リゲル 概要

リゲル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/26 02:08 UTC 版)

概要

β星ではあるが、平均視等級の数字ではα星のベテルギウスよりも明るい。ベテルギウスは半規則型変光星でありこの極大期にのみ明るさが逆転する[注 3]。平均視等級は0.13等[4]で、地球からは約860光年離れている。

主星(リゲル、リゲルA)は、明るすぎて正確な視差の測定が困難とされてきた青色超巨星で、銀河系において肉眼で見える最も明るい恒星のひとつであり、太陽の12万から27万9000倍の光度を持つ。質量が非常に大きいため、中心核での水素核融合は既に終了し、現在はヘリウムからなる中心核が収縮している段階にある[11]。そのため、半径は太陽半径の79倍から115倍まで膨張している。はくちょう座α型変光星 (ACYG) に分類され、およそ22~25日で変則的に0.03~0.3の範囲で等級を変化させる。伴星リゲルBCを持っており、主星よりも1/500倍暗く、望遠鏡でしか観測出来ない。さらにリゲルBCはそれ自体がリゲルBとリゲルCからなる連星で、リゲルBはリゲルBaとリゲルBbからなる分光連星である[11]

物理的特徴

コンピューターで描いた、リゲルと太陽の大きさを比較した画像。左端の小さな円が太陽。実際にはリゲルには黒点は存在しないと考えられている。

数千万年後にはヘリウムの核融合が始まって赤色超巨星となり、更に重い元素の中心核が形成され、超新星爆発を起こすと言われている。一方で、恒星風によって表層から大量のガスが急速に失われており、数百万年経過すると超新星爆発を起こせなくなるほど質量が減り、最後はネオン酸素で構成された白色矮星となって星としての生涯を終えるという予測もある[19]

連星系

リゲルは、少なくとも1822年には、フリードリッヒ・フォン・シュトルーベによって実視連星として観測されている[20]。しかし伴星リゲルBCは、数百倍明るいリゲルAに近すぎて邪魔され、口径150mmクラス以下の望遠鏡で観測するのは困難である[21]。リゲルAとリゲルBCは平均2500au以上離れた軌道を2万4000年[14]~2万5000年以上[11]の周期で公転していると考えられている。

リゲルBCはその名のとおり、リゲルBとリゲルCからなる連星で、平均約100au離れた軌道を63年[14]~約400年[11]周期で共通重心の周りを公転している。リゲルBはそれ自体が分光連星[11][12]、リゲルBaとリゲルBbが9.86日周期で共通重心の周りを公転している[11]。3つの恒星はいずれもB型主系列星である。

さらにこの4つの星の外側、11,500au離れたところにあるK型主系列星が、伴星リゲルDの可能性がある。伴星だとすると、25万年周期で公転していると考えられている[11]

質量はそれぞれ、太陽の23倍(A)、3.84倍(Ba)、2.94倍(Bb)、3.84倍(C)、0.38倍(D)である。


注釈

  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
  3. ^ 『2008年 天文観測年表』の175頁に掲載されている半規則型及び不規則型変光星の一覧表ではベテルギウスの変光範囲は0.0等 - 1.3等となっており[16]、同書182頁に掲載されている5.05等より明るい恒星の一覧表[17]及び189頁に掲載されている3.0等より明るい恒星の一覧表[18]ではリゲルの明るさは0.12等となっており、極大期に限りベテルギウスはバイエル符号の順番通りオリオン座で最も明るく輝く。
  4. ^ a b c 北尾は発見者を香田としている[31]。香田まゆみ(または寿男)は昭和25年に平家星をリゲルと特定した古老の存在を野尻に報告している[29][30]

出典

  1. ^ a b 原恵『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版第4刷)恒星社厚生閣、2007年2月28日、226頁。ISBN 978-4-7699-0825-8 
  2. ^ a b c d Paul Kunitzsch; Tim Smart. A Dictionary of Modern star Names: A Short Guide to 254 Star Names and Their Derivations. Sky Publishing. p. 46. ISBN 978-1-931559-44-7 
  3. ^ a b c IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2016年12月16日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s SIMBAD Astronomical Database”. Results for V* bet Ori. 2016年12月16日閲覧。
  5. ^ a b GCVS”. Results for bet Ori. 2015年10月12日閲覧。
  6. ^ Moravveji, Ehsan; Guinan, Edward F.; Shultz, Matt; Williamson, Michael H.; Moya, Andres (March 2012). “Asteroseismology of the nearby SN-II Progenitor: Rigel. Part I. The MOST High-precision Photometry and Radial Velocity Monitoring”. The Astrophysical Journal 747 (1): 108–115. arXiv:1201.0843. Bibcode2012ApJ...747..108M. doi:10.1088/0004-637X/747/2/108. 
  7. ^ a b c d e Przybilla, N. (2010). “Mixing of CNO-cycled matter in massive stars”. Astronomy and Astrophysics 517: A38. arXiv:1005.2278. Bibcode2010A&A...517A..38P. doi:10.1051/0004-6361/201014164. 
  8. ^ a b c 輝星星表第5版
  9. ^ a b Przybilla, N.; Butler, K.; Becker, S. R.; Kudritzki, R. P. (January 2006). “Quantitative spectroscopy of BA-type supergiants”. Astronomy and Astrophysics 445 (3): 1099–1126. arXiv:astro-ph/0509669. Bibcode2006A&A...445.1099P. doi:10.1051/0004-6361:20053832. 
  10. ^ a b c d e f SIMBAD Astronomical Database”. Results for V* bet Ori B. 2016年12月16日閲覧。
  11. ^ a b c d e f g h Kaler, James. “Rigel”. STARS. 2012年1月19日閲覧。
  12. ^ a b c The Washington Visual Double Star Catalog (Mason+ 2001-2014)”. VizieR. 2016年12月16日閲覧。
  13. ^ a b c Sanford, Roscoe F. (1942). “The Spectrographic Orbit of the Companion to Rigel”. Astrophysical Journal 95: 421. Bibcode1942ApJ....95..421S. doi:10.1086/144412. 
  14. ^ a b c d e Tokovinin, A. A. (1997). “MSC - a catalogue of physical multiple stars”. Astronomy & Astrophysics Supplement Series 124: 75. Bibcode1997A&AS..124...75T. doi:10.1051/aas:1997181. 
  15. ^ おもな恒星の名前”. こよみ用語解説. 国立天文台. 2018年11月14日閲覧。
  16. ^ 天文観測年表編集委員会 編『天文観測年表〈2008〉』地人書館、2007年11月、175頁。ISBN 978-4805207895 
  17. ^ 天文観測年表編集委員会 編 2007, p. 182.
  18. ^ 天文観測年表編集委員会 編 2007, p. 189.
  19. ^ Fred Schaaf (2008-04-21). The Brightest Stars. Wiley. p. 159. ISBN 978-0-471-70410-2 
  20. ^ Washington Double Star Catalogue”. US Naval Observatory. 2017年1月1日閲覧。
  21. ^ Burnham, Robert, Jr. (1978). Burnham's Celestial Handbook. New York: Dover Publications. pp. 1300. ISBN 978-0486235677 
  22. ^ IAU Working Group on Star Names (WGSN)”. 2017年1月1日閲覧。
  23. ^ 三省堂『大辞林』810頁
  24. ^ 日本大百科全書』23巻リゲル項
  25. ^ 野尻抱影 著 『新星座巡礼』 19頁
  26. ^ 野尻抱影 著 『星三百六十五夜』上巻(1978年)38頁
  27. ^ a b c 『月刊天文ガイド』2007年2月号134頁
  28. ^ 講談社『日本語大辞典』(リゲル項)2063頁/平凡社『マイペディア』(リゲル項)1502頁/ポプラ社『ポプラディア』第10巻(リゲル項)/学研の図鑑『星・星座』75頁
  29. ^ a b c d e f 野尻抱影『日本星名辞典』東京堂出版、1973年1月、154-155頁。ISBN 978-4490100785 
  30. ^ a b c d e 野尻抱影 著 『星の方言集 - 日本の星』 中央公論社、1957年、265-269頁
  31. ^ a b 学術出版会 北尾浩一著 『天文民俗学序説 - 星・人・暮らし』39頁の表より
  32. ^ 藤井旭 著 『宇宙大全』441頁/同著『全天星座百科』150頁/同著『星座大全』35-36頁
  33. ^ 講談社、林完次 著 『21世紀星空早見ガイド』50頁
  34. ^ 増田正之『ふるさとの星 続越中の星ものがたり』15頁および、巻末 富山県星の一覧表3頁
  35. ^ a b 北尾浩一 「『源氏星』と『平家星』」 - 星・人・暮らしの博物館東亜天文学会天界』2005年11月号648頁


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