リンパ系
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歴史
ヒポクラテスはBC5世紀にリンパ系について初めて言及した人物の一人であった。彼の著作『関節について』で、彼はリンパ節について簡潔に一文で述べた。ローマの医者であったエフェソスのルーファス(en)はAD1~2世紀に、腋窩、鼠径部、腸間膜のリンパ節を胸腺とともに見出した[15]。リンパ管に最初に言及したのはBC3世紀のエジプトの解剖学者ヘロフィロスであったが、間違った結論として、乳糜管(腸のリンパ管)のことを『リンパ管の吸収管』と言っており、さらにこれは肝門静脈に入って肝臓に行くとも述べた[15]。ルーファスとヘロフィリアスの発見はギリシャの医師ガレノスによってさらなる宣伝がなされた。ガレノスはAD2世紀にサルやブタの解剖を行った観察から乳糜管や腸間膜のリンパ節について記述した[15][16]。
17世紀に至るまでガレノスの考えは最も流布されていた。したがって、血液は肝臓で乳糜から産生され、腸と胃によって病気と混ざり合い、他の器官からは様々な気の元を付加され、そして体の全ての器官によって消費されると信じられた。この理論では血液は多数回消費と産生を繰り返さねばならなかった。彼の考えは17世紀まで検討されずに保持されたし、その時代でさえ支持する医者がいた[16]。
16世紀半ば、ガブリエレ・ファロッピオ(ファロピウス管の発見者)は、今日乳糜管として知られているものを『腸を回って来る黄色物で満たされたもの』と記述した[15]。1563年頃、解剖学教授バートロメオ・ユースタチはウマの胸管をvena alba thoracisと記述した[15]。次の画期的な事例は1622年に医師ガスパロ・アセリー(it)がイヌの腸のリンパ管を見つけてvenae alba et lacteaeと命名したことであった。これは今日単に乳糜管として知られる。乳糜管は第4番目の管と呼ばれた(他の3つは、動脈、静脈、神経で、当時神経は管の一種と信じられていた)。そしてガレノスの考えが1つ間違いであることを証明した。つまり乳糜が静脈によって運ばれること。しかしなお乳糜管が乳糜を肝臓に運ぶこと(ガレノスに教えられたように)を信じていた[17]。彼はまた胸管は見出したがそれが乳糜管と連結していることは見逃していた[15]。この連結は1651年にジーン・ペクエット(fr)によって見出され確かなものと認められた。彼は白色の液がイヌの心臓で血液と混ざり合うことを発見した。彼は腹部に圧力を加えると流れが上昇したので液は乳糜かも知れないと考えた。彼はこの液が胸管に行くこと、ついで乳糜で満たされた嚢に行くことを突き止めた。この嚢は今日乳糜槽と呼ばれているが、彼はchyli receptaculumと呼んだ。彼はさらに研究を続け、乳糜管の内容物は胸管を経由して静脈系に入ることを見出した[15][17]。こうして乳糜管が肝臓で終わるのではないことが確実に証明され、乳糜が肝臓に行くというガレノスの2番目の考えの誤りが証明された[17]。ヨハン・フェスリンクは1647年にヒトの乳糜管の最も初期のスケッチを描いた[16]。
血液が肝臓と心臓によって新たに産生されるのでなく体内を循環するという考えはウィリアム・ハーベイの研究の結果として初めて認められた。彼の研究は1628年に出版された。1652年、スウェーデン人オラウス・ルドベック(1630-1702)は、肝臓に、清明な(かつ白色でない)液を含んだ透明な管を発見した。そこでそれを肝臓水管(hepatico-aqueous vessels)と名づけた。彼はまたこの管が胸管につながっていること、また弁をもっていることに気づいた[17]。彼はこの発見をスウェーデン女王クリスチーナの宮廷で発表したが1年間出版しなかった[18]。しばらくして類似の発見がトーマス・バートリン(en)によって出版された。彼はさらに出版して、そのような管は体のあらゆるところにあり、肝臓だけに限らないことを記した。彼もそれらの管を『リンパ管』と名づけた一人である[17]。この経緯はバートリンの弟子の一人マーチン・ボグダント[19]とラドベックの間の激しい論争の発展につながり、ラドベックはバートリンを盗作の罪で告訴した[18]。
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