一太郎 パッケージロゴの変遷

一太郎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/14 18:21 UTC 版)

パッケージロゴの変遷

  • 初代(一太郎Ver.1 - 一太郎Ver.3まで使用) - ジャストシステム創業者・浮川和宣による毛筆[12]
  • 2代目(一太郎Ver.4 - 一太郎9まで使用) - 進藤洋子による毛筆アート[12]
  • 3代目(一太郎10 - 一太郎13まで使用) - 舟橋全二による切り絵カリグラフィ[12]
  • 4代目(一太郎2004 - 一太郎2009まで使用) - 明朝体ロゴ
  • 5代目(一太郎2010・一太郎2015で使用) - 2代目同様、進藤洋子による毛筆アート(2代目と異なるデザイン)
  • 6代目(一太郎2011で使用) - 紫舟による毛筆
  • 7代目(一太郎2012 - 一太郎2014、一太郎2016以降で使用) - 藤田幸恵による筆文字

累計出荷本数の推移

  • 1991年11月7日 - 100万本
  • 1994年6月 - 200万本
  • 1995年3月 - 300万本
  • 1995年12月 - 400万本
  • 1996年4月19日 - 500万本
  • 1996年10月11日 - 700万本
  • 1997年1月 - 800万本
  • 1997年9月19日 - 1000万本
  • 1999年7月 - 1200万本
  • 2002年12月 - 1600万本
  • 2005年2月 - 1800万本
  • 2009年 - 2000万本以上[12]

(「jX-Word太郎」と「一太郎」の合計。ジャストシステム発表による)

長所と短所

日本語の文章作成を前提としたソフトであるため日本語に関する機能は豊富であるが[14]Microsoft WordOpenOfficeなどの競合ソフトと比較すると短所も見受けられる。

長所

  • 最も安価な標準パッケージにも最新版のATOKが付属し、プレミアム版にはフォントやATOK用の辞書や読み上げソフトなどが付属する[15]。また設定メニューを直接呼び出せるなど、ATOKとの連携機能も備わっている[16]
  • 一太郎の既存ユーザー向けにはバージョンアップ版、ジャストシステム他製品の所持者やMicrosoft Office利用者向けに特別優待版などの割引がある。また同一ユーザーの所有であれば、1ライセンスで3台までのインストールを認めている。
  • 縦書きへの切り替えやルビの細かい設定、準仮名や異体字セレクタの入力、漢字とひらがな用のフォントの個別設定、市販されている原稿用紙を再現したテンプレートが多数付属しているなど、執筆をサポートする機能が豊富[17][15]。また漢文の作成に関する機能もあるなど教育分野で需要の高い機能もある[15]
  • Microsoft WordやPowerPointなどと比較して、「書式設定の緻密性」が最大の特徴であり、字間や行間、罫線と文字列の間隔など非常に細かく設定できる[17]。日本の官公庁内部で使われる様式に詳細な指定がある文章にも対応できる[18]
  • 一般的な禁則処理の他にも、ジャストシステムの文章校正支援ツール「Just Right!」の簡易版を搭載しており、機種依存文字、誤字脱字、頻出語・表記揺れのチェック、読みやすさの評価などDTPソフトにもない機能がある[15][17]。またビジネスや小説など各分野の実情に合わせた改良を行っている[14][16]
  • 文章を印刷する際の機能が充実している[16]
  • 最新版においてもVer.2以降のファイルは全て読み込み可能であるなど、過去の資産について配慮されている。またODFEPUBなど新たなフォーマットにも随時対応している。
  • 専用形式を表示できるビューアが無償で配布されているため、一太郎を購入しなくてもファイルの閲覧と印刷ができる(Windows用のみ)。
  • EPUB形式の出力に対応しており、リフロー型と画像化による固定レイアウトが選択できる他、koboKindleなど各デバイスへの最適化、保存時に異字体セレクタで入力した文字だけを画像にして貼り付け、小説投稿サイトからコピーした文章の書式維持や多用される改行を一括削除するなど電子出版に必要な機能が追加されている[17]

短所

  • Microsoft Office系アプリケーションと比較して、ドキュメント内の画像やテキストボックスなどのオブジェクト貼付機能の操作性が独特である。
  • 独自形式でしか再現できない書式が多くフォーマット自体もクローズドであるため、将来のファイル運用に支障がでる可能性がある。
  • ショートカットキー『CTRL+S』には『上書き保存』へ割り当てられているが、『CTRL+F』には『段落指定』が割り当てられている(通常は『検索』)など、ジャストウィンドウに準拠した割り当てが混在している。さらにこの割り当ては、自社製のソフト間でも整合性がない(ラベルマイティなど)。ただし、一太郎2017以降では「一太郎オーダーメイド」[19]により、初回起動時に一部のキーアサインは一太郎仕様/Windows準拠から選択可能となっている。
  • マクロ機能がVBAと比べて貧弱で、開発言語やデータベースソフトなどからの接続性も低い。独自の表計算ツールが組み込まれているが性能は専用ソフトと比較して劣っているうえ、仕様が突如変更されてもヘルプの記述は最低限であるなど利用価値が低い。またVBAとの互換性や接続なども配慮されていない。
  • 前述のようにWindows上でしか開発されておらず、互換フリーソフトなどもないことから、Windows以外のOSでは一太郎形式で作成されたデータを読むことすらできない。

現在

野村證券日本経済新聞社共同通信社・鉄道会社などの一部の民間企業では一太郎を標準のワープロソフトとして指定している[要出典]

かつては公文書の作成に向いているため中央省庁でのシェアが高く[20]、一太郎の脆弱性を利用したウイルスが中央省庁に送信される事件もあった[21]。2018年ごろからは新規採用者がWordで教育を受け一太郎の操作を知らないことや、併用による業務効率の低下を避けるためWordへの一本化が進行しシェアが低下している[22]。各種公的機関がウェブサイト上で公開している申請書等のファイルは一太郎形式のファイル(.jtd)で公開しているケースもあったが、現在ではPDFMicrosoft Word形式への統一が進んでいる。

小説家、記者など日本語の文章を書く職業にも人気が高い[15]

学校を始めとした教育業界においてはDTPソフトよりも低価格ながら、漢文への対応など書式の詳細な設定や強力な罫線機能により各種プリント物の作成が容易であるため依然としてシェアが高い[15]。メーカーでも教材作成時に必要となる機能を強化するなどしている[23]

中央省庁では、検察庁、裁判所の一部、政務三役の答弁書など法務関連や書式が指定される分野で利用されている[18][24]。また宮内庁では「簡単なパソコン操作」の例としてあげている[25]。農林水産省が長らく使用してきたが、民間企業とのやりとりや他省庁文書との互換性、法案の条文ミスなど不都合が生じるようになったため、2021年3月、Microsoft Word使用を原則化する通知が出された[26]。なお法案条文のミスに関しては富士通と共同開発した「法制執務業務支援システム(e-LAWS)」が使いにくいためであり、一太郎とは関係が無いという見解もある[20]

法曹三者裁判官検察官弁護士)の間では、準備書面など業務で使う文書を直感的な操作で作成出来るため、ATOKと合わせて愛用者が多い[18]


注釈

  1. ^ 抱き合わせ販売についてはPC Watch 公正取引委員会、マイクロソフトへの勧告内容をPDFファイルで公開参照。
  2. ^ 当初はジャストウィンドウVer.2対応の「一太郎Ver.6 for JW2」の発売が予告されたが、その後MS-DOSアプリケーションの開発中止が発表され、MS-DOS対応の最終商品としてVer.5にATOK9を実装した形での発売となった。
  3. ^ 開発が遅れたため、それ以前はWindows 95搭載パソコンでも一太郎プリインストールモデルでは16bitであるver6.3がプリインストールされ続けた。
  4. ^ 個人向け商品のみの取り扱い。法人向けライセンス商品としては「一太郎2011」(21)が用意される。
  5. ^ 法人向けライセンス商品としては「JUST Suite 2011」が用意される。「JUST Suite 2007-2010」の法人向け後継商品。
  6. ^ 「JUST Suite 2011」とは別商品。
  7. ^ a b 個人向け商品のみの取り扱い。法人向けライセンス商品としてはすでに発売中の「一太郎Pro」が用意されている。
  8. ^ a b 個人向け商品のみの取り扱い。法人向けライセンス商品としてはすでに発売中の「JUST Suite 2011」および「JUST Office」が用意されている。
  9. ^ Windows 11の機能、Windows 10では不可。

出典

  1. ^ 読売新聞 2023年6月11日 1面および28面
  2. ^ 関口和一(著)、2000、『パソコン革命の旗手たち』、日本経済新聞社 ISBN 4-532-16331-5
  3. ^ THE COMPUTER編集部(編)、1991、『パソコンヒット商品物語』、ソフトバンク ISBN 4-89052-194-1 pp. 151
  4. ^ 日本一となった太郎:「一太郎」ついに誕生 バージョンアップはバグとの闘い /7”. 毎日新聞. 2022年1月29日閲覧。
  5. ^ 『日本経済新聞』2022年3月17日東京朝刊、48面
  6. ^ 一太郎はこうして生まれた”. justsystems.com. 2022年3月19日閲覧。
  7. ^ 「News Room」『月刊マイコン』2月号、電波新聞社、1992年、158頁。 
  8. ^ 『日本経済新聞』1986年1月21日四国朝刊、12面
  9. ^ 「一太郎 7 for Windows 95」、9/13に発売”. PC Watch (1996年8月6日). 2012年5月8日閲覧。
  10. ^ ジャストシステム、一太郎8を2月28日に発売”. PC Watch (1997年1月27日). 2012年8月20日閲覧。
  11. ^ ジャストシステム、一太郎/花子2004とATOK17を2004年2月に発売、PC Watch、2003年12月3日。
  12. ^ a b c d e 日本タイポグラフィ協会顕彰「佐藤敬之輔賞」を受賞いたしました、ジャストシステム(2009/12/29閲覧)
  13. ^ 田村規雄 (2010年3月2日). “初代「一太郎」が「情報処理技術遺産」に”. IT Pro. 2010年3月3日閲覧。
  14. ^ a b 日本経済新聞社・日経BP社. “新「一太郎」はビジネス表現の校正を強化 口語も正確|MONO TRENDY|NIKKEI STYLE”. NIKKEI STYLE. 2021年9月5日閲覧。
  15. ^ a b c d e f 株式会社インプレス (2020年1月31日). “【笠原一輝のユビキタス情報局】 さらに“日本語を極めた”2020年版一太郎とATOK。ATOKのアップデートは明日公開”. PC Watch. 2021年9月5日閲覧。
  16. ^ a b c 株式会社インプレス (2021年12月2日). “「一太郎」がプレゼンにも使えるように ~ジャストシステムが「一太郎2022」を発表/出先でのテレワークでも情報漏洩を防ぐ「プライバシーモード」を搭載”. 窓の杜. 2022年1月29日閲覧。
  17. ^ a b c d 一太郎活用本「本を書く、作る。「改訂版」」”. www.justmyshop.com. 2021年9月5日閲覧。
  18. ^ a b c なぜ法律家には「一太郎ファン」が多いのか? Word全盛でも目立つ“偏愛”ぶり”. 弁護士ドットコム. 2021年4月4日閲覧。
  19. ^ 自分だけのスタイルを作れる「一太郎2017」 - 2018/01/04 閲覧
  20. ^ a b 法案ミス、使われない新システム 「一太郎」に罪なし”. 日本経済新聞 (2021年6月11日). 2021年9月5日閲覧。
  21. ^ INTERNET Watch 「一太郎」の脆弱性を悪用するウイルスメール、中央省庁に送信 - 2012年6月6日閲覧
  22. ^ ツッコミどころ満載、農水省「一太郎」廃止報道に失笑 (1/3) - 経済インサイド
  23. ^ 「一太郎」スマホアプリ登場 写真から自動で文字起こし 開発の理由は - ITmedia NEWS
  24. ^ 法案ミス、不慣れなワープロソフト原因か 議員が指摘「若手職員には『一太郎』の経験少ない人も」|社会|地域のニュース|京都新聞”. 京都新聞. 2021年4月4日閲覧。
  25. ^ 書陵部図書課宮内公文書館研究職員の採用 - 宮内庁”. www.kunaicho.go.jp. 2023年6月12日閲覧。
  26. ^ 農水省は「一太郎」を禁止したのか 重宝された使い勝手:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2021年4月4日閲覧。
  27. ^ ITMedia「8月28日が「一太郎の日」に認定」 - 2012年6月6日閲覧






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