ヨシ 分布・生育地

ヨシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/19 05:49 UTC 版)

分布・生育地

世界の温帯から亜寒帯にかけて、広く分布する[5]日本では北海道本州四国九州沖縄に分布する[8]

ヨシ原

各地の河岸湿地など、水辺に自生する[7][5]。塩分に耐える性質があり[5]、主として河川の下流域から汽水域上部、あるいは干潟の陸側に広大な茂み(ヨシ原)を作り、場合によってはそれは最高100ヘクタール (ha) に及ぶ。根本は水につかるが、水から出ることもあり、特に干潟では干潮時には干上がる。水流の少ないところに育ち、多数の茎が水中に並び立つことから、その根本にはが溜まりやすい。

他方で、その茎は多くの動物の住みかや隠れ場としても利用される。ヨーロッパアジアでは特に、ヒゲガラ、ヨシキリ、サンカノゴイオオジュリンといった鳥類と関わりが深い。泥の表面には巻き貝カニなどが多数生息する。アシハラガニはこの環境からその名をもらっている。

ヨシ原は、自然浄化作用を持ち、多くの生物のよりどころとなっているため、その価値が再評価されてきており、ヨシ原復元の事業が行われている地域もある。

日本においては、もともと歴史的に湿地はヨシが生い茂るヨシ原であったが、干拓して水田とした経緯から、水田を放棄してしまうとヨシ原へと変遷してしまう[6]

広島県広島市南区の「段原」の由来はヨシの茂る「原」を「原」と誤記したことによるのではないかとされる(知新集)。

帰化の問題

北米では、ヨシはヨーロッパからの帰化種だという俗信が広がっている。しかし、ヨーロッパ人の移民以前に北米大陸にヨシがあったという証拠が存在している。もっとも、遺伝子を見る以外ではほとんど見分けが付かないヨーロッパ型は、北米在来型よりもよく育つため、北米でヨーロッパ型ヨシが増加している[11]。これが固有種を含む他の湿地帯の植物に深刻な問題を引きおこしている。

最近の研究により、移入型と在来型の形態の違いが明らかになった。ユーラシア遺伝子型は北米遺伝子型に較べて短い葉舌(1.0mm未満)、短い(約3.2mm以下)を持ち、茎の特徴で区別される。近年、北米型は P. a. subsp. americanus Saltonstall, Peterson, and Soreng という亜種に分類され、ユーラシア型は P. a. subsp. australis と呼ばれている。

学名として Arundo phragmites L.(基礎異名)、Phragmites altissimusP. berlandieriP. communisP. dioicusP. maximusP. vulgaris とも呼ばれていた。


  1. ^ Lansdown, R.V. (2017). Phragmites australis (amended version of 2015 assessment). The IUCN Red List of Threatened Species 2017: e.T164494A121712286. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2017-3.RLTS.T164494A121712286.en. Downloaded on 27 October 2018.
  2. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Phragmites australis (Cav.) Trin. ex Steud. ヨシ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月4日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Phragmites communis Trin. ヨシ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月4日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i 高橋秀男監修 2003, p. 56.
  5. ^ a b c d e f g h i 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 238.
  6. ^ a b c d e f g h 藤井義晴 2019, p. 145.
  7. ^ a b c d e f g h i j 馬場篤 1996, p. 113.
  8. ^ a b c d e f 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2012, p. 217.
  9. ^ a b 藤井義晴 2019, p. 148.
  10. ^ a b c 藤井義晴 2019, p. 146.
  11. ^ Saltonstall, K. 2002. Cryptic invasion by a non-native genotype of the common reed, Phragmites australis into North America. Proc Natl Acad Sci 99(4): 2445-2449.
  12. ^ a b 金子 亨、速水 敬一郎、西川 正恒、村辺 奈々恵、佐藤 みちる「素描に関する一考察─ リアリズム絵画を中心に ─」『東京学芸大学紀要. 芸術・スポーツ科学系』第64巻、東京学芸大学学術情報委員会、2012年10月31日、11-35頁。 
  13. ^ 西川嘉廣『ヨシの文化史 : 水辺から見た近江の暮らし』サンライズ出版〈淡海文庫〉、2002年。ISBN 4-88325-133-0 
  14. ^ 藤井義晴 2019, p. 147.
  15. ^ 足田輝一編『植物ことわざ事典』東京堂出版、1995年。ISBN 4-490-10394-8 


「ヨシ」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ヨシ」の関連用語


2
100% |||||

3
100% |||||

4
96% |||||

5
96% |||||

6
94% |||||

7
76% |||||

8
76% |||||

9
76% |||||

10
76% |||||

ヨシのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ヨシのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのヨシ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS