ワクチン 副反応

ワクチン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/10 05:49 UTC 版)

副反応

弱いとはいえ病原体を接種するため、望まれない反応も起こすことがある。軽微なものとしては、投与部位の発赤・腫脹・疼痛・感冒様症状などがある。重大なものとしては無菌性髄膜炎、血小板減少性紫斑、膵炎などが知られる。(詳細は個別のワクチンを参照)

ワクチン接種後の自己免疫疾患はまれに報告され、ウイルスなどの感染が引き金となるまれな重篤なこれらの疾患はワクチンの接種によっても起こりうる[33]全身性エリテマトーデス関節リウマチ炎症性ミオパチー多発性硬化症ギラン・バレー症候群などがあり、ギラン・バレー症候群では報告のあったワクチンはほかと比較して多様である[33]

治験では掴めなかった低い頻度の副作用の発生が検出されるよう、迅速に情報収集がなされる[34]。時に薬害事件へと発展し、接種中止・ワクチンの改良がおこなわれる。

2014年のコホート研究のメタ解析は、ワクチンと自閉症との関連に否定的であった[35]

日本のワクチン事情

日本では1849年にオットー・ゴットリープ・モーニッケが天然痘の痘苗を輸入し[36]、以後本格的に種痘が全国に広まった。1909年には種痘法が施行され、1948年には予防接種法が制定されて、天然痘以外の感染症でも予防接種が義務化された[37]

1964年(昭和39年)に始まった、インフルエンザワクチンの被害を訴える訴訟は、1980年代まで長く続き報道された[38]。続く予防接種による訴訟によって、1976年(昭和51年)に予防接種法が改正され、救済制度が設立された[39]。1994年には強制予防接種が緩和され、定期ワクチン接種は勧奨にとどめられることになった[40]。ただし定期接種は国策として行われるものであるため費用助成が行われており、ほとんどの場合無料である[41]

日本は、1980年代までワクチン先進国とされていたが、副作用による訴訟が相次ぎ、厚生省とメーカーが開発・接種に消極的になった結果、日本はワクチン後進国だと言われることもある[42]。1990年代以降、海外で続々と開発されたワクチンが日本ではほとんど認可されず、「ワクチン・ギャップ」と称されるほど他国に比べワクチン開発が遅れた状況となった。この状況は2007年以降ワクチンの認可が急速に進められたことでやや解消されつつある[43]

日本で予防接種が徹底されないために、2007年にはカナダに修学旅行に行った生徒が、現地では根絶されている麻疹に感染したため、ホテルから外出禁止となり、修学旅行が打ち切りになり帰国することが報道された。ただしこれにより麻疹ワクチンの接種は徹底されるようになり、2015年にはWHOが日本を麻疹排除国に認定した[44]。小児用のHibワクチンは、先進国に大幅に遅れて認可されたが、当時アジアで認可されていないのは、北朝鮮と日本だけであった。

日本の主な製造メーカーを挙げる。

インフルエンザワクチンは、北里研究所・デンカ生研・KMバイオロジクス・阪大微生物病研究会である。今後、武田薬品工業・第一三共が開発しようとしている[45]

日本で流布するワクチン有害説について、「語句説明」「理論の論理性」「理論の体系性」「理論の普遍性」「データの再現性」「データの客観性」「データ収集の理論的妥当性」「理論によるデータ予測性」「社会での公共性」「議論の歴史性」「社会への応用性」の10項目から為る「科学性評定の10条件[46]」に基づくと、理論の適応範囲に大きな問題を抱えており、データの面からもこれを支持できる有力な根拠はなく、典型的な疑似科学的言説であると結論づけられている[47]

ワクチン忌避・反ワクチン

ワクチンの危険性やワクチンへの不安をもとにワクチンを忌避する「ワクチン忌避」や、反ワクチン運動がこれまでに多くの国で起こってきた。

ノーベル経済学賞受賞者ダニエル・カーネマンの2015年の言によれば、人々は巷で流行する疾病で死ぬよりもワクチンの副作用で死ぬことを恐れる場合があるのだという。もしワクチン接種後に子供が死んでしまったら、子供にワクチンを受けさせたことがその親にとって多大なトラウマになってしまうというのである。カーネマンの著書で2つの思考プロセスに言及している。1つ目は、何か感情を揺さぶるような出来事が起きた時に働くような自動的で即座の思考プロセスである。2つ目は、おちついた意識的労力をともなう思考プロセスである。ワクチン接種の損得を考える時には一般的に2番目の思考プロセスが使われるが、ワクチンの副作用で子供を危険に晒すといった恐怖が1番目の思考法を促してしまうわけである[48]。統計的データよりも感情を揺さぶるような個々のケースに我々は強く反応しがちなのだとカーネマンは述べる。

ノーベル医学生理学賞リュック・モンタニエは、エイズウイルスの発見で受賞した人物だが、2018年にもワクチンの過信は危険だと訴え、アルミニウム塩(チメロサールアジュバント)の使用に脳や健康に影響を与える可能性があるため、これをカルシウム塩などに変える必要性や、ワクチンに関する研究の必要性を訴えた[49]。例えば乳酸菌を用いた経口のワクチンが開発中である[50]

2017年にはイタリアで、子供が予防接種を受けるかどうかには自己決定権があるとするFreevaxという運動が開催され、数千人が集い厚生労働大臣に抗議を訴えた[51]。イタリアではワクチンの副作用の噂による接種拒否で、麻疹患者が3倍に急増したことを受け、2017年5月から国立保育園・小学校に入る6歳以下の児童に12種類のワクチンを義務付け、未接種児童の保護者に罰金を科している[52]




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