中国海警局 中国海警局の概要

中国海警局

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/14 03:30 UTC 版)

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中国人民武装警察部隊海警総隊
中国海警局
中国人民武装警察部队海警总队
中国海警局
中国人民武装警察部隊旗
創設 2013年3月15日
再組織 2018年7月1日
本部 北京
指揮官
司令員 王仲才 武警少将
政治委員 王良福 武警少将
中国海警局エンブレム
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もともと、2013年の決定に基づいて、国家海洋局が法執行任務を行う場合の対外的な名義として使われるようになったのち[2][3]2018年の再編成により、一括して武装警察部隊に編入された[4]。同年7月1日以降は、武装警察部隊である海警総隊が「中国海警局」の名義で法執行任務を実施するようになっており[1]、武装警察部隊の他の部隊と同様に中国共産党中央と中央軍事委員会の集中統一指導を受ける[5][6]

前史 (「五龍」の時代)

中華人民共和国の海上保安機関としては、従来、それぞれ専門的な所掌をもつ複数の機関が併存していた。下記の5つの海上保安機関について、それぞれの職域が錯綜している様を比喩して、米海軍大学校 (NAVWARCOL五龍: Five Dragons)との総称を提唱していた[7][8]

これは中国国内でも問題視されており、例えば2007年には、中国公安海警学院の何忠竜(He Zhonglong)教授が『中国海警局の編制に関する研究』を発表し、一元化された海上法執行の方針と能力の必要性を主張した。2012年11月の中国共産党第十八回全国代表大会において、胡錦濤国家主席は中国が海洋強国になることを目指すと宣言し、これらの組織的欠陥を是正するための取り組みが開始された[3]

2013年3月、第12期全国人民代表大会第1回会議において「国務院機構改革および職能転変方案」が承認されたのを皮切りに、上記の「五龍」のうち、海監・海警・漁政・海関の4機関の法執行要員・船艇と職責を取り込むかたちで国家海洋局が改編され、中国海警局の名のもとに、海上における権益保全のための法執行が一元化されることになった。同年7月9日には「国家海洋局主要職責内設機構及び人員編制規定」(三定方案)が示されて、同局の職責、組織および人員編制規定が明らかになった[2]

国家海洋局時代

2013年7月22日、国家海洋局の庁舎に掲げられていた「中国海監総隊」の看板が外されて、新たに「中国海警局」の看板が掲げられた。また同日を境に、船艇の外観標識も「中国海警(CHINA COAST GUARD)」で統一された[2]

2013年3月の全人代での発表では、公安部の「運用指揮」のもとで、国家海洋局が海洋権益と法執行に責任を持つことが規定され[3]、国土資源部が組織管理、公安部が業務遂行の主導権を握る体制となった。この結果、国家海洋局と中国海警局は実体としては同一組織であるにも関わらず、例えば国家海洋局局長は前局長が留任しつつ中国海警局の政治委員を兼任し、公安部副部長が中国海警局局長となりつつ国家海洋局の副局長を兼任するなど、幹部人事が交錯する複雑な体制となった[1]

2014年12月12日には「国家海洋局工作規則」が制定され、国家海洋局と中国海警局の職責分担が明確化された。国家海洋局の主要職責は「海洋総合管理の強化、海洋発展計画の立案、海上における権益保全のための法執行の展開、海域及び島嶼使用の監督、海洋環境保護の実施等」としたうえで、国家海洋局と中国海警局の職責分担について「国家海洋局の海上における権益保全のための法執行業務は、局党指導のもと、中国海警局の名義をもって展開し、具体的には中国海警局長が指揮し、重大な問題は局党組織に報告の上決定する」とされた[9]

船艇の外観標識が統一されたあとも、実施部隊の組織としては従来のものが存続しており、海警局としての統一化は順次に進められていった。従来の海監海区総隊の各支隊と漁政海区総隊を統合して海警局の海区分局が、また海警支隊と海関海上密輸取締処を統合して沿海省・自治区・直轄市の海警総隊が編成されていった[2]

従来、要員の採用・試験および訓練は各機関がそれぞれ行ってきたが、再編後は、これらの機能は中国海警局として統合して行われるようになった。中国海警局で新しく幹部になる唯一の方法は人民武装警察の任命を受けることであり、2015年新卒より、幹部候補生としての採用が開始された[9]。採用された新入幹部は、学歴に基づく等級・階級で人民武装警察の任命を受ける[3]。しかし各機関には独自の文化・船艇・訓練技術および武器使用ドクトリンがあり、これらを統一することは困難だった[3]

また上記のように組織系統が統一化されていったとはいっても、それぞれの海区分局では、依然として海警現役部隊と旧海監海区総隊とは別々の部隊として組織されていた[9]。既存の要員が有する経験は出身機関ごとに著しく異なっており、例えば辺防海警は12海里の領海の哨戒を主任務としていたために、東シナ海や南シナ海の海上係争海域を哨戒した経験はほとんどなかった[3]

組織

海警総部

  • 海警司令部、中国海警指揮センター(国家海洋局海警司)
  • 海警政治部(国家海洋局人事司)
  • 海警後勤装備部(国家海洋局財務装備司)

部隊編制

以上、定員1万6,296人

主要職責

  1. 領海線の管護(管理と保護)。領海警備を指す。
  2. 海上密輸密航麻薬売買などの海上犯罪活動の取締り。
  3. 国家海上安全と治安秩序の維持擁護。(自国の領海、接続水域排他的経済水域大陸棚、および公海における「中国旗国船舶の安全と治安の維持擁護」と推察される。海上交通安全業務については交通運輸部海事局が、海上捜索救助、海上消防業務については、交通運輸部救助打撈局が担当のため、それらは中国海警局の国家海上安全・治安業務には含まれないものと推察される。)
  4. 海上重要目標物の安全警備。(自国の排他的経済水域、大陸棚、公海における「自国海上重要目標物の安全警備」と推察される。海上重要目標物とは、国連海洋法条約第56条の「人工島、施設及び構築物」と推察される。海上重要目標物周辺の海上交通安全業務は交通運輸部海事局が、捜索救助、消防活動については、交通運輸部救助打撈局が担当のため、それらは中国海警局の海上重要目標物安全警備業務には含まれないものと推察される。)
  5. 海上突発事件への対処。(「対海上テロ海賊対策・自然災害人為災害対策」など)
  6. エンジン付漁船によるトロール網漁の禁漁区境界線(中国では領海線外側に近接して設置されている。)の外側と特定漁業資源漁場(領海外に設置される漁場)における「漁業法」等の法執行管理。漁業資源管理のための監視・検査活動、漁業紛争の調査・処理。
  7. 「海域使用管理法」、「海域使用権管理規定」等の法執行管理。海域使用管理のための監視、検査活動。
  8. 「海島保護法」等の法執行管理。重要島嶼保護、無人島利用管理のための監視、検査活動。
  9. 「海洋環境保護法」等の法執行管理。海洋生態環境保護のための監視、検査活動。
  10. 「鉱産資源法」等の法執行管理。海洋鉱物資源の探査、開発の適法性についての監視、検査活動。
  11. 「渉外海洋科学研究管理規定」等の法執行管理。海洋調査測量、外国船舶による海洋科学研究活動の適法性についての監視、検査活動。
  12. 「海底電纜管敷設管理/保護規定」等の法執行管理。海底ケーブル敷設の適法性についての監視、検査活動。

1から2は旧辺防海警部隊の職責であった。港湾内の密輸取締りは海上緝私警察の職責であった。3の内、領海内についてのみ旧辺防海警部隊の職責であった。新しい中国海警局では、海上の安全と治安のための活動水域が領海外まで拡張されているものと推察される。6は旧漁政の、7から12は旧海監の職責であった。中国海警局はそれらの職責を継承したこととなる。


注釈

  1. ^ 2014年、中国とベトナムが領有権を争う西沙諸島トリトン島近海に、中国海洋石油集団が石油掘削プラットフォーム「海洋石油981」を設置したことから、ベトナム当局は巡視船等を派遣して抗議したが、中国海警局および海上民兵がこの抵抗を排除した[10][4]

出典

  1. ^ a b c d e f 越智 2019.
  2. ^ a b c d 越智 & 四元 2014.
  3. ^ a b c d e f モリス 2020.
  4. ^ a b c マーティンソン 2020.
  5. ^ 中共中央が中国人民武装警察部隊指導指揮体制の調整を決定”. 人民網日本語版 (2017年12月28日). 2018年3月22日閲覧。
  6. ^ 中共中央决定调整武警部队领导指挥体制”. 中国政府网 (2017年12月27日). 2018年3月22日閲覧。
  7. ^ Goldstein 2010.
  8. ^ 陸 2011.
  9. ^ a b c 越智 & 四元 2015.
  10. ^ a b c d e f 佐藤 2016.
  11. ^ 中共中央印发《深化党和国家机构改革方案》”. 新华网. p. 6 (2018年3月21日). 2018年3月22日閲覧。
  12. ^ 全国人民代表大会常务委员会关于中国海警局行使海上维权执法职权的决定”. 中国人大网 (2018年6月22日). 2018年7月1日閲覧。
  13. ^ CHINA PEOPLE’S LIBERATION ARMY NAVY (PLA(N)) AND MARITIME LAW ENFORCEMENT (MLE) 2015 RECOGNITION AND IDENTIFICATION GUIDE”. OFFICE OF NAVAL INTELLIGENCE, US. NAVY (2015年8月24日). 2016年8月12日閲覧。


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