五大湖 五大湖の概要

五大湖

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/17 04:22 UTC 版)

人工衛星から撮影した五大湖
五大湖略図
各湖の水深分布
各湖の水深図 [1] [2] [3] [4] [5] [6]

構成する5つの湖

  • スペリオル湖:五大湖のうち面積が最大でチェコの国土よりも広く、北海道本島の面積より大きい。また、淡水湖としては世界最大。水深も最も深く、水量が最も多い。スペリオルはラテン語で「高次の」の意。しかし周辺人口は希薄である。
  • ミシガン湖:五大湖のうち唯一アメリカ合衆国領内にのみ位置する。スペリオル湖に次いで水量が多い。湖岸にはいくつかの工業都市が発達し、周辺人口は多い。
  • ヒューロン湖:スペリオル湖に次いで広い。しばしば前述のミシガン湖と一体とされることがあり、その場合は面積ではスペリオル湖をしのぐが、水量では及ばない。周辺人口が五大湖中最も希薄である。
  • エリー湖:最も浅く、最も水量が少ない。ミシガン湖と同様、湖岸の工業都市が発達している。
  • オンタリオ湖:最も面積が狭いが、平均水深ではスペリオル湖に次いで深い。湖面の標高が最も低く、五大湖のうち唯一海抜100mに満たない。

このほか、ヒューロン湖とエリー湖の間に位置し五大湖水系と一体化しているセントクレア湖や、ニピゴン湖ニピシング湖シムコー湖ウィネベーゴ湖といった小さな湖が五大湖周辺には点在しており、水系の一部をなしている。

Huron, Ontario, Michigan, Erie, Superiorの頭文字を並べるとHOMESとなり記憶術として用いられる。他には西から東へ並べた例としてSister Mary Hates Ecumenical OverturesShe Made Harry Eat Onionsというのがある。 日本でも西から順に頭文字をとり「すみひえお」と覚える人もいる。

一覧

  • デフォルトでは上流から順に配列、さらに比較対象の参考として琵琶湖を併置した。位置の列のソートボタンで元の順序に戻る。
  • セントクレア湖はこの縮尺では小さすぎて(琵琶湖より大きいが)位置の欄の図が分かりにくいが、ヒューロン湖とエリー湖の間に位置する(拡大図)。
  • 透明度は最小値ではなく最大値をソート対象にしている。
位置 五大湖+1(+1) 英綴 面積 周囲長 水面標高 貯水量 最大水深 透明度 成因
 
1 スペリオル湖 Lake Superior 82200km2 4393km 183m 12232km3 406m 15/0〜15m 氷河湖
2 ミシガン湖 Lake Michigan 58016km2 2656km 177m 04871km3 281m 12/2〜12m 氷河湖
3 ヒューロン湖 Lake Huron 59570km2 5088km 177m 03535km3 228m 14/12〜14m 氷河湖
4 セントクレア湖 Lake Saint Clair 01114km2 0272km 175m 00003.4km3 008.2m
5 エリー湖 Lake Erie 25821km2 1369km 174m 00458km3 064m 04/2〜4m 氷河湖
6 オンタリオ湖 Lake Ontario 19009km2 1161km 075m 01368km3 244m 06/2〜6m 氷河湖
7 琵琶湖(参考) 00670km2 0241km 084m 00027.5km3 103m 06/6m 構造湖

水系と水路

五大湖の湖水は最終的には北東側のセントローレンス湾に注ぎ、セントローレンス川水系に属する。

この水系には、いわゆる五大湖のほかにもいくつかの湖がある。最上流のスペリオル湖からセントマリー川を経てヒューロン湖へ注ぐ。ヒューロン湖とミシガン湖は、幅約8kmのマキノー海峡[注釈 1]によりつながっており、2つの湖水面は同じ標高(177m)である。ヒューロン湖には、淡水湖にある島としては世界最大のマニトゥーリン島などが湖の中央に連なり、北部はジョージア湾と呼ばれている。ヒューロン湖からセントクレア川セントクレア湖デトロイト川を経て、エリー湖につながる。エリー湖からは高低差の大きなナイアガラ川ナイアガラの滝を挟んでオンタリオ湖へ流れる。オンタリオ湖から流れるセントローレンス川は、途中いくつかのダム閘門とダム湖を経由し、セントローレンス湾へ注いでいる。

これらの水系をつなぎ大西洋までつながる航路として五大湖水路が形成されている。もっとも、標高差のある場所では、ナイアガラ滝はウェランド運河が、セントマリー川は途中でスーセントメリー運河が迂回している。しかし、厳冬期には厳しい冷え込みにより凍結することがしばしばある。

成因

更新世期の氷床最大域
五大湖の成因の歴史

およそ19億年前に形成されたと考えられる北米クラトンが、11-12億年前に中央部で分離を始めて地溝帯を形成した(中央大陸リフト英語版)。このときの地溝帯の一部が現在のスペリオル湖北部に相当する。同じ頃に現在のヒューロン湖の北東側に隕石が衝突し、巨大な隕石孔と同心円構造を形成した(サドベリー盆地)が、その後の周辺の地殻変動のためにその痕跡構造は楕円形に歪んでいる[注釈 2]。続いて5億7000万年前頃に、現在のアパラチア山脈の北側に沿う形で北東から南西に延びる地溝帯(セントローレンスリフト英語版)が形成されはじめた。時期的にはロディニア大陸が分裂した時期と一致し、イアペタス海英語版の拡大に伴っての活動と考えられる。この活動によって現在のオンタリオ湖から、エリー湖、セントローレンス川セントローレンス湾へと続く地溝帯が形成された。

7万年前に始まった最終氷期では、現在のハドソン湾を中心とした当時の世界最大級のローレンタイド氷床英語版が卓越し、現在の五大湖付近までを厚い氷河が覆い、同時に基岩を侵食していた。1万年前に氷期は終了し、侵食跡にはいくつかの大きな氷河跡湖(アルゴンキン湖英語版 - 現在のヒューロン湖の一部、イロコイ湖英語版 - 現在のオンタリオ湖など)が残り、氷床に遮られた流れは現在のモホーク川ハドソン川を経由して現在のニューヨーク湾に注いでいたと考えられている。さらに氷床が後退してローレンス湾が開いたことにより、現在の五大湖と水系の流路がほぼ定まった。

氷床の後退により地殻の上昇が起きたが、各湖ごとに上昇率が異なり現在のような高低差が生じたと考えられている。


注釈

  1. ^ 厳密には“湖峡”であるが、: straits にあたる日本訳語が“海峡”以外にない。
  2. ^ 現在発見されている隕石孔としては南アフリカフレデフォード隕石孔に次ぐ世界第2位の大きさがある。衝突により五大湖に匹敵する大きさのクレーター湖が出現したと考えられるが、痕跡はいまでは地下構造のみが残る。このときの隕石を起源とするニッケル鉱床が形成された。

出典

  1. ^ National Geophysical Data Center, 1999. Bathymetry of Lake Erie and Lake Saint Clair. National Geophysical Data Center, NOAA. doi:10.7289/V5KS6PHK [access date: 2015-03-23].
  2. ^ National Geophysical Data Center, 1999. Bathymetry of Lake Huron. National Geophysical Data Center, NOAA. doi:10.7289/V5G15XS5 [access date: 2015-03-23].
  3. ^ National Geophysical Data Center, 1996. Bathymetry of Lake Michigan. National Geophysical Data Center, NOAA. doi:10.7289/V5B85627 [access date: 2015-03-23].
  4. ^ National Geophysical Data Center, 1999. Bathymetry of Lake Ontario. National Geophysical Data Center, NOAA. doi:10.7289/V56H4FBH [access date: 2015-03-23].
  5. ^ National Geophysical Data Center, 1999. Bathymetry of Lake Superior. National Geophysical Data Center, NOAA. [access date: 2015-03-23]
  6. ^ National Geophysical Data Center, 1999. Global Land One-kilometer Base Elevation (GLOBE) v.1. Hastings, D. and P.K. Dunbar. National Geophysical Data Center, NOAA. doi:10.7289/V52R3PMS [access date: 2015-03-16].
  7. ^ 「ベラン世界地理体系18 カナダ」p143 田辺裕・竹内信夫監訳 朝倉書店 2009年7月15日初版第1刷
  8. ^ 「ベラン世界地理体系17 アメリカ」p108 田辺裕・竹内信夫監訳 朝倉書店 2008年6月30日初版第1刷
  9. ^ 「世界地誌シリーズ4 アメリカ」p17 矢ヶ崎典隆編 2011年4月25日初版第1刷 朝倉書店
  10. ^ 「舟運都市 水辺からの都市再生」p31 三浦裕二・陣内秀信・吉川勝秀編著 鹿島出版会 2008年2月20日発行
  11. ^ 「舟運都市 水辺からの都市再生」p27 三浦裕二・陣内秀信・吉川勝秀編著 鹿島出版会 2008年2月20日発行
  12. ^ 「世界地誌シリーズ4 アメリカ」p29 矢ヶ崎典隆編 2011年4月25日初版第1刷 朝倉書店
  13. ^ 「世界地誌シリーズ4 アメリカ」p46 矢ヶ崎典隆編 2011年4月25日初版第1刷 朝倉書店
  14. ^ 「世界探検全史 下巻 道の発見者たち」p111 フェリペ・フェルナンデス-アルメスト著 関口篤訳 青土社 2009年10月15日第1刷発行
  15. ^ 「アリステア・クックのアメリカ史(上)」p82 アリステア・クック著 鈴木健次・櫻井元雄訳 NHKブックス 1994年12月25日第1刷発行
  16. ^ 「商業史」p197 石坂昭雄、壽永欣三郎、諸田實、山下幸夫著 有斐閣 1980年11月20日初版第1刷
  17. ^ 「舟運都市 水辺からの都市再生」p36 三浦裕二・陣内秀信・吉川勝秀編著 鹿島出版会 2008年2月20日発行
  18. ^ 倉田亮 『世界の湖と水環境』p67 成山堂書店、2001年、ISBN 4-425-85041-6


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