^ 令和元年度鉄道要覧
- ^ a b c d 『仙台市史』通史編9(現代2)253-254頁。
- ^ 現在は陸上自衛隊多賀城駐屯地などの敷地になっている。
- ^ 「<JR東>仙台港直通の特別列車、9月運行 仙台臨海鉄道の貨物線に乗り入れ、クルーズ船誘致へ弾み」『河北新報』河北新報社、2018年7月26日。2020年3月25日閲覧。オリジナルの2018年7月25日時点におけるアーカイブ。
- ^ 「仙台臨海鉄道 埠頭線が開業」『交通新聞』交通協力会、1975年9月3日、1面。
- ^ 被災した物流現場を歩く(1) 仙台港―仙台臨海鉄道(株式会社青山ロジスティクス総合研究所)
- ^ a b 仙台臨海鉄道 復旧作業始まる(NHKニュース 2011年4月19日)
- ^ a b c 『交通新聞』2012年9月10日
- ^ 西濃運輸株式会社様 専用列車の運転について - 仙台臨海鉄道、2018年7月3日
- ^ 一部貸切専用列車 出発式が行われました - 西濃運輸、2018年5月10日
- ^ 機関車諸元 秋田臨海鉄道
- ^ “仙台臨海鉄道が導入したDE65 3が活躍中”. 鉄道ファン railf.jp. 交友社 (2020年6月8日). 2020年7月1日閲覧。
- ^ “DE65-3号機の導入について”. 仙台臨海鉄道株式会社 (2020年5月22日). 2020年7月1日閲覧。
- ^ “SD55-105号機のラストランについて”. 仙台臨海鉄道 (2021年3月24日). 2021年4月2日閲覧。
- ^ a b c “仙台臨海鉄道(株)への機関車譲渡”. 秋田臨海鉄道 (2021年3月1日). 2021年3月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年3月12日閲覧。
- ^ 藤岡雄一「臨海鉄道を楽しむ」『鉄道ピクトリアル』1993年3月号(No.572)pp.18-23
- ^ 『鉄道ピクトリアル』1997年9月号(No.642)p.78
- ^ 『鉄道ダイヤ情報』1999年3月号(No.179)pp.24-25・pp.35-36
- ^ 『鉄道ピクトリアル』2003年3月号(No.739)p.37
- ^ 物流政策における臨海鉄道の意義 - 福田晴仁(大阪経済大学教授)、2006年9月
- ^ 平成30年度 安全報告書 仙台臨海鉄道
- ^ 共栄物産株式会社公式サイト(2024年1月11日閲覧)
- ^ 『ビジュアル訪ね歩きガイド にっぽんの臨海鉄道&私鉄貨物 最新版』 イカロス出版、2023年、pp.10-19
- ^ 交友社『鉄道ファン』1997年10月号 通巻438号 p.112
- ^ 「モハユニ」『RAIL FAN』第51巻第12号、鉄道友の会、2004年12月号、26頁。
- ^ 『鉄道ピクトリアル』2000年8月号(No.689)p.96
固有名詞の分類
- 仙台臨海鉄道のページへのリンク