ラベンダー ラベンダーの概要

ラベンダー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/05 22:24 UTC 版)

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ラヴァンドラ属
ラベンダー
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: シソ目 Lamiales
: シソ科 Lamiaceae
: ラヴァンドラ属 Lavandula

39種。代表種は

  • Lavandula angustifolia
  • L. latifolia
  • L. stoechas
  • L. multifida
  • L. × intermedia

概説

Lavandula angustifolia

ラヴァンドラ属(ラベンダー属、lavandula)は、半木本性植物で、低木のような草本、小低木、亜小低木である[2]多年生のものとそうでないものがある。ヨーロッパ南部を中心に39種が知られ、高さは2メートル以下。原産地は地中海沿岸、インドカナリア諸島北アフリカ中東などである[3]。春に紫や白、ピンク色の花を咲かせる様々な種がある。中でも紫色の花が最もポピュラーである。多くの種は、花、葉、茎は細かい毛でおおわれており、その間に精油を出す腺がある[4]。揮発性の油を多く含むため、草食動物はほとんど食べないが、芳香で蜂などを引き寄せる。ユーカリと同じように夏の熱さなどで自然発火し、野火をよぶ。種子は野火の後に発芽する性質がある[3]。伝統的にハーブとして古代エジプト、ギリシャ、ローマ、アラビアヨーロッパなどで薬や調理に利用され、芳香植物としてその香りが活用されてきた。ラベンダーの栽培は1930年代に本格的に行われるようになるが、それ以前は野生種の刈り取りがほとんどだった[5]。ラヴァンドラ属には、ラベンダー特有の香りがない種も一部存在する。園芸用としても愛好されている。

主にラベンダーと呼ばれるL. angustifolia(コモン・ラベンダー)だけでなく、その近縁種や交雑種もラベンダーと呼ばれることがあるため、ラベンダーの名で販売される苗やラベンダー油英語版L. angustifolia のものとは限らない[6]

日本におけるラベンダーの初期の記述としては、江戸文政期の西洋薬物書に「ラーヘンデル」「ラーヘンデル油」の名で詳細な説明がある[7]幕末期には一部ではあるが、精油が輸入され、栽培も行われていたと考えられている。昭和期には香料原料として、北海道富良野地方などで栽培されて精油が生産され、1970年にピークを迎えたが、合成香料の台頭で衰退した[7]。現在では富良野などでラベンダー畑が観光資源となっている。

現代でもL. angustifolia(コモン・ラベンダー)やL. latifolia(スパイク・ラベンダー)、L. x intermedia(ラバンジン)などが精油を採るために栽培され、精油は香料として用いられたり、アロマセラピー(芳香療法)としてリラクセーション等に利用されている[1]

ちなみに、ラベンダー色英語版は薄紫色を意味する。

語源

英語のlavender は古フランス語のlavandre に由来する。lavandre の語源として様々な説があるが、「洗う」という意味のラテン語 lavolavare から来るといわれる[8]。古代ローマ人達は洗濯に用いたり、浴用香料として疲労や硬直した関節を和らげるために利用したという[9][10]。学名のLavandula は他のヨーロッパ言語でラベンダーを指す言葉からリンネが命名したと言われる。

しかし、この通説を裏付ける歴史的証拠はなく、一般的に古代ギリシャ人・ローマ人はラベンダーを入浴に利用しなかったなどの問題点があり、作り話である可能性がある。UpsonとAndrewsはローマ帝国での入浴に関する記述を確認したが、ラベンダーの使用はなかったという。UpsonとAndrewsは、ラテン語のlivere と中世ラテン語lavindula から推測し、「青みを帯びた、青みがかった」を意味するラテン語livere に由来するという説を提示している。


  1. ^ a b c 宮崎泰 著 『ハーブ―育てる・食べる』 偕成社 1995年
  2. ^ a b Upson T, Andrews S (2004). The Genus Lavandula. Royal Botanic Gardens, Kew 2004. ISBN 9780881926422. http://books.google.ca/books?id=xvgq-6VAX8kC 2012年3月30日閲覧。. 
  3. ^ a b c d e f g ビル・ローズ 著 『図説 世界史を変えた50の植物』 柴田譲治 翻訳、 原書房、2012年
  4. ^ レスリー・ブレムネス 著 『ハーブ事典 ハーブを知りつくすA to Z』 樋口あやこ 訳、文化出版社、1999年
  5. ^ a b c d e f g クリスティアヌ・ムニエ 著 『ラベンダーとラバンジン』 岡崎英生 訳、フレグランスジャーナル社、2005年
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  7. ^ a b c d e f g 吉武利文 著 『香料植物 ものと人間の文化史 159』 法政大学出版局、2012年
  8. ^ Concise Oxford Dictionary
  9. ^ 五明紀春 監修 『食材健康大事典―502品目1590種まいにちを楽しむ』 時事通信出版局、2005年
  10. ^ a b c d A.W.ハットフィールド 著 『ハーブのたのしみ』 山中雅也・山形悦子 訳、八坂書房、1993年
  11. ^ Lis-Balchin M, ed (2002). Lavender: The genus Lavandula. Taylor and Francis. ISBN 9780203216521. http://books.google.ca/books?id=8gmsF-FQWuUC. 
  12. ^ 「節」は「属」の下位分類。
  13. ^ Chaytor D A. A taxonomic study of the genus Lavandula. 1937
  14. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa 小松美枝子 小松紀三男 著 『ラベンダーブック』 グラフ社、2008年
  15. ^ ガーデニングの基礎知識 ラベンダー e-ティザーヌ
  16. ^ a b c 萩尾エリ子 『ハーブ―シンプル&ナチュラル』 池田書店、1998年
  17. ^ a b c 園芸書などでいわれる便宜的な分類。
  18. ^ 『世界大百科事典』 平凡社、1988年
  19. ^ フランス語ではauは「オ」と発音する。この地名では「l」「t」は読まない。
  20. ^ 南仏ラベンダーの衰退 : La lavande du Midi dépérit フランス語会話の壁 Le mur de la conversation en français
  21. ^ ラベンダー農家の苦悩 その1 Île des fleurs Paris Tomomi
  22. ^ フランス産ラベンダーが窮地に 南西フランス田舎暮らし
  23. ^ 美郷町ラベンダー園/大台野広場(2018年6月21日閲覧)
  24. ^ 国内最大級のラベンダー園 埼玉・嵐山町など開設『日本経済新聞』朝刊2018年6月19日(首都圏経済面)2018年6月21日閲覧
  25. ^ ひだ清見ラベンダー園高山市公式観光サイト(2018年6月21日閲覧)
  26. ^ 第23回・県民の森ラベンダー祭(2018年6月21日閲覧)
  27. ^ J.アディソン 著 『花を愉しむ事典』 樋口康夫・生田省悟 訳、八坂書房、2002年
  28. ^ 引用元 Dr. William Thomas Fernie 著 Herbal Simples (Bristol Pub., 1895. ASIN: B0014W4WNE). この本の電子書籍 Google bookで読むことができる。 'By the Greeks the name Nardus is given to Lavender, from Naarda, a city of Syria near the Euphrates, and many persons call the plant "Nard." St. Mark mentions this as Spikenard, a thing of great value. In Pliny's time, blossoms of the Nardus sold for a hundred Roman denarii (or L.3 2s. 6d.) the pound. This Lavender or Nardus was called Asarum by the Romans, because it was not used in garlands or chaplets. It was formerly believed that the asp, a dangerous kind of viper, made Lavender its habitual place of abode, so that the plant had to be approached with great caution.'
  29. ^ M. G. Kains (1912). American Agriculturist. ed (English). Culinary Herbs: Their Cultivation Harvesting Curing and Uses. Orange Judd Company. http://www.gutenberg.org/files/21414/21414-h/21414-h.htm#Page_97. 
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  33. ^ a b c d e マリア・リス・バルチン 著 『アロマセラピーサイエンス』 田邉和子 松村康生 監訳、フレグランスジャーナル社、2011年
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  35. ^ Salvatore Battaglia著 The Complete Guide to Aromatherapy 2nd ed. 218ページ 出版:The International Centre of Holistic Aromatherapy
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  59. ^ 〔社説・春秋〕 いまでも熱心なファンが多い。薄暗い実験室。”. 日本経済新聞 (2014年7月16日). 2014年10月27日閲覧。


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