ヤク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/02 14:03 UTC 版)
人間との関係
野生個体は食用の乱獲、家畜との競合などにより生息数は激減している[5]。中華人民共和国では法的に保護の対象とされている[5](中国国家一級重点保護野生動物を参照)。1964年における生息数は3,000-8,000頭と推定されている[5]。
利用
2,000年前から家畜化したとされる[5]。1993年における家畜個体数は13,700,000頭と推定されている[5]。
ほとんどのヤクが家畜として、荷役用、乗用(特に渡河に有用)、毛皮用、乳用、食肉用に使われている。中華人民共和国ではチベット自治区のほか、青海省、四川省、雲南省でも多数飼育されている。
「ヤク」の語はチベット語 「གཡག་」 (g-yag) に由来するが、チベット語では雄のヤクだけを指す言葉で、メスはディという。
チベットやブータンでは、ヤクの乳から取ったギー[8]であるヤクバターを灯明に用いたり、塩とともに黒茶を固めた磚茶(団茶)[9]を削って煮出し入れ、チベット語ではジャ、ブータンではスージャと呼ばれるバター茶として飲まれている。また、チーズも作られている。
食肉用としても重要な動物であり、脂肪が少ないうえに赤身が多く味も良いため、中国では比較的高値で取引されている。糞は乾かし、燃料として用いられる。
体毛は衣類などの編み物や、テントやロープなどに利用される[10]。
日本での利用

ヤクの尾毛は日本では兜や槍につける装飾品として武士階級に愛好され、尾毛をあしらった兜は輸入先の国名を採って「唐の頭(からのかしら)」と呼ばれた。特に徳川家康が「家康に過ぎたるものが二つあり、唐の頭に本多平八」と詠われたほど好んだため、江戸時代に入って鎖国が行われてからも清経由で定期的な輸入が行われていた。
幕末、新政府軍が江戸城を接収した際に、収蔵されていたヤクの尾毛が軍帽として使われ、黒毛のものを黒熊(こぐま)、白毛のものを白熊(はぐま)、赤毛のものを赤熊(しゃぐま)と呼んだ。(なお、俗に「黒熊は薩摩藩、白熊は長州藩、赤熊は土佐藩の指揮官が着用していた」と説明される事があるが、軍帽を「魁」の前立てを付けた黒熊毛の陣笠で統一していた山国隊のように、実際には藩や階級を問わず広く使用されていた[要出典]。)
これらの他に、歌舞伎で用いる鏡獅子のかつら[11]や振り毛、仏教僧が用いる払子にもヤクの尾毛が使用されている。
ギャラリー
ネパールの高山地帯のヤク
- ^ “Appendices I, II and III”. ワシントン条約 (2012年9月15日). 2013年1月10日閲覧。
- ^ “Bos gaurus (Gaur, Indian Bison)”. International Union for Conservation of Nature and Natural Resources. 2012年7月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年1月21日閲覧。
- ^ 山田忠雄ほか編 「ヤク」 『新明解国語辞典』(第七版) 三省堂、2011年。
- ^ a b c d e 今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編 『動物大百科4 大型草食獣』、平凡社、1986年、112頁。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』、講談社、2000年、152-153頁。
- ^ Extinct Wild Yak found in Nepal
- ^ Han Jianlin, M. Melletti, J. Burton, 2014年, Wild yak (Bos mutus Przewalski, 1883), Ecology, Evolution and Behavior of Wild Cattle: Implications for Conservation, Chapter 1, p.203, ケンブリッジ大学出版局
- ^ 光永俊郎「嗜オオムギについてⅤ-歴史・文化・科学・利用」『FFIジャーナル』第216巻第1号、日本食品化学研究振興財団、2011年1月、 64頁。
- ^ 光永俊郎「嗜オオムギについてⅤ-歴史・文化・科学・利用」『FFIジャーナル』第216巻第1号、日本食品化学研究振興財団、2011年1月、 65頁。
- ^ “なぜ、ヤクなのか?”. SHOKAY. SHOKAYジャパンオフィス/ダブルツリー株式会社. 2016年9月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年1月21日閲覧。
- ^ “歌舞伎 今日のことば・ことばで知る歌舞伎の世界 鬘と床山”. 歌舞伎美人(かぶきびと). 松竹. 2019年1月21日閲覧。
- >> 「ヤク」を含む用語の索引
- ヤクのページへのリンク