一反木綿
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/26 18:35 UTC 版)
フィクションにおける一反木綿
一反木綿は古典の妖怪絵巻などによる妖怪画が確認されていないため、かつては比較的無名な妖怪だったが、水木しげるの漫画『ゲゲゲの鬼太郎』に登場してから一躍、名が知られることとなった[10]。現在では同作での九州弁のトークと気のいい性格や、ユニークな飛行の姿などの理由で知名度も高く、人を襲うという本来の伝承とは裏腹に人気も高い[4][11]。水木の出身地・鳥取県境港市の観光協会による「第1回妖怪人気投票」では1位に選ばれた[1][11]。
なお水木の妖怪画では『鬼太郎』に登場するキャラクターのように、2つの目と2本の腕を持つ布の姿で描かれているため[3]、同様に布に2つの目が描かれた妖怪画が一反木綿のイメージとして定着しているが、水木の妖怪画はあくまで創作であり、実際の伝承や前述の目撃談では目も腕もなく、単に布に似た飛行物体とされる[12][13]。
『仮面ライダー響鬼』などの特撮ヒーロー作品では、本来の伝承を元にしつつ、外見や性格などに独自の味付けをし、主人公たちの敵キャラクターとして登場させているという例もある[14]。
鹿児島県の郷土史家・竹ノ井敏は、地元からも忘れられつつある民話を子供たちに覚えてもらうため、2007年より一反木綿の紙芝居を製作して活動を始めている[1]。
類例
一反木綿に類すると考えられている妖怪に、以下のものがある[2]。ムササビが森の夜道を滑空し、人の顔にへばりついて驚かせたため、これらのような妖怪と見なされたとの説もある[15]。
- 衾(ふすま)
- 佐渡島に江戸時代に多く出没したと伝わる妖怪。大きな風呂敷のような姿の妖怪で、夜道などでどこからともなく飛来し、いきなり通行人の頭にかぶさってくる。どんな鋭い刀でも切ることはできないが、一度でもお歯黒をつけた歯なら噛み切ることができる。そのため佐渡では、男性でもお歯黒をつける慣わしがあったといわれている[16]。
- 布団かぶせ(ふとんかぶせ)
- 愛知県佐久島。民俗学者・柳田國男の著書に「フワッと来てスッと被せて窒息させる」とあるのみで[17]、伝承が少なく謎が多いが[18]、布団状のものが飛んできて顔面にかぶさって窒息させるものとの解釈もある[19]。
脚注
- ^ a b c d e f 板垣博之「妖怪のこころ 1」『毎日新聞』東京朝刊、毎日新聞社、2007年8月7日、15面。
- ^ a b 多田 1990, p. 107
- ^ a b c 水木 1994, p. 67
- ^ a b c 宮本 & 熊谷 2007, p. 17
- ^ 「怪」編集部 編「映画で活躍する妖怪四十七士を選ぼう!」 『怪』 vol.0025、角川書店〈カドカワムック〉、2008年8月、78頁。ISBN 978-4-04-885002-5。
- ^ 荒俣宏、小松和彦 著、米沢敬 編 『妖怪草紙 あやしきものたちの消息』工作舎、1987年11月、27頁。ISBN 978-4-87502-139-1。
- ^ a b c d e 山口 2007, pp. 20–21
- ^ 佐野史郎 著「インタビュー 佐野史郎」、講談社コミッククリエイト 編 『DISCOVER妖怪 日本妖怪大百科』 VOL.01、講談社〈OfficialFileMagazine〉、2007年10月、29頁。ISBN 978-4-06-370031-2。
- ^ “知識の宝庫! 目がテン! ライブラリー”. 所さんの目がテン!. 日本テレビ (2010年12月11日). 2011年1月23日閲覧。
- ^ 宮本幸枝 著、村上健司監修 編 『津々浦々「お化け」生息マップ - 雪女は東京出身? 九州の河童はちょいワル? -』技術評論社〈大人が楽しむ地図帳〉、2005年7月、96頁。ISBN 978-4-7741-2451-3。
- ^ a b 「妖怪人気NO1は一反木綿 鬼太郎は4位」『47NEWS』全国新聞ネット、2007年3月17日。2008年4月13日閲覧。オリジナルの2008年2月28日時点におけるアーカイブ。
- ^ 山口敏太郎、天野ミチヒロ 『決定版! 本当にいる日本・世界の「未知生物」案内』笠倉出版社、2007年5月、112-113頁。ISBN 978-4-7730-0364-2。
- ^ 京極夏彦他 『妖怪馬鹿』新潮社〈新潮OH!文庫〉、2001年2月、354頁。ISBN 978-4-10-290073-4。
- ^ 山口敏太郎 『山口敏太郎のミステリー・ボックス コレが都市伝説の超決定版!』メディア・クライス、2007年8月、188頁。ISBN 978-4-778-80334-6。
- ^ 多田克己「絵解き 図画百鬼夜行の妖怪」 『季刊 怪』 第7号、角川書店〈カドカワムック〉、1999年12月、281頁。ISBN 978-4-04-883606-7。
- ^ 民俗学研究所 編 『綜合日本民俗語彙』 第4巻、柳田國男監修、平凡社、1955年、1359頁。 NCID BN05729787。
- ^ 柳田國男 編 『海村生活の研究』日本民俗学会、1949年4月、319頁。 NCID BN06575033。
- ^ 村上健司編著 『妖怪事典』毎日新聞社、2000年4月、297頁。ISBN 978-4-620-31428-0。
- ^ 宮本 & 熊谷 2007, p. 65.
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