レバノン 文化

レバノン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/15 00:30 UTC 版)

文化

レバノン杉の木。

食文化

地中海世界の食文化の一つであるレバノン料理は、野菜ハーブオリーブ油を多用した料理が多いことに特色がある。世界的に有名なフンムスファラーフェルケバーブ料理はレバノンでも人気が高い。

レバノンワイン英語版も古代オリエントがワイン発祥の地と謳われるだけあり、多数のワイナリーを抱え、世界的にも評価が高い。

文学

20世紀に入るまでに、ベイルートは多くの新聞、雑誌、文学社会などにより、近代アラブ思想の中心としての地位をエジプトの首都カイロと争っていた。

文学においては、ブシャッリに生まれたハリール・ジブラーンは特に『預言者』で知られ、この本は20以上の言語に翻訳された[45]。さらにその他の国際的な成功を達成したレバノンの作家としては、エリアス・フーリー、アミン・マアルーフ、ハナン・アル=シェイクなどの名が挙げられる。

音楽

レバノンは中東音楽の伝統を守りつつ、フランスとの繋がりから西欧の音楽の影響も受けた独自の音楽シーンを形成している。

中東の歌姫として名高いファイルーズを始め、作曲家にしてウードの演奏家であるレバノン人でありながらパレスチナを主題とした音楽を多く発表し、「パレスチナ人の中のパレスチナ人」と言われユネスコのArtist for Peaceを受賞したマルセル・ハリーファなどが有名である。その他の傑出したアーティストとしてはジュリア・ブトロス、マジダ・エル・ルウミ、サバー、ワディー・エル・サフィー、修道女であり歌手であるマリー・ケイルーズ、ナンシー・アジュラムなどの名が挙げれる。

他のアーティストが西洋の音楽との融合を図る中、ナジワ・カラームやアッシ・エル・ヘラーニのようなレバノンのアーティストは、'jabali'(「山より来る」)として知られるような伝統的な形式の音楽に忠誠を尽くしている。

1981年に発表されたレバノンのアラブ演歌歌手であるアーザール・ハビブの楽曲である「 حبيتك (お前が好きだった)」が2000年Hatten ar dinという動画で使われ世界中で再生された。しかし、アラブ演歌としてではなく、スウェーデン語の空耳に聞こえるという動画作成者の勝手な解釈や関連の無い画像の面白さで流行した。

近年では、欧米のプログレッシヴ・ロックの影響を受けたギタリスト Amadeus Awad の作品が国外でも発売されている。

演劇

レバノンに存在する劇場の大部分は首都ベイルートに拠点を構えている[46]

映画

美術

美術においては、ムスタファ・ファルークが20世紀レバノンの最も傑出した画家の一人である。ローマパリで学び、芸術家としての生涯を通してパリやニューヨークやベイルートで個展を開いた。彼の作品はレバノンにおける真の生活、国の姿、人々、習慣を表現しているたことにより喝采を浴びた。ファルークはレバノンが政治的独立を主張していた時に国民主義的なレバノン人画家だとみなされた。彼の芸術はレバノンの人々の気質と個性を捉え、彼は同世代の中で突出した画家だと見なされた。彼は五冊本を書き、ベイルート・アメリカン大学で芸術を教えた。

建築

ベイトエッディーン宮殿英語版

レバノンは石造りの城が多く遺されている場所として知られている。一例としてレイモンド・ド・サン・ジル城塞英語版ムッサ城英語版が存在する。

世界遺産

レバノン国内には、ユネスコ世界遺産リストに登録された文化遺産が5件存在する。

祝祭日

祝祭日
日付 日本語表記
5月1日 メーデー
5月6日 殉教者の日
8月1日 軍隊記念日
11月22日 レバノン独立記念日1943年11月22日)

1977年1月1日の閣議で、それまでは一年に25日もあった国民の祝祭日を一挙に14日まで減らして、国民の勤労意欲を掻き立てることを決定した[47]


注釈

  1. ^ 紀元前814年建国、ローマの伝承では紀元前753年の建国になっている。
  2. ^ レバノンの領土は拡大されたが、海岸の都市やベッカー高原のスンニ派、シーア派のムスリムたちは、アラブのイスラム世界から永遠に切り離されるのではないかと心配した。
  3. ^ 13年間に飛行場、道路、住宅、保健医療のプロジェクトを対象に、180億ドルの公共投資と420億ドルの民間投資を目指し、また、平均7.8%の経済成長を図り、この期間に一人当たりの実質所得を2倍にすることを目標にした。1993年から1994年にかけてレバノンの信頼が増し、1996年時点で外国からの資金は27億ドルに達し、経済成長率も伸びを見せた[17]
  4. ^ 同決議は、レバノンの主権、領土保全、政治的独立などの尊重を求め、レバノンに駐留する全外国軍に対し、レバノンから撤退を要請し、また、レバノン人、非レバノン人の武装勢力の解散と武装解除を求め、さらに来るレバノン大統領選挙での公正・自由な選挙プロセスの支持を宣言するものであった[18]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i レバノン共和国(Lebanese Republic)基礎データ 日本国外務省(2022年9月26日閲覧)
  2. ^ Lebanon” (英語). ザ・ワールド・ファクトブック. 2022年8月17日閲覧。
  3. ^ a b c d e World Economic Outlook Database” (英語). IMF. 2021年10月14日閲覧。
  4. ^ THE LEBANESE CONSTITUTION: "Lebanon is Arab in its identity and in its affiliation. It is a founding and active member of the League of Arab States and abides by its pacts and covenants."”. 2021年12月15日閲覧。
  5. ^ . https://www.constituteproject.org/constitution/Lebanon_2004.pdf?lang=en 
  6. ^ a b “Lebanon country profile” (英語). (2018年5月14日). https://www.bbc.com/news/world-middle-east-14647308 2019年9月23日閲覧。 
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  17. ^ 堀口 (2005), pp. 232-234.
  18. ^ 堀口 (2005), p.273
  19. ^ a b c 「レバノン 治安破綻危機/相次ぐ銀行襲撃■不法移民絶えず」東京新聞』朝刊2022年9月26日(国際面)同日閲覧
  20. ^ 深刻な財政危機にあえぐレバノン、初のデフォルトへ”. 2020-03-08AFP (2020年3月8日). 2020年3月7日閲覧。
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  32. ^ 【世界の見方】ギラッド・コーヘン駐日イスラエル大使:レバノンとの海洋協定 中東に変化『毎日新聞』朝刊2022年11月22日(国際面)同日閲覧
  33. ^ ナショナルジオグラフィック』2009年6月号【特集】アラブのキリスト教徒 (2022年9月26日閲覧)
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  35. ^ a b 青柳まちこ『国勢調査から考える人種・民族・国籍』(明石書店 2010年 ISBN 978-4-7503-3274-1)pp.146-155
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  45. ^ The Hindu (5 January 2003). "Called by life";. Retrieved 8 January 2007.
  46. ^ Carter, Dunston, and Thomas. Syria and Lebanon, page 257.
  47. ^ 小山 (1977), p.78






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