二硫化炭素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/24 15:35 UTC 版)
利用
殺虫剤
穀物や果実にたいする殺虫剤として、あるいは土壌の病害性昆虫や線虫の殺滅のために使われる。 [9] [10]
溶剤
リン、硫黄、セレン、臭素、ヨウ素、脂質、樹脂、ゴムなどの溶剤として用いられる。[11]オクタノール/水分配係数は1.94。
有機化合物を良く溶解してプロトンNMRに検出されないので、重クロロホルムに溶けにくいサンプルの測定を行う際の溶媒に適している。
製造原料
ビスコースレーヨン、セロファン、四塩化炭素の製造に使われる。
毒性
神経系に影響するため、高濃度では致死的である。
環境省によるリスク評価によれば、呼吸による無毒性量は 3.2 mg/m3 、経口摂取による無毒性量は 2.5 mg/kg・day とされている。
蒸気でなく、皮膚からも吸収されるので取り扱いには注意が必要。誤って皮膚から吸収された場合、急性の二硫化炭素中毒症状は、視覚障害、精神の高揚を伴う興奮発作、次いで意識不明、昏睡、呼吸麻痺として現れる。度々、より長時間の吸引による慢性の中毒症状は、頭痛、不眠、記憶・視覚・聴覚障害、神経炎、血管障害として現れる。変異原性については否定的な報告が多いが肯定的な報告もあって明確に判断できない。発がん性は無いと考えられている。体内で代謝されて主に尿から排泄される。
危険性
揮発性が高く、非常に引火しやすい(引火点-30°C、発火点90°C)。比重が水より大きく水に難溶であることを利用し、二硫化炭素の上に注水し揮発を防ぐ水没貯蔵方法が用いられる。引火した場合は大量の水による消火を行う。燃焼により二酸化硫黄 (SO2)を発生するのでそれに対する注意も必要である。
日本における法規制については下記の通り。
- 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化管法):第一種指定化学物質 (1-241)
- 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法):優先評価化学物質 (1-172)
- 消防法:危険物第四類特殊引火物
- 毒劇物取締法:劇物
- 労働安全衛生法:危険物引火性の物、名称等を表示すべき有害物、名称等を通知すべき有害物、第一種有機溶剤
- 大気汚染防止法:特定物質
- 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(海洋汚染防止法):有害液体物質 B 類
- 高圧ガス保安法:可燃性ガス、毒性ガス
- 船舶安全法:引火性液体類
- 航空法:引火性液体
- 港則法:引火性液体類
脚注
- ^ Seidell, Atherton; Linke, William F. (1952). Solubilities of Inorganic and Organic Compounds. Van Nostrand
- ^ a b c Sigma-Aldrich Co., Carbon disulfide. Retrieved on 2014-05-27.
- ^ a b c 熊本健志 (2014-05). “二硫化炭素の特殊な貯蔵・取扱い方法について”. Safety & Tomorrow (危険物保安技術協会) 155: 36 .
- ^ a b c d 岡秀昭「ケミカルス覚書 二硫化炭素」『有機合成化学協会誌』第41巻第5号、有機合成化学協会、1983年、464頁、doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.41.464。
- ^ 岸本定吉「木炭の生産と利用の現況と將来」『燃料協会誌』第41巻第9号、日本エネルギー学会、1962年、749頁、doi:10.3775/jie.41.737。
- ^ 芦田一夫「二硫化炭素原料としての木炭-二硫化炭素の性質および用途-」『燃料協会誌』第41巻第9号、日本エネルギー学会、1962年、773頁、doi:10.3775/jie.41.773。
- ^ “Courtaulds to switch CS2 output to F.M.C.methaneroute.”. Chemical Age 88: p.89. (1962).
- ^ 『優先評価化学物質のリスク評価(一次) 人健康影響及び生態影響に係る評価Ⅱ リスク評価書簡易版 二硫化炭素』(レポート)厚生労働省、経済産業省、環境省、2018年9月21日。
- ^ グリーンウッド, ノーマン; アーンショウ, アラン (1997). Chemistry of the Elements (英語) (2nd ed.). バターワース=ハイネマン. ISBN 978-0-08-037941-8。
- ^ British Crop Protection Council (1987). The Pesticide Manual, A World Compendium, 8th Ed.
- ^ http://www.akzonobel.com/sulfurderivatives/products/carbon_disulfide/
二硫化炭素と同じ種類の言葉
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