モンゴル系民族 モンゴル系民族の概要

モンゴル系民族

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/20 14:30 UTC 版)

大雑把な人口の内訳は、モンゴル国に200万、中国・内モンゴル自治区に400万、ロシア・ブリヤート共和国に20万である。詳細に見るとモンゴル国では人口約253万3100人のうち95%(約241万人)がモンゴル族(2004年統計年鑑)であり、中国には約1000万人(内モンゴル自治区に約400〜500万、それ以外の中国内に約500〜600万)のモンゴル族がいる。

現在のモンゴル系民族

モンゴル諸語の分布図
  現在のモンゴル系民族の居住地域
  13世紀後半のモンゴル帝国

分布

モンゴル国および中華人民共和国におけるモンゴル族の自治区域

外モンゴル(モンゴル国)

現在のモンゴル国にあたる「外蒙古(がいもうこ)」とは、「内蒙古」とともに朝時代につけられた呼び名で、現在も世界的に使われる用語である(英語でOuter Mongoliaと呼ぶ)。しかし、清朝側から見たこの呼称はモンゴル人に嫌われており、モンゴル人自身では「北(アル)モンゴル」と称している。また、モンゴル国の8割弱がハルハ族と呼ばれるモンゴル系の民族で占められているため、「ハルハ・モンゴル」とも呼ばれる。モンゴル国は世界で唯一のモンゴル人の独立国家であり、人口は256万人(2005年)、そのうち8割弱がハルハ・モンゴル族、残り2割強にその他モンゴル系、テュルク系民族の16部族が居住する。言語はハルハ・モンゴル語が標準語で、文字は1941年以来キリル文字であるが、民主化後は古来の縦書きモンゴル文字を復活させようという動きがある。

[1]

内モンゴル(中国・内蒙古自治区)

現在中国領である内モンゴル自治区は、清朝時代に「内蒙古(ないもうこ)」と呼ばれ、もともとはモンゴル帝国(北元)の中心地でチャハル・モンゴルの支配域であったが、17世紀に清に編入されて以降中国領となっている。現在もなお「内蒙古」と呼ばれているが、上記の理由からモンゴル人自身では「南(オボル)モンゴル」と呼ばれている。人口はモンゴル国の外モンゴルに対し、モンゴル系モンゴル族が1割であり、残り8割が漢族で占められており、文化的に漢化が進み、モンゴル語を解さないモンゴル族もいる。文字は伝統的な縦書きモンゴル文字を使用する。

[2]

その他中国領内のモンゴル

中国の新疆ウイグル自治区のにはかつてオイラトジュンガル帝国の子孫であるオイラド族が居住しており、ボルタラ・モンゴル自治州バインゴリン・モンゴル自治州が行政区画に存在する。寧夏・甘粛地方にはイスラム教徒であるドンシャン族バオアン族が居住している。

[3]

ロシア領のモンゴル

ロシア連邦ブリヤート共和国にはモンゴル語北部方言に属するブリヤート語を話すブリヤート人が住んでいる。自治共和国の総人口は97万人(2005年)であり、そのうちの半数はロシア人である。「ブリヤート」とはロシア風の発音で、もともとは「ボリヤド」という。ブリヤート人は12~13世紀ごろ「森の民(オイン・イルゲン)」と呼ばれ、モンゴル北部の森林地帯で狩猟と牧畜を営んでいた。1207年チンギス・カンの長男ジョチによってモンゴル帝国に編入されて以来、モンゴル民族となり、その影響でチベット仏教も広まった。17世紀よりロシアの侵入が始まり、1689年ネルチンスク条約によってロシア領となる。1920年には赤軍により極東共和国が建てられ、まもなくソ連領となり、1923年にはブリヤート・モンゴル自治共和国に編入され、1958年には現在のブリヤート自治共和国に改称された。また、カスピ海北岸のカルムイク共和国には上記のオイラド族と同族であるカルムイク人が住む。「カルムイク」とはヨーロッパ側からの呼び名であり、自称はやはり「オイラド」という。自治共和国の人口は29万人であるが、カルムイク人はその半数以下である。カルムイク語はモンゴル語西部方言に属し、文字はキリル文字の他縦書きモンゴル文字を改良したトド文字を使用する。

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  2. ^ 金岡 2000,p25‐27
  3. ^ 金岡 2000,p27
  4. ^ 金岡 2000,p28‐29
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  12. ^ 『新唐書』列伝第一百四十四 北狄
  13. ^ 『遼史』本紀第二十四 道宗四
  14. ^ 宮脇 2002,p66
  15. ^ 村上 1970
  16. ^ 岡田 2004
  17. ^ 宮脇 2002,p188-213
  18. ^ 宮脇 2002,p223
  19. ^ Pullyblank(1962)やLigeti(1970)によると、鮮卑語の特徴はモンゴル語であるという。《『騎馬民族史1』p9 注15、p218 注2》
  20. ^ L.Ligeti(Le Tabghatch,un dialecte de la langue Sien-pi,1970)は、鮮卑拓跋語はモンゴル語の特徴を有し、テュルク語の特徴とは相容れないと強調する。《内田 1975,p4》
  21. ^ 『東北古代民族研究論網』
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  23. ^ Pullyblank (1962)Ligeti (1970) によると、鮮卑語(特に拓跋語)の特徴はモンゴル語であるという。《『騎馬民族史1』p9 注15、p218 注2》
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