レイシャル・プロファイリング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/15 08:24 UTC 版)
ブラック・ライヴス・マター (Black Lives Matter)
アフリカ系アメリカ人だけではないプロファイリング
2001年、アメリカ同時多発テロ発生当時、当時ブッシュ政権内で運輸長官を務めたノーマン・ミネタは、9月21日にすべてのアメリカの航空会社にむけて、中東出身者やイスラム教徒を対象にした如何なるレイシャル・プロファイリングも禁止する異例の通知をだした。後にこの時のことを彼自身の太平洋戦争時の日系人強制収容所の経験にたち、憲法的で正しい判断だったと語っている[8][9]。
2020年2月、新型コロナウイルスが外国人嫌悪を伴って世界中に拡散する中、各地のアジア系社会への偏見が煽られている。オーストラリア緊急医療大学(ACEM)は、「誤情報」によってレイシャルプロファイリングがあおられていると指摘している[10]。
米テキサス州在住のムスリム(イスラム教徒)男性2人が、自宅に戻るため搭乗したアメリカン航空の国内線の機内で、自分たちの人種や宗教をもとに不審者扱いするレイシャル・プロファイリングを受けたとし、調査を求めている[11]。
日本におけるレイシャル・プロファイリング
日本の警察では経験則に基づいたレイシャル・プロファイリングを行っている疑いがある。警察官の対応は暴力や罵倒を伴わず丁寧な物腰ではあるが、長時間公衆の面前で複数人によって引き留める行為(警察官は常に2人一組で行動する)が対象者を犯罪者予備軍視し、尊厳を傷つけているという指摘がある[12][13]。
2021年1月下旬、バハマ人と日本人の混血男性が東京駅構内でスマートフォンを操作しているときに警察官から「警察官を気にしていた」という理由で職務質問を受け、「ドレッドヘアーの人物が薬物を所持している可能性が多い」という経験則を元に所持品検査を受けた[13]。警察官の対応が不適切だと感じた男性は、日本の反人種差別団体「Japan for Black Lives」にその様子を撮影した動画を提供[13]。同団体がSNSに投稿した動画は拡散され、日本国外のメディアにも取り上げられた[14][15]。京都大学教授の竹沢泰子は外見を元にした職務質問はレイシャル・プロファイリングに該当するとしており、弁護士の針ケ谷健志は職務質問の根拠となる警察官職務執行法に反する手法であり、違法な対応であると指摘している。警察庁では挙動の不審さから職務質問に及んだもので違法では無いとしている[13]。
2021年12月6日、在日米国大使館は「レイシャル・プロファイリングが疑われる事案で、外国人が日本の警察から職務質問を受けたという報告があった。数名が拘束され、職務質問や所持品検査をされている」として在日アメリカ人に対し、拘束されたとき領事館への連絡を要請するように呼びかけた[16]。在日外国人から職務質問の対象とされているとの訴えはあったが、これまで大使館が反応していなかったことについて、大使館員が職務質問の対象となった可能性が指摘されている[12]。
2022年10月には、ナイジェリア人と日本人のダブルルーツ(国籍は日本)の20代の男性が、ドレッドヘアに浅黒い肌というだけで、中学生の頃から30回もの職務質問を受けた体験談を語っている。彼によれば、本人確認書類によって日本国籍と分かった瞬間、警察官は態度が一転して丁寧になったという[17]。
- ^ Donald, Heather Mac (2010年6月25日). “Opinion | Fighting Crime Where the Criminals Are” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331 2020年2月16日閲覧。
- ^ 「【解説】 なぜアメリカで大勢が怒っているのか 人種に関する3つのデータ」『BBCニュース』。2020年8月26日閲覧。
- ^ CNN, Holly Yan. “This is why everyday racial profiling is so dangerous”. CNN. 2020年2月16日閲覧。
- ^ 「米南部で「黒人男性がベビーシッター」は不審と通報」『BBCニュース』、2018年10月11日。2020年2月16日閲覧。
- ^ 「米スタバ謝罪、友人を待っていた黒人男性逮捕 人種差別の批判受け」『BBCニュース』、2018年4月16日。2020年2月16日閲覧。
- ^ Tyson, Neil deGrasse (2004). The Sky Is Not the Limit: Adventures of an Urban Astrophysicist. Amherst, New York: Prometheus Books. pp. Chapter 4. ISBN 978-1591021889.
- ^ “Reflections on the Color of My Skin - Neil deGrasse Tyson”. www.haydenplanetarium.org. 2020年12月26日閲覧。
- ^ (英語) 「レイシャル・プロファイリング(人種的外見に頼って判断する行為) の禁止」 (英語) 2020年12月26日閲覧。
- ^ “渡辺謙が1年以上をかけ自ら取材!ドキュメンタリー「“9.11テロ”に立ち向かった日系人」放送決定!|シネマトゥデイ”. シネマトゥデイ. 2020年12月26日閲覧。
- ^ “新型ウイルスで拡散するアジア人嫌悪、繰り返される差別の歴史”. www.afpbb.com. 2020年2月16日閲覧。
- ^ 「アメリカン航空、トイレを2回流したムスリム男性を「不審者扱い」 FBIが尋問も」『BBCニュース』、2019年9月26日。2020年2月16日閲覧。
- ^ a b バイエ・マクニール. “アメリカ大使館が異例の警告「日本の警察」の疑い 多くの在日外国人が感じている「不当な扱い」”. 東洋経済. 2022年8月25日閲覧。
- ^ a b c d 國崎万智 (2021年2月14日). “「ドレッドヘアーは薬物持つ人多い」ミックスの男性への職質、「差別的で違法」と波紋”. ハフポスト日本版. BuzzFeed Japan株式会社. 2021年12月6日閲覧。
- ^ Montgomery, Hanako (2021年2月16日). “What It’s Like Being Black, Japanese, and Constantly Stopped By Police For No Reason”. VICE World News. VICE Media Group. 2021年12月6日閲覧。
- ^ Mas, Liselotte (2021年2月5日). “Video: Japanese policeman admits to searching Black man because of his dreadlocks”. The Observers. France 24. 2021年12月6日閲覧。
- ^ 坪池順 (2021年12月6日). “アメリカ大使館、日本警察の「レイシャル・プロファイリングの疑い」で異例の警告ツイート。「拘束されたら連絡を」”. ハフポスト日本版. BuzzFeed Japan株式会社. 2021年12月6日閲覧。
- ^ 職務質問30回 身に覚えはないのに…NHK 2022年10月7日
- 1 レイシャル・プロファイリングとは
- 2 レイシャル・プロファイリングの概要
- 3 ブラック・ライヴス・マター (Black Lives Matter)
- 4 関連項目
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