ムカシトカゲ
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生態
成体のムカシトカゲはしばしば体温を上昇させるために日光浴をするが、基本的に地上性・夜行性である。それに対し幼体は樹上性・昼行性であるが、おそらくは成体が幼体を捕食するためであろう。餌は昆虫を初めとする地上性無脊椎動物などだが、海鳥の雛・卵や小型爬虫類なども食べる[18]。森林下層や海岸部に巣穴を掘って生息しているが、海岸部では海鳥の巣に住み着いていることも多い。
低温耐性
ムカシトカゲは多くの爬虫類が耐えられる温度よりかなり低い温度でも生存でき、冬眠することでも知られている。気温5〜10℃でも活動し、それより寒くなると冬眠する[18]。7℃までは通常の活動性を維持でき、16〜21℃が適温であるが、これはすべての爬虫類の最適温度中最低の部類である。28℃以上になると多くの場合は死に至る[31]。トカゲ類より低い代謝率をもつが、それは体温の差に現れている。体温はトカゲ類が約20℃の体温なのに対し、5.2〜11.2℃の範囲である[32]。
繁殖
ムカシトカゲの繁殖サイクルは非常に緩慢である。性成熟に少なくとも10年掛かり、メスの交配と産卵は4年に1度である(オスは毎年挑戦する)[33]。交配は夏に行われ、求愛中オスは皮膚を暗色化し、背中のトゲを逆立ててメスに向かって行進する。オスはゆっくりと体を上下させながらメスの周りに円を描く。もしメスが求婚者を受け入れるなら、メスは頭を上下に振る。前述のようにオスは交接器を持たないため、交尾は総排出口を合わせて行われる。
受精から約10か月後、メスは地面に深さ20cm、直径50cmほどの穴を掘り、柔らかい羊皮紙状の殻を持つ卵を8-14個ほど産卵して埋める[18]。卵は有鱗目と同様に水分を保持するアルブミン層(卵白)を欠いており、発生に必要な水分は卵の外の土壌から吸収する。産卵から孵化まではさらに12-15か月を要する。幼体の吻端には、ワニ目・カメ目と同様の卵角(有鱗目のような卵歯ではない)があり[3][16]、これで卵殻を突き破る。幼体の頭胴長は54mmほどである[16]。孵化した幼体の性別は卵の温度によって決まり(温度依存性決定)、高温だとオスが、低温だとメスが産まれる。21℃では雌雄比は半々だが、22℃では80%がオスになる。さらに20℃では80%が、18℃でほぼ100%がメスになる[34]。ただし、ムカシトカゲの性決定は環境要因(温度)だけでなく遺伝子要因も関係している複雑なものらしいという説がある[35]。
彼らは恐らく全爬虫類のなかで最も成長が遅く、35歳ぐらいまでは成長を続ける[34]。寿命は100年以上とも言われている[18][16]。
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