モーリタニア 交通

モーリタニア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/06 09:08 UTC 版)

交通

道を行き交うシャレット(ヌアクショット

道路

道路は右側通行である。交通ルールを守らないドライバーが多く、道路上を動物が歩き回るなど条件は悪い[29]ロバに台車を引かせる『シャレット』が多数公道を走行しているが、遅いため渋滞の原因になっている[29]

交通機関として目的地まで向かうタクシーと、決まったルートをピックアップトラックなどで巡回する乗り合いタクシーが存在する。乗り合いタクシーは安価だが限界まで人を詰め込むという[29]

鉄道

内陸のズエラット鉱山から海港都市ヌアディブまで、1963年に建設されたモーリタニア鉄道が運行している。モーリタニア鉄道の貨物列車はズエラット・ヌアディブ間717kmで鉄鉱石を運搬しており、1本の車両につき車両数210両、長さは約3kmもあり、旅客利用も可能である[30]

国民

民族

国民の40%がムーア人アラブ人ベルベル人の混血)と黒人の混血、あとの30%ずつがムーア人と黒人である[31]。黒人諸民族は、人口の7%を占めるウォロフ人のほか、トゥクロール人en:Haratinセレール族ソニンケ族プル人などが居住する。多年のムーア人支配の影響で、社会の上層部はムーア人が占める。アラブ人には遊牧生活を営むベドウィンも存在する。

言語

アラビア語公用語とする。モーリタニアで話されているアラビア語は「ハッサーニーヤ」と呼ばれ、黒人言語やベルベル語フランス語の影響を受けている。支配層のムーア人は人種的にはベルベル人の要素が強いが、文化的には長い間のイスラームの影響によりアラブ化しており、ベルベル語を保っているものは少数である。高等教育を受けた、商業関係者、政府役人、教育関係者の間では多くフランス語が用いられており、ドライバーや警備員など外国人を相手にする者にも広く通じる[29]英語は入国審査官や研究者などごく一部の者にしか使われない[29]。その他、ウォロフ語なども使われている。

教育

モーリタニアの学童

6歳から12歳までの初等教育が無償の義務教育期間となっており、その後6年間の総合中等教育を経て高等教育を行う。2003年の15歳以上の人口の識字率は51.2%である[32]

文化

音楽

宗教

スンニ派イスラーム国教とし、1991年憲法改正でイスラーム法(シャリーア)が正式に採用された。イスラム教徒の比率は99.1%であり、非イスラム教徒はほぼ外国人である。

イスラム教国であるが、イスラム教徒でなければ国内での飲酒は容認されており、外国人は少量ならば酒類を持ち込める[29]。ただし、持ち込み時に税関に賄賂を渡さないと空港内で没収されるという[29]。また繁華街では出稼ぎの中国人を相手にする中華料理店が存在しており[29]青島ビールが容易に入手できる[29]など適用は緩やかである。

食文化

ヒトコブラクダクスクス

肉は伝統的にヤギラクダ、鶏が食されるが、イスラム教国であるため豚肉は流通していない[29]。野菜も手に入るがほぼ輸入品であるため品質は悪い[29]クスクスなどの味付けにはトマトピューレが多く使われている[29]セネガル料理チェブジェンもよく食されており、パック入りの状態で販売されている[29]

沿岸部では魚も食されるがタコやイカは気味悪がられているため、日本の協力により蛸壺を使う日本式のタコ漁が盛んになっても食べる習慣は無く[29]、全て輸出に回されるため首都ですら流通していない[29]。このため英語やフランス語が話せてもOctopus/Pieuvreという単語を知らずイカとタコの区別が曖昧な者もいる[29]

植民地時代の名残で都市部ではフランス風のパンを焼くパン屋があり、スパゲッティもよく食べられる[29]。また茶を飲む習慣も広まったが、茶は砂糖とミントを入れて沸騰させ濃いめにし小さなグラスで3回に分けて飲むというスタイルである[29]。なお紅茶ではなく中国茶が多く飲まれている[29]。また日本からの支援物資であるコメも流通しており[29]、チェブジェンにも使われている。

世界遺産

モーリタニアには、ユネスコ世界遺産リストに登録された文化遺産が1件、自然遺産が1件ある。

祝祭日

日付[33] 日本語表記 現地語表記[34] 備考
1月1日 元日 رأس السنة
5月1日 メーデー عيد الشغل
5月25日 アフリカの日
11月28日 独立記念日 عيد الإستقلال
ヒジュラ暦第1月1日 イスラム教元日 رأس السنة 移動祝日
ヒジュラ暦第3月12日 預言者生誕祭 عيد المولد 移動祝日
ヒジュラ暦第10月英語版1-2日 イド・アル=フィトル(断食明け祭) عيد الفطر 移動祝日
ヒジュラ暦第12月10-11日 イド・アル=アドハー(犠牲祭) عيد الأضحي 移動祝日

注釈

  1. ^ 「モーリタニア・プレミアリーグ」と呼称される場合も。
  2. ^ 日本語では通常、gavageを「経管栄養」と訳出するが、ここでのgavageとは全く違う目的の行為である。この場合のgavageガチョウやカモへの強制給餌フランス語版に近い行為を人間に対して行なうもので、場合によっては嘔吐などによって窒息死することがある。

出典

  1. ^ Mauritania”. ザ・ワールド・ファクトブック. 2022年8月10日閲覧。
  2. ^ a b c d e IMF Data and Statistics 2021年10月26日閲覧([1]
  3. ^ ラテン文字翻字:Al-Jumhuriya al-Islamiya al-Muritaniya
  4. ^ a b c 田辺裕、島田周平、柴田匡平、1998、『世界地理大百科事典2 アフリカ』p589、朝倉書店 ISBN 4254166621
  5. ^ 田辺裕、島田周平、柴田匡平、1998、『世界地理大百科事典2 アフリカ』p591、朝倉書店 ISBN 4254166621
  6. ^ a b 田辺裕、島田周平、柴田匡平、1998、『世界地理大百科事典2 アフリカ』p586、朝倉書店 ISBN 4254166621
  7. ^ モーリタニアでクーデター 軍事委が全権握る 親ソ派勢力介入か『朝日新聞』1978年7月11日朝刊、13版、7面
  8. ^ 「セネガルとカーボベルデを知るための60章」p107-108  明石書店〈エリア・スタディーズ78〉、小川了編著、2010年3月。ISBN 4-7503-1638-5
  9. ^ Palin, Michael; Pao, Basil (16 June 2005). Sahara. Macmillan. pp. 85–. ISBN 978-0-312-30543-7.
  10. ^ https://www.afpbb.com/articles/-/2193896 「民主主義への移行の最終段階 大統領選挙投票 - モーリタニア」AFPBB 2007年3月12日 2018年11月3日閲覧
  11. ^ https://www.afpbb.com/articles/-/2201228 「大統領選挙、決選投票開始 - モーリタニア」AFPBB 2007年3月26日 2018年11月3日閲覧
  12. ^ https://www.afpbb.com/articles/-/2201836 「大統領選挙決選投票、元閣僚アブドラヒ氏が当選 - モーリタニア」AFPBB 2007年3月27日 2018年11月3日閲覧
  13. ^ BBC World,Breaking News
  14. ^ http://www.cnn.co.jp/world/CNN200808060035.html
  15. ^ “モーリタニアでクーデター 軍が大統領ら拘束”. 47NEWS. 共同通信. (2008年8月6日). オリジナルの2014年8月18日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140818111915/http://www.47news.jp/CN/200808/CN2008080601000915.html 2011年2月19日閲覧。 
  16. ^ a b c d e f g 「データブック オブ・ザ・ワールド 2016年版 世界各国要覧と最新統計」p315 二宮書店 平成28年1月10日発行
  17. ^ ガズワニ氏が勝利
  18. ^ a b 田辺裕、島田周平、柴田匡平、1998、『世界地理大百科事典2 アフリカ』p590、朝倉書店 ISBN 4254166621
  19. ^ a b https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/09/4958e1b1ae5c6f78.html 「国民議会議員選挙で与党が絶対安定多数を維持(モーリタニア)」渡辺智子 JETRO 2018年09月26日 2018年11月5日閲覧
  20. ^ a b 二国間関係」『モーリタニア・イスラム共和国(Islamic Republic of Mauritania)基礎データ』外務省https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/mauritania/data.html#section62017年12月21日閲覧 
  21. ^ 特別寄稿=モーリタニアを救った日本人=タコ漁を教えた中村正明さん=サンパウロ市在住 酒本恵三
  22. ^ モーリタニアと日本の繋がりと、値上がり続くタコの行く末
  23. ^ 良質なタコを求めて、「砂漠の国」モーリタニアへ
  24. ^ 在モーリタニア日本国大使館
  25. ^ 「データブック オブ・ザ・ワールド 2016年版 世界各国要覧と最新統計」p314 二宮書店 平成28年1月10日発行
  26. ^ 深刻化する環境問題に耐えるモーリタニア |”. GNV. 2020年1月3日閲覧。
  27. ^ 田辺裕、島田周平、柴田匡平、1998、『世界地理大百科事典2 アフリカ』p593、朝倉書店 ISBN 4254166621
  28. ^ 「週刊朝日百科世界の地理98 モロッコ・モーリタニア・西サハラ」p10-208 昭和60年9月8日発行 朝日新聞社
  29. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 前野ウルド浩太郎 2017.
  30. ^ 「世界の鉄道」p319 一般社団法人海外鉄道技術協力協会著 ダイヤモンド・ビッグ社 2015年10月2日初版発行
  31. ^ CIA - The World Factbook
  32. ^ cia.gov
  33. ^ Jours Feriés 2020”. 在モーリタニアアメリカ合衆国大使館. 2022年8月7日閲覧。
  34. ^ مخطط أيام العطل”. 在モーリタニアアメリカ合衆国大使館. 2022年8月7日閲覧。
  35. ^ 【世界深層in-depth】アフリカ・モーリタニア/ぽっちゃり女性モテモテの陰で/無理やり飲食 死者も『読売新聞』朝刊2017年9月14日






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