ロア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/09 12:46 UTC 版)
概要
ロアあるいはミステールは、ヴードゥー教で言い伝えられる精霊である。ハイチや現ドミニカ共和国、ジャマイカで生活していた先住民の崇拝する、ゼミと呼ばれる精霊[1]、奴隷として連れてこられたアフリカ人の神々、その他で構成されている。
主な奴隷である黒人を管理、支配する白人が奴隷の精霊信仰という「動物性」から救う目的でカトリックへの改宗を強制し、それへ抵抗する黒人は懐柔策として各ロアに守護聖人を充て、その聖人を表す聖画を崇拝するという形で始まっているので、「実は黒人である守護聖人」は現世利益のために祈る対象であるがロアそのものは拝まれない。
基本的に、ロアはフォン人が崇拝していた神々であるが、サンテリアで崇拝される、ヨルバ人のオリシャと呼ばれる神々のシャンゴ、オグン、エレグアなども入る。ただシャンゴは「ソボ」 (Sobo) 、エレグアは「レグバ」と呼ばれる。彼らは、アフリカへの憧憬によってつくられた海底の国ギネン(ギニアの訛り)と現世を繋ぐと言われる。
檀原照和によれば、女性のロアであるママン・ブリジット (Maman Brigitte) は、17世紀にハイチなどへ奴隷として来たスコットランド人が伝えたケルト神話の女神が起源だという。他、フランス語を操る女性のロアであるマドモワゼル・シャルロット (Mademoiselle Charlotte) 、キリスト教の影響により発生し一応ペトロ系に属するジャブ、ケルト系を起源とするらしい3本角の牛ボス、起源は白人の信仰体系から出た可能性が高いラダ系に属するディンクリンシン (Dinclinsin) など非アフリカ系のロアが存在する[2]。さらに立野淳也によれば、ロアの力を表す石という信仰は、先住民アラワク族のものである可能性がある[3]。
- ^ 立野淳也 2001, p. 18.
- ^ a b c 檀原照和 2006, p. 53.
- ^ 立野淳也 2001, p. 136.
- ^ 檀原照和 2006, p. 40.
- ^ 檀原照和 2006, p. 90. また同書p. 40によれば、シニキはセネガル系、ワルゴンはアンゴラ系という
- ^ 立野淳也 2001, p. 124.
- ^ a b 檀原照和 2006, p. 47.
- ^ 立野淳也 2001, p. 126.
- ^ 立野淳也 2001, p. 123.
- ^ 立野淳也 2001, p. 128.
- ^ 檀原照和 2006, p. 46. なお同書p. 44によれば、諸書で「エルズリー」と書かれるErzulieは21世紀にはヴードゥーの信徒によって「エジリ」と発音されるという
- ^ 檀原照和 2006, p. 46.
- ^ a b 立野淳也 2001, p. 140.
- ^ 檀原照和 2006, p. 43.
- ^ 立野淳也 2001, p. 130.
- ^ 立野淳也 2001, p. 134.
- ^ 立野淳也 2001, p. 135.
- ^ 立野淳也 2001, p. 137.
- ^ 檀原照和 2006, p. 51.
- ^ 立野淳也 2001, p. 139.
- ^ 立野淳也 2001, p. 138.
- >> 「ロア」を含む用語の索引
- ロアのページへのリンク