マロティ=ドラケンスバーグ公園 マロティ=ドラケンスバーグ公園の概要

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マロティ=ドラケンスバーグ公園

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/10 17:28 UTC 版)

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マロティ=
ドラケンスバーグ公園
南アフリカ共和国レソト
ドラケンスバーグ山脈
英名 Maloti-Drakensberg Park
仏名 Parc Maloti-Drakensberg
面積 249,313 ha (緩衝地域 46,630 ha)
登録区分 複合遺産
IUCN分類 II(国立公園)
Ib(原生自然地域)
登録基準 (1), (3), (7), (10)
登録年 2000年
拡張年 2013年
公式サイト 世界遺産センター(英語)
使用方法表示

2000年に登録された当初は南アフリカ共和国のウクハランバ・ドラケンスバーグ公園のみを対象としていたが、2013年にセサバテーベ国立公園が拡大登録されたことから、登録名称が変更となった。レソトにとっては初の世界遺産である。

登録経緯

Maloti-Drakensberg Park
世界遺産登録位置

南アフリカ共和国の世界遺産条約締約は1997年7月10日のことであり、1999年には同国初の世界遺産としてロベン島など3件の登録を果たしていた。ウクハランバ・ドラケンスバーグ公園は同国初の複合遺産を目指し、1999年6月30日に推薦された物件である[1]

審議に先立ち、文化遺産要素の諮問機関である国際記念物遺跡会議 (ICOMOS) は、そこに残る岩絵群の多様性や密度が他には見られないレベルであることなどを評価し、「登録」を勧告した[2]。他方、自然遺産要素の諮問機関である国際自然保護連合 (IUCN) は、シミエン国立公園エチオピアの世界遺産、1978年登録)などとの比較を踏まえ、地球生成の歴史などの面での顕著な普遍的価値は認めなかったものの、自然美と生物多様性についての価値は認め、やはり「登録」を勧告した[3]

これらの勧告を踏まえて、第24回世界遺産委員会(2000年)で審議され、勧告通りにその価値が認められた。登録名称は「ウクハランバ/ドラケンスバーグ公園」(uKhahlamba/Drakensberg Park) である[注釈 2]。アフリカでの複合遺産の登録は、バンディアガラの断崖(ドゴン人の地)マリ共和国の世界遺産、1989年登録)以来2件目[注釈 3]であった。

この登録に先立つ勧告では、ICOMOSもIUCNも共通して、レソトへの拡大を考慮すべきことを盛り込んでおり[4]、実際、レソトと南アフリカは1997年以来、国境を越えた自然保護で協力し合っていたが[5]、レソトはその時点では世界遺産条約を締約していなかった。レソトは2003年11月25日に世界遺産条約を締約し[6]、ウクハランバ・ドラケンスバーグ公園と隣接するセサバテーベ国立公園を2008年10月8日に世界遺産の暫定リストへと記載した[7]

セサバテーベ国立公園は、ウクハランバ・ドラケンスバーグ公園の拡大案件として、2012年1月27日に正式推薦された[7]。ICOMOSは文化遺産面について、レソト当局が主張する「南方様式」(Southern Style) の岩絵の独自性の定義が不明瞭であることや、岩絵の調査が不十分であること、その結果として推薦範囲外にも同等の価値を持つ岩絵がある可能性を排除できないことなどから、「登録延期」を勧告した[8]。他方、IUCNはセサバテーベ国立公園の面積 (6,500 ha) は、ウクハランバ・ドラケンスバーグ公園 (242,813 ha) に比べてあまりにも小さいが、しかし、独特の生態系などの面から、後者の世界遺産としての価値を補強する上では不可欠と評価し、「登録」を勧告した[9]

第37回世界遺産委員会(2013年)の審議では、文化遺産面についても逆転で認められ、拡大登録に至った[10]。IUCNは勧告時に新登録名を「マロティ・ドラケンスバーグの越境世界遺産」 (Maloti Drakensberg Transboundary World Heritage Site) とすべきことを提案しており[11]、登録直後の世界遺産センターによるプレスリリースでは実際にそうした名称が使われていたが[12]、最終的な登録名は「マロティ=ドラケンスバーグ公園」となった[10]

これは、レソト初の世界遺産である。また、アフリカでの国境を越える複合遺産は初めてであり、世界的にもピレネー山脈のモン・ペルデュスペイン/フランスの世界遺産、1997年登録)以来、2件目である。なお、2000年に登録された時点では、文化的景観に分類される可能性が指摘されていたが[1]、2013年の拡大登録時には、可能性への言及自体が消えた[7]

登録名

世界遺産としての登録名は Maloti-Drakensberg Park (英語)、Parc Maloti-Drakensberg (フランス語)である。その日本語名には、表記に関して微細な揺れが存在している。

構成資産

uKhahlamba Drakensberg Park
Sehlabathebe National Park
構成資産の位置関係(中心の濃い部分がレソト。国土の大半を占めるのがマロティ=ドラケンスバーグ山脈。周辺が南アフリカ共和国)

ウクハランバ・ドラケンスバーグ公園(uKhahlamba Drakensberg Park, 世界遺産登録ID985-001)とセサバテーベ国立公園(Sehlabathebe National Park, 世界遺産登録ID985bis-002)が世界遺産の構成資産で[19]、前者の登録面積は242,813 ha、後者の登録面積は6,500 haである。セサバテーベ国立公園は、ウクハランバ・ドラケンスバーグ公園の南縁で国境をはさんで隣接している(右の地図参照)。両公園が共有する国境線の長さは、12 kmにわたる[20][21]

緩衝地域に設定されているのはセサバテーベ山脈管理地域 (Sehlabathebe Range Management Area) で、その面積は46,630 haである[21][22]

ウクハランバ・ドラケンスバーグ公園

ウクハランバ・ドラケンスバーグ公園は、南アフリカ・クワズール・ナタール州にあった1件の国立公園ロイヤル・ナタール国立公園英語版)、4件の自然保護区、1件の狩猟鳥獣保護区 (Game Reserve)、6件の国有林 (State Forests) をまとめる形で1993年に設定された自然公園である[23]。1997年にはラムサール条約の登録地にもなった。国有林の中に全部で4つの原生自然地域が設定されており、この総面積は世界遺産登録面積の48.5 %を占める[22]。世界遺産登録地のうち、IUCNカテゴリーがIb(原生自然地域)になるのはそれらの4地域のみで、あとは全てII(国立公園)である[22]

国内最高峰となる3,000 m級の山々を擁し[24]、絶壁や渓谷が美しい景観を作り出しており、トレッキングの対象として[25]、またハイキングクライミングの対象として人気がある[26]。1994年から1995年の観光客は22万4千人、1996年から1997年の観光客は29万人近くにもなった[27]

ウクハランバ・ドラケンスバーグ公園の植生は標高によって3つに区分されている[28]

  • 標高1,280 mから1,830 mまで - マキ科の森林
  • 標高1,830 mから2,865 mまで - フィンボス
  • 標高2,865 mから3,500 mまで - 高山性の凍原など

これらの地域で確認されている植物は2,153種にものぼり、絶滅の恐れのある種も109種含んでいる[28]

動物相で確認されているのは哺乳類48種、鳥類296種(危急種キテンタヒバリ英語版を含む)、爬虫類48種(準絶滅危惧ナタールコビトカメレオン英語版を含む)、両生類26種(絶滅危惧種ユビナガオオクサガエル英語版を含む)、魚類8種などである[28]

後述するように、ドラケンスバーグ山脈で数千年にわたって暮らしてきたサン人たちの岩絵が多く残されている地域でもある。一部ではガイド付きの見学ツアーも催行されている[15]

セサバテーベ国立公園

セサバテーベ国立公園

セサバテーベ国立公園(セアラバセベ国立公園)は、1969年5月8日にレソトで最初に設定された国立公園である[29]。当初は野生生物保護区と国立公園で、現在の範囲が一つの国立公園にまとまったのは2001年のことであった[22]。面積は6,500 ha[注釈 4]で、標高2,400 m付近の多彩な草原地帯が広がる[29]。植物は515種が確認されており、そのうち59種が固有種である[21]

鳥類は調査によって異なるが、軽度懸念ヒゲワシ危急種ケープハゲワシなどを含む106種から117種が確認されており[21]重要野鳥生息地に含まれる[30]魚類は6種で、もとからこの地にいたのは固有種で絶滅危惧種のプセウドバルブス・クアトランバエ(Pseudobarbus quathlambae, コイ科)など4種である[21]

「高原の楯」を意味するその名前は、アクセスしづらいことに由来するといい[29]、2年間の観光客数は200人以下と見積もられている[31][注釈 5]。そのことは、かえって人為的な損壊を免れることにつながっているが、後述するサン人の遺跡保存の観点からは、大豪雪や山火事といった自然的要因に対する備えの必要性が指摘されている[31]


注釈

  1. ^ 表記揺れはウクハランバ・ドラケンスバーグ公園#表記の揺れを参照のこと。
  2. ^ 単独で世界遺産に登録されていたときの名称はuKhahlamba/Drakensberg Park だが、マロティ=ドラケンスバーグ公園の構成資産としての名称はuKhahlamba Drakensberg Park である(いずれも世界遺産センターの表記)。
  3. ^ 世界遺産センターの区分でのアフリカは実質的にサブサハラアフリカを指す。「アラブ諸国」に分類されているアフリカ大陸の国も考慮するならば、タッシリ・ナジェールアルジェリアの世界遺産、1982年)も含むので3件目である。
  4. ^ IUCN 2013に従う。遠藤 2012では80 km2 (= 8,000 ha) とされている。
  5. ^ 200人以下とするのはICOMOSによるが、UNEP-WCMCは2007年の数字として781人を挙げている (UNEP-WCMC 2013f.8)。
  6. ^ この記事での「○年前」はBPに基づくものである。

出典

  1. ^ a b c ICOMOS 2000, p. 1
  2. ^ ICOMOS 2000, p. 4
  3. ^ IUCN 2000, pp. 156–157
  4. ^ ICOMOS 2014a, p. 3 , IUCN 2000, p. 157
  5. ^ IUCN 2013, p. 127
  6. ^ Lesotho – World Heritage Centre(2014年6月7日閲覧)
  7. ^ a b c d e f ICOMOS 2013, p. 27
  8. ^ ICOMOS 2013, p. 34
  9. ^ IUCN 2013, pp. 129–131
  10. ^ a b c World Heritage Centre 2013, p. 171
  11. ^ IUCN 2014, p. 131
  12. ^ Honghe Hani Rice Terraces inscribed on UNESCO’s World Heritage alongside an extension to the uKhahlamba Drakensberg Park世界遺産センター、2013年6月22日)(2014年6月7日閲覧)
  13. ^ 日本ユネスコ協会連盟 2013, p. 31
  14. ^ 古田 & 古田 2013, p. 21
  15. ^ a b 地球の歩き方編集室 2014, pp. 186–187
  16. ^ 谷治正孝監修『なるほど知図帳・世界2014』昭文社、2014年、p.141
  17. ^ 正井泰雄監修『今がわかる時代がわかる地図帳・2014年版』成美堂出版、2014年、p.142
  18. ^ 世界遺産アカデミー監修、世界遺産検定事務局著『くわしく学ぶ世界遺産300』マイナビ、2013年、p.14
  19. ^ Maloti-Drakensberg Park - Multiple Locations世界遺産センター)(2014年6月7日閲覧)
  20. ^ ICOMOS 2014a, p. 27
  21. ^ a b c d e IUCN 2013, p. 128
  22. ^ a b c d UNEP-WCMC 2013f.4
  23. ^ UNEP-WCMC 2013ff.3-4
  24. ^ 藤本 2012
  25. ^ 地球の歩き方編集室 2014, p. 33
  26. ^ Bainbridge et al. 2009, p. 345
  27. ^ UNEP-WCMC 2013f.8
  28. ^ a b c IUCN 2000, p. 154
  29. ^ a b c 遠藤 2012
  30. ^ IUCN 2013, p. 131
  31. ^ a b ICOMOS 2013, p. 30
  32. ^ ICOMOS 2000, pp. 1–2
  33. ^ a b ICOMOS 2013, p. 28
  34. ^ ICOMOS 2000, p. 2, ICOMOS 2013, p. 28
  35. ^ a b c ICOMOS 2000, p. 2
  36. ^ ICOMOS 2000, p. 3
  37. ^ デビッド・ルイス・ウィリアムズ 2001, pp. 131–134
  38. ^ デビッド・ルイス・ウィリアムズ 2001, pp. 136
  39. ^ IUCN 2013, p. 130
  40. ^ UNEP-WCMC 2013ff.6-7
  41. ^ a b c World Heritage Centre 2013, p. 172より翻訳の上、引用。
  42. ^ World Heritage Centre 2013, p. 172より一部を翻訳の上、引用。


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