マインドコントロール 応用

マインドコントロール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/23 03:45 UTC 版)

応用

自己暗示の一つとして能力開発への応用すること[20]犯罪抑止やタバコアルコール等を含む薬物依存の治療などに効果的だと考える動きもある[21]スティーヴン・ハッサンによると「本来、自由であるべき個人の行動原則を誘導・操作するため、道義的な問題をはらむ部分があり、マインドコントロールの手法に対する批判が多々あるが、この技法を利用して社会規範意識の刷り込みによる犯罪者の矯正や、心理的に手を出してしまいやすい薬物依存に悩む人の意識改革を目指すグループも存在する」とのこと[14]

統一教会とマインドコントロール

1992年、山崎浩子桜田淳子らとともに統一教会の合同結婚式に参加したが、その翌年の1993年山崎浩子は親族によって統一教会から隔離され、そこで元信者の牧師らの説得を受け脱会を決意した。山崎浩子は、脱会を表明する記者会見で「すべてが間違いだったことがわかった」と語り結婚を破棄した[22]。さらに記者会見では「わたしはマインドコントロールされていました」とも語り、同日、アメリカの元信者であったスティーブン・ハッサンの書いた『マインドコントロールの恐怖』(恒友出版)が発売されてベストセラーになった。この頃から、日本でも「マインドコントロール」という言葉が広く知られることになった[23]

「マインドコントロール」の概念は、具体的な物理的手段を用いた強制的な「洗脳」に対し、物理的手段を用いない方法であるとされ、本人が気づかないうちに取り込まれてしまうというカルトなどによる巧妙な手法を指すものとして登場した。

霊感商法問題を専門とする弁護士郷路征記は、「マインド・コントロール」を「人の思想感情行動を操作して変化させ、その人が形成してきた人格の上に、操作者の意図する人格を植え付けることや、そのために用いられる技術」と定義している。「マインド・コントロール」を受けた信者は善悪の基準が転換し、客観的には悪とされる行為も、神のためであれば善であると信じるようになる、とし、信者が霊感商法無言電話、違法な選挙運動などの反社会的な行為を平気で行うのは、マインド・コントロールの結果、その行為が善であると信じているからであると主張する[24] [25]

批判に対し、統一教会は、「マインドコントロール」という理論は、もともとアメリカで宗教運動から信者を強制的にやめさせるための理論として出現したものであり、非科学的理論であり、反宗教的なイデオロギーに基づいた空論だと反論している[26]

日本共産党の政党機関紙「しんぶん赤旗」を刊行する「赤旗」社会部は、神学者の浅見定雄が分析した統一教会の「洗脳」の仕組みを明らかにした。主な特徴は以下の7点である。

  1. 隔離 - 信者が自分の親に説明し難くなった場合に「親に会わない口実」「統一教会をどう説明するか」などの手引書を作っており家族に秘密にさせる[27]。ビデオも一人で見る[28]
  2. 雰囲気 - 親切にする。歌やゲームもある共同生活[28]
  3. 反復 - 同じことを徹底的に反復して教え込む[28]
  4. 精神管理 - 感想文や日記を書かせて弱点や疑問点を把握する[28]
  5. 食事管理 - 信仰の名の下で粗食をともにする[28]
  6. 睡眠管理 - 慢性的に寝不足にし暗示にかかりやすくする[28][29]
  7. 呪いの暗示 - 脱退すると霊に打たれる、霊界で先祖が苦しんでいる、水子が祟っている、等と不安を持たせる[28][29]

宗教学者のダグラス・E・コーワン英語版、宗教社会学者のデイヴィッド・G・ブロムリー英語版 は、洗脳理論そのものには数々の問題点があると述べている。

第一に洗脳の技術が反カルト活動家が言うほどの効果があり、無差別なものであるのなら、対象や時代に関わりなくその技術は機能するはずであるが、実際北アメリカでは新宗教が若い人の勧誘にかなり成功していたのは、1960~70年代の対抗文化運動の間だけであり、以降は劇的に減少している[30]

第二に洗脳を効果的に行うには、おそらくある程度の専門技術が必要なはずであるが、洗脳を行っていると非難されている新宗教では、加入間もない新人メンバーたちが勧誘活動を行っている[30]。時間の経過で技術は向上するはずであるが、そういった成果の向上は見られない[30]。また実際のところ、新宗教は全体として信者を引き付け維持することに失敗しており、1970年代にE・パーカーが統一教会に対して行った最も徹底的で信頼できる調査(期間は6年)で、パーカーは入門者が会員として残る確率は、極めて低いと結論付けている[30]。統一教会に勧誘された人々のうち、実際に会員として加わったのはごくわずかで、新会員もほとんどは短期間で活気を失っていた[31]

洗脳解除(デプログラミング)・脱会カウンセリング

1970年代から80年代には、反カルト運動の関係者、マスメディア、信者の家族によって、文鮮明は信者を「洗脳」し、自律した思考や行動ができなくなるほど強い思想統制や行動修正の体制を信者に押し付けているとして非難された[32]

「洗脳」とは、朝鮮戦争後に捕虜生活から戻った兵士たちや、共産党革命後の中国再教育キャンプの収容者の態度変化を説明する際に使われたメタファーであり、アメリカでの1960年代終わりにかけての新宗教の急増や、それらの組織による勧誘活動の「成功」(実際には当事者が主張するほど成功しておらず、信者数は100倍近く誇張されていた)を説明するための枠組みとなっていた[32]

洗脳や思想改造、強制説得といった理論の提唱者は、「回心を外在的な作用によるものだと考え、それによって回心は自発的で本心からくるもので、新しい人生が本当に幸せである」という新宗教側にみられる主張を効果的に無効化した[32]。信者はすでに洗脳されているのだから、まともな意思決定はできないとし、回心に対する責任を各人から取り去って「人を欺くカルトの指導者たち」に責任があるとした[32]。そして、信望者に個人的責任はないとする洗脳理論は、親たちが大人である自分の子供に責任能力がないことを示して、信者である自分たちの子供の法律的な保護を要求し、さらに「救済」するために強制的な洗脳解除を実行するための概念的な基盤となった[32]

多くの信者の親たちは、「洗脳解除(デプログラミング)」と呼ばれる強制手段を利用したが、強制的な脱会、監禁、再回心を内容とする[32]

洗脳解除について、社会学者のA・シュープとD・ブロムリーは「公衆の面前での拉致、強制的拘留、『カルト』が植え付けた心の統制(マインド・コントロール)を破壊することでプログラマーたちが信じる除霊的儀式、そして、多くの場合は、家族や聖職者や友人も一緒に行う、入信に至った経緯の振り返り」などの多様なプロセスを含むと述べている。

評論家のルムールは、「(それは)それぞれの集団にそのメンバーたちが入信していく過程よりもはるかに『洗脳的』である。その内容とは、監禁、睡眠の剥奪、継続的な語りかけ、非難、厳しい口調と優しい口調の交互の語りかけ、感情的な訴え、意志の喪失に至るほどの詰問といった、犠牲者に対するある種の権力をプログラマーに与えつつ行われるものである」と指摘している[32]

洗脳解除は、少なくとも北アメリカでは、犠牲者たちによるデプログラマーへの訴訟によって次第に衰退した[32]。アメリカでは、物理的強制力を行使するデプログラミングは、信者の身体だけでなく心も傷つけるため採用されなくなり、1980年代中盤以降は、本人の同意を得た上で、情報、意見の交換を行い、脱会の最終決定は本人に任せるカウンセリング方法「脱会カウンセリング」が開発された[33]。現在のアメリカでは、信者への直接介入自体が控えられるようになっており、家族のカウンセリングに重点を置く「思想改造コンサルテーション」というやり方が一般的になりつつある[33]

ジャーナリストの米本和広は、統一教会に関連する現在進行形の問題は、関連組織による霊感商法と、信者を脱会させるための強制説得、拉致監禁であると述べている[34]

日本では、山崎浩子の脱会の際には、家族による拉致・監禁が行われており、本人の手記によると家族によってマンションに連れ込まれたときには、拉致監禁だと認識していたという[34]

米本和広は、この山崎浩子の脱会の顛末には週刊誌「週刊文春」と脱会請負人が関わっていたと述べている[34]。家族や元信者が信者を脱会させようとして行った強制説得には、12年におよぶ監禁の例もある[34]。米本によると、日本で80年代後半から信者を脱会させるための拉致監禁は盛んになり、これまでの拉致監禁は3千~4千人に上り、うち3千人が脱会しているという[34]。1999年に拉致監禁されたとする女性信者が日本基督教団の牧師を提訴したことで、拉致監禁は沈静化したが、米本は以降も続いていると述べている[34]

1970~80年代に洗脳仮説が定着した国では、洗脳解除から攻撃性の少ない(とはいえ問題はある)「脱会カウンセリング」に移行しているが、洗脳仮説は依然として統一教会を含む新宗教に大きな影響を与え続けている[32]

宗教社会学者の櫻井義秀は、日本は脱会カウンセリングに関しては過渡期であり、「カウンセリングに関わる倫理綱領を設けて脱会支援にあたるグループ(日本脱カルト協会等)もあれば、デプログラミングに近い奪回・脱会のカウンセリングを行う個人もいる」と述べている[33]

脚注

[脚注の使い方]

  1. ^ 西田公昭 科学研究費助成事業 研究成果報告書「マインド・コントロール防衛スキルの構造とその心理特性の測定法の開発」 科研費による研究 平成27年6月19日
  2. ^ a b c 『実用日本語表現辞典』
  3. ^ a b c d 山根寛 2001.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y 大田俊寛 (2018年9月28日). “社会心理学の「精神操作」幻想 ~グループ・ダイナミックスからマインド・コントロールへ~”. 科研基盤研究A「身心変容技法の比較宗教学-心と体とモノをつなぐワザの総合的研究」(2011年度-2014年度)身心変容技法研究会. 2020年5月18日閲覧。
  5. ^ 三省堂『大辞林』
  6. ^ 西田公昭 講演『マインドコントロールとは何か』 1995年、カルト被害を考える会
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 櫻井義秀 1996.
  8. ^ a b c d e f g h i j k 櫻井義秀 2003.
  9. ^ a b 西田公昭 「マインド・コントロールとは?」 第5回「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」平成30年5月25日開催、消費者庁
  10. ^ ロバート・ジェイ・リフトン思想改造と全体主義の心理学英語版』、1981年ISBN 9780807842539ISBN 9780393002218ISBN 9781614276753
  11. ^ a b c d e f g h i j 櫻井義秀 1997, p. 115.
  12. ^ 紀藤正樹(著)『21世紀の宗教法人法』(朝日新聞社 1995年11月 ISBN 978-4-02-273068-8
  13. ^ 宗教社会学の会(編) 『新世紀の宗教―「聖なるもの」の現代的諸相』(創元社 2002年11月)ISBN 978-4-422-14022-3
  14. ^ a b スティーヴン・ハッサン浅見定雄 (訳) 『マインド・コントロールの恐怖』(恒友出版 1993年6月) ISBN 978-4-7652-3071-1
  15. ^ 西田公昭・黒田文月 2003.
  16. ^ 櫻井義秀 2012, p. 8.
  17. ^ 櫻井義秀 1997, p. 117.
  18. ^ 青春を返せ訴訟判決文
  19. ^ “オウム事件、井上被告の死刑確定 9人目”. 47NEWS. 共同通信 (全国新聞ネット). (2010年1月13日). オリジナルの2013年5月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130514222921/http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010011301000753.html 2010年1月14日閲覧。 
  20. ^ 小林惠智『マインド・コントロールのすすめ―そのメカニズムと積極的活用法』(1995年11月)ISBN 978-4-7698-0737-7
  21. ^ マデリン・ランドー トバイアス (著), ジャンジャ ラリック (著), Madeleine Landau Tobias (原著), Janja Lalich (原著), 南 暁子 (訳), 上牧 弥生 (訳) 『自由への脱出―カルトのすべてとマインドコントロールからの解放と回復』(中央アート出版社 1998年9月) ISBN 978-4-88639-870-3
  22. ^ 榛 2010, pp. 20–21.
  23. ^ 『統一教会の検証』
  24. ^ 『週刊金曜日』1994年5月13日号 p20~25
  25. ^ 『週刊金曜日』1994年5月20日号 p36~40
  26. ^ 『「マインド・コントロール理論」その虚構の正体ー知られざる宗教破壊運動の構図』
  27. ^ 赤旗社会部pp.30-35「ライフトレーニング」
  28. ^ a b c d e f g 赤旗社会部pp.25-30「合宿セミナー」
  29. ^ a b 赤旗社会部pp.78-86「献身生活」
  30. ^ a b c d コーワン・ブロムリー 2010, pp. 123–125.
  31. ^ コーワン・ブロムリー 2010, pp. 116–119.
  32. ^ a b c d e f g h i コーワン・ブロムリー 2010, pp. 120–125.
  33. ^ a b c 櫻井 2005.
  34. ^ a b c d e f 米本 2010, pp. 62–69.





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