五行思想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/28 07:20 UTC 版)
五行の関係
五行の互いの関係には、「相生」「相剋」「比和」「相乗」「相侮」という性質が付与されている[8]。
相生(そうじょう)
順送りに相手を生み出して行く、陽の関係。
- 木生火(もくしょうか)
- 木は燃えて火を生む。
- 火生土(かしょうど)
- 物が燃えればあとには灰が残り、灰は土に還る。
- 土生金(どしょうきん/どしょうごん)
- 鉱物・金属の多くは土の中にあり、土を掘ることによってその金属を得ることができる。
- 金生水(きんしょうすい/ごんしょうすい)
- 金属の表面には凝結により水が生じる。
- 水生木(すいしょうもく)
- 木は水によって養われ、水がなければ木は枯れてしまう。
相剋(そうこく)
相手を打ち滅ぼして行く、陰の関係。
- 木剋土(もっこくど)
- 木は根を地中に張って土を締め付け、養分を吸い取って土地を痩せさせる。
- 火剋金(かこくきん/かこくごん)
- 火は金属を熔かす。
- 土剋水(どこくすい)
- 土は水を濁す。また、土は水を吸い取り、常にあふれようとする水を堤防や土塁等でせき止める。
- 金剋木(きんこくもく/ごんこくもく)
- 金属製の斧や鋸は木を傷つけ、切り倒す。
- 水剋火(すいこくか)
- 水は火を消し止める。
元々は「相勝」だったが、「相生」と音が重なってしまうため、「相克」・「相剋」となった。「克」には戦って勝つという意味があり、「剋」は「克」にある戦いの意味を強調するために刃物を表す「刂」を「克」に付加した文字である。同様に克に武器を意味する「寸」を加えた尅を使うこともある。
比和(ひわ)
同じ気が重なると、その気は盛んになる。その結果が良い場合にはますます良く、悪い場合にはますます悪くなる。
相侮(そうぶ)
逆相剋。侮とは侮る、相剋の反対で、反剋する関係にある。
- 木虚土侮
- 木自身が弱いため、土を克制することができず、逆に土が木を侮る
- 土侮木
- 土が強すぎると、木の克制を受け付けず、逆に土が木を侮る
- 火虚金侮
- 火自身が弱いため、金を克制することができず、逆に金が火を侮る
- 金侮火
- 金が強すぎると、火の克制を受け付けず、逆に金が火を侮る
- 土虚水侮
- 土自身が弱いため、水を克制することができず、逆に水が土を侮る
- 水侮土
- 水が強すぎると、土の克制を受け付けず、逆に水が土を侮る
- 金虚木侮
- 金自身が弱いため、木を克制することができず、逆に木が金を侮る
- 木侮金
- 木が強すぎると、金の克制を受け付けず、逆に木が金を侮る
- 水虚火侮
- 水自身が弱いため、火を克制することができず、逆に火が水を侮る
- 火侮水
- 火が強すぎると、水の克制を受け付けず、逆に火が水を侮る
相乗(そうじょう)
乗とは陵辱する、相剋が度を過ぎて過剰になったもの。
- 木乗土
- 木が強すぎて、土を克し過ぎ、土の形成が不足する。
- 土虚木乗
- 土自身が弱いため、木剋土の力が相対的に強まって、土がさらに弱められること。
- 火乗金
- 火が強すぎて、金を克し過ぎ、金を完全に熔解する。
- 金虚火乗
- 金自身が弱いため、火剋金の力が相対的に強まって、金がさらに弱められること。
- 土乗水
- 土が強すぎて、水を克し過ぎ、水を過剰に吸収する。
- 水虚土乗
- 水自身が弱いため、土剋水の力が相対的に強まって、水がさらに弱められること。
- 金乗木
- 金が強すぎて、木を克し過ぎ、木を完全に伐採する。
- 木虚金乗
- 木自身が弱いため、金剋木の力が相対的に強まって、木がさらに弱められること。
- 水乗火
- 水が強すぎて、火を克し過ぎ、火を完全に消火する。
- 火虚水乗
- 火自身が弱いため、水剋火の力が相対的に強まって、火がさらに弱められること。
相剋と相生
相剋の中にも相生があると言える。例えば、土は木の根が張ることでその流出を防ぐことができる。水は土に流れを抑えられることで、谷や川の形を保つことができる。金は火に熔かされることで、刀や鋸などの金属製品となり、木は刃物によって切られることで様々な木工製品に加工される。火は水によって消されることで、一切を燃やし尽くさずにすむ。
逆に、相生の中にも相剋がある。木が燃え続ければ火はやがて衰え、水が溢れ続ければ木は腐ってしまい、金に水が凝結しすぎると金が錆び、土から鉱石を採りすぎると土がその分減り、物が燃えた時に出る灰が溜まり過ぎると土の処理能力が追いつかなくなる。
森羅万象の象徴である五気の間には、相生・相剋の2つの面があって初めて穏当な循環が得られ、五行の循環によって宇宙の永遠性が保証される。
相生相剋には主体客体の別があるため、自らが他を生み出すことを「洩」、自らが他から生じることを「生」、自らが他を剋することを「分」、自らが他から剋されることを「剋」と細かく区別することがある。
- ^ 《台日大辭典》、小川尚義
- ^ 小柳司気太『道教概論』世界文庫刊行会、1923年、26頁。
- ^ 井上聰『古代中国陰陽五行の研究』翰林書房(原著1996-3-15)、200-203頁。ISBN 4906424805。
- ^ 江連隆『諸子百家の事典』大修館書店、2000年。ISBN 978-4469032109。136-167頁。
- ^ "五行説". 安居香山 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ). コトバンクより2023年3月29日閲覧。
- ^ 井上聰『古代中国陰陽五行の研究』翰林書房(原著1996-3-15)、191-195頁。ISBN 4906424805。
- ^ 黄帝内経による。
- ^ 山田慶児『中国医学の思想的風土』潮出版社、1923年、109頁。
- ^ 島邦男『五行思想と禮記月令の研究』汲古書院(原著1972-3)、18-20頁。
- ^ 島邦男『五行思想と禮記月令の研究』汲古書院(原著1972-3)、103頁。
- ^ 井上聰『古代中国陰陽五行の研究』翰林書房(原著1996-3-15)、206-207頁。ISBN 4906424805。
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