世界の記憶
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/22 00:58 UTC 版)
国際センター
世界遺産における世界遺産センターに相当する機関として、「記録遺産国際センター」(International Center for Document Heritage)を韓国の清州市に設立することが決まった。ここでは、登録された記録物の管理や関連政策の研究などを行う[59]。
新たな試み
ユネスコは新型コロナウイルス感染症の流行をうけ、加盟各国に対して医療や社会と経済への影響などを公的に記録保存するよう各国に要請し、今後、「世界の記憶」に選定することを表明した[60]。
また、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻による蛮行を記憶しておくため、「世界の記憶」で扱うことも検討。そうした折、ノーベル平和賞をウクライナで戦争犯罪の実態を収集している市民自由センターが受賞したことで、その情報を活用することも検討している[61]。
障壁
世界遺産・無形文化遺産とともにユネスコ三大遺産事業と形容される「世界の記憶」だが、決定的に違うのは世界遺産と無形文化遺産が条約に基づく保護活動であるのに対し「世界の記憶」は単なる選定事業に過ぎないことである。
このことから、ユネスコ未加盟の台湾(中華民国)が2010年に甲骨文字コレクションを申請したものの受理されなかった経緯がある[62][リンク切れ]。
台湾では「世界の記憶」への登録実現を見据えて「世界記憶国家名録」制度を整備しており、琉球王国の外交文書『歴代宝案』(全249冊/台湾大学図書館蔵)を指定した。『歴代宝案』の原本は沖縄戦などで失われており、ほぼ完全な内容が残る写本は台湾のもののみで、琉球王国が中国(明・清)・朝鮮・タイ(シャム)などと交した外交文書をまとめた東アジアにおける中近世外交史の重要史料である[63]。
関連事業
ユネスコは1980年に「動的映像の保護及び保存に関するユネスコ勧告」を採択し、文書のみならず映像資料の保存にも乗り出しており、「世界視聴覚遺産」(Audiovisual Heritage)として保護を呼び掛け[64]、「世界の記憶」選定規準にも反映した。
直指賞
韓国の『直指心体要節』が2001年に「世界の記憶」に選定されたことを記念し、韓国政府は記録遺産の保存とデジタル化情報発信に寄与した選定物件所有者を顕彰すべく、2004年に「直指賞」(Jikji Memory of the World Prize)を創設した。翌2002年から2年毎に国際諮問委員会の日程に合わせて表彰している[65]。
注釈
出典
- ^ a b “国際関係 > 日本ユネスコ国内委員会 > ユネスコの活動(文化、情報・コミュニケーション) > 「世界の記憶」”. 文部科学省. 2023年6月4日閲覧。
- ^ “「記憶遺産」改め「世界の記憶」、外務省が日本語名称変更”. YOMIURI ONLINE. 文化. 読売新聞. 2022年4月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年6月11日閲覧。
- ^ “記憶遺産「世界の記憶」に 文科省が表記変更”. 産経ニュース. くらし. 2016年7月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年6月20日閲覧。
- ^ “Last Letters From The Holocaust: 1943:I Left Everyone At Home” (英語). http://www.yadvashem.org. 2020年7月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月16日閲覧。
- ^ “Memory of the World Programme (MoW): Preservation of documentary heritage”. http://www.unesco.org. Office in Santiago » Communication & Information. UNESCO (2017年). 2020年2月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月16日閲覧。
- ^ a b c d e f (英語) (PDF) General Guidelines to Safeguard Documentary Heritage(記録遺産保護のためのガイドライン). UNESCO 2018年4月6日閲覧。
- ^ a b c 「ユネスコ記憶遺産 登録の手引(仮訳)」(PDF)、文部科学省、2012年。
- ^ “ユネスコ記憶遺産推薦から登録までの工程について” (PDF). 文部科学省. 2014年3月3日閲覧。
- ^ “ユネスコ公共図書館宣言 1994年”. 日本図書館協会. 2016年7月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年4月14日閲覧。
- ^ 以上の証拠として、われわれは、1970年11月17日に署名した。
総会議長 アティリオ・デロロ・マイニ
事務局長 ルネ・マウ - ^ 文部科学省「図書館統計の国際的な標準化に関する勧告(仮訳) (PDF) 」は1970年11月13日、第16回ユネスコ総会採択に定義される[10]。
- ^ 資料保存対策室「ユネスコ『世界の記憶』プログラム・アンケート結果報告-日本国内の図書館における資料保存活動」(PDF)『国立国会図書館月報』第433号、国立国会図書館、1997年4月、2-10頁、2023年10月12日閲覧。(1MB)
- ^ Hana Levi Julian (2015年2月4日). “UNESCO Director Rejects Palestine Entry to 'Memory of the World' Program”. The Jewish Press. 2023年10月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年2月7日閲覧。
- ^ Japanese Occupation of Singapore Oral History Collection (Singapore) (PDF) - UNESCO
- ^ 可動文化財の保護のための勧告 (PDF) - 文部科学省
- ^ “朝鮮通信使シンポジウムのご案内”. NPO法人 朝鮮通信使縁地連絡協議会 (2015年5月21日). 2015年2月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月19日閲覧。 “「朝鮮通信使」ユネスコ記憶遺産登録シンポジウムを長崎県と共催で次のとおり開催いたします。お近くのかたは、是非お越しください。
〇日時 平成27年2月1日(日)14時~17時” - ^ “世界記憶遺産 選定には公開の議論を”. 東京新聞 (中日新聞社). (2015年10月16日). オリジナルの2015年10月19日時点におけるアーカイブ。
- ^ “記憶遺産 透明性の欠如認める”. 時事通信 (Yahoo!ニュース). (2015年11月6日). オリジナルの2016年6月11日時点におけるアーカイブ。
- ^ “ユネスコ記憶遺産の制度改革「進展している」 外務省”. 朝日新聞. (2016年4月29日). オリジナルの2016年6月11日時点におけるアーカイブ。
- ^ “ユネスコ、「世界の記憶」制度改正へ行動計画案発表 7月に改正案作成へ”. 産経新聞. (2018年3月31日)
- ^ 「ユネスコ「世界の記憶」年内改革を断念 韓国反対、作業部会で結論出ず」『産経新聞』Yahoo!ニュース、2019年9月22日。2020年4月22日閲覧。
“「世界の記憶」改革を延期 日韓が対立、来年秋まで”. 産経新聞 (Yahoo!ニュース). (2019年10月18日) 2020年4月22日閲覧。 - ^ 「政治 > 【独自】ユネスコ、「世界の記憶」改革延期へ…コロナで年内断念」『読売新聞』、2020年7月24日。2020年10月16日閲覧。 読者会員限定アクセス。
- ^ 『読売新聞』 2017年11月29日
- ^ “日本政府が主導、ユネスコ「世界の記憶」審査改革案を承認…慰安婦など政治利用防ぐ”. 読売新聞 (Yahoo!ニュース). (2021年4月16日) 2021年4月17日閲覧。
- ^ “世界の記憶」候補2件決定 増上寺の仏教聖典など―政府”. 時事通信. (2021年11月10日) 2021年11月10日閲覧。
- ^ “南京登録は日本外交の“敗北” 松浦前ユネスコ事務局長「部分的に取り消す手順ある」”. 産経新聞. (2015年10月16日) 2015年10月17日閲覧。
- ^ a b 「智証大師円珍関係文書典籍ー日本・中国の文化交流史ー」のユネスコ「世界の記憶」登録決定について(文部科学省、2023年6月4日閲覧)
- ^ a b c “「アンネの日記」、ユネスコが世界記憶遺産に登録”. AFPBB News(ウェブサイト) (フランス通信社). (2009年7月31日) 2011年9月19日閲覧。
- ^ a b “Europe and North America” (英語). Memory of the World (公式サイト). UNESCO. 2011年9月20日閲覧。
- ^ “Schriften von Karl Marx: "Das Manifest der Kommunistischen Partei" (1848) und "Das Kapital", ernster Band (1867)” (ドイツ語). Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
- ^ a b “Asia and the Pacific” (英語). Memory of the World (official website). UNESCO. 2011年9月20日閲覧。
- ^ “山本作兵衛の炭鉱画「ユネスコ記憶遺産に」”. Yomiuri Online (読売新聞社). (2010年4月8日). オリジナルの2010年4月30日時点におけるアーカイブ。 2011年5月26日閲覧。
- ^ “筑豊の炭鉱画、国内初の「記憶遺産」に 山本作兵衛作”. asahi.com (朝日新聞社). (2011年5月25日). オリジナルの2011年5月28日時点におけるアーカイブ。 2011年5月26日閲覧。
- ^ “ユネスコ「記憶遺産」日本も推薦へ…鳥獣戯画など”. Yomiuri Online (読売新聞社). (2010年3月3日). オリジナルの2011年5月14日時点におけるアーカイブ。 2010年3月3日閲覧。
- ^ “御堂関白記など、ユネスコ記憶遺産に推薦”. Yomiuri Online (読売新聞社). (2011年5月11日) 2011年5月26日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “藤原道長の自筆日記などユネスコ「記憶遺産」に推薦へ 文科省”. 日本経済新聞. (2011年5月11日) 2016年9月30日閲覧。
- ^ “世界記憶遺産に御堂関白記と慶長遣欧使節資料”. Yahoo!ニュース. 読売新聞 (Yahoo Japan). (2011年6月19日). オリジナルの2013年6月25日時点におけるアーカイブ。
- ^ “記憶遺産候補に「東寺百合文書」「舞鶴引き揚げ記録」”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2014年6月12日). オリジナルの2014年6月12日時点におけるアーカイブ。
- ^ “「ユネスコ記憶遺産事業」の平成26年の審査に付する案件の選定について-第128回文化活動小委員会の審議結果-”. 文部科学省. (2014年6月12日)
- ^ “シベリア抑留が世界記憶遺産登録 ユネスコ決定、東寺文書も”. 共同通信社. 47NEWS. (2015年10月10日) 2015年10月10日閲覧。
- ^ “朝鮮通信使を記憶遺産に 16年に日韓で共同申請”. nikkei.com. 2018年3月4日閲覧。
- ^ 『朝鮮通信使 : 日韓の平和構築と文化交流の歴史 : ユネスコ「世界の記憶」登録記念特別展』、下関市立歴史博物館わ2018年。NCID BB25879110。
- ^ 『上野三碑 : ユネスコ「世界の記憶」(国際登録)申請書 : 2016年5月30日提出 = Nomination form International Memory of the World register - Three Cherished Stelae of ancient Kozuke - submitted on May 30, 2016』、上野三碑世界記憶遺産登録推進協議会、2018年、NCID BB27039416。
- ^ “世界記憶遺産に「朝鮮通信使」”. nikkei.com. 2018年3月4日閲覧。
- ^ “ユネスコ「世界の記憶」(2022-2023登録サイクル)への登録申請案件の決定”. Ministry of Foreign Affairs of Japan. 2022年3月24日閲覧。
- ^ “제556돌 한글날 기념식(第556周年ハングルの日記念式)”] (朝鮮語). ハンギョレ新聞 (Seoul). (2002年10月9日). オリジナルの2015年7月13日時点におけるアーカイブ。 2015年6月5日閲覧。 서울서울/연합뉴스
- ^ 「慰安婦資料、世界遺産へ国際委=韓国」『時事通信』2015年5月7日
- ^ “世界遺産登録を目指す韓国「慰安婦関連記録物」 “着せ替え”慰安婦ブロンズ像の神格化が進行中!?”. livedoor NEWS. サイゾー (2015年5月23日). 2015年5月25日閲覧。
- ^ “南京大虐殺、世界記憶遺産に登録 ユネスコが発表”. 共同通信社. 47NEWS. (2015年10月10日) 2015年10月10日閲覧。
- ^ “甲骨文字がユネスコ世界遺産に登録”. 人民日報. 人民網. (2017年11月25日) 2018年5月19日閲覧。
- ^ “Arab States” (英語). Memory of the World (official website). UNESCO. 2011年9月20日閲覧。
- ^ “Africa” (英語). Memory of the World (official website). UNESCO. 2011年9月20日閲覧。
- ^ a b “Latin America and the Caribbean” (英語). Memory of the World (official website). UNESCO. 2011年9月20日閲覧。
- ^ “Registered Heritage” (英語). Memory of the World (official website). UNESCO. 2011年9月20日閲覧。
- ^ a b Memory of the World Committee for Asia and the Pacific UNESCO
- ^ “水平社と朝鮮・衡平社の交流、記憶遺産地域版に登録”. 日本経済新聞. (2016年5月25日)
- ^ “「華僑虐殺」を記憶遺産アジア太平洋地域版に申請 大戦中の旧日本軍 投票で不登録”. 産経新聞. (2016年5月24日)
- ^ “国内候補の推薦せず=18年登録「世界の記憶」地域版”. 時事通信社. Yahoo!ニュース. (2017年7月28日)
- ^ “韓国、ユネスコ新組織誘致 世界記憶遺産を管轄”. 東京新聞. (2017年11月7日)
- ^ “Mobilizing the documentary heritage community amid the COVID-19 pandemic” (英語). UNESCO. 2020年4月22日閲覧。
- ^ “Stressing Civil Society Groups are Catalysts for Peace, Secretary-General Congratulates 2022 Nobel Peace Prize Winners, Urging Support for Brave Defenders of Democracy” (英語). UN Press. 2022年10月7日閲覧。
- ^ “台湾 ユネスコから門前払い―世界で最もそろっている甲骨文字がなぜ?”. YouTube. ニュース動画. 2018年5月19日閲覧。
- ^ “歴代宝案 記憶遺産目指す 台湾政府 大学所蔵写本を登録”. 琉球新報. Yahoo!ニュース. (2022年12月3日)
- ^ “World Day for Audiovisual Heritage”. Communication and Information » Themes » Access to knowledge » Archives. UNESCO. 2015年10月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年10月17日閲覧。
- ^ “Jikji Memory of the World Prize”. UNESCO. 2020年10月16日閲覧。
- 世界の記憶のページへのリンク