ラジオ 歴史

ラジオ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/25 14:27 UTC 版)

歴史

無線電話の始まり

1900年、歪みはひどいものの、世界で初めて電波[注 4] に音声を乗せることに成功したのは、元エジソンの会社の技師で、カナダ生まれの電気技術者レジナルド・フェッセンデンだった。無線電話の始まりである。

彼は引き続き、ヘテロダイン検波方式や、電動式の高周波発振器を開発して改良に取り組み、1906年12月24日に、米国マサチューセッツ州の自己の無線局から、自らのクリスマスの挨拶を無線電話で送信した。フェッセンデンはこの日、レコードヘンデル作曲の「クセルクセスのラルゴ」を、そして自身のヴァイオリンと歌で“O Holy Night”をそれぞれ流し、聖書を朗読した。この実験はあらかじめ無線電信によって予告されたもので「世界初のラジオ放送」だっただけでなく「最初のクリスマス特別番組」でもある。そしてフェッセンデンは「史上初のラジオアナウンサー&プロデューサー」と言えるだろう。

ラジオ放送の始まり

しかしヒューゴー・ガーンズバックが1905年11月より一般人向けて通信販売を始めた大衆無線機「テリムコ」の受信機は電波から音声を復調できないコヒーラ検波器[注 5] によるものである。またピカードが電波に乗せた音声を復調する鉱石の検波作用を発見しその特許を得たのは遅く、1906年になってである。1906年当時のアマチュア無線家らはまだコヒーラ検波器を使っており[9][10][11]、彼らの受信機が鉱石検波器へ切替わったのは1910年頃だった[12]。こういった時代背景を勘案すると、フェッセンデンの実験は広く聴取者に向けて送信される「ラジオ放送」というよりも、限定された技術者・通信士を対象とした「無線電話」の実験に属するとも考えられる。

一般人で無線の受信機を所有していたのはアマチュア無線家達だけである[注 6]。アマチュア無線は第一次世界大戦の勃発で禁止されていたが、その終戦で1919年4月12日より、まず受信活動が解禁された[注 7]。戦後は一般アマチュアでも真空管が入手できるようになり、鉱石式受信機から真空管式受信機への置き換えが急速に進んでいた。

1920年1月17日、ワシントンD.C.アナスコティアにある海軍飛行場から、海軍省が娯楽音楽放送 NOFをはじめた。これをもって国営放送の嚆矢とするが[13][14]、そのリスナー層は自分で受信機を組立てたアマチュア無線家だった。なお1923年1月3日、アナコスティア海軍航空局NOFは本来の航空無線の研究に専念することとなり、娯楽放送を終了している[15]

また、一部のアマチュア無線家は無線電話を実験するようになり、無線電話で「放送したい」アマチュア無線家と、モールス電信で「交信したい」アマチュア無線家の混信問題がはじまったのもこの頃である[注 8]

民間企業による商業放送として世界で最初に許可されたものは、ウェスティングハウス電気製造会社が1920年11月2日にアメリカ・ペンシルベニア州ピッツバーグで放送を開始したKDKAである。その中波送信機は同社の技術者フランク・コンラッドが設計し、開局初日の番組は大統領選挙の開票情報で、ハーディング候補の当選を伝えた。

選択度(分離性能)が良くない受信機で起きる、商業放送(周波数833kHz)とアマチュア無線家の放送(周波数1,500 kHz)の混信問題もくすぶっていたが、1922年と1923年の法改正でアマチュア無線のオペレーター資格では放送できない事になり、多くのアマチュア無線家が商業放送局のオーナーや技術者として転向したため、問題はやや軽減した。さらに1923年6月28日の規則改正[16] では、アマチュア無線家は短波を申請する権利を失ったかわりに、1,500-2,000kHzの帯域免許を獲得した。同時に毎夜20時00分から22時30分と、日曜午前の礼拝タイム[注 9] を送信禁止として、ラジオ放送とアマチュア無線の混信問題は一応の解決をみた。

短波ラジオ放送

極長距離を伝送できる短波ラジオ放送を最初に行ったのはオランダ国営放送で、1927年11月から海外植民地向けに放送を開始[17]。翌1928年には当時オランダ領だったインドネシアジャワ島での受信に成功する。この実績に追随してドイツソ連フランスイタリアイギリス等が1929-1932年にかけて植民地向け放送や海外宣伝放送を短波で開始している。

FMラジオ

周波数変調方式(FM方式)も、レジナルド・フェッセンデンによって1902年に考案されている。しかし、実用的なFMラジオは1933年12月26日にアメリカのエドウィン・H・アームストロングが特許を取得した技術による[17]。アームストロングは世界初のFMラジオ局W2XMNを1937年に開局させ放送を開始した[17]

デジタル化

2000年代に入って、先進国で地上デジタルラジオ放送が開始され、またアメリカのシリウスXMラジオのような衛星デジタルラジオサービスも開始されている。


注釈

  1. ^ 日本の電波法上の「ラジオ」の正式名称。
  2. ^ 戦前は多く用いられた。日本放送協会(NHK)編『放送五十年史 資料編』(日本放送出版協会、1977年3月10日発行)p.686によればs、1941年(昭和16年)4月1日、文部省の用語・用字統一方針に従い、NHKでは「ラヂオ」を「ラジオ」、「スタヂオ」を「スタジオ」表記に改定した、としている。日本放送出版協会発行の『ラヂオ年鑑』は、昭和16年(1941年)版 以前は『ラヂオ年鑑』表記であったが、昭和17年(1942年)版 からは『ラジオ年鑑』表記に改められている。
    朝日新聞』では1941年4月1日夕刊2面に「ラヂオはラジオに 国民学校教科書も国語音へ」という見出しの記事が掲載されて以降「ラジオ」という表記が増えたという(『朝日新聞』2015年2月5日朝刊、10面)。
  3. ^ FM東海が動き出したのが1958年末、NHK-FMが動き出したのが1969年
  4. ^ 当時は火花放電による電波。
  5. ^ コヒーラは電波の有無を検出するだけで音声を取り出せない。
  6. ^ 1912年12月に施行された無線通信取締法(Radio Act of 1912)により、無線をするにはオペレーター資格試験と無線局の免許状が必要となり、1905年から1911年頃まで米国で発売されていた大衆無線機テリムコは、無資格・無免許では使えなくなった。
  7. ^ アマチュア無線の送信解禁は同年10月1日。
  8. ^ アマチュア無線家は1,500kHz以上の任意の周波数を申請し、許可を受けることができた。許可される最下限1,500kHzに人気が集中し大変混雑していたところへ、無線電話も参入したため1,500kHzは大混信となった。
  9. ^ 日曜午前は教会に出向けないリスナーのために、KDKAなど多くの局が教会から生中継し、人気番組となっていた。
  10. ^ この思想は現在も放送法の第15条に残っている。
  11. ^ ただし、FM東海は当時実用化試験局として運用されており、民間企業によるFM放送は1969年開局の愛知音楽エフエム放送(現:エフエム愛知)が最初となる。
  12. ^ 但し、大都市圏の一部の県域ラジオ局では当初から近隣のエリア外でも無料配信を実施している。

出典

  1. ^ 広辞苑』「放送無線電話」
  2. ^ 『広辞苑』「ラジオ」
  3. ^ 大音量&高音質!便利なLEDライトもついたステレオホームラジオ”. tlet.co.jp. tlet.co.jp. 2021年6月20日閲覧。
  4. ^ 短波ラジオ”. www.ando-catalogue.com. 2019年1月24日閲覧。
  5. ^ Tecsun pl-660”. www.tecsunradios.com.au. 2019年3月13日閲覧。
  6. ^ Xhdata D-808”. swl.net.ru. 2019年3月13日閲覧。
  7. ^ RADIWOW R-108”. radiwow.com. 2019年3月13日閲覧。
  8. ^ ER-C57WR”. www.elpa.co.jp (2019年3月11日). 2019年3月12日閲覧。
  9. ^ Thomas Matthew "Home-Made Coherers" Wireless Telegraphy For Amateurs and Students 1906 Thomas M.ST.JOHN pp125-136
  10. ^ T.E. O'donnell "The Amateur's Workshop:An Experimental Wireless Telegraph Outfit" Electrician and Mechanic Aug.1907 Sampson Publishing Co. pp41-42
  11. ^ V.H. Laughter "Wireless Telegraphy Made Simple - Part 1: Construction of a Simple Wireless Telegraph Set" Popular Electricity May 1908 Popular Electricity Publishing Co. pp32-36
  12. ^ James D. Thomas "A Silicon Detector" Modern Electrics Dec.1909 Modern Electrics Publication pp426-427
  13. ^ C. Austin ”The Romance of the Radio Telephone” Radio Broadcast May,1922 p16
  14. ^ 栄谷平八郎 『ラジオ発展史』 1947 通信教育振興会 p48
  15. ^ S.R.Winters The Passing of "NOF" As a Broadcasting Station Radio News Mar.1923 p1623
  16. ^ "Regulations Governing General and Restricted Amateur Radio Stations and Amateur Operators" Radio Service Bulletin(No.75) July.2,1923 Department of Commerce p16
  17. ^ a b c d e f g 高木利弘『スマートTVと動画ビジネス 次世代メディアをデザインするのは誰か?』2012年、インプレスジャパン、205頁
  18. ^ a b 高木利弘『スマートTVと動画ビジネス 次世代メディアをデザインするのは誰か?』2012年、インプレスジャパン、206頁
  19. ^ a b c d 溝尻真也 飯田豊(編)「声を伝える/技術を楽しむ」『メディア技術史:デジタル社会の系譜と行方』 改訂版第1刷 北樹出版 2017 pp.76-81.
  20. ^ 『学研まんがでよくわかるシリーズ94 正露丸のひみつ』(2014年3月31日、学研パブリッシングコミュニケーション発行)62ページより。
  21. ^ 日本放送史 日本放送協会編
  22. ^ a b c d e f g h i 放送90年シンポジウム「ラジオは未来の夢を見る」”. 日本放送協会. 2019年9月10日閲覧。
  23. ^ 日本放送史 日本放送協会編
  24. ^ 1932年5月1日放送協会は第1回全国ラジオ調査を実施した。嗜好番組の1位は浪花節57パーセント、以下講談・落語・人情噺・義太夫・民謡など。日本放送史 日本放送協会編。
  25. ^ 日本放送史 日本放送協会編
  26. ^ NHK広島放送局開局80年ラジオドラマ「放送を続けよ ―広島中央放送局の8月6日―」
  27. ^ 白井久夫「幻の声 ―NHK広島8月6日―」岩波新書
  28. ^ 「新たにラジオ東京 新聞関係一本で申請」『朝日新聞』昭和26年1月11日
  29. ^ 中村禎昭、「中波放送用周波数の変更」『テレビジョン学会誌』 1978年 32巻 10号 p.902-904, NAID 110003697789, doi:10.3169/itej1978.32.902
  30. ^ AMステレオ終了のお知らせ”. www.mbs1179.com. 2019年1月22日閲覧。
  31. ^ a b c “全国の民放AMラジオ、令和10年までにFM転換”. 産経ニュース. (2021年6月15日). https://www.sankei.com/article/20210615-7LYQHU44IVJTHLII7DXG6QCDZU/ 2021年6月15日閲覧。 
  32. ^ a b c d “民間AM局の大半、7年後までにFM化へ 対応端末必要”. 朝日新聞デジタル. (2021年6月15日). https://www.asahi.com/articles/ASP6H5R4MP6HUCLV009.html 2021年6月15日閲覧。 
  33. ^ 番組制作における多様な雇用形態 -中堅ラジオ局の事例を中心に- - 2008年5月 久本憲夫(京都大学大学院経済学研究科 教授)、川島広明(日本民間放送労働組合連合会 近畿地方連合会 執行委員)
  34. ^ 片手にラヂヲ♪Kraftwerk
  35. ^ 明石政紀『ドイツのロック音楽 またはカン、ファウスト、クラフトワーク』 p.139。



ラジオ@

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/12/31 23:04 UTC 版)

ラジオ@(ラジオアットマーク)は、FM OSAKAで放送されていたラジオ番組。




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