ロシア 軍事

ロシア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/20 18:33 UTC 版)

軍事

モスクワ市西郊外の愛国公園(Patriot Park)で

ロシア連邦軍にはロシア陸軍海軍空軍があり、これとは別に戦略ミサイル部隊Strategic Missile Troops)、航空宇宙防衛軍空挺軍もある。2017年には約100万人が軍に属しており、これは世界で第5位である[49] 。これに加えてソビエト時代の招集を考えると、約250万人の予備役(在郷軍人)がおり、その総数は約2,500万に上るともいわれている[50] 。18才から27才の国民男子は全て1年間の兵役義務がある。

ロシアは世界で最大の核兵器(Russia and weapons of mass destruction)を所有し[51]、世界で2番目の弾道ミサイル潜水艦Ballistic missile submarine)部隊を持ち、米国以外で唯一の戦略爆撃機隊がある。ロシアの戦車部隊は世界最大[要出典]で、海軍の海上部隊、空軍は世界でも最大級である。

ロシアでは軍需産業が盛んである。軍事関係の世界的な供給者としては、2001年には世界の30パーセントを占め、80か国へ輸出しており、世界でも上位にあった[52]ストックホルム国際平和研究所の調査では、2010 - 2014年には世界第2位の輸出国で、2005 - 2009年に比して37パーセントの増加を示した[53]。ロシアは56か国および東部ウクライナの反乱部隊へ武器を供給した。

地理

ロシアの地形図

世界最大の面積を持つロシアは、ユーラシア大陸の北部にバルト海沿岸から太平洋まで東西に伸びる広大な国土を持つ。その面積は日本の約45倍、アメリカの約1.7倍にも達し、南米大陸全体の大きさに匹敵する(正確には南米大陸の方が約76万km²(日本の本州の約3倍程度)大きい)。

国土の北辺は北極圏に入り人口も希薄だが、南辺に近づくと地理的に多様となり人口も多くなる。ヨーロッパ部(ヨーロッパ・ロシア)とアジア部(シベリア)の大部分は広大な平原で、南部のステップから北は広大な針葉林の森であるタイガがその大部分を占めている。さらに高緯度になると、樹木が生育しないツンドラ地帯となる。黒海カスピ海の間の南の国境にはヨーロッパ最高峰(カフカス地方をヨーロッパに含めた場合)のエリブルース山を含むカフカース山脈があり、ヨーロッパとアジアの境界にはウラル山脈がある。

面積を見るとヨーロッパ部よりアジア部の方が広大であるが、国土の西端に当たるヨーロッパ部に人口や大都市、工業地帯、農業地帯が集中していること、さらにスラブ文化のつながりから、ロシアをヨーロッパに帰属させる分類が一般的である。

国土を囲む海域には北極海の一部であるバレンツ海白海カラ海ラプテフ海東シベリア海と、太平洋の一部であるベーリング海オホーツク海日本海、そして西のバルト海と西南の黒海があり、海岸線は3万7,000kmに及ぶ。これらの海に浮かぶロシア領の主要な島には、ゼムリャフランツァヨシファノヴァヤゼムリャ(米国を越える史上最大規模の核実験が行われた)、セヴェルナヤ・ゼムリャ諸島ノヴォシビルスク諸島ウランゲル島サハリン(樺太)、そして日本との領土問題を抱えるクリル諸島(千島列島)がある。特に北極海に面した地域をはじめ、冬季は北極寒波の影響が強いため厳寒であり、氷点下を下回る日が長く続く。

ロシア領内の主要な川にはヨーロッパ部のドン川、大型で良質のチョウザメが多数生息するヴォルガ川カマ川オカ川、アジア部のオビ川エニセイ川レナ川サケ類の漁獲で有名なアムール川などの大河が挙げられる。これらの下流域は日本で大河とされる最上川北上川四万十川よりも川幅が広く、いずれもセントローレンス川下流域に近い川幅がある。また、アジア部の大河はアムール川を除いて南から北へ流れ、北極海へ注ぐ。ブリヤート共和国バイカル湖は世界一古く水深の深いとして有名な構造湖である。このほか、ソ連時代の水力ダム建設によって生まれた大規模な人造湖が存在する。

気候

ロシアには基本的に大陸性気候が卓越する。すなわち気温の年較差が大きい。ケッペンの気候区分に従うと、亜寒帯(冷帯)(D)に分類される地域が大半を占める。西部は大西洋の影響を受けるものの、東に進むにしたがって大陸性気候の特徴がはっきりしてくる。冬はシベリア付近で放射冷却のために気温が著しく下がり、優勢なシベリア高気圧が形成される。北半球で最も寒い地域で、寒極と呼ばれる(たとえば-71.2°C(オイミャコン)、-66.7°C(ベルホヤンスク))。しかしながら夏季には最高気温が30°Cを超える。

典型的な植生は北極海沿岸がツンドラ、南に下るにしたがって針葉樹林タイガ混交林プレーリー、ステップに移行していく。

右図はロシアを中心とした地域にケッペンの気候区分を適用したものである。以下、気候区分にしたがって特徴と地域区分を示す。

亜寒帯

Dfa
亜寒帯湿潤気候のうち、最暖月が22°C以上の地域。地図では明るい空色で描かれている。黒海とカスピ海に挟まれた狭い地域に広がる。
Dfb
亜寒帯湿潤気候のうち、最暖月が10°C以上22°C未満であり、月平均気温10°C以上の月が4か月以上ある地域。地図では空色(シアン)で描かれている。ポーランドやハンガリーなどの中東欧諸国と共通の気候区分でもある。首都モスクワを含み、ロシア西部からモンゴル国境西端まで広く分布する。沿海州北部やサハリン北部にも見られる。モスクワの年平均気温は5.3°C、1月の平均気温は-7.5°C、7月は18.4°C、年平均降水量は705.3ミリである。
Dfc
亜寒帯湿潤気候のうち、以下の3条件を満たす地域、すなわち最暖月が10°C以上22°C未満、月平均気温10°C以上の月が3か月以下、最寒月が-38°C以上-3°C未満。地図ではDfbの北に広がる暗緑色で描かれている。北欧諸国と共通の気候区分であり、ロシア領土に占める面積では最も広い。中央シベリア高原からカムチャツカ半島にかけて一部Dfdに移行している部分以外は、全国にまたがっている。植生はタイガ中心。
Dfd
亜寒帯湿潤気候のうち、3つの条件、すなわち最暖月が10°C以上22°C未満、月平均気温10°C以上の月が3か月以下、最寒月が-38°C未満を満たす地域。中央シベリア高原から東に延びるさらに暗い緑色で描かれている(内部にDwcの領域を含む)。
Dwb
亜寒帯冬季少雨気候のうち、最暖月が10°C以上22°C未満、加えて月平均気温10度以上の月が4か月以上ある地域。地図では青紫色で描かれている。モンゴル国境から北にかけて広がる。
Dwa
亜寒帯冬季少雨気候のうち、最暖月が22°C以上ある地域。地図では薄紫色で描かれている。Dwbと隣接し沿海州に向かって広がる。
Dsb
高地地中海性気候のうち、最暖月が10°C以上22°C未満、加えて月平均気温10°C以上の月が4か月以上ある地域。地図では赤紫色で描かれている。カムチャッカ半島西岸などに見られる。
Dsd
高地地中海性気候のうち、3つの条件を満たす地域。すなわち、最暖月が10°C以上22°C未満、月平均気温10°C以上の月が3か月以下、最寒月が-38°C未満。地図では薄赤紫色で描かれている。Dsbに隣接したごく狭い範囲に見られる。地球上でこの地点にのみ見られる気候区である。

その他の気候区

ET
ツンドラ気候。地図では薄い灰色で描かれている。北極海沿岸全域に広がる。
BSk
ステップ気候のうち、年平均気温が18度未満の地域。地図では黄土色で描かれている。モンゴル西端から北に伸びたごく狭い範囲に加え、カスピ海沿岸に見られる。
BWk
砂漠気候のうち、年平均気温が18度未満の地域。地図ではサーモン色で描かれている。BSkに隣接したごくわずかな範囲に見られる。
Cfa
温暖湿潤気候。黒海沿岸の狭い地域に見られる。

地方行政区分

連邦構成主体

ロシア連邦は、85の連邦構成主体と呼ばれる地方行政体からなる連邦国家である。連邦構成主体としては、46の「州」(область; oblast')、9の「地方」(край; kraj)、3の「市」(連邦市 город федерального значения; gorod federal'nogo znacheniya)、22の「共和国」(республика; respublika)、1の「自治州」(автономная область; avtonomnaja oblast')、4の「自治管区」(автономный округ; avtonomnyj okrug)がある。ただし、このうちのクリミア共和国セヴァストポリ連邦市はウクライナと帰属係争中である。

連邦管区

ロシアの連邦構成主体区分図(黄緑色が共和国)
(ただし、クリミア連邦管区の連邦構成主体を除く)

プーチン政権は、連邦政府の地方への影響力拡大を図り、85の連邦構成主体とは別に、2000年5月13日に全土を7つに分けた連邦管区を設置した。2014年時点ではウクライナと係争中のクリミア連邦管区を含め、9つになっている。連邦管区には連邦大統領の代理人としての大統領全権代表が派遣され、連邦構成主体を監督している。

名称 人口(人) 州都/主府/本部 備考
中央連邦管区
Центральный федеральный округ
39,251,950 モスクワ
Москва
北西連邦管区
Северо-Западный федеральный округ
13,952,960 サンクトペテルブルク
Санкт-Петербург
南部連邦管区
Южный федеральный округ
16,498,640 ロストフ・ナ・ドヌ
Ростов-на-Дону
北カフカース連邦管区
Северо-Кавказский федеральный округ
9,972,590 ピャチゴルスク
Пятигорск
沿ヴォルガ連邦管区
Приволжский федеральный округ
29,088,000 ニジニ・ノヴゴロド
Нижний Новгород
ウラル連邦管区
Уральский федеральный округ
12,333,230 エカテリンブルク
Екатеринбург
シベリア連邦管区
Сибирский федеральный округ
17,009,250 ノヴォシビルスク
Новосибирск
極東連邦管区
Дальневосточный федеральный округ
8,131,560 ウラジオストク
Владивосток
クリミア連邦管区
Крымский федеральный округ
2,413,200(2002年) シンフェロポリ
Симферополь
2016年に南部連邦管区に編入

さらに、2004年12月に地方自治体の首長を選挙制で選ぶ方式から、大統領が指名して地方議会が承認するという方式に転換した。事実上の官選化となるこの措置に対し、欧米諸国ではプーチン政権による強権支配が民主主義を脅かすという批判が生じた。

主要都市

ロシアには人口100万人を超える都市が15(2021年時点)ある。最大の都市は首都モスクワ(1,260万人(2021年))である。続くサンクトペテルブルク(545万人(2021年))との2都市が規模としては飛び抜けて大きく、独立したロシア連邦の構成主体(連邦市)としてほかの州連邦内の共和国と同格となる。ウラル山脈東山麓のエカテリンブルクチェリャビンスク、シベリアのオムスクノヴォシビルスクを除く都市はすべてウラル山脈よりも西側、すなわちヨーロッパ・ロシアに位置する。一方、厳しい気候条件のために長らく人口希薄地域だった極東部や北極海沿岸地域でも19世紀以降に鉄道・港湾整備や鉱業開発などに伴う都市建設が進み、ハバロフスクウラジオストクは50万人を超える人口を持つ。

都市 行政区分 人口(人) 都市 行政区分 人口(人)
1 モスクワ モスクワ 12,582,631 11 ウファ バシコルトスタン共和国 1,135,658
2 サンクトペテルブルク サンクトペテルブルク 5,452,852 12 クラスノヤルスク クラスノヤルスク地方 1,106,550
3 ノヴォシビルスク ノヴォシビルスク州 1,641,654 13 ヴォロネジ ヴォロネジ州 1,076,784
4 エカテリンブルク スヴェルドロフスク州 1,508,966 14 ペルミ ペルミ地方 1,062,045
5 カザン タタールスタン共和国 1,269,382 15 ヴォルゴグラード ヴォルゴグラード州 1,007,784
6 ニジニ・ノヴゴロド ニジニ・ノヴゴロド州 1,252,398 16 クラスノダール クラスノダール地方 953,816
7 チェリャビンスク チェリャビンスク州 1,203,547 17 サラトフ サラトフ州 838,056
8 サマーラ サマラ州 1,155,859 18 チュメニ チュメニ州 834,134
9 オムスク オムスク州 1,154,546 19 トリヤッチ サマラ州 697,440
10 ロストフ・ナ・ドヌ ロストフ 1,142,886 20 イジェフスク ウドムルト共和国 650,223
2021年国勢調査

注釈

  1. ^ ルーシは伝統的にギリシャからの文明的影響を受けてきており、より高等な文明の地であるギリシャの言語の使用はヨーロッパ国家として意義のあることであった。また、外国からも古東スラヴ語名の「ルーシ」ではなくギリシャ語で呼ばれることが少なくなかった。
  2. ^ 大ルーシロシア語版英語版
  3. ^ 小ルーシ。時期により指す地方が異なる。
  4. ^ 白ルーシ
  5. ^ いわゆる「モスクワ第3ローマ論英語版」であるが、この論は当初は宗教的側面からの戒めを説くもので、必ずしもロシアの帝国化を正当化するために考案された理論でもなかった。
  6. ^ 「ルーシ」の語には様々な地域概念があり、政治に都合よく使われてきた用語である。
    当初、モスクワ大公国が用いた意味での「ルーシ」はノヴゴロド・ルーシロシア語版を起源とした北東地域を指していたが(当時の宗主ジョチ・ウルス宛ての文書でモスクワ大公はその地域を指して「ルーシ」と呼んでいる)、やがてはジョチ・ウルスに対抗するためのアイデンティティーの拠り所として諸公の団結の合言葉に用いられ、その後モスクワ国家の強大化とロシア帝国の完成課程で「ルーシ」はかつてのキエフ・ルーシ全体の地域概念を指す用語にすり替えられた。
    そして、その用法における「ルーシの再統一」が、モスクワ国家=ロシア帝国がベラルーシやウクライナ全土、果ては「緑ルーシ」と名付けられたシベリア(無論、そう名付けられるまで「ルーシ」の地域ではなかった)を併合する大義名分となった。
    なお、その論法はソ連邦の結成時にも使用された(国歌に謳われるとおりである)。
  7. ^ 1991年12月のソビエト連邦崩壊直後、日本の新聞では『毎日新聞』や『産経新聞』が旧ロシア帝国と同じ「露」を使用する一方で、『朝日新聞』や『読売新聞』は旧ロシア帝国と区別するため「」と表記していた。
    ただ、片仮名で「」と表記すると「(くち)」と誤認され易いためか後に読売新聞も「露」に転換した。「ロ」の表記は朝日以外にNHK共同通信が使用しているものの少数となる。
    なお、日本国外務省は「露」を用いている。
  8. ^ 英語では、帝国時代を「Russian Empire」、大統領制時代を「Russian Federation」として両者を区別し、現行の大統領制時代を指す場合は単に「Russia」とせず、「Russian Federation」ないし「Russian Fed.」と、国号の「連邦」を強調する表記を用いる場合が多い。
  9. ^ のちにキエフ・ルーシ体制が崩壊して多くのキエフ人が北東部へ移住するまで、北東ルーシの諸スラヴ部族の言語は非常に多くのフィン語的特長を有していた。
  10. ^ フィン系民族の一部は同化せず、現在のロシア連邦内に少数民族として固有の言語と文化を保持している。
  11. ^ バルト海から黒海に至る交易路は「ヴァリャーギからギリシャへの道」と呼ばれ、東ローマ帝国やイスラム地域との交易でスラヴの地は大いに潤ったといわれる。
  12. ^ 厳密には、原初年代記のノヴゴロド系の写本。
  13. ^ ナポレオン戦争後、アレクサンドル1世の取り計らいもあり、両国はそれぞれスウェーデン、ロシアから独立を果たしているが、その国家元首をロシア皇帝が兼任した。
  14. ^ 詳細は北方領土問題参照
  15. ^ ロシアの国家元首は頭髪が「ツルツル」と「フサフサ」の交互になるというジンクスがある(いわゆる「つるふさの法則」)。
  16. ^ 言語による分類。
  17. ^ その場合の下限年齢は、16歳以上か連邦構成主体の立法による16歳より下の年齢である。

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