リアリティ番組 批判と反響

リアリティ番組

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/14 03:27 UTC 版)

批判と反響

2000年代以後、テレビや動画配信サービスの番組の多くがリアリティ番組に占められるようになり人気に衰えを見せないが、一方で、一般人の人生をのぞき見たりかき回したりするようなリアリティ番組は中身がなく低俗だとの批判も浴びている。

リアリティ番組がどこまでが「リアリティ(現実)」なのかについては強い批判がある。多くの番組は日常生活ではなく、秘境や閉鎖された部屋など非日常的な空間、歌手やスポーツ選手・経営者になるトレーニングなど非日常的な状況、巨額の賞金のかかったクイズなど、およそ「リアリティ」とは遠いところを舞台としている。出演者は能力の限界を試され、普段出さない自分の姿を出させられている。こうした姿も「リアリティ」なのかどうかには議論がある。

また、こうした番組は編集の段階で多くの部分がカットされたり、時間を前後させてつなぎ合わされたりしており、実際に起こったこととは違うものを視聴者は見せられていることが多い[6][7]。このため視聴者から叩かれた参加者の中には番組に対し「この編集では私が悪者のように見えてしまう」と抗議・反論する者もいる。

リアリティ番組にはやらせの疑惑も絶えない。視聴者からは、プロデューサーが事前に決めた筋書きに沿って参加者が動いているのではないかという疑念を持たれている[6]。若手ファッションデザイナーに密着し私生活や友人関係を追ったと称する『The Hills』はその最たるものである[8]。例えば若手シェフが勝ち残りを競う『ヘルズ・キッチン〜地獄の厨房』の第2シーズンでは、参加者が作った料理をふるまわれる客は実は役者ではないかという疑念が上がった[9]。西部全米脚本家組合の委員長であるダニエル・ペトリ・ジュニアは2004年に、「リアリティ番組には台本がないといううたい文句だが、私は台本があることを知っている。番組側は、番組の出来事は全部偶然でありこれがリアリティなのだという幻想を殺さないために、脚本家のことを脚本家と呼びたくないのだろう」と語っている[6]。放送局やプロデューサーが番組制作費を抑えるために、リアリティ番組の脚本家に対しては、全米脚本家組合が定めたレベルの報酬も払われていないし組合を介した労使交渉もできていないという[6]

実際にやらせであることを明らかにした番組も存在する。2007年6月、オランダで『De Grote Donorshow』(すばらしいドナーショー、De Grote Donorshow)というリアリティ番組が放送されることが事前に発表された。この番組では3人の腎臓病患者から視聴者投票で1人が選ばれ、余命わずかな女性から提供を受けた腎臓が贈られるというもので、ヨーロッパで放送の是非をめぐる論議を巻き起こした。しかし実際に放送された番組のラストで「これは臓器移植問題に関心を持ってもらうためのやらせであり、患者は本物だがドナーの女性は俳優である」ことが明らかにされた[10]。製作者側も参加者の勝ち抜き過程などを透明化するなどやらせの起こらない状況を作る努力を払っている。

視聴者投票を伴うリアリティ番組が世界各地に広まるにつれ、民主主義的な政治の行われていない権威主義的な国の国民が、生まれて初めて重要な物事を決める投票を体験することになり、その政治的影響も注目されている。『ビッグ・ブラザー』の汎アラブ版は未婚の男女が共同生活することや赤裸々さから社会に衝撃を与えた[11]。また中国版『ポップアイドル』といえる『超級女声』が、2005年のシーズンにおいて4億人の視聴者を得て800万票の投票が殺到するセンセーションを起こした後、政府系英字新聞のペキン・デイリーは「超級女声は民主主義への圧力なのか?」と題する記事を一面に載せている[12]。『超級女声』は低俗であり青少年に悪影響を与えるとの非難が政府関係者からも視聴者からも寄せられ、2006年のシーズンで放送を終了した。

出演者に対する中傷、および出演者の自殺

リアリティ番組に出演した参加者の中には、一夜にして人気者になる者もいる一方、視聴者の憎悪や嘲笑を集め悪い意味で有名になってしまう者も多数いる。 中には番組内容を巡るトラブルが出演者の自殺に発展するケースも起きている[13][14][15][16][17]

リアリティ番組の初期の人気作である『サバイバー』シリーズの元祖であり、スウェーデンで放送された『エクスペディション・ロビンソン』の、1997年に放送された第一シーズンですでに自殺者が発生している。第一回目の視聴者投票で退出を宣告された34歳男性は、無人島から帰って1か月後に列車が走る線路に体を横たえて自殺した。未亡人はこの番組のルールが自殺者をもたらしたとして放送中止を訴えたが、第1シリーズは多くの視聴者の抗議や、「ファシスト番組」「いじめ番組」と番組を呼ぶマスコミの批判の中で完走し、参加者から多くの有名人を生み出した[18]。『サバイバー』シリーズは、フランス版の『コー・ランタ』でも2013年に心臓麻痺による死者と自殺者を出しており、出演者をサポートする医師や心理学者などによる医療体制が手薄だったことが指摘された[13]。フランスではこれ以前にもリアリティー番組の出演者が番組終了後に自殺未遂や自殺をした例が複数あり、視聴覚最高評議会のメンバーもリアリティー番組に対する監視体制の強化が必要だと主張している[13]

アメリカ合衆国においては2004年から16年にかけ、少なくとも21人の出演者が自殺したとされている[16]。 2016年から放送されているイギリスの恋愛リアリティ番組『ラブ・アイランド』では、出演者3人と司会者1人が死亡しており、このうち2019年に男性出演者が自殺した際は、リアリティ番組の出演経験者からメンタルヘルスのサポートの義務化を要望する声が寄せられた[19]

韓国において2011年から放送されていたお見合い番組『チャク』では、2014年、女性出演者が自殺し、番組が打ち切りとなった。番組ではカップルが成立しなかった出演者を心身共に傷つける演出がなされており、女性は自殺する直前に「放送されたら韓国では生きていけないと思う」と電話で話していた[20][21]

2020年5月、フジテレビとイースト・エンタテインメントが制作しNetflixや地上波などで配信・放送されていた日本のリアリティ番組『テラスハウス』に出演していたプロレスラーの木村花が死亡する事件が発生した[16][22]。生前、木村がインターネット上で番組内での言動に対して批判が寄せられていたことから、インターネット上での誹謗中傷の問題とともに、リアリティ番組そのものの危うさにも注目が集まり[16]、他国の類似事例も取り上げられた[17]。精神科医の松本俊彦は朝日新聞の記事の中で、「番組の出演者が非難を浴びると、『素の自分』を否定されていると受け止めやすくなる可能性がある」と指摘し、目立つことに慣れていない人が匿名の人物からの攻撃を「世界中のすべての人からの攻撃」だと考えてしまうと話している[16]。また、ABEMA制作のリアリティ番組『オオカミくんには騙されない』シーズン1のプロデューサーを務めたテレビマンユニオンの津田環も「制作サイドが出演者の感情の起伏を利用して『誘導』し、出演者がそれに応えようとする側面がある。リスクの矢面に立つのは常に出演者だが、多くの現場でケア体制が整っていない」と同じ記事の中で指摘している[16][23]。多くの恋愛リアリティーショーを手掛けるABEMAでは誹謗中傷、風評被害に関する出演者用の窓口を同年5月27日に設置した[24]。なお、フジテレビは同年5月27日に『テラスハウス』について、同シーズンの制作中止(打ち切り)を発表している[22][25][26]


  1. ^ a b c 日刊スポーツ新聞社『日刊スポーツ』2020年6月21日関東6版26面
  2. ^ Levin, Gary (2007年5月8日). “'Simple economics': More reality TV”. USA Today. http://www.usatoday.com/life/television/news/2007-05-07-reality-TV_N.htm?csp=34 6.26.2013閲覧。 
  3. ^ 「リアリティー・ショー」のプロ、トランプが仕掛ける虚実ない混ぜの演出”. Newsweek日本版. p. 2 (2020年5月28日). 2020年6月6日閲覧。
  4. ^ 「危険なリアリティ番組」量産するTV局側の事情 | テレビ”. 東洋経済新報. p. 2 (2020年5月30日). 2020年6月6日閲覧。
  5. ^ a b c テレビの未来は、大量の「リアリティ番組」とともにある | DIGIDAY 日本版
  6. ^ a b c d Booth, William (2004年8月10日). “Reality Is Only An Illusion, Writers Say - Hollywood Scribes Want a Cut Of Not-So-Unscripted Series”. The Washington Post. http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A53032-2004Aug9.html 2009年4月26日閲覧。 
  7. ^ Just how real are reality TV shows? - Shows may exist in a middle ground – not fully scripted nor completely true”. MSNBC (2009年4月14日). 6.26 2013閲覧。
  8. ^ クリスティン・カヴァラリが暴露、「The Hills」はヤラセ ELLE, 2012/12/05
  9. ^ Holland, Roger (June 19, 2006). “Hell's Kitchen review”. PopMatters. http://www.popmatters.com/tv/reviews/h/hells-kitchen-060619.shtml. 
  10. ^ オランダのテレビ局、臓器移植への関心喚起のため視聴者を1年間欺く - AFP BB, 2007年06月02日
  11. ^ 'Realityis Not Enough':The Politics of Arab Reality TV
  12. ^ A television show challenges the authorities/Economist.com
  13. ^ a b c 仏人気リアリティー番組で2人目の死者、国内に衝撃広がる”. AFP通信 (2013年4月3日). 2020年5月26日閲覧。
  14. ^ 英トーク番組でうそ発見器にかけられた男性が死亡 高まる番組批判”. BBC News (2019年5月15日). 2020年5月26日閲覧。
  15. ^ 海外でも30名以上が自殺 木村花を追い詰めた「リアリティショー」番組作りに問題はなかったのか”. 週刊新潮 (2020年5月25日). 2020年5月26日閲覧。
  16. ^ a b c d e f 切り売りされる「素の自分」 リアリティー番組の危うさ”. 朝日新聞 (2020年5月25日). 2020年5月26日閲覧。
  17. ^ a b SNS中傷 イギリスの番組でも出演者自殺相次ぐ”. NHKニュース (2020年5月27日). 2020年5月27日閲覧。
  18. ^ Frithiof, Lotta (2010年12月14日). “Livet efter dokusåpan”. Upsala Nya Tidning. 2020年6月7日閲覧。
  19. ^ 3人が自死した英リアリティ番組参加者、誹謗中傷への苦悩と制作側へのサポート求めていた”. フロントロウ (2020年5月26日). 2020年5月26日閲覧。
  20. ^ 韓国お見合い番組『チャク』の悲劇…「放送されたら韓国で生きていけない」(1) 中央日報日本語版 2014年03月06日
  21. ^ 競争と伝統で板挟み「自殺大国」韓国の憂鬱 ニューズウィーク日本版 2014年3月25日号
  22. ^ a b 木村花さん出演の「テラスハウス」打ち切り、公式サイトで発表「制作を中止する事を決定」”. スポーツニッポン (2020年5月27日). 2020年5月29日閲覧。
  23. ^ テラハ・木村花さん急逝、現場に問う不幸の元凶”. 東洋経済新報. p. 3 (2020年5月25日). 2020年5月28日閲覧。
  24. ^ ABEMA、出演者向け相談窓口を設置 SNSでの誹謗中傷に調査・法的手続き”. 福島民友新聞 (2020年5月27日). 2020年5月27日閲覧。
  25. ^ フジテレビ、「テラスハウス」打ち切り 木村花さん急死で”. 毎日新聞 (2020年5月27日). 2020年5月27日閲覧。
  26. ^ 「テラスハウス」打ち切り フジ、木村さん死去受け決定”. 朝日新聞 (2020年5月27日). 2020年5月27日閲覧。




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