中国自動車道 概要

中国自動車道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/19 08:31 UTC 版)

概要

西宮市と神戸市との境目付近
兵庫県西宮市山口町名来で撮影

中国自動車道の高速道路ナンバリングによる路線番号は、関門橋(関門自動車道)とともに「E2A」が割り振られている[注釈 1][2]。起終点付近を除き国道2号とは並行していないが、山陽自動車道の並行道路と見なし「E2A」が付番された。

中国自動車道は、中国地方のほぼ中央部を東西に貫く形で建設され1983年に全線開通した。総延長は540.1 kmに及び、高速自動車国道の中では東北自動車道に次いで長い。山間部を中心にICの間隔が長い点も特徴の1つであり、並行する山陽自動車道と比べて距離が長いにもかかわらず、中国自動車道のICの合計数の方が少ない。

高速道路網としては初期に整備された路線であり、中国地方における国土開発幹線自動車道の唯一の東西軸である「中国縦貫自動車道」として指定され、山陽地方からも山陰地方からもほぼ等距離にアクセス出来る中国山地沿いの位置に建設された(#山陽自動車道との関係も参照)。この経緯から丘陵部の山間や山裾を通るルートを経由するため、道路設計に小半径の曲線や急勾配が多用される線形になり[3]、大半の区間で最高速度が80 km/h以下に制限されている(#路線状況)。

鹿野IC - 六日市ICの急カーブ
急傾斜な坂道と急カーブが続く。

冬季は日本海からの季節風の影響を受けて、山間部や山口県内を中心に凍結や積雪がしばしば生じるため、冬用タイヤ着用などの規制が実施される場合が多々ある[注釈 2]

内務省土木局が1943年(昭和18年)に計画した自動車国道網(画像左)と田中清一が「平和国家建設国土計画大綱」で提案した全国道路網(画像右)。戦後の高速道路建設は当初田中案を原型に進められた。東京 - 名古屋間では紆余曲折を経て東名の建設が先行したが、中国地方では田中案に由来する中国道の建設が先行した。

山陽自動車道との関係

前述の通り中国自動車道は当初中国地方における唯一の東西軸の高速道路として計画・整備され、開通から1990年代初頭まで、山陽地方や九州方面へのアクセスの根幹は当時唯一の路線であった中国自動車道が担っていた。また、岡山市など山陽地方東部の都市へのアクセスは、当時未開通だった山陽自動車道(以下山陽道)に並行する、阪神高速3号神戸線および国道2号バイパス(第二神明道路 - 加古川バイパス - 姫路バイパス - 太子竜野バイパス)といった自動車専用道路岡山ブルーラインなどが利用されることもあった。

その後、1966年に公布された国土開発幹線自動車道建設法山陽自動車道が計画され、1987年に行われた国土開発幹線自動車道建設法の改正で山陰自動車道の計画が策定された。1990年代に山陽道の岡山市や広島市などの中国地方の主要都市の中心部近くを通過する区間が開通するとともに漸次交通量が移行し、1992年6月に山陽道の広島JCT - 山口JCT間が全通すると当該区間の通過交通の大半が山陽道へと移行、1993年12月には山陽道の山陽姫路東IC - 広島JCT間も全通し、通過交通や山陽地方都市部への交通の多くが播但連絡道路福崎IC - 山陽姫路東ICを介して山陽道を利用するルートへと移行した。なお、中国道が全線4車線化したのは1992年11月のことであり、既に通過交通の多くが移行しつつある時期であった。

そして1997年に山陽道が全線開通すると、通過交通や山陽地方都市部を目的とする交通は、ほぼ全面的に山陽道へと移行した[注釈 3]。さらに2001年に山陽道宇部下関線が開通すると、宇部市山陽小野田市へのアクセスや通過交通の一部を同線が担うようになった。

21世紀初頭においては、日本を縦断する国土軸において、山陽道を補完する役割を担う一方で、中国山地沿いの各都市(宍粟市美作市津山市真庭市新見市庄原市三次市安芸高田市美祢市など)や、鳥取自動車道米子自動車道松江自動車道浜田自動車道などを介して接続される山陰地方の各都市にとっては、他地域との交流の上で重要な交通ルートとされる[注釈 4]

赤色が中国自動車道、青色が山陽自動車道。どちらも中国地方を東西に貫いている。

近畿地方における高速自動車国道の路線として、中国縦貫自動車道は、その起点の吹田市において近畿自動車道天理吹田線の終点であり、吹田市 - 神戸市において山陽自動車道吹田山口線と重複している。特に中国池田ICで接続する阪神高速11号池田線西宮山口JCTで接続する阪神高速7号北神戸線神戸JCTで接続する山陽自動車道、吉川JCTで分岐する舞鶴若狭自動車道の相互交通が集中する中国池田IC - 西宮山口JCT間は、交通量が極めて多く、宝塚東・宝塚西トンネル周辺を中心として渋滞の発生が顕著である(交通量の節も参照)。ただ、2018年3月18日に新名神高速道路高槻JCT/IC - 神戸JCTの全線が開通した結果、中国道を経由していた東西間の交通量が分散された[4]

国土交通省近畿地方整備局の定める「関西4環状ネットワーク」においては、関西中央環状道路を構成する道路の1つと位置付けられており、山陽自動車道・神戸淡路鳴門自動車道紀淡連絡道路(構想段階)・近畿自動車道と組み合わせて1周約240 kmの環状道路を形成している[5]

1995年に発生した兵庫県南部地震阪神・淡路大震災)で京阪神の交通網が大きく寸断された際に、道路以外も含めた交通の大動脈の中で、対面通行ながらも唯一機能したルートでもある。この結果、交通量の大半が神戸市の海沿いに集中していたことが改めてクローズアップされた。

例年10月から11月にかけて、交通量が多く道路の劣化が激しい宝塚IC付近を中心に中国道集中工事を実施している。これにより、例年大規模な渋滞が発生するものの、集中工事方式を採用することで年間の工事渋滞や規制件数が大幅に低減するとされる[6]。しかし、それでも、2020年に6月12日から6月28日にかけては、吹田JCTから中国池田IC間の区間を、補修工事のために通行止にした[7]

なお、広島北JCT・下関JCTは中国道の一方向(それぞれ吹田方面・下関方面)と接続する路線(それぞれ広島道・山陽道宇部下関線)の本線が直結しており、もう一方向が分岐側となっている[注釈 5]。また、山口JCTは山陽道が分岐側だが、山陽道が2車線で合流するのに対し、中国道吹田方面→下関方面は路面標示により1車線に減少するよう変更されている。


注釈

  1. ^ 宍粟JCT - 佐用JCT間は、「E29」、落合JCT - 北房JCT間は「E73」、千代田JCT - 広島北JCT間は「E74」がそれぞれ重複付番されている。
  2. ^ その一方で兵庫県内(特に福崎IC以東)や大阪府内においては、冬タイヤ着用が求められる事はほとんどない。
  3. ^ 最高速度の節、および、交通量の節を参照。
  4. ^ 高速道路計画当初は、山陽・山陰の各中心都市へは中国自動車道から上記各自動車道という支線により高速道路網を構築する計画であり、一部残存区間があるものの2020年7月現在では進捗中である。
  5. ^ 同様の例として、安代JCT長岡JCT更埴JCT川之江東JCT日出JCTがある
  6. ^ 前年(1969年)に開通した中央高速道路(現・中央自動車道)の暫定2車線対面通行区間であった中央線を、破線(追い越し可能区間)で供用した結果、正面衝突事故が相次いだため、警察庁から日本道路公団に営業路線名で「高速道路」の名称使用を自粛するよう要請があり、暫定措置として1972年まで法定路線名をそのまま使用した。なお、開通時には、現在と同じく中国自動車道の名称が使われた。『交通工学』1970年春季増刊号・田中敬一・田口二朗「万国博関連道路計画について」写真より
  7. ^ 同時期に開催されていた日本万国博覧会会場へのアクセス路線として北大阪急行電鉄会場線という臨時線を、1970年2月24日から1970年9月14日まで現上り線の敷地を利用して万国会場前まで供用していたため、現下り線部分を暫定2車線対面通行にして開通させた。なお、前述の中央高速での反省を踏まえ、中国吹田IC - 中国豊中IC間は追い越し禁止区間(中央線を黄色の実線で供用)とされた。
  8. ^ 当初の実験期間は、2005年3月15日までだった。
  9. ^ なお、北房IC側の4 kmは、道路改良工事により最高速度が80 km/hに緩和された。

出典

  1. ^ Japan's Expressway Numbering System” (PDF). Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism. 2022年4月3日閲覧。
  2. ^ 高速道路ナンバリング一覧”. 国土交通省. 2017年5月5日閲覧。
  3. ^ a b c d 下荒磯 滋「中国自動車道(下関~小郡間)工事報告」『道路』第392号、日本道路協会、1973年10月、23-32頁、2023年2月24日閲覧 
  4. ^ “【関西の議論】中国道“名物”「宝塚トンネル常時渋滞」の本当の理由…2年後には劇的解消“秘策”が”. MSN産経ニュース関西版 (産経新聞社). (2014年4月21日). オリジナルの2014年4月21日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140421172342/http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/140421/wlf14042107000001-n1.htm 2014年6月20日閲覧。 
  5. ^ 関西中央環状道路”. 関西4環状ネットワーク. 国土交通省近畿地方整備局. 2013年11月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年6月20日閲覧。
  6. ^ この集中工事方式の高速道路の補修方法は、交通量が多い東名高速道路や名神高速道路でも採用している。
  7. ^ E2A中国自動車道(吹田JCT〜中国池田IC)終日通行止めは6月28日(日)朝5時に終了いたしました。 — リニューアル工事へのご理解とご協力をいただき誠にありがとうございました —” (PDF). 西日本高速道路株式会社 (2020年6月28日). 2020年6月28日閲覧。
  8. ^ スマートインターチェンジ等の高速道路会社への事業許可および準備段階調査着手について” (PDF). 国土交通省道路局 (2023年9月8日). 2023年9月8日閲覧。
  9. ^ 平成28年度 新規事業候補箇所説明資料 一般国道491号(山陰自動車道) 俵山・豊田道路” (PDF). 国土交通省 中国地方整備局. p. 10 (2016年3月8日). 2017年3月20日閲覧。
  10. ^ 高速自動車道新聞 昭和63年8月11・21日合併号
  11. ^ 山内博 (2016年4月24日). “橋桁落下事故が発生した国道176号の迂回路として高速道路の通行料金を無料化”. クリッカー clicccar.com (三栄書房). http://clicccar.com/2016/04/24/368299/ 2018年4月14日閲覧。 
  12. ^ E1A新名神高速道路(川西IC〜神戸JCT間)が平成30年3月18日(日曜)に開通します - 高槻JCT・IC〜神戸JCT間が全線開通します -』(プレスリリース)西日本高速道路、2018年1月24日https://corp.w-nexco.co.jp/corporate/release/hq/h30/0124/2018年1月24日閲覧 
  13. ^ a b E2A中国自動車道 湯田温泉スマートインターチェンジが令和2年3月21日(土曜)に開通します 名称は「湯田温泉スマートインターチェンジ」に決定しました - 休憩施設名称も「湯田PA」から「湯田温泉PA」に変更します -”. 山口市・西日本高速道路株式会社 (2020年1月29日). 2020年1月29日閲覧。
  14. ^ E29播磨自動車道(播磨新宮IC〜宍粟JCT間)は令和4年3月12日(土曜)に開通します - E29中国横断自動車道姫路鳥取線が全線開通します -”. 西日本高速道路株式会社 (2022年2月10日). 2022年2月10日閲覧。
  15. ^ E2A 中国自動車道 吉和SA(上下線)閉店のお知らせ”. 西日本高速道路. 2022年9月1日閲覧。
  16. ^ E2A 中国自動車道(吹田JCT~神戸JCT)のリニューアル工事 令和5年1~4月の交通規制の日程をお知らせします - 西日本高速道路 (PDF)
  17. ^ a b 岡田 篤正・八木 浩司 『図説 日本の活断層 ―空撮写真で見る主要活断層帯36ー』 p.151 朝倉書店 2019年2月20日発行 ISBN 978-4-254-16073-4
  18. ^ フジテレビトリビア普及委員会『トリビアの泉〜へぇの本〜 2』講談社、2003年。 
  19. ^ 『高速道路外ガソリンスタンドサービス社会実験』の開始 ― ETC車限定・中国道 吉和ICおよび六日市IC ―』(プレスリリース)西日本高速道路、2015年4月16日https://corp.w-nexco.co.jp/corporate/release/chugoku/h27/0414/2016年4月11日閲覧 
  20. ^ 高速道路外ガソリンスタンドサービス社会実験(ETC車限定)を昨年度に引き続き継続します”. 西日本高速道路 (2016年4月18日). 2016年6月25日閲覧。
  21. ^ 高速道路外ガソリンスタンドサービス社会実験(ETC車限定)を昨年度に引き続き継続します”. 西日本高速道路 (2017年4月19日). 2017年4月23日閲覧。
  22. ^ 中国自動車道 江の川PA(上下線)営業店舗のないPAでの新たな取り組み”. 西日本高速道路. 2023年1月7日閲覧。
  23. ^ 【別紙】トンネル内の道路附属物一斉点検結果(その他構造物)
  24. ^ 令和2年度全国道路・街路交通情勢調査の延期について” (PDF). 国土交通省 道路局 (2020年10月14日). 2021年4月4日閲覧。
  25. ^ NEXCO西日本中国支社管内のお盆期間における高速道路の渋滞予測 ― 8月11日と12日に最大25km の渋滞発生!渋滞を避けた分散利用を ―』(プレスリリース)西日本高速道路、2012年7月13日https://corp.w-nexco.co.jp/corporate/release/chugoku/h24/0713/2018年4月14日閲覧 






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