リゲル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/26 02:08 UTC 版)
名称
バイエル符号での名称は、オリオン座β星である。リゲルの名称が、最初に記録されているのは1252年に作成されたアルフォンソ天文表である。
固有名
- リゲル
- 語源
- アラビア語で「脚」を意味する rijl (رجل, リジュル) が変化したもので、この星のアラビア名 Rijl al-Jawzāʾ(رجل الجوزاء, リジュル・アル=ジャウザー)に由来する[2]。10世紀末から見られる、アラビア語起源の星の西洋名の一つである[2]。2016年6月、国際天文学連合(IAU)は恒星の固有名に関する[22]ワーキンググループ(WGSN)を組織した。2016年6月30日、国際天文学連合の恒星の固有名に関するワーキンググループは、Rigel をオリオン座β星Aの固有名として正式に承認した[3]。
- 表記と発音
- 日本での「リゲル」は、原綴りを綴字読み(ラテン語読み)したものからきている。英語では [ライジェル] ドイツ語では巻き舌にした「リーゲール」と発音される。
- アルゲバル
- リゲルの別名としては、同じアラビア語起源のアルゲバル (Algebar) またはエルゲバル (Elgebar) がある。これは、アラビアでの別名 Rijl al-Jabbār (رجل الجبار, リジュル・アル=ジャッバール、「巨人の足」 の意)から来たものである。リゲルが天文学でも広く使われていることもあり、アルゲバルは、現在では、ほとんど用いられることはない。
和名
リゲルの和名は「源氏星」(げんじぼし)とされている[23][24][25][26][27][28]。
この和名は源平合戦にちなむ紅白に由来するものだが、当初は現在と逆の解釈があった。
岐阜県において、平家星・源氏星という方言が見つかっている[27][29][30]。 これは昭和25年に、野尻抱影に報告された方言であり[注 4]、ベテルギウスの赤色とリゲルの白色を源氏と平家の旗色になぞらえた表現に由来したと解釈されている。野尻は農民の星の色を見分けた目の良さに感心し、それ以後は渋谷のプラネタリウムで解説する際には、平家星・源氏星という名称を使用するようになった[29][30]。
天文誌、図鑑、野尻抱影や藤井旭の著書をはじめ、多くの本で、リゲルの和名を「源氏星」と特定した上で、岐阜の方言であるとしている[27][29][30][32][33](ただし、岐阜県の揖斐郡横蔵村(現揖斐川町)においてリゲルを平家星とする村の古老が一名いたことが野尻抱影によって紹介されており [29][30]、民俗学の見地から異論を唱える研究者もいる[注 4])。
また、増田正之は昭和60年に、富山県高岡市の市立伏木小学校において、リゲルを源氏星とした方言を見つけている[34]。
また、滋賀の虎姫(現・長浜市)でリゲルを銀脇(ぎんわき)とする方言が発見されている。これは、オリオン座の三つ星の脇にある関係とベテルギウスの金色とリゲルの白色とを見分けた表現から来ている。このように星を色で見分けた表現は、世界的に類を見ないと言われている[29]。
その他、リゲルが関係するアステリズムの方言はリゲル関係の方言を参照。
- 北尾浩一の見解
- 北尾浩一は、著書の中で揖斐地方で発見された平家星(へいけぼし)をリゲルとして分類している[31][注 4]。
- 多くの書籍で、源氏星がリゲルを示す岐阜の方言とされている事について、野尻抱影の著書における村の古老の証言と逆であると指摘している。北尾浩一は、再調査を行い、発見地とされる揖斐地方では一般的に認識されている源平の旗印の色とは逆であったことを確認している[35]。この見解が最初に発表されたのは2005年であり、野尻は既に亡くなっていた。野尻は、源氏星をリゲルと特定したが、香田より第一報を受けた後、1000回を超えるやり取りの後、初めて信用したと証言されている[35]。
中国名
注釈
- ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
- ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
- ^ 『2008年 天文観測年表』の175頁に掲載されている半規則型及び不規則型変光星の一覧表ではベテルギウスの変光範囲は0.0等 - 1.3等となっており[16]、同書182頁に掲載されている5.05等より明るい恒星の一覧表[17]及び189頁に掲載されている3.0等より明るい恒星の一覧表[18]ではリゲルの明るさは0.12等となっており、極大期に限りベテルギウスはバイエル符号の順番通りオリオン座で最も明るく輝く。
- ^ a b c 北尾は発見者を香田としている[31]。香田まゆみ(または寿男)は昭和25年に平家星をリゲルと特定した古老の存在を野尻に報告している[29][30]。
出典
- ^ a b 原恵『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版第4刷)恒星社厚生閣、2007年2月28日、226頁。ISBN 978-4-7699-0825-8。
- ^ a b c d Paul Kunitzsch; Tim Smart. A Dictionary of Modern star Names: A Short Guide to 254 Star Names and Their Derivations. Sky Publishing. p. 46. ISBN 978-1-931559-44-7
- ^ a b c “IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2016年12月16日閲覧。
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- ^ Moravveji, Ehsan; Guinan, Edward F.; Shultz, Matt; Williamson, Michael H.; Moya, Andres (March 2012). “Asteroseismology of the nearby SN-II Progenitor: Rigel. Part I. The MOST High-precision Photometry and Radial Velocity Monitoring”. The Astrophysical Journal 747 (1): 108–115. arXiv:1201.0843. Bibcode: 2012ApJ...747..108M. doi:10.1088/0004-637X/747/2/108.
- ^ a b c d e Przybilla, N. (2010). “Mixing of CNO-cycled matter in massive stars”. Astronomy and Astrophysics 517: A38. arXiv:1005.2278. Bibcode: 2010A&A...517A..38P. doi:10.1051/0004-6361/201014164.
- ^ a b c 輝星星表第5版
- ^ a b Przybilla, N.; Butler, K.; Becker, S. R.; Kudritzki, R. P. (January 2006). “Quantitative spectroscopy of BA-type supergiants”. Astronomy and Astrophysics 445 (3): 1099–1126. arXiv:astro-ph/0509669. Bibcode: 2006A&A...445.1099P. doi:10.1051/0004-6361:20053832.
- ^ a b c d e f “SIMBAD Astronomical Database”. Results for V* bet Ori B. 2016年12月16日閲覧。
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- ^ 三省堂『大辞林』810頁
- ^ 『日本大百科全書』23巻リゲル項
- ^ 野尻抱影 著 『新星座巡礼』 19頁
- ^ 野尻抱影 著 『星三百六十五夜』上巻(1978年)38頁
- ^ a b c 『月刊天文ガイド』2007年2月号134頁
- ^ 講談社『日本語大辞典』(リゲル項)2063頁/平凡社『マイペディア』(リゲル項)1502頁/ポプラ社『ポプラディア』第10巻(リゲル項)/学研の図鑑『星・星座』75頁
- ^ a b c d e f 野尻抱影『日本星名辞典』東京堂出版、1973年1月、154-155頁。ISBN 978-4490100785。
- ^ a b c d e 野尻抱影 著 『星の方言集 - 日本の星』 中央公論社、1957年、265-269頁
- ^ a b 学術出版会 北尾浩一著 『天文民俗学序説 - 星・人・暮らし』39頁の表より
- ^ 藤井旭 著 『宇宙大全』441頁/同著『全天星座百科』150頁/同著『星座大全』35-36頁
- ^ 講談社、林完次 著 『21世紀星空早見ガイド』50頁
- ^ 増田正之『ふるさとの星 続越中の星ものがたり』15頁および、巻末 富山県星の一覧表3頁
- ^ a b 北尾浩一 「『源氏星』と『平家星』」 - 星・人・暮らしの博物館、東亜天文学会『天界』2005年11月号648頁
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