ラウ・ル・クルーゼ 作中の描写

ラウ・ル・クルーゼ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/19 20:32 UTC 版)

作中の描写

ラウはC.E.46年、L4コロニー「メンデル」のGARM R&D社の研究所を訪れたアル・ダ・フラガのオーダーに伴い、ユーレン・ヒビキ博士の手でアルの体細胞クローン「ラウ・ラ・フラガ」として同年内に誕生した[4]。人間のクローンを創り出す行為はC.E.世界でも違法行為であり、ヒビキ博士も当初は難色を示したが、アルが「法など変わる。所詮は人が定めたものだ」と押し通し、ヒビキ博士もまたスーパーコーディネイターの研究資金を渇望していたために了承した。作らせた動機は、一人息子(ムウ)が自分よりも不仲であった妻の影響を強く受けた事に納得できず、代わりの後継者として相応しい自分を欲したというものだった[5]。しかし、ヒビキ博士は体細胞クローニングの宿命であるテロメア遺伝子の減少短縮問題を技術的に解決できておらず、ラウは余命が短く早期に老いが訪れるという「失敗作」として誕生させられてしまった(そのうえアルは厳しい教育を施していた[注 1][5]。ラウが自分と同じ余命しか持たない=後継者として役に立たない失敗作だと知るやアルは手の平を返し、彼を捨てた。どのような経緯で自らの出生に辿り着いたのかは不明であるが、ラウは身勝手な理由で自分を不遇な身体で誕生させたあげく捨てたアルを憎み、後年家を焼いて妻もろとも焼死させ、以後「ラウ・ル・クルーゼ」と名乗って生きていく事になる。

幼年の頃には、1度だけアルが妻との間に普通にもうけた息子ムウ・ラ・フラガとも対面しているがムウは覚えてはいなかった。2人はフラガ家の血統に伝わる特殊な空間認識能力を共有しており、それは後年軍に入隊後、優れたパイロットの資質として活かされる事になる。

ザフト建軍前の組織、黄道同盟に所属し、プラントでザフトが建軍されると、これに入隊する[6]。その後、エリートの証たる赤服(ザフトレッド)を与えられて第1次連合・プラント大戦に出陣、コーディネイターが大多数の組織にあってエースパイロットとして頭角を現していった。この頃、後にプラント最高評議会議長に就任する遺伝子工学者ギルバート・デュランダルに出会い[注 2]、自分と同じアル・ダ・フラガのクローンとして生み出されたレイ・ザ・バレルを保護し引き取っている。ザフトレッドの時代にデュランダルに託し、ラウの死後はデュランダルが身元引受人になっている。

また時期は不明であるが、キラ・ヤマトのプロトタイプとも言える存在のカナード・パルスを発見し、キラに敵意を持つように焚き付けていたが、絶望の中で生きる道を示したとも捉えられる[注 3][注 4]

C.E.70年2月22日の世界樹攻防戦では、モビルスーツモビルアーマー37機・戦艦6隻を撃破。その功績を称えられネビュラ勲章を授与される。また、この時期すでにラウは、テロメアの短さ故に老いていく自らの素顔を仮面で隠していた。さらに同年6月2日、ジンハイマニューバの量産型1号機に搭乗しグリマルディ戦線で地球連合軍第三艦隊を壊滅させるなど、トップガンとして獅子奮迅の活躍を見せた。

この戦いでメビウス・ゼロ部隊所属となっていたムウと交戦し、以降双方長きに渡る因縁の存在となる。その驚異的な優秀ぶりから、周囲のザフト兵達の中には彼の実力や功績に激しい嫉妬を抱く者も数多かったが[注 5]、彼が才能に溢れる優秀な人間のクローンとはいえ、実はナチュラルであった事に気づく者はいなかった。彼がナチュラルである事は、デュランダルとレイしか知らなかった。小説ではラウがどのような道を辿ってプラント・ザフトに入り、コーディネーターであるかのように振る舞ってきたのかは分からないが、その道のりは並大抵ではなかったものとムウは解釈している[5]。また、フラガ家が代々持つ超人的な空間認識力はコーディネイター社会で生き抜くために役立ったという[8][注 6][9]

C.E.71年1月25日、地球連合軍の最新型機動兵器であるG兵器を奪取する為にクルーゼ隊を率いてヘリオポリスに侵攻、5機中4機のG兵器を奪取した。その際、ムウのメビウス・ゼロとシグーで交戦し、本人に本気で撃墜する意思があったかどうか不明であり決着は着かなかったが、MSの優秀性も相まって終始優勢を保った。

自らのようなものを生み出しながら科学の叡智や進化した種を謳い、生み出したものと生み出されたものが憎み合って戦火を広げる世界や生命を身勝手に生み出しては殺し合う人間を憎み、その滅びを加速させるべく、地球連合プラントの戦争を利用し、総力戦争をエスカレートさせる事で双方共倒れに追い込み、人類を滅亡させようとした。そのために戦局の均衡を保ち、どちらか片方が有利にならぬよう、幾度も自身が動き工作を図っていた。オペレーション・スピットブレイクの標的地がアラスカの地球連合軍統合最高司令部のJOSH-Aである事を敵である地球連合軍に漏洩し、連合軍が秘密裏に用意していた兵器サイクロプスにより結果的に作戦に参加したザフト軍の8割が連合軍諸共壊滅するという事態を招来した。

その後、秘密裏にザフト軍の最新鋭MSであるフリーダムジャスティスに搭載されているニュートロンジャマーキャンセラーのデータを入手、戦闘中に拉致した捕虜フレイ・アルスター(彼女を殺さずに拉致したのは、フレイが出会い頭にクルーゼの声が自身の父親の声に似ているのを指摘した事で、クルーゼがフレイを自身のルーツに繋がる血縁の者ではないかと疑ったため。実際には他人の空似でしかなく、自身の計画に利用するに至る[2])と共に「最後の扉」を開く「」としてブルーコスモスの盟主ムルタ・アズラエルに送り[10]、地球連合軍の核攻撃と、その報復としてのザフト軍のガンマ線レーザー発射兵器・ジェネシスの使用を導いた。彼が実際に手を下した訳ではないが、連合・ザフト両陣営が相手を殲滅するために引いてはならない引き金を引くこととなった。

第1次連合・プラント大戦において最後かつ最大の激戦となった第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦では、自らプロヴィデンスに搭乗して出撃、その圧倒的な戦闘力で多数の敵機を撃墜、ムウのストライクやディアッカバスターをキラのフリーダムと戦いつつも易々と退けた。劇中での言動から、この攻防戦で初めてドラグーン・システムの実戦操作を行ったと思われるが、同時に11基のドラグーンを使いこなしていた。小説版ではプロヴィデンスにはその時初めて搭乗した事になっているにも関わらず、機体のポテンシャルを最大限に引き出した。

キラのフリーダムとの交戦では、その圧倒的な戦闘力で互角以上の戦闘を繰り広げフリーダムのミーティアユニットを破壊する圧倒的な技量を見せ、同時にアークエンジェルが撃沈したドミニオンから脱出したクルーが乗るシャトルをドラグーンで撃墜、キラの目の前でフレイを死亡させる。フレイの死をきっかけにキラがSEEDを発動させたのちはドラグーンを撃ち落とされていき、最後は機体の両腕を失った状態でフリーダムの特攻を受ける。二基のドラグーンで迎撃し頭や胸といったコクピット周辺にビームを直撃させるが勢いを抑えきれず、ビームサーベルでコクピットを貫かれ惜敗した。ジェネシスはアスランにより破壊され、最期は崩壊するジェネシスのガンマ線レーザーの光に焼かれ、プロヴィデンスの核爆発にフリーダムを巻き込みながら機体諸共消滅し、ラウの野望は潰えた[11]

なお、戦後、ユニウス条約の取り決めにより、国際法廷は開かれず地球連合/プラント両陣営それぞれで戦犯が裁かれたが、この時ラウも被疑者死亡のままプラント側の戦争犯罪人に認定されている。具体的な罪状は明らかにされていないが、ラウの搭乗機であったプロヴィデンスの発展改良型のレジェンド戦犯の乗機だったという理由でその名を襲名するのが忌避されたと言われている[12]


注釈

  1. ^ 作中の回想では「あのバカ(ムウ)の二の舞にはするな」と教育係にも厳しい言葉をかけていた
  2. ^ デュランダルはパトリック・ザラの発注の元、コーディネイターの出生率低下を対策するための技術研究に従事していた[7]
  3. ^ 『機動戦士ガンダムSEED DESTINY GENERATION of C.E.』のカナードのプロフィールより。
  4. ^ スーパーロボット大戦W』での、ラウとの対戦時におけるカナードの台詞「俺にキラ・ヤマトの事を教えた男か」より。
  5. ^ アンドリューやラクスのように純粋に不信感を抱く者もいた。
  6. ^ この空間認識力を持つ事でフラガの家系は並外れた直感を持ち、父アル・ダ・フラガは投機等で成功を収めた[5]。この能力はコーディネイターと同等の高い反射神経をもたらし、直感で敵の攻撃を先読む事さえ可能となる[9]
  7. ^ ムウもラウの素顔を見てしまい、『SEED』で戦死したように描写されたが、『SEED DESTINY』で生存したことになっている。

出典

  1. ^ 公式年表より。
  2. ^ a b c d 『公式ガイドブック3 機動戦士ガンダムSEED 明日への翼』角川書店、2003年10月、99頁。(ISBN 978-4048536882)
  3. ^ 「機動戦士ガンダムSEEDジャーナル」『ガンダムエース』2004年10月号、角川書店、付録冊子、108-109頁。
  4. ^ 『機動戦士ガンダムSEED』45話
  5. ^ a b c d 後藤リウ『機動戦士ガンダムSEED 5 終わらない明日へ』角川スニーカー文庫、2004年2月1日初版発行、242-246頁。(ISBN 4-04-429105-5)
  6. ^ 『アニメコミックス 機動戦士ガンダムSEED DESTINY 9』講談社、2005年9月、194頁。(ISBN 978-4063102116)
  7. ^ 『アニメディア』2005年11月号、学研プラス、9頁。特殊設定・森田繁が語るところによる
  8. ^ 『電撃ホビーマガジン』2004年7月号、メディアワークス、35頁。
  9. ^ a b 後藤リウ『機動戦士ガンダムSEED 5 終わらない明日へ』角川スニーカー文庫、2004年2月1日初版発行、352-354頁。(ISBN 4-04-429105-5)
  10. ^ 『機動戦士ガンダムSEED』46話
  11. ^ 『ガンダムSEED』50話
  12. ^ 『機動戦士ガンダムSEED DESTINYモデル VOL.2 DESTINY MSV編』ホビージャパン、2006年3月31日初版発行、127頁。(ISBN 4-89425-415-8)






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