レンタサイクル レンタサイクルの概要

レンタサイクル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/01 03:52 UTC 版)

シクロシティ富山「アヴィレ」富山市丸の内ステーション

数分くらいのごく短時間の賃貸借で自転車を共有するシステムの場合は、一般的に、自転車シェアリング、バイクシェアリング、シェア自転車(en:Bicycle-sharing system)などと呼ばれる。

概要

ラストワンマイルの補完、環境の保護や、都市での渋滞や騒音、大気汚染の緩和を目指すために、市民の交通機関の選択肢として、都心部において安価または無料で自転車を提供するコミュニティ自転車プログラムを実施する動きが各国で見られる。

自治体などが主体になり、自治体の各所にステーション(自転車貸出返却所)を設けて行う「コミュニティサイクル」と呼ばれるシステムもある。このシステムでは、多くの場合、自転車をどのステーションにも乗り捨てで返却することができる。盗難や転売を防止するため、明るい色で塗装したり、単一の設計のものを使用するなどの工夫がされている。

具体の事例としては、パリヴェリブ)、ロンドンバルセロナストックホルムなど官民の協働(市と広告会社の連携)によるもの、ドイツの数都市でのコール・ア・バイクなど鉄道会社との協力によるものなどがある。

また、観光地での不特定多数の利用を目的にしたものに加えて、「都市型レンタサイクル」「自転車シェアリング」「サイクルシェアリング」「シェアサイクル」「シティサイクル」などと称される利用形態がある。

スマホの普及に伴い、2010年代後半よりスマホを利用した「自転車シェアリング」と呼ばれる新しいシステムが普及している。スマホの専用アプリに電子マネーをチャージしておけば、自転車に貼られたQRコードをアプリで読み込むだけで解錠されて利用でき、町中にどこにでもある駐輪エリアで乗り捨てできて便利である。自転車をごく短時間で多人数で共有するためマナーの悪い利用者もいるが、利用状況が自転車に搭載されたGPSでチェックされているほか、信用情報もスマホのアプリに紐付けされており、交通違反や自転車の破壊などのマナーの悪い行為をすると警告が行われ、最終的にはブラックリストに載り、他社のシェア自転車の利用はおろか全ての信用サービスの利用が禁止される、という形で、マナーの悪い利用者が出ないようなシステムにしている。

公共交通機関の新たな形と捉え直して、都市部に導入されたものは、利用者登録を前提とした特定多数の賃貸借によって運用され、交通渋滞放置自転車といった都市問題の緩和がなされるようデザインされているところに特徴がある。また、タワーマンションなどの大規模集合住宅に導入されたもの[1]は、特定多数の賃貸借あるいは共有によって運用され、狭小な駐輪場の解決策およびマンション経営者の新たな収入となっている。

各国のレンタサイクル

日本国内

地方公共団体(市区町村)およびその外郭団体、観光地の観光関連業者(土産物屋、観光協会)などが運営し、鉄道駅道の駅、案内所、運営者の店舗などで営業する。都市においては自転車預かり所、自転車店、一部のレンタカー営業所などが多いが、専業のレンタサイクル業者特定非営利活動法人の参画も見られるようになった。

一部の鉄道会社では、鉄道沿線で展開を図っている例がある(JR西日本「駅リンくん」、阪急レンタサイクル、近鉄ステーションサイクル、JR九州楽チャリなど)。複数の営業所を開設している事業者や、しまなみ海道サイクリングロード沿道のレンタサイクルターミナルでは、貸出しを受けた箇所とは別の場所で返却することのできる、いわゆる「乗り捨て制度」を設けているところもある。

歴史

1973年昭和48年)のオイルショックによってエネルギー資源を海外に依存する日本では省エネが推進されたが、1975年(昭和50年)には滋賀県八日市市において日本初の無料貸し自転車が実施され、同年、運輸経済研究センターの報告書に省エネ対策の一環として「レンタサイクル」という言葉が登場した[2]

第二次オイルショック後の1980年(昭和55年)、建設省の委託事業として日本初のレンタサイクルが平塚駅神奈川県平塚市)で供用開始され、他の首都圏各地でも導入が相次いだ[2]。利用形態として、自宅と駅の間の利用を「順利用」、駅と自宅以外(職場・学校・役場・商店街)との間の利用を「逆利用」と言うが、駅前に無料駐輪場がある都市では私有自転車に圧されて「順利用」「逆利用」が共に伸びずに運用失敗[2]

しかし、駅前の駐輪場を有料にした埼玉県上尾市において、日本で初めて運用に成功し、通勤・通学において朝は「順利用」「逆利用」、夕は「逆利用」「順利用」と2名が計4回利用することで収益確保された[2]。その一方、1989年平成元年)には大泉学園駅東京都練馬区)で500台と、大量に導入することで順利用100%ながら運用に成功[2]

その後、自転車貸出場所を1ヶ所に限定した方法から、複数の貸出場所を設けて貸出場所間での乗り捨て可能な方法が社会実験として行われ、「シティサイクルシステム」(宮城県仙台市)あるいは「コミュニティサイクルシステム」(東京都練馬区)と呼ばれた[2]

2000年度(平成12年度)までに、建設省が全国19都市を「自転車利用環境整備モデル都市」に指定し[3][4]、その他の自治体でも旧来の都市型レンタサイクルやシティサイクルシステムの導入が行われている。

イギリス

2010年ロンドンでは自転車6000台を導入してロンドン・サイクル・キャンペーンと題したレンタサイクル事業が始まり、大英博物館バッキンガム宮殿など市内400か所の駐輪施設から自転車を借りて別の駐輪施設で乗り捨てることができるシステムが導入された[5]

アメリカ

ライト兄弟は1890年代にはまだ目新しかった自転車を販売する店を経営していた。また自転車を体験してもらうため貸し出しも行っていた。このビジネスが成功したことで飛行機の開発資金を調達することが可能となった。

2012年夏から本格的に導入が始まったニューヨークでは自転車1万台を導入したレンタサイクル事業が始まり、マンハッタンからブルックリンまでの600か所のステーションが設置されている[6]

中国

北京市内の歩道に乗り捨てられたMobikeの自転車

2016年後半より自転車シェアリングがブームとなり、2016年後半から2017年前半にかけて様々な企業の様々な色のシェア自転車が都市部に大量に出現し、都市の景観は一変した。2017年中ごろには競争の激化による淘汰の結果、ofoやMobikeなどが生き残り、2017年後半より日本にも進出している。どこでも乗り降り自由なのが売りのひとつだったが、大量の放置自転車が社会問題になったため、2017年3月に中国政府により駐輪場所の規制がかけられ、指定された駐輪場所以外に乗り捨てできなくなった[7]

大気汚染問題を防ぐため、政府も後押ししており、北京市などでは自転車専用レーンの整備などが進められている。




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