ミニ (BMW)
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概要
ミニの後継車の開発は、1994年にBMWがローバーを傘下に収め、生産をはじめとするミニに関する全ての権利を有したことで開始された。
開発当初はイギリスを拠点にローバーが中心となって進められ、1997年のジュネーヴ・モーターショーで2台のコンセプトカーが公開された。しかし、ローバーの経営が悪化の一途を辿ったことから、ローバーはBMWの傘下から離脱することになったため、次期ミニの開発拠点もドイツに移された。インチサイズのヤード・ポンド法から、ミリを用いるメートル法への再設計を行うなどの紆余曲折の末、2001年に新生ミニが発表された。
ボディサイズは軽自動車規格より小さかったBMCミニと比べて大幅に拡大され、各種ボディカラー、インテリアカラー、オプション装備を組み合わせることにより、バリエーションは約10万通りにも及ぶ。先代が40年間キープコンセプトで生産していたのと同様に、モデルチェンジを経てもほぼ同じデザインを継承している。
日本ではBMW JAPANが3月2日を「ミニの日」と制定し、2002年3月2日に発売された。正規輸入される全車種の全グレードでMTが選択可能であったが、2014年9月8日のカントリーマンのマイナーチェンジより、AT限定のモデルが設定されるようになった。
BMWはミニの生産にあたり、オックスフォード近郊にある旧ローバーのカウリー工場を本社とする生産子会社の“BMW (UK) Manufacturing Ltd”を設立し、オックスフォード工場として2001年4月から生産を開始した。BMWグループとなった後もMINIの伝統を守る方針から、ドイツではなくイギリスで生産されているが、カントリーマンとペースマンはオーストリアのマグナ・シュタイアが生産している[1]。
増産対応のため、2006年9月12日よりミニプロダクション・トライアングル(通称:トライアングル)と称される英国内3工場での生産が開始された。ボディパネルのプレス、シャーシコンポーネントとサブASSYはスウィンドン工場、シャーシ、塗装、完成車組立はオックスフォード工場、以前ブラジルで行っていたミニ専用ガソリンエンジンの生産は、バーミンガム近郊のハムス・ホール工場が担当している。
初代 (2001年 - 2006年) R50/52/53 R16
ミニ | |
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![]() ワン | |
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概要 | |
販売期間 | 2001年-2006年 |
ボディ | |
ボディタイプ |
ハッチバック コンバーチブル |
駆動方式 | FF |
パワートレイン | |
エンジン | 直列4気筒 1.4L/1.6L NA/SC/]] |
最高出力 | 90-170ps |
変速機 | 5MT/6MT/6AT/CVT |
サスペンション | |
前: ストラット 後: マルチリンク | |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,465mm |
全長 | 3,625mm |
全幅 | 1,690mm |
全高 | 1,425mm |
車両重量 | 1,130kg/1,270kg(コンバーチブル) |
その他 | |
最小回転半径 | 5.1m (ワン) |
系譜 | |
先代 | BMC・ミニ |
2001年3月2日発売開始。ボディは3ドアハッチバックとコンバーチブルで、型式のR50はハッチバックのワンとクーパー、R52はコンバーチブル、R53はハッチバックのクーパーSを表す。基本グレードは3種類で、90psのワン、エンジン制御プログラムの変更により116psに出力を高めたクーパー、スーパーチャージャーを装着した163ps[注 2]のクーパーS。デザイナーは、フランク・ステファンソン[注 3]。
メカニズム
エンジンは、BMWとクライスラーとの合弁会社でブラジルに拠点を置くトライテックが製造する、1.6Lの通称トライテック・エンジン[注 4]を搭載。スーパーチャージャーの1.6 Lは、1.4 Lから1.8 Lのカテゴリーにおいて「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー for 2003」「テン・ベスト・エンジン2005」を受賞している。欧州仕様には1.4 L コモンレール式ターボディーゼルを搭載するワンDも設定されており、このためにトヨタから、欧州向けのヤリスとカローラ用の1ND-TVが供給されていた。トランスミッションは、ワンとクーパーが5速MTとCVT、クーパーSは6速MTと6速AT[注 5]。
サスペンションは、フロントにストラット、リヤにマルチリンクを採用する。また、ワンはばねやダンパーの設定が比較的柔らかめなのに対して、クーパーは前後ともスタビライザーを装備し、ばね定数とダンパー減衰力を高めたスポーツサスペンションを、クーパーSは更に径の太いスタビライザーと、堅めのダンパーを持ったスポーツサスペンションプラスを標準装備している。
バリエーション
コンバーチブル
2004年9月に発売された[注 6]。電動ソフトトップを採用し、フルオープンまでの所要時間は約15秒。電動開閉が可能なだけでなく、ウインドシールド上部にあるスイッチを1回押すと40cmほど開いた所で一度停止するサンルーフモードとなり、再度スイッチを押し続けるとZ字型に折り畳まれてフルオープンとなる凝った仕掛けとなっている。
Bピラーを結合するロールバーがないため、サイドシル (左右ドア下部フレーム) の板厚を増して補強プレートを追加し捻り剛性を確保したほか、Aピラーのスチール製パイプによる補強、アルミロールバーの追加、極太フレーム付きの幌、側面衝突対策としてドアの強化等が施されたことなどにより、重量はハッチバックのクーパー比で約130kg増加し1,270kgとなった。グレードはクーパーとクーパーS。2007年5月、専用デザインのホイールやレザーシートを装備、特別色を用意した「サイドウォーク」が発売された[2]。
沿革
2004年、コンバーチブルの追加に合わせ、既存のサルーンもマイナーチェンジが行われ、ヘッドランプ周り、前後バンパー形状、リアコンビランプ割付、リアフォグランプ配置、インテリアの見直しなどが施された。2005年、BMC時代のモデルをモチーフに、それぞれポップ・シック・スポーツをテーマとしてドレスアップを施した「セブン」「パークレーン」「チェックメイト」が追加[3][4]。同時に、バックミラーやドアハンドルなど、インテリアデザインを中心にマイナーチェンジが施され、専用色と特別装備が設定された。2006年9月、「クーパーS with JCW GP kit[注 7]」という全世界2000台の限定生産モデルが日本でも160台が発売された。11月、日本専用として限定300台[注 8]の「デザイナーズチョイス」が発売された[6]。
注釈
- ^ BMWが開発に関与したものでは1998年のローバー75とMG・ZTが初、BMWブランドでは2014年の2シリーズ アクティブツアラー(F45)が初。
- ^ マイナーチェンジ後は170ps。
- ^ 2002年7月からフェラーリ・マセラティ・グループのコンセプトデザイン担当役員を務め、2005年2月よりフィアット、2007年6月よりアルファロメオに在籍。
- ^ ペンタゴン・エンジンとも呼ばれる。
- ^ クーパーSのATは2005年のマイナーチェンジで追加。
- ^ ワンの販売は海外のみ。
- ^ JCW (ジョン・クーパー・ワークス) というこのモデルは、レーシングミニの名チューナーとしてのブランドイメージを強く押し出したモデルで、クーパーSの170psという出力に対して、48ps増の218psという高出力を引き出している。内装も後席を撤去し2シーター化されたほか、フォグランプやリアワイパーも撤去し、ヘッドランプも軽量化のためにHID→ハロゲンに変更している他、リアサスペンションのロアアームもアルミ製とし、JCW専用のセッティングとブレーキを採用するなど、走りに振った構成となっている。シートも全モデルがレカロ製のスペシャル品を採用する。軽量化の反面、大径の18インチホイールの採用や各部の強度アップ、整流板の追加などもあり、車両重量はクーパーSより15kgほど増の1,195kgとなった。他にも多くの部分で見直しが図られ、スポイラーや車体下部の整流板など空力にも手を入れられた結果、最高速度は240km/h、0-100km/h加速は6.5秒という、シリーズ最高の性能を発揮している[5]。
- ^ クーパーが100台、クーパーSが200台である。
- ^ 「くまモンMINI」は7月13日より故郷・熊本にあるMINI熊本で展示される[7]。
- ^ BMWではクロスオーバーSUVではなくSAV = Sports Activity Vehicle と呼称している。
- ^ 布袋のトレードマークである白黒の幾何学模様にデザイン
- ^ Sport Activity Coupe: スポーツ・アクティビティ・クーペ
- ^ 数値は3ドアハッチバックのクーパー
- ^ PSAと共同開発の新型で、プジョー・208と基本を共有する。
- ^ 直噴と可変の2つの技術で、ツインターボではない[22]。
- ^ 6ATは184 g/ km
- ^ 走行中にアクセルペダルから足を離すとエンジンとトランスミッションの駆動力の伝達を切断、惰性走行により燃料消費を抑制する。GREENモード時のみ作動する。
- ^ Cross Country: クロスカントリー
- ^ 2004年の2輪部門総合優勝に続き4輪部門を制覇し、史上3人目の両部門優勝選手となった[28]。
出典
- ^ “マグナシュタイヤー、BMWグループと新たな受託生産契約を締結へ”. Response. (2014年2月3日)
- ^ “2007 MINI クーパーS コンバーチブル サイドウォーク (R52型)”. MOTOR DAYS. (2010年6月1日)
- ^ “「MINI」の新顔3台がデビュー”. webCG. (2005年6月27日)
- ^ “試乗レポート BMW MINI ONE SEVEN MINI COOPER PARK LANE MINI COOPER S CHECKMATE”. carview
- ^ “ミニ史上最強、ジョン・クーパー・ワークスGPキット”. HOBIDAS AUTO. (2006年7月11日)
- ^ “日本専用、スペシャルデザインの「MINI」、300台限定で発売”. webCG. (2006年11月13日)
- ^ “パディントンベアから特別なサプライズ!斬新な「くまモンMINI」が登場!”. autoblog 日本版. (2013年7月12日)
- ^ “クラブマン 納車開始…3月2日、ミニの日から”. Response. (2008年2月18日)
- ^ “MINIクーパーS コンバーチブル(FF/6AT)【ブリーフテスト】”. webCG. (2009年7月23日)
- ^ a b “MINIクーパー クーペ(FF/6AT)【短評】”. webCG. (2011年10月25日)
- ^ “オープンの新型MINI、「ロードスター」登場”. webCG. (2011年11月1日)
- ^ “MINIロードスター と布袋寅泰のコラボレーションが実現”. Response. (2012年3月23日)
- ^ “MINI、布袋寅泰のコラボモデルを特別展示”. Response. (2012年7月3日)
- ^ “HOTEIxMINIコラボカーを全国展示”. MINI.jp. (2012年10月12日)
- ^ “MINI クーペ と ロードスター、生産終了へ…4年の歴史に幕”. carview!. (2015年2月16日)
- ^ “MINI「ペースマン」”. Car Watch. (2013年3月18日)
- ^ “ミニ・ペースマンの価格決定”. AUTOCAR DIGITAL. (2012年9月14日)
- ^ “第3世代ミニがワールドプレミア。スペック情報も”. carview. (2013年11月19日)
- ^ “ミニ クラブマン コンセプト”. OPENERS. (2014年3月15日)
- ^ “ミニ5ドア・ハッチ、生産開始”. AUTOCAR DIGITAL. (2014年7月2日)
- ^ a b “BMWグループ ジャパン、第3世代となる新型「MINI」の日本仕様を発表!”. autoblog 日本版. (2014年3月26日)
- ^ “BMWの「ツインパワー」は2つのターボじゃありません”. clicccar. (2012年4月10日)
- ^ “BMWグループジャパン、第3世代となる新型「MINI」の日本仕様を発表!”. autoblog 日本版. (2014年3月26日)
- ^ “【MINI】Specialist海外試乗 想像以上の進化を遂げた新型MINIクーパー レポート:石井昌道”. Auto Prove. (2014年2月18日)
- ^ “【試乗】BMW NEW MINI(新型 ミニ・第3世代) 海外動画試乗レポート/河口まなぶ”. オートック ワン. (2014年4月18日)
- ^ “【ダカールラリー2012】 ブサカワだった「MINI All4 Racing」”. autoblog 日本版. (2012年1月17日)
- ^ “MINIクロスオーバーのダカール仕様…写真公開”. Response. (2010年12月14日)
- ^ a b “2014ダカールラリーをX-RaidのMINI ALL4 Racingが制覇!”. ENDLESS
- ^ “ミニ・カントリーマン、ダカールで勝利”. AUTOCAR DIGITAL. (2012年1月17日)
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