ポルシェ・356
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356プレA(1948年 - 1955年)
ポルシェ・356プレA | |
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V型の窓ガラスが特徴的な1954年モデル | |
概要 | |
販売期間 | 1948年-1955年 |
パワートレイン | |
エンジン |
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1949年9月にVWとの技術コンサルタント契約を締結したことでロイヤリティを受け取れるようになりかつVWの部品や販売網を利用できるようになった。シュトゥットガルト本社敷地の返還交渉を進めながら、その向かいにあったロイター(現レカロ)に間借りして生産を始め、さらにボディー生産を委託して生産性の低さを解消した。1950年4月にドイツ製ポルシェの第1号車が生産された。
車体材質がアルミから鉄製ボディーに変更された。固定式三角窓の廃止、フロントバンパーの変更、ボンネットも高くなった。微妙にウエストラインがあがり、室内も広げられ、屋根がなだらかになった。ボディは何枚ものパネルをガス溶接しハンダで埋めて製造された。車体側面のサイドシルが内側に回りこんでいるのが特徴で、後に愛好者に「プレA」とも呼ばれた年代モデル。左右独立シートとリアの補助シート設定。
1950年モデル
- ポルシェ356/1100 - キャブレターがソレックス32PBIに変更され内径φ73.5mm×行程64mmで1,086cc[4]から40hp/4,200rpm[5]または40PS/4,200rpm[4]、7.15kgm/2,800rpm[4][5]。この年410台が生産された[4]。9月3日にフェルディナント・ポルシェの75歳の誕生日にクーペ1台が贈呈され、間もなくこの車輛は所有者を失い「フェルディナント」と名付けられ研究開発に使用された[6]。
1951年モデル
リアクォーター窓が少し外側に開閉可能になり、右ハンドル仕様も設定された。サスペンションのリアダンパーがテレスコピック式に変更された。カブリオレが選択できるようになった[4]。
- ポルシェ356/1100
- ポルシェ356/1300 - この年追加された[4]。内径φ80mm×行程64mmで1,286cc、44hp/4,200rpm、8.3kgm/2,800rpmの506型エンジン[6]。
- ポルシェ356/1500 - ポルシェ356/1300に次いで追加された[4]。ヒルト製ローラーベアリング[4]を使用し内径φ80mm×行程74mmで1,488cc、60hp/5,000rpm、10.8kgm/2,800rpmの527型エンジン[6]。
1952年モデル
ポルシェ製シンクロメッシュが内蔵された新型トランスミッションが採用された[4]。中央が折れたV型ながらフロントのウインドシールドが1枚窓に変更され[4]、ボンネットの幅が狭くなり、フード上のメッキの開閉ハンドルは穴あきグリップに変更されている。インパネにはタコメーターが標準装備になり、燃料計も装備された(従来は木製レベルゲージで残量確認)。ステアリングがポルシェエンブレム付き2本スポークに変更し、ウインカーレバーも付いた(従来はインパネのトグルスイッチで左右操作した)。ドア上部のウッドパネルは廃止されて鉄板むき出しとなり、リアシートは可倒式になった。ボンネット内のスペアタイヤ搭載位置を横から縦置きに変更しフロントフード内に荷物が多少積めるようになった。ライトはボッシュ製のみになり、VWマークがないだけでビートルと共用のメッキリムがついた。バンパー形状変更でフェンダーまで回り込まないデザインとなり、前後ランプ類も小変更。VW流用だった16インチ鉄ホイールは、リム周辺に冷却用穴のあるタイプに変更された。ワイパーが対向式から平行式に変更され、カブリオレのリアガラスがプラスチック製に変更された。グレイサーがコーチビルダーを務め2座のアメリカン・ロードスターが16台[7]生産された。
- ポルシェ356/1100
- ポルシェ356/1300
- ポルシェ356/1500 - 扱いやすさを重視し55hp/4,400rpm、10.8kgm/2,800rpmに出力が落とされベアリングをプレーンタイプとした[4]546型エンジンを積んだモデルが追加され、その性格から「淑女」(Dame )と呼ばれた。
- ポルシェ356/1500スーパー - この年追加された。クランクシャフトにローラベアリング[4]を備え、ソレックス40PBCキャブレター装備により70hp/5,000rpm、11.0kgm/3,600rpmの528型エンジン[6]を搭載し最高速度は160km/hを越えた[4]。
1953年モデル
ボンネットフード上のメッキの開閉ハンドルがポルシェエンブレム付に変更され、フロントウインカー内側にホーングリルが付き、ドアハンドル等もビートル流用からポルシェ専用に変更された。ヒーター調整ノブがインパネからフロア中央へ移動し、サンルーフがオプション設定され、手動ポンプ式ウインドウォッシャーのタンクがガラスからプラスチックバッグへ変更。リクライニングシートが全車標準装備となった。サスペンションにフロントスタビライザーが装備された。この年からミツワ自動車により日本への正規輸入が初めてされた。
- ポルシェ356/1100
- ポルシェ356/1300
- ポルシェ356/1300スーパー - この年ヨーロッパのプロダクションカーレースに出場するため528型エンジンを内径φ74.5mm×行程74.5mmで1,290ccに縮小、60hp/5,500rpm、9.0kgm/3,600rpmの589型エンジンを積んだモデルが追加された[7]。
- ポルシェ356/1500
- ポルシェ356/1500スーパー
1954年モデル
この年*ポルシェ356/1100が廃止された。
- ポルシェ356/1300
- ポルシェ356/1300A - ポルシェ356/1300スーパーと共通の内径φ74.5mm×行程74.5mmで1,290ccに変更され、42hp/4,200rpm、7.15kgm/2,800rpmとなり、それを示すために末尾に「A」の文字が入った[8]。
- ポルシェ356/1300スーパー
- ポルシェ356/1500 - この年からスピードスターが選択できるようになった[8]。
- ポルシェ356/1500スーパー - この年からスピードスターが選択できるようになった[8]。
1955年モデル
サイドシルにモール追加。フロントサスペンションにスタビライザーを装備した。米国仕様はバンパーにオーバーライダー付が多い。全てのエンジンが3分割式のクランクケースを持つポルシェ製となった[8]。
- ポルシェ356/1300A - 44PS/4,200rpmの506/2型エンジン。
- ポルシェ356/1300スーパー - 60PS/5,500rpmの580/2型エンジン。
- ポルシェ356/1500 - 55PS/4,400rpmの546/2型エンジン。
- ポルシェ356/1500スーパー - - 70PS/5,000rpmの528/2型エンジン。
「プレA」は合計1万0678台が製造販売された[4]。
注釈
- ^ Dはボディーメーカーがドラウツであることを示す。
出典
- ^ a b 『世界の自動車-5 ポルシェ』pp.7-22「ポルシェ前史 最初の電気車からVWまで」。
- ^ 『われらがポルシェ ポルシェなんでも事典』p.67。
- ^ a b c d 『ワールド・カー・ガイド1ポルシェ』p.35。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 『ポルシェ博物館/松田コレクション資料』p.100。
- ^ a b 『ワールド・カー・ガイド1ポルシェ』p.43。
- ^ a b c d 『ワールド・カー・ガイド1ポルシェ』p.45。
- ^ a b 『ワールド・カー・ガイド1ポルシェ』p.49。
- ^ a b c d 『ワールド・カー・ガイド1ポルシェ』p.52。
- ^ 『ワールドカーガイド1ポルシェ』p.50。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 『ポルシェ博物館/松田コレクション資料』p.101。
- ^ a b c d 『ワールド・カー・ガイド1ポルシェ』p.144。
- ^ a b c d e f g h i j k l 『ワールド・カー・ガイド1ポルシェ』p.53。
- ^ a b 『ワールド・カー・ガイド1ポルシェ』p.55。
- ^ a b c d e f g h 『ポルシェ博物館/松田コレクション資料』p.102。
- ^ 『ワールドカーガイド1ポルシェ』p.56。
固有名詞の分類
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