ロンバルディア州
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/24 08:07 UTC 版)
行政区画
ロンバルディア州は、以下の12県から構成される。所属する県の数はイタリアの州の中で最も多い。
左端の数字はISTATコード、アルファベット2文字は県名略記号を示す。人口は2011年1月1日現在[2]。面積の単位はkm2。
県名 | 綴り | 県都 | 面積 | 人口 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
012 | VA | ヴァレーゼ県 | Varese | ヴァレーゼ | 1,199 | 883,285 |
013 | CO | コモ県 | Como | コモ | 1,288 | 594,988 |
014 | SO | ソンドリオ県 | Sondrio | ソンドリオ | 3,212 | 183,169 |
015 | MI | ミラノ県 | Milano | ミラノ | 1,575 | 3,156,694 |
016 | BG | ベルガモ県 | Bergamo | ベルガモ | 2,723 | 1,098,740 |
017 | BS | ブレシア県 | Brescia | ブレシア | 4,784 | 1,256,025 |
018 | PV | パヴィーア県 | Pavia | パヴィーア | 2,965 | 548,307 |
019 | CR | クレモナ県 | Cremona | クレモナ | 1,772 | 363,606 |
020 | MN | マントヴァ県 | Mantova | マントヴァ | 2,339 | 415,442 |
097 | LC | レッコ県 | Lecco | レッコ | 816 | 340,167 |
098 | LO | ローディ県 | Lodi | ローディ | 782 | 227,655 |
108 | MB | モンツァ・エ・ブリアンツァ県 | Monza e Brianza | モンツァ | 405 | 849,636 |
文化
言語
公用語としてはイタリア語が用いられているが、この地方で伝統的に使われてきた地方言語(Dialetto, 方言)はロンバルド語である。また、南部の一部地域ではエミリア・ロマーニャ語の一種であるエミリア語が話されている。
2006年の国立統計研究所(ISTAT)の統計によれば、6歳以上の住民の家庭内での会話における言語状況は以下の通り[4]。イタリア語(Italiano)、地方言語(Dialetto)、他の言語(Altra lingua)についてのデータで、左列が全国平均、右列がロンバルディア州の数値である。
家庭内の会話における使用言語 | 全国 | 州 |
---|---|---|
イタリア語のみ、あるいは主にイタリア語 | 45.5% | 57.6% |
地方言語のみ、あるいは主に地方言語 | 16.0% | 9.1% |
イタリア語と地方言語の双方 | 32.5% | 26.6% |
他の言語 | 5.1% | 5.7% |
- ロンバルド語
- ロンバルド語は、ロマンス諸語のうちガロ・イタリア語(北イタリア語)に含まれる一群の地方言語である。ロンバルド語の言語変種(方言)は、西ロンバルド語、東ロンバルド語とさらに細かく分類される。ロンバルド語は、隣接するピエモンテ州やスイス南部(ティチーノ州やグラウビュンデン州)でも話されている。
- エミリア語
- エミリア=ロマーニャ州に隣接する、州南部のマントヴァ県、パドヴァ県、クレモナ県の一部では、エミリア語が話されている。エミリア語は、ガロ・イタリア語に含まれるエミリア・ロマーニャ語の一種である。
食文化
ロンバルディア料理は、同じ州内でも地域ごとに郷土料理のバラエティがある。ミラノ料理 (it:Cucina milanese) 、クレモナ料理、マントヴァ料理 (it:Cucina mantovana) など、古都ではそれぞれの食文化が発展している。
県の中南部にあたるポー川流域の平原地帯では稲作がおこなわれていることから、米(カルナローリ種)はよく使われる食材である。また、この平原地帯は牛や豚などの集約的畜産業を可能にしており、牛乳、バター、クリーム、チーズや、ハム、ソーセージ、サラミといったさまざまの畜産品が生産され、料理に使用されている。
コモ湖など多数の湖がある北部の湖沼地帯では、淡水魚を活かした食文化がある(コモ料理 (it:Cucina comasca) )。また、土壌のやせた山岳地帯であるヴァルテッリーナ地方(ソンドリオ県)では蕎麦が栽培されているほか、ハムやチーズ、ワインなどの生産地としても知られている[5]。
- パスタ・スープ類
- 米を用いたロンバルディアの代表的な料理としてリゾットがある。リゾットの中でもとくに、サフランを用いたミラノ風リゾット(risotto alla Milanese)はよく知られている。モンツァでは、リゾットにソーセージを加えたものが一般的である。具だくさんの野菜スープ「ミネストローネ」はロンバルディアが発祥とされるが、パスタの代わりに米が入れられることもある[6]。
- ベルガモ、ブレシア、ヴァルテッリーナ地方などでは、トウモロコシの粉を練ったポレンタがポピュラーである。ポレンタには、ロバ肉ソース(Asino e Polenta)、野鳥 (it:Polenta e osei) 、ゴルゴンゾーラチーズ(Polenta e Gorgonzola)などさまざまな食材が合わされる。
- マントヴァでは、カボチャのペーストを包んだラビオリ「トルテッリ・ディ・ズッカ」 (it:tortelli di zucca) が名物で、溶かしバターとともに供される。 クレモナではラビオリの一種であるマルビニ (it:Marubini) が食される。
-
トルテッリ・ディ・ズッカ
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ピッツォッケリ
- 畜肉加工品・肉料理
- 牛もも肉を塩漬けにした生ハム「ブレザオラ」 (Bresaola) はヴァルテッリーナ地方が発祥の地である。サラミ(イタリア語ではサラメ salame)の生産も行われ、原産地名称保護(DOP)や保護指定地域表示(IGP)の指定を受けているものも多い。
- DOPやIGPの指定を受けているものに以下がある。
- 以下の名称は他州の地名を冠しているが、ロンバルディア州(の一部)も指定地域に含まれている。
- この地域の代表的な肉料理には、日本のカツレツの原型の一つであるコトレッタ(ミラノ風カツレツ) (it:Cotoletta alla milanese) 、豚肉とキャベツの煮込み料理であるカッソーラ (Cassoeula) 、仔牛すね肉の煮込みであるオッソ・ブーコ、ブレシアの名物である炙り焼肉料理スピエド (it:Spiedo bresciano) などがある。
-
ブレザオラ
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カッソーラ
- 魚料理
- コモ周辺では、コモ湖などに生息するスズキ目のヨーロピアンパーチ(イタリア語ではペッシェ・ペルシコ pesce persico)や、ニシン目のアロサの近縁種のミッソルティーニ(missoltini)という名の魚が食卓に上る[5]。
- チーズ
- 当地産のチーズとしては、ゴルゴンゾーラ、グラナ・パダーノ、タレッジョ、ビット、ロビオラ (Robiola) 、ストラッキーノ (Stracchino) などが挙げられる。ゴルゴンゾーラチーズはミラノ近郊のゴルゴンゾーラ、タレッジョチーズはタレッジョ谷(ベルガモ県)が、それぞれその名の由来である。マスカルポーネはもともとロンバルディアのチーズであったが、現在はイタリア全土で生産されている。
- DOPやIGPの指定を受けているものに以下がある。
- 菓子(ドルチェ)
- クリスマスシーズン(待降節)につくられるドライフルーツ入り菓子パン「パネットーネ」や、クリーム状ドルチェである「ザバイオーネ」は、ミラノの名物菓子とされている。マントヴァ名物であるトウモロコシの粉を用いた焼き菓子・ズブリゾローナ (it:Sbrisolona) 、クレモナ名物であるヌガー菓子の一種トッローネ (it:Torrone) 、同じくクレモナ名物の果物のマスタード風味シロップ漬けモスタルダなどは、国指定の伝統食品(PAT) (it:Prodotti agroalimentari tradizionali lombardi) に数えられている。
- ワイン
- 以下の産地名称は、イタリアの原産地名称保護制度の中で最上級にあたる保証つき統制原産地呼称(DOCG)に指定されている。
- フランチャコルタ - ブレシア県フランチャコルタ地方
- スフォルツァート・ディ・ヴァルテッリーナ - ソンドリオ県ヴァルテッリーナ地方
- ヴァルテッリーナ・スペリオーレ (it) - ソンドリオ県ヴァルテッリーナ地方
- モスカート・ディ・スカンツォ (it) - ベルガモ県スカンツォロシャーテ
- オルトレポー・パヴェーゼ・メートド・クラッシコ (it) - パヴィーア県南部(オルトレポー・パヴェーゼ地方)
観光地
ミラノ県の県都ミラノには、史跡としてはスフォルツァ城(スフォルツェスコ城)が有名で、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のガレリア、またモンテナポレオーネ通りがある。教会建築としては、ドゥオーモ(ミラノ大聖堂)、サンタンブロージョ教会、サン・ロレンツォ聖堂、サン・ナザロ・マッジョーレ聖堂、サンテウストルジョ聖堂、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会がある。サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会には、レオナルド・ダ・ヴィンチ作の著名な絵画『最後の晩餐』があり、人気スポットとしてはスカラ座が有名である。博物館・美術館には、ブレラ絵画館、近代美術館 (la Galleria d'Arte Moderna)、レオナルド・ダ・ヴィンチ国立科学技術博物館、バガッティ・ヴァルセッキ美術館 [2]がある。
世界遺産
ロンバルディア州内には、以下の世界遺産がある。
- ヴァルカモニカの岩絵群 (ブレシア県)
- レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』があるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会とドメニコ会修道院 (ミラノ県)
- クレスピ・ダッダ (ベルガモ県カプリアーテ・サン・ジェルヴァージオ)
- マントヴァとサッビオネータ (マントヴァ県)
- ピエモンテ州とロンバルディア州のサクリ・モンティ(一部)
- イタリアのロンゴバルド族:権勢の足跡 (568-774年)(一部)
- ブレシアのサン・サルヴァトーレ=サンタ・ジュリア修道院(ブレシア県ブレシア)、カステルセプリオ=トルバのカストラム(ヴァレーゼ県カステルセプリオおよびゴルナーテ=オローナ)
- アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群(一部)
- ラヴァニョーネ(ブレシア県デゼンツァーノ・デル・ガルダ)、サン・シヴィーノ・ガッビアーノ(マネルバ・デル・ガルダ)、ルガーナ・ヴェッキア (ブレシア県シルミオーネ)、ルコーネ(ブレシア県ポルペナッツェ・デル・ガルダ)、ラガッツィ・デル・ヴォ(クレモナ県ピアーデナ)、バンデ=コルテ・カルパーニ(マントヴァ県カヴリアーナ)、カステッラーロ・ラグセッロ(マントヴァ県モンツァンバーノ)、イゾリーノ・ヴィルジニア=カミッラ=イゾラ・サン・ビアジョ(ヴァレーゼ県ビアンドロンノ)、ボディオ・チェントラーレ・オ・デッレ・モネーテ (ヴァレーゼ県ボーディオ・ロンナーゴ)、イル・サッビオーネ・オ・セッテントリオナーレ(ヴァレーゼ県カドレッツァーテ)
スポーツ
サッカー
州内に本拠を置くプロサッカークラブとしては以下がある。所属リーグは2012-13シーズン現在。
- ACミラン (ミラノ県ミラノ) - セリエA(1部リーグ)
- インテル・ミラノ (ミラノ県ミラノ) - セリエA
- アタランタBC (ベルガモ県ベルガモ) - セリエA
- ブレシア・カルチョ (ブレシア県ブレシア) - セリエB(2部リーグ)
- ASヴァレーゼ1910 (ヴァレーゼ県ヴァレーゼ) - セリエB
- トリティウム・カルチョ1908 (ミラノ県トレッツォ・スッラッダ) - レガ・プロ1(3部リーグ)
- コモ・カルチョ (コモ県コモ) - レガ・プロ1
- フェラルピサロ (ブレシア県サロ) - レガ・プロ1
- ACルメッツァーネ (ブレシア県ルメッツァーネ) - レガ・プロ1
- UCアルビーノレッフェ (ベルガモ県アルビーノ) - レガ・プロ1
- ACモンツァ・ブリアンツァ1912 (モンツァ・エ・ブリアンツァ県モンツァ) - レガ・プロ2(4部リーグ)
- ACレナーテ (モンツァ・エ・ブリアンツァ県レナーテ) - レガ・プロ2
- FCカスティリオーネ (マントヴァ県カスティリオーネ・デッレ・スティヴィエーレ) - レガ・プロ2
- プロ・パトリア・カルチョ (ヴァレーゼ県ブスト・アルシーツィオ) - レガ・プロ2
5部リーグ(アマチュア最上位リーグ)のセリエDでは、ジローネA,Bに属する。ロンバルディア州の地方リーグ(6部リーグ)として、エッチェッレンツァ・ロンバルディア (it:Eccellenza Lombardia) がある。
自転車
競馬
ティチーノ州 | グラウビュンデン州 | トレンティーノ=アルト・アディジェ州 | ||
ピエモンテ州 | ヴェネト州 | |||
ロンバルディア州 | ||||
エミリア=ロマーニャ州 |
- ^ 国立統計研究所(ISTAT). “Tavola: Superficie territoriale (Kmq) - Lombardia (dettaglio provinciale) - Censimento 2001.” (イタリア語). 2012年11月2日閲覧。
- ^ a b c 国立統計研究所(ISTAT). “Total Resident Population on 1st January 2011 by sex and marital status” (英語). 2012年11月2日閲覧。
- ^ イタリア北部2州で住民投票、自治権拡大に9割超賛成『日本経済新聞』朝刊2017年10月24日
- ^ 国立統計研究所(ISTAT). “La lingua italiana, i dialetti e le lingue stranieri” (pdf) (イタリア語). p. 5. 2012年11月3日閲覧。
- ^ a b “ガストロノミー”. ロンバルディア州政府公式ページ. 2012年11月20日閲覧。
- ^ “ミネストローネ”. 和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典(コトバンク所収). 講談社. 2012年11月20日閲覧。
- ^ a b c “姉妹(友好)提携情報”. 自治体国際化協会. 2012年10月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年11月24日閲覧。
- ^ “日本・イタリア間で提携された姉妹都市(リスト)”. 在イタリア日本国大使館. 2012年11月24日閲覧。
- ^ “20世紀西洋人名事典の解説”. コトバンク. 2018年2月11日閲覧。
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