ロジカルシンキング 発達心理学の記述に現れる論理思考

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ロジカルシンキング

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/18 03:13 UTC 版)

発達心理学の記述に現れる論理思考

20世紀の心理学者ピアジェは、人間の成長過程で使われる言語の観察を通じて、誕生してから継続的に発達させる思考能力についての理論を提起し発達心理学の基礎を築いた。この理論における子供の思考の発達過程の中に、目の前に具体的なものや状況がなくても思考を組み立てられる、『論理的思考』の能力を獲得する段階が位置づけられている。

日本語と日本人の特殊性との関連

日本語で書かれた文章が曖昧であることが多いなどの理由から「日本語は論理的な言語ではない」あるいは「日本人は論理思考が苦手である」といった主張が古くからなされている。こうした主張は英語フランス語をはじめとする欧米の言語に堪能な明治時代の日本の知識人によって主張され、志賀直哉等の日本語不要論に展開する議論の一部となってきた。こうした考え方について反論する論者も多い。例えば本多勝一[10]には次のような記述が見られる。

一般の間に日本語は「特殊」だとか、ヨーロッパ語に比べて「論理的でない」といった俗説がはびこっているのも当然であろう。(中略)この俗論は事実として誤っていることを、私達の母語を守るために、具体的に示していく必要がある。あらゆる言語は論理的なのであって、「非論理的言語」というものは存在しない。

ここでの論理的とは学問的な論理でも、また日常的な根拠付けでもなく、意味文法上の厳密性のことを指している。この議論は継続的に見られ、21世紀に入ってもこのテーマに関する書籍が出版されている。例えば小西卓三[11]は、「日本人は論理的でない」「日本語は特殊な言語であるので、論理的な考えを表現するのに適さない」というよく聞かれる主張に対する反論を題材にして論理思考のあり方を解説している。小西による論理思考とはディベートをベースにするものであり適切な根拠付けによる議論の能力のことを指している。

英文・日本文の作文指導との関連

米国では20世紀初頭にStrunk, White[12]によってより簡潔な英文についての指針が提示されて以降、意図を的確に伝えることのできる英文を書く能力が重視されるようになった。この流れで初等教育の段階から、文章がどのような段落構成で行われるべきであり各段落ではどんな文が記述され文の繋がりはどのように示すべきかが作文(コンポジション)の授業として教授されている。こうした文章の構成規則に従った文章のことを『論理的』であると表現することがある。

国際交流が広がった20世紀後半には日本でもこのような文章構成のあり方が重視されるようになり、英文作成を主題にしつつも日本文にも適用できる『論理的な書き方』を解説する書籍が出版されている。同様な問題意識から、21世紀に入ってからも日本文の作文を『論理的』にするための指導方法の模索が続けられている。


  1. ^ https://www.vocabulary.com/dictionary/logical%20thinking
  2. ^ a b 『ロジカル・シンキング』(照屋華子・岡田恵子, 東洋経済新報社, 2001年)
  3. ^ a b 『新版 論理トレーニング(哲学教科書シリーズ)』(野矢茂樹, 産業出版, 2006年)
  4. ^ 『論理的に考える方法』(小野田博一, 日本実業出版社, 1998年)
  5. ^ 『考える技術・書く技術』(バーバラ・ミント, グロービスマネジメントインスティテュート, 1999年) (原題は『Minto Pyramid Principle』)
  6. ^ 『The Uses of Argument』(Stephen Toulmin, Cambridge University Press, 1958年)
  7. ^ 『大学で学ぶ議論の技法』(T・W・クルーシアス, C・E・チャンネル (著), 杉野俊子・中西千春・河野哲也 (訳), 慶応義塾大学出版会, 2004年)
  8. ^ 『ディベートの方法―討論・論争のルールと技術』(フィリップス・R.ビドル (著), 松本 道弘 (訳), 産業能率短期大学出版部, 1978年)
  9. ^ 『知的対決の方法―討論に勝つためには』(松本道弘, 産業能率大学出版部, 1977年)
  10. ^ 『日本語の作文技術』(本多勝一, 朝日新聞社, 1982年)
  11. ^ 『論理アタマのつくり方―思考回路をクリアにする』(小西卓三, すばる舎, 2003年)
  12. ^ The Elements of Style』(William Strunk Jr.・E.B.White Harcourt Brace, 1919年; Macmillan, 1959年)


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