レバノン 国民

レバノン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/29 09:58 UTC 版)

国民

複雑な宗派対立を繰り返してきた歴史から、レバノンは1932年以来総人口の統計を除いた国勢調査を行っておらず、現在に至るまでその時のデータを元にして政治権力の分配が行われている[26]。国勢調査の大綱では、1924年8月の時点で大レバノン域内に居住していた住民に加え、国外へ移民した人々もレバノン国民とされた。実際の調査がどのように行われたかは不明だが[26]、政治学者のラニア・マクタビは、既にレバノンを去ったキリスト教徒移住者を加えることで、ムスリムとの人口比率を操作したとものと推測している[27]

言語

公用語はアラビア語で、話し言葉アーンミーヤ)はレバノン方言である。人口の約95パーセントがアラブ人でアラビア語を話す。フランス統治時代に広まったフランス語は教育やメディア、ビジネス等で日常的に使用され、準公用語的な地位を占めており、フランス語圏に分類される。他にアルメニア語ギリシャ語クルド語アラム語なども話されている。また、英語を流暢に話す国民も多い[28]

レバノン人離散

遥か昔から多くのレバノン人が紛争などの理由でアメリカ大陸、ヨーロッパ、アフリカなど世界中に離散しており(レバノン人のディアスポラ)、各地で影響をあたえている。特にブラジルには、レバノンの総人口より多くのレバノン系ブラジル人が住んでいる。

宗教

国民の54%がイスラム教、40.4%がキリスト教、5.6%がドゥルーズ派ほか他宗教。キリスト教の内訳はマロン派(マロン典礼カトリック教会)が多数派だが、正教会プロテスタントローマ・カトリック(ラテン典礼)なども存在する。正教会信徒はパレスチナやシリアなど他のアラブ諸国にも多数存在していた事から、内戦時には左派としてマロン派と対峙した。

宗教構成(レバノン)
イスラム教シーア派・スンニ派
  
54%
キリスト教諸派
  
40.4%
ドゥルーズ派・その他
  
5.6%

アルメニア人は少数派としては比較的大きなコミュニティを形成し(アルメニア人街に入るとアラビア語が通じないケースも多い)、アルメニアカトリック、アルメニア使徒教会、アルメニア福音教会を擁し、婚姻などで改宗したごく少数の例を除きキリスト教徒である。政治的にはほぼ他のキリスト教政党と同調している(内戦時には中立を維持と主張し、事実ファランヘ党などとは距離をおいていた)。

また、イスラム教にはスンナ派シーア派のほかドゥルーズ派、アラウィー派などが存在する。後者2派がイスラム教の枠に入るかどうかは教義的には議論が分かれ、異端と見なす向きも多いが、レバノンの政治上はイスラム枠に分類されている。

アラウィー派は独立時にはレバノンの政治構成要素ではなかったため、ほとんどのレバノン人は同派に対して身内・同胞という意識を有していない。同派はシリアの地中海沿岸部、つまりレバノンの北部国境を越えた山岳・丘陵地帯に主に居住しており、フランスから独立したあとのシリアにおいて権力を掌握した集団である。シリアがレバノンの政治に介入し始めた1970年代から、北部の町トリポリ郊外を中心に集団移住をしてきたが、それでも国会の議席を新規に割り当てられることはなかった。シリア主導のレバノン平定を取り決めた1989年のターイフ合意とその流れを汲む憲法改正、選挙法改正を経て、ようやく2議席があてがわれた。

他、少数であるがユダヤ教徒の議席も設けられている。

教育

2003年の推計によれば、15歳以上の国民の識字率は87.4%(男性93.1%、女性82.2%)である[29]

主な高等教育機関としてはベイルート・アメリカン大学(1866年)、レバノン大学(1951年)などが挙げられる。 ベイルートのような国際都市では、宗教・宗派別の学校群が存在し、これに加えて外国人向けの学校も出現となる。アメリカン・スクール、ブリティッシュ・スクール、フランス系ミッションスクール、イタリアン・スクール、ジャーマン・スクール、トルコ系スクール等々で、これらの学校では自国の子弟だけでなく、門戸を広く開放している[30]

シリアからの難民

国民ではないが、隣国シリアでの内戦から逃れてきた総勢100万人とも言われる難民の一部が、レバノンに大量に流入している。これらの難民の流入によって、レバノンの人口は10%も増加した[31]




注釈

  1. ^ 紀元前814年建国、ローマの伝承では紀元前753年の建国になっている。
  2. ^ 紀元前875年から紀元前625年までの150年もの間アッシリアに占領された。
  3. ^ レバノンの領土は拡大されたが、海岸の都市やベッカー高原のスンニ派、シーア派のムスリムたちは、アラブのイスラム世界から永遠に切り離されるのではないかと心配した。
  4. ^ 13年間に飛行場、道路、住宅、保健医療のプロジェクトを対象に、180億ドルの公共投資と420億ドルの民間投資を目指し、また、平均7.8%の経済成長を図り、この期間に一人当たりの実質所得を2倍にすることを目標にした。1993年から1994年にかけてレバノンの信頼が増し、1996年時点で外国からの資金は27億ドルに達し、経済成長率も伸びを見せた[13]
  5. ^ 同決議は、レバノンの主権、領土保全、政治的独立などの尊重を求め、レバノンに駐留する全外国軍に対し、レバノンから撤退を要請し、また、レバノン人、非レバノン人の武装勢力の解散と武装解除を求め、さらに来るレバノン大統領選挙での公正・自由な選挙プロセスの支持を宣言するものであった[14]
  6. ^ 1963年以来35年ぶり。

出典

  1. ^ a b c d e World Economic Outlook Database, October 2014” (英語). IMF (2014年10月). 2014年11月9日閲覧。
  2. ^ a b THE LEBANESE CONSTITUTION: "Lebanon is Arab in its identity and in its affiliation. It is a founding and active member of the League of Arab States and abides by its pacts and covenants."”. Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
  3. ^ a b . https://www.constituteproject.org/constitution/Lebanon_2004.pdf?lang=en 
  4. ^ a b “Lebanon country profile” (英語). (2018年5月14日). https://www.bbc.com/news/world-middle-east-14647308 2019年9月23日閲覧。 
  5. ^ Lebanon urges Arab League to readmit Syria ahead of regional summit” (英語). France 24 (2019年1月19日). 2019年9月23日閲覧。
  6. ^ McGowen, Afaf Sabeh (1989). “Historical Setting”. In Collelo, Thomas. Lebanon: A Country Study. Area Handbook Series (3rd ed.). Washington, D.C.: The Division. OCLC 18907889. http://hdl.loc.gov/loc.gdc/cntrystd.lb 2009年7月24日閲覧。 
  7. ^ Dumper, Michael; Stanley, Bruce E.; Abu-Lughod, Janet L. (2006). Cities of the Middle East and North Africa. ABC-CLIO. p. 104. ISBN 978-1-57607-919-5. "Archaeological excavations at Byblos indicate that the site has been continually inhabited since at least 5000 B.C." 
  8. ^ Background Note: Lebanon”. U.S. Department of State (2010年3月22日). 2010年10月4日閲覧。
  9. ^ Johnson, Anna (2006年). “Lebanon: Tourism Depends on Stability”. 2006年10月31日閲覧。
  10. ^ Lebanon (Governmental)”. Canadian International Development Agency. Government of Canada (2009年5月28日). 2008年5月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年8月24日閲覧。
  11. ^ 堀口 (2005), pp. 79-82.
  12. ^ 「レバノンへ侵攻 反日で一部撤収 南部ゲリラ基地を掃討」『朝日新聞』昭和47年(1972年)9月17日、13版、1面
  13. ^ 堀口 (2005), pp. 232-234.
  14. ^ 堀口 (2005), pp. 273.
  15. ^ 深刻な財政危機にあえぐレバノン、初のデフォルトへ”. 2020-03-08AFP (2020年3月8日). 2020年3月7日閲覧。
  16. ^ レバノン軍、すべての食事を肉抜きに 食料価格の高騰で”. AFP (2020年7月4日). 2020年7月3日閲覧。
  17. ^ レバノンで反政府デモ、治安部隊と衝突 爆発で不満高まる”. BBC (2020年8月7日). 2020年8月8日閲覧。
  18. ^ ベイルートで反政府デモ、複数の省庁占拠 治安部隊と衝突”. CNN (2020年8月9日). 2020年8月11日閲覧。
  19. ^ レバノン、内閣総辞職 首相「惨事は国家の腐敗の結果」:朝日新聞デジタル” (日本語). 朝日新聞デジタル. 2020年8月11日閲覧。
  20. ^ 青山 & 末近 (2009) [要ページ番号]
  21. ^ 堀口 (2005), pp. 239-240.
  22. ^ 堀口 (2005), pp. 241-242.
  23. ^ 堀口 (2005) pp. 266-267.
  24. ^ 青山「レバノン-宗派主義制度下の武力紛争-」(2010)
  25. ^ アラブのキリスト教徒 2016年6月19日閲覧。
  26. ^ a b 青柳まちこ『国勢調査から考える人種・民族・国籍』 明石書店 2010年 ISBN 978-4-7503-3274-1 pp.146-155.
  27. ^ The Lebanese census of 1932 revisited. Who are the Lebanese? Rania Maktabi 2007
  28. ^ 各国・地域情勢 > 中東 | 国名:レバノン共和国(Republic of Lebanon) 外務省、2010年4月現在。
  29. ^ https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/geos/le.html 2009年5月23日閲覧
  30. ^ 小山 (1977), pp. 77-78.
  31. ^ “シリア難民、100万人に達する 国連”. CNN. (2013年3月7日). http://www.cnn.co.jp/world/35029195.html 2013年3月7日閲覧。 
  32. ^ The Hindu (5 January 2003). "Called by life";. Retrieved 8 January 2007.
  33. ^ 小山 (1977), p. 78.





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