レジオンドヌール勲章 レジオンドヌール勲章の概要

レジオンドヌール勲章

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/12 04:49 UTC 版)

レジオンドヌール勲章
Ordre national de la Légion d'honneur
グランクロワ級の正章(下)と副章(上)
フランスの栄典
種別 功労勲章 / 名誉勲章
標語 Honneur et patrie(名誉と祖国)
創設者 ナポレオン・ボナパルト
対象 軍人および民間人
軍団総長 フランス大統領
階級
  • 頸飾(グラン・メートル)
  • グランクロワ
  • グラントフィシエ
  • コマンドゥール
  • オフィシエ
  • シュヴァリエ
歴史・統計
創立 1802年5月19日
最初の叙任 1804年7月14日
階位
上位席 なし
下位席 リベラシオン勲章フランス語版
レジオンドヌール勲章の綬

フランスはナポレオン時代以後に政体が幾度か変化し、そのつど章飾の意匠が変更されるなどしたものの、レジオンドヌール勲章は運用が続けられ、第五共和政下の現在でも同国の最高位勲章に位置付けられている。

概要

ordre(オルドル)とは騎士団のことであり、これを基にしたヨーロッパ独特の栄典制度を指す。叙勲はオルドルへの加入もしくは昇進を意味し、そのしるしとして騎士団の記章 (décoration, デコラシオン)の着用が許される。ただし、レジオンドヌール勲章の場合、外国人への授与は記章の贈呈のみで、オルドルたる「名誉軍団」(L'ordre de la Légion d'honneur)への加入は行なわない[1]。日本ではデコラシオンだけでなく、オルドルも「勲章」と訳される場合が多い。オルドルである「名誉軍団」は、軍団総長(グラン・メートル、grand maître)と軍団総裁(グラン・シャンセリエ、grand chancelier)をトップに戴き、フランスで最も名誉ある勲章を授与する任を負っている。ナポレオン・ボナパルトにより1802年5月19日に創設された。創設当初より、フランスへの「卓越した功績」のあった「軍人もしくは市民」に褒賞を与えているものである。

レジオンドヌールには等級があり、高位から「グランクロワ」(Grand-Croix, 大十字)、「グラントフィシエ」(Grand-Officier, 大将校)、「コマンドゥール」(Commandeur, 司令官)、「オフィシエ」(Officier, 将校)、「シュヴァリエ」(Chevalier, 騎士、勲爵士)の5等級に分かれる。さらにグランクロワより上位には、「名誉軍団」総長たるフランス大統領が受けることができる頸飾フランス語版がある。フランス国民の場合はシュヴァリエから順番に昇級していくが、オルドル外となる外国人の場合はその限りではなく、功績次第でいきなり上位章を受ける事もある。

歴史

レジオンドヌール勲章の創設を命じた共和暦X(10)年フロレアル29日(1802年5月19日)の政令
ナポレオンによる初のレジオンドヌール勲章授与式(ジャン=バティスト・ドブレ画)

その名前(ラテン語Legio honoratorum conscripta「名誉ある徴募されたレギオン」に由来)、象徴)、編成(16のフランスコホルス)が古代ローマに由来するレジオンドヌールは、アンシャン・レジームのオルドルとは異なり、士官だけではなく全ての民衆に開かれている。

これを市民の平等という原則への攻撃と見た者もいたが、当時統領政府を主導していた第一統領のナポレオン・ボナパルトは国務院でこの制度を次のように正当化していた――「古代・現代を問わず、勲章なしでやっていけた共和国があるというなら教えてもらいたい。諸君はこれを玩具だと言うかもしれないが、さて人間を動かすのはそうした玩具なのだ」。

フランス革命では実際にアンシャン・レジームの全ての勲章が廃止された。憲法制定国民議会は軍事功労章(Décoration militaire)を創設したが、これもすぐに廃止された。国民公会下では、将軍たちは栄誉の武器(fr)(栄誉の銃、栄誉の剣、あるいは栄誉の太鼓など)を勇敢な行為に報いるために与えるのが慣習であった。

法案[2]フランス革命暦(共和暦)X(10)年フロレアル14日(1802年5月4日)から国務院を前にして議論が行われた。第一統領ボナパルトは自ら干渉して全力で栄典の必要性を主張する一方、厳密に軍事的なオルドルを創設することを拒絶し、アンシャン・レジームへの回帰であるとする非難を反駁した。14票対10票で法案は可決された。5月17日に法案を付託された護民院ではリュシアン・ボナパルトが報告者に指名されており、新しい貴族の復活と、平等という革命の原則の歪曲を恐れたジャコバン派の反対にもかかわらず、法案を56票対38票で承認した。最終的に、リュシアン・ボナパルト、ピエール=ルイ・ロデレールフランス語版オギュスト・フレデリク・ルイ・ヴィエス・ド・マルモンマチュー・デュマフランス語版が法文を弁護し、共和暦X年フロレアル29日(1802年5月19日)に立法院は166票対110票で可決した。第一統領ボナパルトは共和暦X年プレリアル9日(1802年5月29日)になるまで法に署名捺印しなかった[3]

共和暦XII(12)年メスィドール25日(1804年7月14日)、廃兵院の礼拝堂において、公式の豪華な儀式の中で功績ある将校たちへのレジオンドヌールの初の授与がフランス皇帝ナポレオン1世となったナポレオン・ボナパルトによって行われた。

共和暦XIII(13)年プリュヴィオーズ10日(1805年1月30日)には保有者が「グラン・テーグル」(Grand Aigle, 大鷲)と呼ばれる大勲章が追加され、これは1814年7月19日の政令で「グラン・コルドン」(Grand Cordon, 大綬)、最終的には1816年5月26日の政令で「グラン・クロワ」と呼ばれるようになる(共和暦はグレゴリオ暦1805年限りで廃止)。この日には、各名称が同様にコマンダン(Commandant)からコマンドゥールへ、レジオネール(Légionnaire)がシュヴァリエへと修正された[要出典]

軍人と市民を組み合わせた(実際の配分はおよそ2:1)ことで、このオルドルはあらゆる体制下を生き延び続け、今日では11万人以上の佩綬者を数えるに至っている。


  1. ^ Code de la légion d'honneur et de la médaille militaire, R16” (フランス語). legifrance (2008年11月23日). 2010年5月5日閲覧。
  2. ^ 法案準備の任に当たった委員会の議長はジャン=ジャック・レジ・ド・カンバセレスであった。
  3. ^ 出典 : www.crdp-reims.fr
  4. ^ « Légion d’honneur » Archived 2010年1月5日, at the Wayback Machine., sur le site france-phaleristique.com, consulté le 4 décembre 2009.
  5. ^ 現在ではグランクロワでも年5000円程度なので形式的なものである。
  6. ^ a b c d レジオン・ドヌール勲章”. 駐日フランス大使館 (2005年1月26日). 2010年5月5日閲覧。
  7. ^ a b c Les femmes décorées” (フランス語). フランス政府レジオンドヌール勲位局. 2010年5月5日閲覧。
  8. ^ Légion d'honneur : la promotion du Nouvel an” (フランス語). フィガロ (2009年1月2日). 2010年5月5日閲覧。
  9. ^ ロンドン市に仏最高勲章=「ドゴール演説」80周年 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News”. web.archive.org (2020年8月15日). 2023年5月13日閲覧。
  10. ^ Décoration remise par le président de la République Albert Lebrun le 29 Juin 1933.
  11. ^ Décoration remise par le président de la République Albert Lebrun le 22 Octobre 1933.
  12. ^ Décoration remise par le président de la République Paul Doumergue le 26 mai 1929 à l’occasion du centenaire de l’École Centrale des Arts et Manufactures, couramment appelée École centrale Paris.
  13. ^ Décoration remise par Paul Ramadier le 5 décembre 1937.
  14. ^ Bulletin d'information sociale de la Défense, janvier 2008, page 21, voir ce site consulté le 28 février 2009.
  15. ^ 鎌田薫総長がフランス政府よりレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受章 - 早稲田大学総長である鎌田薫の叙勲式
  16. ^ 当社氏家会長が「レジオン・ドヌール勲章」を受賞”. 日本テレビ (2001年7月31日). 2020年12月2日閲覧。
  17. ^ Mélanges juridiques dédiés à M. le Professeur Sugiyama. Association Japonaise des Juristes de Langue Française ; Maison Franco-Japonaise. (1940). pp. v-vii 
  18. ^ [1]
  19. ^ 日本人の父とフランス人の母の間に生まれ、全ての作品をフランス語で著した日系フランス人の女性作家 https://sites.google.com/site/kikouyamata/nihongo 
  20. ^ 小堀憲”. 筑摩書房. 2022年10月14日閲覧。
  21. ^ 『黒澤明 夢のあしあと』共同通信社
  22. ^ 仏、三宅一生氏にコマンドゥール授与 民間文化人の最高位”. 日本経済新聞 (2016年3月15日). 2022年11月10日閲覧。
  23. ^ 第1回栄誉賞 磯村 尚徳”. ルネサンス・フランセーズ 日本代表部 | La Renaissance Française au Japon (2021年4月5日). 2023年12月13日閲覧。
  24. ^ [2]
  25. ^ 建築家の安藤忠雄氏が芸術文化勲章を受章 在日フランス大使館
  26. ^ 「安藤忠雄さん、仏から勲章」『読売新聞』朝刊2021年4月24日(社会面)
  27. ^ 池田理代子氏がレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受章 在日フランス大使館]
  28. ^ 山口昌子氏がレジオン・ドヌール勲章を受章 在日フランス大使館]
  29. ^ 「三木谷浩史」知恵蔵
  30. ^ 在日フランス大使館Webページ 舛添要一都知事がレジオン・ドヌール勲章コマンドゥールを受章
  31. ^ 石原伸晃氏がレジオン・ドヌール勲章を受章”. La France au Japon. 2020年10月23日閲覧。
  32. ^ 横浜市長に仏レジオン・ドヌール勲章両国交流に貢献 https://www.kanaloco.jp/news/government/article-463957.html
  33. ^ Questions-Réponses: 14) Qui achète la décoration et où ?” (フランス語). フランス政府レジオンドヌール勲位局. 2010年5月5日閲覧。
  34. ^ Ordre de la légion d'honneur - Décorations” (フランス語). Monnaie de Paris(パリ造幣局). 2010年5月5日閲覧。
  35. ^ "Article 87. - Il sera décerné des récompenses nationales aux guerriers qui auront rendu des services éclatants en combattant pour la République"
  36. ^ Les 80 décrets, arrêtés pris depuis 1802 ont été fondus dans le Décret no62-1472 du 28 novembre 1962 pour former le Code de la Légion d'honneur et de la médaille militaire.
  37. ^ Le Coq, no1, avril 1920 (in Écrits, éd. Champ libre, 1977)
  38. ^ Le Canard enchaîné, 9, janvier 2008
  39. ^ Libération, 5 janvier 2009
  40. ^ Décret du 31 décembre 2008 portant promotion et nomination, où figurent Françoise Fressoz et Marie-Ève Malouines, au Journal officiel
  41. ^ Avec Philippe Séguin, une certaine idée du gaullisme s’en est allée”. La Croix (2010年1月7日). 2010年1月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月2日閲覧。
  42. ^ 「仏経済学者ピケティ氏、最高勲章候補を辞退 現政権批判で」 AFP通信(2015年1月2日配信)同日閲覧
  43. ^ 『読売新聞』2015年1月3日東京朝刊
  44. ^ 100.000 citations du monde - Honneur” (フランス語). Evene. 2010年5月5日閲覧。
  45. ^ Dans Le Curé d’Ars, Mgr Francis Trochu, 1925.
  46. ^ Lettre de Michèle Audin à Nicolas Sarkozy, Mediapart.
  47. ^ Articles R90 et R91 du Code de la légion d'honneur et de la médaille militaire
  48. ^ これに関しては、当局は故人の支持者たちの要望により、葬儀が行われるのを黙認した。Maurice Papon, enterré décoré” (フランス語). リベラシオン (2007年2月21日). 2010年5月5日閲覧。
  49. ^ BOISSIEU Alain (de) (France)アーカイブ
  50. ^ Revue-republicaine.fr | Alain de Boissieu, au service de la France et du Général
  51. ^ ウィキソースの『ボヴァリー夫人』原文
  52. ^ ウィキソースの『金縁の鼻眼鏡』原文
  53. ^ 反発心から師匠のヒゲを失敬 一流料理人への第一歩に”. 日本経済新聞 (2018年4月15日). 2018年4月15日閲覧。
  54. ^ rosetteはレジオンドヌールの略綬、rosette de Lyonはリヨン風のサラミを指す。駄洒落。リヨンは1949年2月28日にレジオンドヌールを受章している。






レジオンドヌール勲章と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「レジオンドヌール勲章」の関連用語

レジオンドヌール勲章のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



レジオンドヌール勲章のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのレジオンドヌール勲章 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS