万国郵便連合 万国郵便連合の概要

万国郵便連合

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/10 10:00 UTC 版)

万国郵便連合
概要 専門機関
略称 UPU
代表 目時政彦
状況 活動中
活動開始 1874年10月9日
本部 スイスベルン
公式サイト www.upu.int
Portal:国際連合
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概要

万国郵便連合は、加盟国間の郵便業務を調整し、国際郵便制度をつかさどる。

2番目に古い国際連合専門機関であり(最古は国際電気通信連合、万国郵便連合はそれに次いで古い)、1874年10月9日万国郵便条約によって設立された。本部はスイスベルンに置かれている。

万国郵便連合の設立によって、次の3点が合意された。

  1. 地球上のほぼすべての地域から固定料金に近い形で郵便物が送れること。
  2. 国際郵便、国内郵便(内国郵便)がともに同様の扱いがなされること。
  3. 国際郵便料金は、それぞれの国で徴収し、使用すること。

特に郵便切手を貼った郵便物については、どの加盟国の切手でも国際的に通用することを万国郵便連合憲章(UPU憲章)で定めている。また、国際返信切手券の発行事務などを行っている。

国際連合の設立後、1948年、国際連合の専門機関の一つとなった。現在の加盟国は、2013年9月現在で192カ国である。アンドラパラオ中華民国台湾)などは加盟していない(これらの地域にも国際郵便を送ることは可能である)。またパレスチナ国は1999年以来オブザーバーの地位を得ているが、2019年2月に行った加盟申請は加盟国による郵便投票の結果、必要な票数に届かず加盟を阻まれている[1]

万国郵便連合の公用語フランス語であるが、1994年より作業言語として英語が指定されている。また発行する文書は、国連公用語6言語に翻訳されることが規約で定められている。

沿革

1864年アメリカ合衆国モンゴメリー・ブレア提唱のもとに15カ国が参加し、パリで国際郵便の原則が協議されたが、合意には至らなかった。

普仏戦争後の1874年、ドイツ帝国ハインリヒ・フォン・シュテファン英語版の草案をもとに、郵便に関する国際会議が、スイスベルンで開催された。この第1回大会議で調印された14条からなる国際郵便に関する批准条項(ベルン条約)の中に、一般郵便連合英語: General Postal Union)に関する国際総合機関の設置が定められた。4年後の1878年、パリにおける第2回大会議で、一般郵便連合は万国郵便連合に改称された。

2018年10月17日、アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプは、中華人民共和国への優遇を理由に万国郵便連合からの脱退を表明し[2]、中国はこれに反発した[3]。しかし、この優遇措置が見直されたためアメリカは脱退を撤回した[4]。国際郵便は送付先の郵便事業者に対する手数料を基に清算が行われており、採択された国際ルール上、途上国は先進国の料金より安価で発送することができるため、先進国での実際に掛かる配達コストを下回る状況が生まれていた[5][6]。中国やシンガポールドイツフランスなどがこの制度により恩恵を受けており、2020年7月にアメリカで3倍程度手数料の引き上げが行われたほか、国際ルールの見直しが行われた結果、各国での手数料引き上げに伴い日本郵便でも25年振りとなる料金改定が2021年4月から行われ、アメリカ向け郵便物は62%の大幅値上げとなった。この料金変更に対応するため、日本郵便は国際通常郵便料金の地帯区分に新たにアメリカ(グアム等海外領土含む)を含む第4地帯を設定した[7]。なお3辺が90センチ以内で重量が2キロ以内となる軽量な郵便物のみが対象となり、ハガキ手紙および通常の小包に関しては料金が据え置かれている[8]

承認が限られている地域への配達

以下の広く国際的に国家承認を得ていない国や地域については、万国郵便連合は直接の配達を許可しておらず、第3国を経由する必要がある[9]。ただしアルツァフは2023年ナゴルノ・カラバフ衝突の結果、実効支配地域の全てを喪失し、アルメニアに亡命状態にある[10]

国・地域 郵便物が経由する国
アブハジア ロシア
アルツァフ共和国 アルメニア
コソボ セルビア
北キプロス トルコ
サハラ・アラブ民主共和国 アルジェリア
南オセチア ロシア
中華民国台湾 日本
沿ドニエストル共和国 モルドバ

  1. ^ UPU issues statement on membership application from State of Palestine”. 万国郵便連合. 2019年9月19日閲覧。
  2. ^ 鳳山太成 (2018年10月18日). “米、万国郵便連合を離脱へ 中国との料金格差批判”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36618280Y8A011C1FF2000/ 2019年4月3日閲覧。 
  3. ^ “中国を「理由」にするな=米の郵便連合脱退表明”. 時事通信. (2018年10月18日). https://web.archive.org/web/20190403080328/https://www.jiji.com/jc/article?k=2018101801048 2019年4月3日閲覧。 
  4. ^ “米、郵便連合脱退を回避=途上国からの料金改革で合意”. 時事通信. (2019年9月26日). https://web.archive.org/web/20191002090856/https://www.jiji.com/jc/article?k=2019092600480&g=int 2020年6月1日閲覧。 
  5. ^ 米、万国郵便連合を離脱へ 中国との料金格差批判”. 日本経済新聞 (2018年10月18日). 2020年10月16日閲覧。
  6. ^ 米、万国郵便連合から脱退の構え 海外からの郵便料金引き上げへ”. CNN.Jp (2018年10月18日). 2020年10月16日閲覧。
  7. ^ 国際郵便の一部料金改定のお知らせ”. 日本郵便. 2021年8月4日閲覧。
  8. ^ 日本郵便 小型の国際郵便 4月から大幅値上げ 貿易摩擦が影響”. NHK NEWSWEB (2020年10月15日). 2020年10月16日閲覧。
  9. ^ Members of the Universal Postal Union and Their Join Dates”. United Postal Stationery Society. 2017年11月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月5日閲覧。
  10. ^ “Karabakh representative office in Armenia now houses Artsakh government, under President’s leadership”. News.am. (2023年10月16日). https://news.am/eng/news/787067.html 2024年1月9日閲覧。 
  11. ^ 讀賣新聞. http://www.yomiuri.co.jp/nandemo/list/20000510.htm 
  12. ^ 「万国郵便総合創立に関する法律」外務省条約局資料
  13. ^ “日本郵便、万国郵便連合の理事会議長に初選出”. マーケティングパートナー株式会社. (2012年10月12日). http://www.logi-today.com/54383 2016年10月10日閲覧。 
  14. ^ 第26回万国郵便大会議における選挙の結果” (PDF). 日本郵便. 2016年10月10日閲覧。
  15. ^ “国連関係機関 万国郵便連合の事務局長に目時政彦氏選出”. NHK NEWSWEB. NHK. (2021年8月25日). https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210825/k10013223721000.html 2021年8月25日閲覧。 
  16. ^ 万国郵便連合国際事務局長への立候補について” (PDF). 日本郵便. 2018年10月29日閲覧。
  17. ^ “郵便国連機関トップに立候補 日本郵便の目時執行役員”. 日本経済新聞. (2018年10月26日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36955320W8A021C1EA4000/ 2021年8月25日閲覧。 
  18. ^ Congratulations to Masahiko Metoki”. 万国郵便連合. 2021年8月25日閲覧。
  19. ^ “国際郵便トップに目時政彦氏”. 47NEWS. 共同通信社. (2022年1月5日). https://web.archive.org/web/20220106021453/https://nordot.app/851407847263879168?c=39546741839462401 2022年1月6日閲覧。 


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