ミニ (BMW)
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第2世代 (2006年 - 2016年) R55/56/57/58/59/60/61
ミニ | |
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![]() クーパー | |
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概要 | |
販売期間 | 2006年11月-2016年 |
ボディ | |
ボディタイプ |
ハッチバック エステート コンバーチブル カントリーマン クーペ ロードスター |
駆動方式 | FF/4WD |
パワートレイン | |
エンジン | 直列4気筒 1.4L/1.6L NA/ターボ |
最高出力 |
98-211ps(72kW-155kW) 6000rpm |
最大トルク |
15.6-26.5kg·m(153-260N·m) 1850-5600rpm |
変速機 | 6速MT/6速AT/CVT |
サスペンション | |
前: ストラット 後: マルチリンク | |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,465-2,595mm |
全長 | 3,715-4,120mm |
全幅 | 1,685-1,790mm |
全高 | 1,430-1,550mm |
車両重量 | 1,130-1,460kg |
その他 | |
最小回転半径 |
5.1m (ワン) 5.5m (クラブマン、クラブバン) 5.8m(カントリーマン) |
2006年のパリサロンで発表。2006年11月、クーパー、クーパーSが英国とドイツで発売開始、日本での発売は2007年2月24日。同年4月、英国を皮切りにベーシックモデルのワン、クーパーDが発売されたが、日本にはワンのみが導入されている。ハッチバックのサルーンは第2世代となったがコンバーチブルは初代が継続して生産され、2009年モデルより新型へ移行した。なお、この代でバリエーションが一気に増え、全7種のボディを持つようになった。型式については、R55はクラブマン(含:クラブバン)、R56はサルーンのワン、クーパー、クーパーS、R57はコンバーチブル、R58はクーペ、R59はロードスター、R60はカントリーマン、 R61はペースマンを表す。
オリジナルミニ同様、「変わらない良さ」が基本コンセプトとなっており、外観は、先代ミニとの区別が難しいほど類似しており、「変えないこと」に対する意思が強く現れている。ボディーサイズは前後左右に20mmほど拡大された。ヘッドランプはエンジンフードから車体側に固定されたため、コスト低減と共にフードの開閉も軽くなった。燃費、省資源や安全面は相応の改良が施され進化しているが、R53 クーパーSと比べ新型クーパーSの車重は+30kgの1,210kgとなった。
2013年7月11日、世の中で長く愛され続ける秘訣を探るため、日本のゆるキャラであるくまモンがオックスフォード工場を訪れた。これは、イギリスの国民的キャラクターベアであるパディントンベアから招待されたためである。パディントンベアとのツーショットが実現したのはもちろん、サプライズとしてR57をベースとした「くまモンMINI」も披露された[注 9]。このモデルは2016年現在、クーペ、オープンカーを除いて日本国内で新車販売されている数少ないハードトップの車種である。
メカニズム
エンジンは、BMWとフランスのPSAグループとの共同開発による「Prince」のコードネームで呼ばれた新型。バルブトロニック技術を採用した直列4気筒DOHC1.6L (120ps) のクーパーと、通常のバルブ機構を備えた1.6L ツインスクロール直噴ターボ (175ps) のクーパーS。2007年に1.4L (95ps) のワンと1.6L ターボディーゼル (110ps) のクーパーDが追加されたことにより、ディーゼルエンジンに関するトヨタとの提携関係は解消された。トランスミッションはゲトラグ製6速MTと、パドルシフト付きのアイシンAW(現:アイシン)製6速ATが用意され、油圧制御式湿式多板クラッチの制御問題から評判の良くなかったCVTは引き継がれなかった。
後期モデル(2010年3月〜)からはMT車にアイドリングストップ機構が追加された。
バリエーション
クラブマン
シリーズ初となるエステートで、往年のシリーズ名から「クラブマン」と名づけられた。発売に先立つ2007年7月29日から写真と動画が配信、日本ではクーパー、クーパーSの展開となり2007年10月の東京モーターショーで発表と受注が開始され、2008年3月2日 (ミニの日) に納車が開始された[8]。
2005年のフランクフルトモーターショー (IAA) で発表されたコンセプトカーのスタイルを踏襲している。全長はワンと比べて240mm長く、ホイールベースも延長された。「アシメトリック・クラブドア」と呼ばれる左右非対称ドアを採用し、車体右側にのみ観音開きの小さなリアドア(クラブドア)が追加されている。このクラブドアはマツダ・RX-8やトヨタ・bB オープンデッキ、サターン・アイオン クアッドクーペなどと同様に、前席ドアをいったん開いてからでないと開けることができない構造である。バックドアは左右対称の観音開きでヒンジの中心線が垂直ではなく、前傾している所などもオリジナルに倣っている。
“コントラスト・リアピラー”と呼ばれる車体後端の隅は外板と異なる色で仕上げることが可能で、これも往時のウッドフレームを彷彿とさせる。リアのコンビネーションランプを囲む部分はバックドアのヒンジを兼ねているため、ドアを開けた場合もランプ類は車体側に残る構造となっており、被視認性を確保した上でヘッドランプとエンジンフードの関係を反復する遊びも見せている。
クラブマンの派生車種として商用パネルバンの「クラブバン」がある。2012年のジュネーブモーターショーでコンセプトモデルとして発表され、後に日本市場にも少数ながら導入された。クラブマンとの大きな違いは2シーターであることと、リアクオーターウィンドウ部分にボディ同色のフィルムが貼られていること等である(室内側には樹脂パネルが貼られている)。後部座席がないため、ラゲッジスペースはクラブマンの260Lに対し860Lとなっており、車重も50kg軽量である。日本では各種法規の関係で4ナンバーではなく5ナンバーとして登録される。
コンバーチブル
2009年に追加された。グレードはクーパーとクーパーS。ソフトトップは走行時でも30km以下であれば動作可能となっている。横転時の安全を確保するロールバーは、先代の固定式から格納式となり、横転を検知すると0.15秒で伸長する。荷室容量は先代比で+5L、後席を倒した状態では+55Lに拡大された[9]。
カントリーマン(日本名:クロスオーバー)
2008年のパリサロンで発表された「MINIクロスオーバー」がルーツで、2010年1月に発表、同年9月より欧州で販売を開始。シリーズ初の4ドアであり、 クロスオーバーSUV[注 10]でもある同車のボディサイズは、全長4,105 mm×全幅1,790 mm×全高1,550 mmで、ホイールベースも2,595 mmとシリーズで最も大きく長い。全長はサルーン比で+365 mm、エステートのクラブマンと比べても125 mm長く、全高は1,561 mmでサルーン比+120 mmとなる。
日本仕様の特徴として、機械式立体駐車場への駐車できるようにルーフアンテナのマウント形状を日本専用に開発し、全高を1,550 mmとしている点が挙げられる。全幅が1,700 mmを超えるため、日本で正式発表されるシリーズでは初の3ナンバー登録車である。
インテリアは独立タイプの後席が標準だが、オプションで3人掛けのベンチシートも用意。スライド機構とリクライニング機構を備え、荷室容量は通常で350 L、後席を格納すると最大1,170 Lとなる。足元、頭上、ショルダー周りが広く、シートポジションは他モデルより高めとなっている。特有の装備としてセンターコンソールの代わりに“MINIセンターレール”が採用され、小物入れやドリンクホルダー、外部オーディオ機器などを自由に装着可能となっている。
初代ラインナップは、ワン、クーパー、クーパーS、クーパーSで4WDも設定される。エンジンは全て1.6 Lで、ワンとクーパーが、それぞれ最高出力98 psと122 ps、最大トルク15.6kg·mと16.3kg·mのNA、クーパーS、クーパーS ALL4には最高出力184 ps、最大トルク24.5 kg·mを発生するツインスクロールターボを搭載。クーパーS ALL4はシリーズ初となる4WDシステム“MINI ALL4”を採用、ファイナルドライブに直接取り付けられた電子制御油圧式ディファレンシャルによって前後アクスルの駆動力配分を無段階に制御。駆動配分量は走行状況に応じて前後0:100 - 100:0まで自動的に変化する。
2014年9月8日のマイナーチェンジにより、クーパーSが廃止され、ディーゼルが追加された。ただし、ディーゼルはAT限定となり、全車種全グレードでMT選択ができなくなった。ラインアップはワン、クーパー、クーパーSD、クーパーDで、4WDも設定される。エンジンはディーゼルが2.0 Lとなり、クーパーD、クーパーD ALL4には最高出力112 ps、最大トルク27.5 kg·mを発揮するターボディーゼルを搭載。クーパーSDには最高出力143 ps、最大トルク31.1·mを発揮するターボディーゼルを搭載。
クーペ
2011年6月20日、シリーズ5番目のバリエーションとして追加された。同年9月27日、日本仕様の発表と同時に予約を開始した。グレードはクーパー、クーパーS、ジョン クーパー ワークス (JCW) の3種。シリーズ初の2人乗りであり、同時にボディ後部にリアデッキがある3ボックス型でもある。ミニでは「クラシックなグラン・ツーリスモ (GT) スタイル」と表現している。室内はリアシートを備えない代わりに、荷室容量はハッチバック比で+120Lの280Lを確保している[10]。
エクステリアは、フロントウインドシールドがシリーズ中最も大きく傾斜し、車高もハッチバックより40mm以上低い。また「ヘルメットルーフ」と呼ばれるルーフは2トーンカラーで塗り分けられ、その後端に帽子のつばを連想させるスポイラーを装着。加えて、トランクリッドには走行速度が80km/hを超えると自動的にせり上がる格納式のウイングも備えている[10]。
ロードスター
2011年10月30日、シリーズ6番目のバリエーションとして2009年のフランクフルトモーターショーに出品された「MINIロードスターコンセプト」を市販化した「MINIロードスター」を発表[11]。グレードはクーペ同様、クーパー、クーパーS、ジョン クーパー ワークス (JCW) の3種。
日本仕様は2012年1月19日に発表・受注を開始。なお、日本では登場を機に布袋寅泰とのコラボレーションモデル[注 11]を特別に製作することを発表[12]。後に「HOTEIxMINIコラボカー」としてブラックのロードスターをベースにホワイトの幾何学模様を模した「ギタリズム・モデル」とレッドのクーペをベースにブラックの炎を模した「ブラック・ファイヤー・モデル」が製作され[13]、全国各地で展示されている[14]。
同じオープンモデルでもある「コンバーチブル」との決定的な違いとして、2シーターで独立したトランクを備えている事が挙げられる。これはコンバーチブルがサルーンをベースにしているのに対し、ロードスターがクーペをベースにしているためである。ソフトトップの開閉は手動式を採用し、ベースのクーペ同様に格納式ウイングも備わる。なお、後期モデルについてはオプションでソフトトップの電動式開閉を選べるようになった。
2015年2月12日、クーペとロードスターの生産終了が明かされた[15]。
ペースマン
2011年1月、デトロイトショーで世界初公開、2013年3月に発売された。カントリーマンをベースとした3ドアのクーペ仕様で、ミニではクロスオーバーSUVでは無くSAC[注 12]としている。名称は、MINIブランド全体をペースメーカーのように引っ張ってゆくモデルになって欲しいとの願いから名付けられ[16]、リアゲートに名称のエンブレムが付く(カントリーマンもマイナーチェンジで同様のエンブレムが追加された)。初代グレードは、クーパー、クーパーS、JCWで、カントリーマンと同様に4WDも設定される。
2014年9月8日のマイナーチェンジによりグレードは、クーパー、クーパーS、クーパーDが設定されている。
カントリーマンと比較して、スポーティーなセッティングとされているほか、ボディサイズは全長+15mm、全幅−5mm、全高−20mm。荷室の容量は−20Lとなる330Lで、リアシートを畳むことで1,080Lに拡大する[17]。
注釈
- ^ BMWが開発に関与したものでは1998年のローバー75とMG・ZTが初、BMWブランドでは2014年の2シリーズ アクティブツアラー(F45)が初。
- ^ マイナーチェンジ後は170ps。
- ^ 2002年7月からフェラーリ・マセラティ・グループのコンセプトデザイン担当役員を務め、2005年2月よりフィアット、2007年6月よりアルファロメオに在籍。
- ^ ペンタゴン・エンジンとも呼ばれる。
- ^ クーパーSのATは2005年のマイナーチェンジで追加。
- ^ ワンの販売は海外のみ。
- ^ JCW (ジョン・クーパー・ワークス) というこのモデルは、レーシングミニの名チューナーとしてのブランドイメージを強く押し出したモデルで、クーパーSの170psという出力に対して、48ps増の218psという高出力を引き出している。内装も後席を撤去し2シーター化されたほか、フォグランプやリアワイパーも撤去し、ヘッドランプも軽量化のためにHID→ハロゲンに変更している他、リアサスペンションのロアアームもアルミ製とし、JCW専用のセッティングとブレーキを採用するなど、走りに振った構成となっている。シートも全モデルがレカロ製のスペシャル品を採用する。軽量化の反面、大径の18インチホイールの採用や各部の強度アップ、整流板の追加などもあり、車両重量はクーパーSより15kgほど増の1,195kgとなった。他にも多くの部分で見直しが図られ、スポイラーや車体下部の整流板など空力にも手を入れられた結果、最高速度は240km/h、0-100km/h加速は6.5秒という、シリーズ最高の性能を発揮している[5]。
- ^ クーパーが100台、クーパーSが200台である。
- ^ 「くまモンMINI」は7月13日より故郷・熊本にあるMINI熊本で展示される[7]。
- ^ BMWではクロスオーバーSUVではなくSAV = Sports Activity Vehicle と呼称している。
- ^ 布袋のトレードマークである白黒の幾何学模様にデザイン
- ^ Sport Activity Coupe: スポーツ・アクティビティ・クーペ
- ^ 数値は3ドアハッチバックのクーパー
- ^ PSAと共同開発の新型で、プジョー・208と基本を共有する。
- ^ 直噴と可変の2つの技術で、ツインターボではない[22]。
- ^ 6ATは184 g/ km
- ^ 走行中にアクセルペダルから足を離すとエンジンとトランスミッションの駆動力の伝達を切断、惰性走行により燃料消費を抑制する。GREENモード時のみ作動する。
- ^ Cross Country: クロスカントリー
- ^ 2004年の2輪部門総合優勝に続き4輪部門を制覇し、史上3人目の両部門優勝選手となった[28]。
出典
- ^ “マグナシュタイヤー、BMWグループと新たな受託生産契約を締結へ”. Response. (2014年2月3日)
- ^ “2007 MINI クーパーS コンバーチブル サイドウォーク (R52型)”. MOTOR DAYS. (2010年6月1日)
- ^ “「MINI」の新顔3台がデビュー”. webCG. (2005年6月27日)
- ^ “試乗レポート BMW MINI ONE SEVEN MINI COOPER PARK LANE MINI COOPER S CHECKMATE”. carview
- ^ “ミニ史上最強、ジョン・クーパー・ワークスGPキット”. HOBIDAS AUTO. (2006年7月11日)
- ^ “日本専用、スペシャルデザインの「MINI」、300台限定で発売”. webCG. (2006年11月13日)
- ^ “パディントンベアから特別なサプライズ!斬新な「くまモンMINI」が登場!”. autoblog 日本版. (2013年7月12日)
- ^ “クラブマン 納車開始…3月2日、ミニの日から”. Response. (2008年2月18日)
- ^ “MINIクーパーS コンバーチブル(FF/6AT)【ブリーフテスト】”. webCG. (2009年7月23日)
- ^ a b “MINIクーパー クーペ(FF/6AT)【短評】”. webCG. (2011年10月25日)
- ^ “オープンの新型MINI、「ロードスター」登場”. webCG. (2011年11月1日)
- ^ “MINIロードスター と布袋寅泰のコラボレーションが実現”. Response. (2012年3月23日)
- ^ “MINI、布袋寅泰のコラボモデルを特別展示”. Response. (2012年7月3日)
- ^ “HOTEIxMINIコラボカーを全国展示”. MINI.jp. (2012年10月12日)
- ^ “MINI クーペ と ロードスター、生産終了へ…4年の歴史に幕”. carview!. (2015年2月16日)
- ^ “MINI「ペースマン」”. Car Watch. (2013年3月18日)
- ^ “ミニ・ペースマンの価格決定”. AUTOCAR DIGITAL. (2012年9月14日)
- ^ “第3世代ミニがワールドプレミア。スペック情報も”. carview. (2013年11月19日)
- ^ “ミニ クラブマン コンセプト”. OPENERS. (2014年3月15日)
- ^ “ミニ5ドア・ハッチ、生産開始”. AUTOCAR DIGITAL. (2014年7月2日)
- ^ a b “BMWグループ ジャパン、第3世代となる新型「MINI」の日本仕様を発表!”. autoblog 日本版. (2014年3月26日)
- ^ “BMWの「ツインパワー」は2つのターボじゃありません”. clicccar. (2012年4月10日)
- ^ “BMWグループジャパン、第3世代となる新型「MINI」の日本仕様を発表!”. autoblog 日本版. (2014年3月26日)
- ^ “【MINI】Specialist海外試乗 想像以上の進化を遂げた新型MINIクーパー レポート:石井昌道”. Auto Prove. (2014年2月18日)
- ^ “【試乗】BMW NEW MINI(新型 ミニ・第3世代) 海外動画試乗レポート/河口まなぶ”. オートック ワン. (2014年4月18日)
- ^ “【ダカールラリー2012】 ブサカワだった「MINI All4 Racing」”. autoblog 日本版. (2012年1月17日)
- ^ “MINIクロスオーバーのダカール仕様…写真公開”. Response. (2010年12月14日)
- ^ a b “2014ダカールラリーをX-RaidのMINI ALL4 Racingが制覇!”. ENDLESS
- ^ “ミニ・カントリーマン、ダカールで勝利”. AUTOCAR DIGITAL. (2012年1月17日)
- 1 ミニ (BMW)とは
- 2 ミニ (BMW)の概要
- 3 第2世代 (2006年 - 2016年) R55/56/57/58/59/60/61
- 4 第3世代 (2013年 - ) F54/F55/F56/F57/F60
- 5 モータースポーツ
- 6 関連項目
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