モーセ
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モーセあるいはモーゼ、ラテン語、英語読みのモーゼスとも(ヘブライ語: מֹשֶׁה モーシェ、ギリシア語: Μωυσής、ラテン語: Moyses、Moses、アラビア語: موسىٰ)は、旧約聖書の『出エジプト記』などに現れる、紀元前16世紀または紀元前13世紀ころに活躍したと推測されている、古代イスラエルの民族指導者であり、יהוה(ヤハウェ)を神とする。正教会ではモイセイと呼ばれ聖人とされる。
注釈
- ^ 『出エジプト記』6:19-20。なお、ここではアロンとモーセが双方アムラムとヨケベドの子とされているが、ミリアムについては触れていない。ミリアムの名前が初めて出てくるのは15:20で「アロンの姉妹」名義で登場、通常は2章に出てくる「モーセの姉」と同一人物とされる。
また2章でモーセが母の結婚後最初に生まれたような書かれ方をしているのに一貫した話の流れで姉が直後に出てくる(6章は2章と別系統の出典の可能性があるが、ここは並行記事や後世の挿入の可能性が低い。)ことから、「姉」は「異母姉」ではないか?モーセがそばにいる状況でミリアムが「アロンの姉妹」と呼ばれることからミリアムはモーセよりアロンの方が結び付きが強いのではないか?という説もある。
((関根正雄1969) p.122註三「モーセの誕生(二ノ一-十)」) - ^ この「モーセ(モーシェ)の名前の由来はマーシャーから」は『出エジプト記』2:10の本文中に明記されているが、ヘブライ語の読みであるのでエジプト人が付けるのは不自然なためか、ヨセフスやフィロンなどは本文内の説明ではなく「エジプトの言葉で『水』をモーウ、『水から助けられた人』をエセース(後述の関根正雄の『出エジプト記』では「モ=水」「ユシェ=救われた」)といい、モーセ(原文はギリシャ読みの「モーセース」)は『水の中から引き揚げられた人』という意味だ。」という「水」が由来の説明を上げている
((秦2010) p.48-49)
ただしこれもギリシャ読み前提なので現在は取られない解釈であり、むしろエジプトの言葉にこだわるなら「~の息子」に当たる言葉が語源の方が自然で、著名人の使用例に「アハモーセ」や「トゥトモーセ」といったファラオがおり、意味としては後者の場合「トゥト(神の名)の息子」という意味になる。
((関根正雄1969) p.122註三「モーセの誕生(二ノ一-十)」)
(注:「トゥトモーセ」は通常日本語では「トトメス」と訳される。“Weblio 辞書 > 英和辞典・和英辞典 > 英和対訳 > Thutmesの意味・解説”. 2019年2月2日閲覧。) - ^ モーセの妻は資料ごとに出自が違っており『出エジプト記』では前述のようにミディアン人のツィポラだが、『民数記』12:1ではアロンとミリアムが「モーセがクシュの女を娶っている」ことを言う場面があり、『士師記』1:16ではイスラエルの民と行動を共にしていた集団に「モーセの舅であるケニ人の子孫」なる記述がある。
ヨセフスは「クシュ人」はツィポラと別のモーセがエジプトにいた時の妻だと解釈(後述)し、士師記に当たる部位の「ケニ人」の下りはミディアン人として書き直している。 - ^ このしるしのみモーセがファラオに対し使用する場面がない。なお、ギリシャ語訳聖書では「レプラ」の記述がなく「雪のように白く」、これを元にしたヨセフスはさらに「石灰岩のように白く」としている。((秦2010) p.97)
- ^ 原語では杖が変わったものは第4章3節では「蛇」だが、この第7章では第4章の物とは別の単語で、直訳すると「大きな爬虫類」という意味になる。このため「(大きな)蛇」でも一応成り立つが「鰐」とも訳せる。
((関根正雄1969) p.133註10「アロンの杖(七ノ八-十三)」) - ^ 『申命記』34:9、以下文語訳聖書より引用「ヌンの子ヨシユアは心に智慧の充る者なりモーセその手をこれが上に按たるによりて然るなりイスラエルの子孫は之に聽したがひ主のモーセに命じたまひし如くおこなへり」(申命記34:9)、「主の僕モーセの死し後 主、モーセの從者ヌンの子ヨシユアに語りて言たまはく わが僕モーセは已に死り然ば汝いま此すべての民とともに起てこのヨルダンを濟り我がイスラエルの子孫に與ふる地にゆけ」(ヨシュア記1:1-2)
- ^ Yahweh's name, written as 'YHWH' in the Hebrew Bible, has traditionally been rendered in English as the Template:Lord (Adonai) or God by Jews and Christians. See Names of God in Judaism and Names of God in Christianity.
- ^ ただし、『ユダヤ古代誌』ではこの出エジプト記2章11-15節に該当するエピソードがなく、エチオピア遠征のあと妬まれたので逃げたことにされている。
- ^ ヨセフスの著書の『ユダヤ戦記』では、ユダヤ戦争勃発の直前にカエサリアで起きたギリシャ系とユダヤ系の住民同士の大規模な喧嘩の発端が「ギリシャ系住民が間接的にこの件でシナゴーグの近くでモーセを侮辱することをしたので血の気の多いユダヤ系住民がキレて乱闘が起きた」という趣旨の説明がある。
- ^ 引用元の『レビ記』13章では「レプラ(ヘブライ語では「ツァーラアト」)患者は宿営の外に隔離される(第13章46節)」だが、『ユダヤ古代誌』でも「町から追放されて他人との交渉は許されず一個の死体のように扱われる」とより厳しい記述になっている。((秦2010) p.228-233)
- ^ ティルベリのゲルウァシウス『西洋中世奇譚集成 皇帝の閑暇』(池上俊一訳、講談社学術文庫、2008年7月10日初版、ISBN 978-4-06-159884-3)では「つまり、讃嘆すべき光がその顔から(角状に)発して、かれを見つめる者の目を眩ませる」(p241)
出典
- ^ 民数記(口語訳)#20:12
- ^ 申命記(口語訳)#34:5
- ^ 『出エジプト記』1:22
- ^ 『出エジプト記』2:1-10
- ^ 『出エジプト記』2:11~3:21
- ^ 『出エジプト記』4:1-9
- ^ 『出エジプト記』7:8-25
- ^ 『出エジプト記』12:29
- ^ 『出エジプト記』12章
- ^ 『出エジプト記』14章
- ^ 『出エジプト記』16章~17章
- ^ 『出エジプト記』20章
- ^ 『出エジプト記』24章
- ^ 『民数記』10:33
- ^ モーセ以外全員処刑宣言(民数記#14:11,12)
- ^ 40年間荒野をさまよう事に(民数記#14:34,35)
- ^ 『民数記』16章
- ^ 『民数記』21:4-9
- ^ 『民数記』21:21-35
- ^ 『民数記』31:1-24
- ^ 『出エジプト記』17:1-7
- ^ 『民数記』20:2-13
- ^ 『申命記』32:51
- ^ 『申命記』34章
- ^ 『申命記』34:6
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- ^ 「モーセの生涯」(「知の再発見」双書108)p120 トーマス・レーメル著 矢島文夫監修 遠藤ゆかり訳 創元社 2003年7月10日第1版第1刷発行
- ^ 「人名から読み解くイスラーム文化」p91-92 梅田修 大修館書店 2016年8月10日初版第1刷
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- ^ 旧約聖書-モーセ五書(律法)-サルヴァスタイル美術館
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- ^ 「モーセの生涯」(「知の再発見」双書108)p90-91 トーマス・レーメル著 矢島文夫監修 遠藤ゆかり訳 創元社 2003年7月10日第1版第1刷発行
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- 2 モーセの概要
- 3 トーラーの記者として
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