中華民国 国名

中華民国

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 18:46 UTC 版)

国名

中国語北京語正体字表記)での正式名称は、中華民國拼音: Zhōnghuá Mínguóウェード式:Chung-hua Min-kuo、注音符号:ㄓㄨㄥ ㄏㄨㄚˊ ㄇㄧㄣˊㄍㄨㄛˊ)であり、国内では中華民國のことを中華と表記することもある。公式の英語表記は、英語: Republic of China(リパブリック・オブ・チャイナ)で、略称は R.O.C. である。

中華」は、世界の中心にある、最も華やかな文明という意味であり、元々は黄河文明発祥の地とされる河南省のあたりを指した。ちなみに中華の華はもともと世界の中心の(古代の王朝)という意味の中夏だった[5]

国名表記をめぐる諸問題

中華民国という国名は、中華民国政府が「一つの中国China)を代表する主権国家」であるという認識に基づいている。そのために、1971年に国際連合のアルバニア決議で、中華人民共和国が「全中国を代表する主権国家」として承認された後は、国際連合機関では「中華民国」 (Republic of China) と称するケースがなくなり、オリンピック1984年冬季大会以後)などのスポーツ大会や国際機関においては、Chinese Taipeiチャイニーズタイペイ、中華台北)という名称が使用されている。これは、国際連合ならびに同加盟国の多くが、中華民国政府を「全中国を代表する主権国家」として承認しない一方で、台湾地域を実効支配する中華民国政府との非公式関係を維持していることによる。なお世界貿易機関 (WTO) に関しては、「台澎金馬個別関税領域」(Separate Customs Territory of Taiwan, Penghu, Kinmen and Matsu)という名称で加盟しており、Chinese Taipei と伴に、中華民国を指す名称として使用されている。

一方、中華民国という国名や Chinese Taipei という名称について、20世紀末以降は台湾地域を中心として反発が生じるようになり、李登輝元総統(任期:1988年 - 2000年)をはじめとする泛緑派は、中華民国という国号を「台灣」(臺灣)という名称に変更しようという台湾正名運動を興している。これに対し「中国の政党」を自任する中国国民党を始めとした泛藍派は国号変更に反対しており、この件に関する国論は二分されている。それと同時に、中華民国の民衆の国に対する意識も1990年代から変化し始めていると喧伝される。

このような背景もあり、中華民国政府は2003年9月以後、中華民国旅券に、中華民国の正式名称とともに TAIWAN を付記して発行するようになった。2004年9月7日中華民国外交部スポークスマンは「国交のない国に対しては「台湾」を強調することを最優先課題にし、将来的には国交を持つ国との間でも条約文書などで Taiwan を使用し、中華人民共和国との混同を避けるようにしたい」と話し、「9月7日の時点で行政院は、自国の略称として第一に R.O.C. 、第二に Taiwan 、第三に Taiwan, R.O.C. 、第四に R.O.C. (Taiwan) 、第五に TPKM(台湾 Taiwan, 澎湖 Penghu, 金門 Kinmen, 馬祖 Matsu)を使用しているが、陳水扁総統の指示があれば使用順位を入れ替えて Taiwan を第一とする」とも話した。2020年の総統選挙で再選された蔡英文は立候補時より中華民国台湾という名称を使用し、双方の立場に配慮している[6][7]

日本における国名表記

日本語表記は中華民国。新聞社や通信社など多くのマスメディアでは「中華民国」ではなく「台湾」という表記・呼称を使用し、他の国家と併せて数える際は「地域」として中華民国(台湾)を国家に数えないこととしている[8]

中華民国を「」、「台湾」を「」と略称する例もある。スポーツ関連では上記の通り「チャイニーズタイペイ(中華台北)」を使用することもある。これは主催する団体がチーム名としてこの表記を採用しているためである。旅行業界など経済・文化一般の呼称は大抵「台湾」表記を使用する。

日本国政府は、1972年以降中華民国を国家として承認していないが、サンフランシスコ講和条約において、台湾島一帯の領有権放棄後の帰属については言明していない。日中共同声明でも、日本国政府は中華人民共和国の立場を「十分に理解し尊重する」と表明したが、中華民国および台湾島一帯の地位については明確にしていない。


注釈

  1. ^ 公共交通機関での放送言語として台湾語客家語も指定されている。
  2. ^ 中華民国の首都を台北市と定める法令は現存しない。詳しくは「中華民国の首都」「中華民国#首都」を参照。
  3. ^ アジア初の共和国はフィリピン第一共和国であると見なす場合。ただし、当時のフィリピンはスペイン植民地支配からアメリカの植民地支配下への移行期間にあり、アメリカの支配下から脱し切れていなかったため異論がある。
  4. ^ 中華人民共和国は1949年10月1日に建国されたが、この時点で国共内戦は未だ継続中であり、中華民国政府は華南三省と西南部三省の広範囲を支配し、広州市臨時首都としていた。中華民国政府が大陸地区から台湾へと転戦したのは同年12月7日で、大陸地区における大規模な戦闘は1950年5月1日海南戦役中国語版終結まで、中華民国の支配地域喪失は1955年2月24日大陳列島喪失まで続いた。
  5. ^ 1949年末時点の行政区画。その後の行政区画再編により、6つの都市が台湾省から分離している。
  6. ^ 管轄は高雄市
  7. ^ ただし、2012年以降も「4箇月間の軍事訓練」を受ける義務は残っているので、本来の意味での徴兵制廃止ではなく、実質的には「兵役期間の1年から4箇月への短縮」である。
  8. ^ 行政院直属の区域。ただし、中華民国憲法上に特別行政区に関する規定はない。
  9. ^ 台湾地区台湾省の範囲がほぼ重なるため、中央政府と台湾省政府の管轄区域もほぼ重複してしまい、省単位での地方自治が事実上機能しなくなっていた。

出典

  1. ^ a b 台北案内 - 歴史と政治(公益財団法人日本台湾交流協会台北事務所)
  2. ^ a b 臺灣簡史>國際危機與兩岸關係(中華民国行政院新聞局
  3. ^ a b National Statistics, Republic of China (Taiwan)”. 中華民国政府 (2021年9月). 2021年10月29日閲覧。
  4. ^ a b c d e World Economic Outlook Database, October 2021”. IMF (2021年10月). 2021年10月29日閲覧。
  5. ^ NHKスペシャル『中国文明の謎』第1集「中華の源流・幻の王朝を追う」(2012年10月14日放送)の中で、「夏 (三代)」王朝の夏が「華」に変化したという内容がある。
  6. ^ “【国際情勢分析】「台湾は中華民国」か 総統選の隠れた争点”. 産経新聞. (2019年11月27日). https://www.sankei.com/premium/news/191127/prm1911270008-n1.html 2020年5月27日閲覧。 
  7. ^ “蔡総統掲げる「中華民国台湾」 独立か統一、2択を超越”. フォーカス台湾. 中央通訊社. (2020年5月21日). http://japan.cna.com.tw/news/achi/202005210004.aspx 2020年5月27日閲覧。 
  8. ^ 時事通信社『最新用字用語ブック』第6版(624ページ)、共同通信社『記者ハンドブック』第12版(714ページ)、『朝日新聞の用語の手引』2010年(571ページ)による。
  9. ^ 宇野俊一ほか編『日本全史(ジャパン・クロニック)』(講談社、1991年、ISBN 4-06-203994-X)1008頁
  10. ^ 宇野俊一ほか編『日本全史(ジャパン・クロニック)』(講談社、1991年、ISBN 4-06-203994-X)1009頁
  11. ^ ソ華友好同盟条約(「ソヴィエト」社会主義共和国聯邦中華民国間友好及同盟条約) 東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室
  12. ^ 中華民國憲法 中華民国司法院大法官
  13. ^ “Vatican Sec of State hopes for improved diplomatic relations with China”. バチカン放送. (2016年8月27日). http://en.radiovaticana.va/news/2016/08/27/vatican_sec_of_state_hopes_for_improved_relations_with_china/1254058 
  14. ^ “中国・バチカン雪解け 関係正常化へ 習氏「台湾統一」の布石”. 毎日新聞. (2017年2月3日). https://mainichi.jp/articles/20170203/ddm/007/030/033000c 
  15. ^ 「台湾:2014年末までに徴兵制廃止—緊張緩和などで」サーチナ
  16. ^ 台湾、徴兵制を終了 4カ月の訓練は義務”. 2019年2月4日閲覧。
  17. ^ a b c 平成27年版『防衛白書第1章第3節-4 台湾の軍事力など
  18. ^ “陳総統:日米との準軍事同盟関係構築の必要性を強調”. 台北駐日経済文化代表処. (2006年10月10日). オリジナルの2009年12月2日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20091202101640/http://www.roc-taiwan.org/ct.asp?xItem=44500&ctNode=3591&mp=202&nowPage=63&pagesize=50 
  19. ^ a b 中華民國104年國防報告書 第三編第六章第二節 策劃國防財力(中華民国国防部の防衛白書)
  20. ^ SIPRI Military Expenditure Databaseストックホルム国際平和研究所
  21. ^ a b c “「過去最悪」の中台関係 危機に備える台湾、日米に期待”. 朝日新聞. (2021年6月9日). オリジナルの2021年6月9日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210609073301/https://www.asahi.com/articles/ASP645F9MP5MUHBI03G.html 
  22. ^ 台湾 有事備え住民訓練「中国侵攻」自衛強化 ハンドブックも『読売新聞』朝刊2022年4月30日(国際面)
  23. ^ a b パナマが中国と国交樹立へ、台湾と断交-蔡政権さらに追い込まれる”. ブルームバーグ (2017年6月13日). 2017年6月13日閲覧。
  24. ^ Shinn, David H.; Eisenman, Joshua (2012). China and Africa: A Century of Engagement. Philadelphia: University of Pennsylvania Press. p. 248. ISBN 081-220-800-5 
  25. ^ “Taiwan President to Stop in US”. ワシントン・ポスト. (2007年1月5日). http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/01/05/AR2007010502229.html 2017年6月19日閲覧。 
  26. ^ 「米下院議員、台湾との国交回復求める決議案提出」エキサイトニュース(2018年6月22日)2022年5月30日閲覧
  27. ^ IDG Japan (2004年6月15日). “中国政府、Chinese Wikipediaへのアクセスを遮断”. ITmedia ニュース (アイティメディア). http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0406/15/news055.html 2012年2月18日閲覧。 
  28. ^ ロイター (2009年6月3日). “天安門事件の記念日を前に、中国でTwitter遮断”. ITmedia ニュース (アイティメディア). オリジナルの2009年6月11日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090611171917/http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0906/03/news063.html 2012年2月18日閲覧。 
  29. ^ “民進党の政権復帰と両岸関係(下)慎重だが日台関係強化に期待 当面は「冷たい平和」維持か メールマガジン「オルタ」”. 海峡両岸論65号. (2016-04-XX). http://www.alter-magazine.jp/index.php?%E6%B0%91%E9%80%B2%E5%85%9A%E3%81%AE%E6%94%BF%E6%A8%A9%E5%BE%A9%E5%B8%B0%E3%81%A8%E4%B8%A1%E5%B2%B8%E9%96%A2%E4%BF%82%EF%BC%88%E4%B8%8B%EF%BC%89 2016年4月23日閲覧。 
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