ワシントン・ポスト 批判と論争

ワシントン・ポスト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 06:49 UTC 版)

批判と論争

「ジミーの世界」捏造記事事件

1980年9月、ポスト紙の日曜版一面に、ジャネット・クック記者の取材による8歳のヘロイン中毒者の生活を紹介する特集記事「ジミーの世界」(Jimmy's World)が掲載された[121]。ポスト紙内にもこの記事の信憑性を疑う声はあったが、編集部はこの記事を擁護し、副編集長のボブ・ウッドワードはこの記事をピューリッツァー賞に応募した[122]。クックはこの記事で1981年4月13日にピューリッツァー賞 特集記事部門英語版を受賞した[123]。その後、この記事が完全な捏造であることが判明し、ピューリッツァー賞は返上された[124][125]

個人的な「サロン」での勧誘

2009年7月、バラク・オバマ政権下での医療制度改革をめぐる激しい議論が行われている時期、ポリティコは、ある医療ロビイストがポスト紙の医療関連の編集スタッフからの接触を受けたと報じた[126]。ポスト紙発行者のキャサリン・ウェイマス英語版は、私邸でディナーパーティーやサロンを計画し、著名なロビイストや業界団体のメンバー、政治家、実業家を招待していた[127]。参加者には、サロン1回のスポンサー料として2万5千ドル、11回で25万ドルが請求され、イベントは一般市民やポスト紙以外の報道機関には非公開とされていた[128]。ポリティコの報道は、「ポスト紙のスタッフとの交流を目的としたパーティ」という印象を与え、ワシントンではやや複雑な反応があった[129][130][131]

報道の直後、ウェイマスはサロンを中止した。ホワイトハウス法律顧問のグレゴリー・B・クレイグ英語版は、連邦倫理規定英語版により、このようなイベントには事前の承認が必要であることを関係者に伝えた。このサロンの「ホスト兼ディスカッションリーダー」の一人として名前が挙がっていたポスト紙編集主幹のマーカス・ブラウチュリ英語版は、この計画に「愕然とした」(appalled)と述べ、「ワシントン・ポストのジャーナリストへの接触が買収可能であることを示唆している」と付け加えた[132][133]

『チャイナデイリー』からの広告付録の提供

ポスト紙は2011年から、中国共産党中央宣伝部が所有する英字新聞『チャイナデイリー』が提供する「チャイナ・ウォッチ」の広告付録を印刷版とオンライン版に掲載するようになった。オンライン版「チャイナ・ウォッチ」のヘッダーには、"A Paid Supplement to The Washington Post"(ワシントン・ポストへの有料広告)と告知が一応されていたが、『アトランティック』誌のジェームス・ファローズ英語版は、ほとんどの読者はこの告知に気が付かないだろうと指摘している[134]。ポスト紙を始めとする世界の複数の新聞社に配布された「チャイナ・ウォッチ」の広告付録は、4ページから8ページで、月1回以上掲載されている。『ガーディアン』紙の2018年の報道によると、「チャイナ・ウォッチ」は「教則的で旧態依然としたプロパガンダの手法」を用いているという[135][136]

2020年のフリーダム・ハウスによるレポート"Beijing's Global Megaphone"でも、「チャイナ・ウォッチ」を配信しているポスト紙などの新聞社が批判されている[137][138]。同年2月、連邦議会の共和党議員35名は司法省に書簡を送り、『チャイナ・デイリー』による外国代理人登録法(FARA)違反の可能性について調査を求めた[139]。書簡では、ポスト紙に掲載された記事"Education Flaws Linked to Hong Kong Unrest"(香港の騒乱につながる教育の欠陥)を、「香港での弾圧への支持など、中国の残虐行為の隠れ蓑となる記事」の一例として挙げている[140]。『ガーディアン』によると、ポスト紙は2019年までに「チャイナ・ウォッチ」の掲載を中止した[141]

従業員の給与・福利厚生

1986年、クラウディア・レヴィ英語版らポスト紙の5人の従業員が、ポスト社が予算上残業代を認めていないと主張していたとして、残業代の支払いを求めてポスト社を提訴した[142]

2018年6月、ポスト紙の400人以上の従業員が、オーナーのジェフ・ベゾスに対し「公正な賃金、退職・家族休暇・健康管理のための公正な福利厚生、および公正な雇用保障」を要求する公開書簡に署名した。この公開書簡には、従業員の証言ビデオが添付されており、ポスト紙の購読者数が記録的に伸びているにもかかわらず、「衝撃的な給与慣行」が行われており、給与は週に平均10ドル上昇しているが、これはインフレ率の半分以下だと主張している。ポスト紙の労働組合と経営陣の間での給与や福利厚生をめぐる交渉が1年にわたって不調に終わっていたため、この請願が実施された[143]

コビントン・カトリック高校の生徒による訴訟

2019年、コビントン・カトリック高等学校英語版の生徒、ニック・サンドマン(Nick Sandmann)は、同年1月に起きたコビントン高校の生徒と先住民族の行進英語版とのリンカーン記念館での対立に関するポスト紙の記事で名誉を毀損されたとして、ポスト社を訴えた[144][145]。同年10月、連邦判事は、サンドマンが名誉毀損であると主張したポスト紙の33の記述のうち30は名誉毀損ではないと判断し、訴訟を却下したが、サンドマンが訴状を修正して再提出することを認めた[146]。サンドマンの弁護士が訴状を修正した後、同年10月28日に訴訟が再開された[147]。判事は、訴状の対象となったポスト紙の33の記述のうち30は名誉毀損ではないとする先の判決を支持したが、「(サンドマンが)ネイサン・フィリップスを『ブロック』し、『退却を許さない』と述べている」とした3つの記述については、さらなる検討が必要であることに同意した[148]。2020年7月24日、ポスト社はサンドマンと和解した。和解金の額は公表されていない[149]

物議を醸した論説やコラム

ポスト紙の論説やコラムの中には、批判を招いたものがいくつかある。コラムニストのリチャード・コーエン英語版の長年にわたる人種に関するコメント[150][151]や、2014年の大学での性的暴行英語版に関するジョージ・ウィル英語版のコラム[152][153]などである。ポスト紙がイエメンフーシの指導者であるムハンマド・アリ・アル・フーシの論説を掲載したことは、一部の活動家から、「イランが支援する反欧米・反ユダヤ主義のグループに主張の場を提供した」という理由で批判された[154]。ポスト紙のコラムニスト、ダナ・ミルバンク英語版は、物議を醸している金融家ジョージ・ソロスをあからさまに皮肉を込めて攻撃した[155]。ポスト紙のコラムニスト、ジョナサン・ケープハートは、デモに参加しているバーニー・サンダースの写真は実際のサンダースではないと主張した。本当にサンダースであることを確認する追加写真を写真家が発表しても、ケープハートもポスト紙も主張を撤回しなかった[156]

選挙選出者からの批判

ドナルド・トランプ元大統領は、自身のTwitterアカウントでポスト紙をフェイクニュースだなどと繰り返し非難しており[157]2016年の大統領選開始から2018年8月までに、20回以上もAmazon.comに絡めて同紙への批判をツイートまたはリツイートしていた[158]。トランプは、同紙自体を攻撃するだけでなく、Twitterでポスト紙のジャーナリストやコラムニストも非難していた[159]2019年10月27日までに、ホワイトハウスは全ての連邦政府機関に対しポスト紙の購読停止を求めたと発表した[160]

2020年の民主党大統領予備選挙で、バーニー・サンダース上院議員は、ポスト紙が自身の選挙戦に関して偏向報道をしており、これはベゾスによる同紙の買収が原因だとして、繰り返し批判した[161][162]。サンダースは、社会主義雑誌『ジャコビン英語版[163]や進歩的ジャーナリスト監視団体「フェアネス・アンド・アキュラシー・イン・レポーティング英語版[164]に対しても批判した。ポスト紙の編集主幹マーティン・バロン英語版は、サンダースの批判は「根拠がなく、陰謀に満ちている」と反論した[165]

日本関連

1993年皇太子徳仁親王と小和田雅子の結婚決定に関して、ポスト紙は報道協定記者クラブに縛られない外国報道機関であったため、ポスト紙の日本人記者東郷茂彦がスクープとして報じ、報道協定が事実上無効になった。

2007年従軍慰安婦問題について、日本国政府の責任を否定し、アメリカ合衆国下院121号決議の全面撤回を要求する意見広告"THE FACTS"が掲載された。日本の保守派の主張を広めることができたとする意見や、かえってアメリカ合衆国下院の同決議を早める結果となったという意見があるなど、評価は分かれている。

2010年核セキュリティ・サミットに関連した記事で、鳩山由紀夫を"loopy"(愚か、変わり者)や「最大の敗者」と厳しく批判した[166][167]


注釈

  1. ^ 現存する同名の新聞とは無関係
  2. ^ 当時アメリカ共産党が発行していた新聞。

出典

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